スペシャリスト

公開日:2023-07-01

スペシャリストとは

「スペシャリスト(Specialist)」とは、ある特定の分野において専門的な技術や知見を得ている人のことを指します。これは3DCGの仕事においても同様で、ある特定の技術を業務とする職業のことです。スペシャリストは業務が細分化されている大きな企業、CG先進国であるハリウッドのプロダクションなどに所属しています。

どんな仕事・業務?

CG制作におけるスペシャリストは主に以下のような職種となっており、職種によって業務内容は異なります。

モデラー

物体を形作る「モデリング」という仕事で、具体的には2Dのデザイン画から、3Dの立体モデルにする作業です。会社によっては、背景の専門家を「背景モデラー」と呼ぶこともあり、キャラクターの専門家を「キャラクターモデラー」と言い区別する場合もあります。また、モデラーの中にも生物(人間や怪物、怪獣、ファンタジーの世界の登場人物)を得意とする「オーガニック(有機物)」系の人や、車やバイク、機械、ロボットなどを得意とする「ハードサーフェイス(工業製品などの硬い物体)」系の人が居ます。

リガー

リギングを行うスペシャリストです。リギングとは、モデリングされたキャラクターを動かすための設定(ジョイントの制作、スキニング、FKとIK設定、コントローラーの制作)をする作業のことです。先述のモデラーと後述のアニメーターの間の作業となるので、コミュニケーションも大切です。例えば、肘(関節を入れる位置)にポリゴンが多く存在しないと曲げた箇所がカクカクしてしまい見栄えが悪くなります。その場合、モデラーに状況を説明し、データを戻してポリゴンの分割位置を変更してもらいます。また、アニメーターから「表情の変化をもう少し豊かにしたい」と言われれば、それ専用のリグを組む必要があります。

アニメーター

キャラクターやカメラや乗り物などを「動かす」専門家で、絵コンテに指示された秒数(尺)でその物体に動きをつけます。また、キャラクターアニメーションの場合、ただ動きをつけるのではなく演技をつける必要があるので、そのカットでのそのキャラクターの心情や役割などを知っている必要もあります。また企業によっては、カット割りやレイアウトの仕事が発生することもあります。

エフェクトアーティスト

爆発や煙、炎、水や雲など通常のモデリングでは表現できないことを制作する専門職です。一般的には、パーティクル(粒子)を重力や風力などの物理現象で動かしてそれらを表現します。また、昨今では「破壊」を専門とするエフェクトアーティストもいます。主にVFX系の映画作品などで、建物が壊れたり破片が飛び散ったりなど非常に難易度の高いショットを制作する仕事です。


これらのほかにも、ライティングやレンダリングに特化した「ショットアーティスト」や合成に特化した「コンポジター」など、会社によって呼び方はさまざまですが「何かの技術に特化した業務を行う」ということは共通です。

作品の種類では、ゲームや映画(長編作品)や1クール(3カ月の放送で約12話)以上の放送予定のフル3DCGアニメ作品(セルルックとも言います)など大きなプロジェクトでのニーズがあります。

どんなソフトウェアを使うのか

使用するソフトウェアは業界や担当をする業務、企業によっても異なりますが、基本的に3DCGソフトウェアはマストで使用します。「Maya(マヤ)」「3ds Max(スリーディーエス・マックス)」「Nuke(ニューク)」「Houdini(フーディニ)」「ZBrush(ズィーブラシ)」などです。
そのほかにもゲームエンジンの「Unity(ユニティ)」「Unreal Engine(アンリアルエンジン) 」、デザインソフトウェアの「Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)」や映像編集ソフトウェアの「Adobe After Effects(アドビ アフターエフェクツ)」「Adobe Premiere Pro(アドビ プレミアプロ)」