公開日:2025-06-18
クラウドファンディング挑戦中! デジタルハリウッドで出会った2人が手がける、VFX×実写映画
(左: 監督・今福さん 右:プロデューサー・富岡さん)
2020年度にデジタルハリウッド東京本校のCGコースを卒業した同期である今福さんと富岡さん。卒業から数年を経て再びタッグを組み、実写とVFXを融合させた新作映画『あかい染みが』の制作とクラウドファンディングに挑んでいます。今回は、お二人の出会いからデジタルハリウッドでの学び、そして現在の制作にかける想いまで、お話を伺いました。
インタビュイープロフィール
今福洋志さん
1997年生まれ。2020年にデジタルハリウッド東京本校に入学。
CGアニメーションを学び、2021年からカプコングループ 株式会社ケーツーに就職。
2年間シネマティックアーティストとして従事。
<過去作品>
・[短編アニメ] FRANK THE PIG(監督)デジタルフロンティア ベストアニメーション賞、ASIAGRAPH2021 優秀作品
・[ゲーム内映像] バイオハザード RE:4 セパレートウェイズ(シネマティクス)
富岡祐太さん
1989年生まれ。機械部品の専門商社で8年勤務し、インドにも3年駐在。
30歳を迎える頃に退職し、元々好きだった映画に携わろうと決意。
2020 年にデジタルハリウッド東京本校に入学し、CGを学び、
2021年からスタジオ・バックホーンに入社。現在はデジタルアーティスト兼制作進行として勤務。
今回のクラウドファンディング作品『あかい染みが』
一つのカフェに偶然居合わせた、ふた組の男女の物語。 平穏を望む主婦と、組織を裏切ろうとする男、それぞれが抱える秘密が露わになる。 疑念と告白が交錯する中、彼らは運命に導かれ、予測不能な結末へと向かっていく。
インタビュー内容
お二人の出会いや、デジタルハリウッド時代の思い出を教えてください。
〈富岡さん〉
私と今福さんは、2020年度にデジタルハリウッド東京本校のCGのコースに入学した同期になります。
当時、中間課題を終えた頃に、今福さんから「一緒にグループワークをやりませんか?」とお誘いを頂きました。
その時は全体の進行などを見るプロデューサーを主に担当し、今福さんが監督を担当しました。
それぞれが作ったモデルやアニメーションを組み合わせて、仕上がった作品を見た時はとても嬉しかったです。
卒業から数年を経て、再び一緒に映画を作ることになった経緯は?
〈富岡さん〉
卒業後、今福さんはカプコングループの株式会社ケーツーに就職して、2年間大阪でシネマティックアーティストに従事していました。私は映画や配信ドラマのVFXを手掛けるスタジオ・バックホーンに就職し、制作進行とアーティストを兼務して仕事にあたっていました。
卒業後もデジタルハリウッドのつながりで何度か会ってはいましたが、ある時、今福さんから「東京に戻る」という連絡をもらいました。
ちょうど私がその頃、作品を撮る予定があったので、それならぜひ手伝ってほしいとお願いしました。
この時は私が監督、今福さんが助監督として作品を作りました。
この作品を機にまた連絡機会も増え、本作ではプロデューサーとして声をかけて頂いた次第です。
▼当時の作品『氷がとける前に』
お互いに「また一緒にやりたい」と思った理由は?
〈今福さん〉
富岡さんは、出逢った中でも本当の人格者といえる方で、一回りとは言わないまでも年の功を正しく積み重ねておられることが、在学中はもちろんでしたが、『氷がとける前に』のお仕事でもより深く染み入ったからです。そしてあるべきタイミングであるべき場所で落ち合えたこと、それに尽きます。
〈富岡さん〉
シンプルに今福さんの作品が好きなのと、人柄としても信頼しているからです。
今福さんの作る作品は独自性が高く、ストーリーに余白がある事が特徴だと思っています。これは自分にはない才能で、尊敬しています。
また今福さんは、普段は温厚で優しいですが、こだわる所にはきちんとこだわって意見を出して頂けて、それもやりやすくて有難いです。
在学中に学んだスキル(CG、編集、演出など)が、今回の作品でどう活かされていますか?
〈今福さん〉
今回の制作ではVコン(ビデオコンテ)※をあらかじめ作って撮影に臨みました。これはまさしくCGスキルがあってこそのもので、プリプロ・ポスプロ※に重点的に目を向けているこの準備態勢は本作の態度の根幹を形作っています。
※Vコン(ビデオコンテ)
完成イメージを共有するために作成する試作の映像。
※プリプロ(プリプロダクション)
映画などの撮影に入る前に行う準備作業全体のこと。
※ポスプロ(ポストプロダクション)
撮影完了後の編集やCG加工、音の調整などの作業のこと。
Q. 「デジタルハリウッドで学んで良かった」と感じた瞬間は?
〈今福さん〉
今回協力いただいたデジタルハリウッド関係者は富岡さんだけではありません。在学時に担任だった講師の方は定期的に催しを開いてくれています。そのような場で、横だけでなく縦の軸でつながりが生まれていることはデジタルハリウッドで学んだからこそ得られたものだと考えます。
私も在学中にクラスメートたちとグループワークで作品を作った経験が、今の仕事や今回の映画制作に直結しています。特に、試行錯誤を繰り返しながら一つの作品を完成させるプロセスは、デジタルハリウッドでしか得られない貴重な経験でした。
卒業後の経験とデジタルハリウッドの学びが交差して生まれた強みとは?
〈富岡さん〉
学校ではMayaやAfterEffectsでの基本操作を学びました。特にMayaはモデリングからアニメーション、ライティング、レンダリングまでの基礎をしっかり学べました。
お陰で今の会社では3Dも扱えるジェネラリストとして、アセットの作成から、エフェクト作成、2D/3Dを掛け合わせたショット※制作等、幅広く携われています。
まだ経験は浅いですが、CGの理解もあるプロデューサーとして、映画の企画、撮影、ポスプロまで見れるのは今の自分の強みだと考えます。
〈今福さん〉
「凝る」ことを覚えたというところでしょうか。当然のことではあるのですが授業においては絶え間ないブラッシュアップが奨励されます。
受講生と講師の方々からフィードバックをいただき、修正する。これはシネマティクス※として働いていたときにも強く実感しました。
同じ作業は、もう一度するときには、前回よりもうまくできるのです。
※ショット
映像を場面分けした時の最小単位。
※シネマティクス
CGや実写の映像制作及び演出に関わるディレクションを行う仕事
Q. 今回の作品は実写作品ですが、どのようにCGが使用されていますか?
〈今福さん〉
いわゆる「バレ消し」など、映り込んだ不要物の除去が中心です。 また、構図やアクションを理想に近づけるために、小物をCGで追加したりもしました。 中にはフルCGのカットもありますが、実写と並べて違和感が出ないよう、あくまでさりげなく使っています。
撮影から編集・VFXの中で、印象に残っているエピソードは?
〈今福さん〉
我々はCG畑であるわけですが、実写畑の人の身体能力の高さ、実務能力の高さは印象に残っています。恐ろしいくらいに手先が器用なんですね。例えばカルボナーラを盛りつけた皿を用意するとき、トングがなくてもそこにあるお箸で見事に形を成立させます。CGでは計算し尽くされた動きが求められるのに対し、現場では瞬時の判断力と対応力が求められ、そのプロフェッショナリズムに感動しました。
今回の制作チームの中でコラボレーションの力を感じたエピソードは?
〈富岡さん〉
今福さんのお話の通り、今回のスタッフはCG畑と実写畑の両方の人間が混在していました。
本作はVFXも多く、実写畑の人間だけでは説明に時間がかかり、スムーズな撮影が出来なかったかもしれませんが、CGに理解のあるスタッフも多かったお陰で、撮影中に完成ビジュアルを皆で共有しやすかったです。
一方で、実写畑のスタッフは現場の回しがとても上手で要領が良く、どんどん撮影が進められました。
お互いの長所を出し合って作品作りが出来たと思います。
今回のクラウドファンディングにはどのような想いで挑まれましたか?
〈富岡さん〉
前回、自身が監督した『氷がとける前に』は実は100万円ほどの資金がかかりました。
これを個人で捻出した結果、学費とも合わせて非常に苦しい時期がありました。
また予算の都合で著作権についても満足のいく進め方ができませんでした。
そんな経験から、本作においては予算面で何か助力になりたい、また今福さんには本作だけにとどまらず、次作にもどんどん進んでほしい。
そういう思いでクラファンでの資金調達に挑んでいます。
”観客”を映画の構成要素の一つとして捉えることに込めた意図とは?
〈今福さん〉
映画は映画館で上映され、観客がチケットを買って鑑賞して成立する興行です。
本来であれば撮影をして編集をして、それから観客が作品を完結させます。この原則を破るからにはこの仕組みに言及せざるを得ませんでした。
なのであえて意図を作るならば、芸術を言い訳にせず産業としての映画というかたちを無視しないための戒め、ということになります。
支援者の存在が制作にどう影響を与えましたか?
〈富岡さん〉
今回ご支援頂いた資金によって、既にCGモデルの購入が進んでおり、作業の効率化が進んでいます。
今後、VFXの外注発注や音楽制作、そしてその先のプランについても、
ご支援頂いた資金のお陰でより質を高められますし、納得のいく作品で映画祭に挑戦できると思っています。本当にありがたいです。
完成後の展開(映画祭出品や劇場公開)について、どのようなビジョンを描いていますか?
〈今福さん〉
来年の映画祭に応募し、その先に映画館での配給を考えています。多くの人に作品を見てもらえる機会を創出したいです。
また、この作品を通して観客の皆さんにはシンプルに面白い体験を届けたいと思っています。観客の皆さんが作品を通して何かしらの感情を抱き、記憶に残るような映画にしたいです。
在校生・卒業生・これから映像を志す人たちへメッセージをお願いします。
〈今福さん〉
僕らもまだ映像を志す一人なので、自分たちへのメッセージになります。
「明日も生きて、がんばりましょう。」
〈富岡さん〉
私もまだまだ納得のいく作品は作れず、むしろ挫折ばかりです。
ただ、少しずつ映像における自分の長所も見えてきた所です。
これからも自分の好きな作品を形にしていけるよう、頑張ります。皆さんもぜひ自分の「好き」に素直に、頑張っていってください。
まとめ
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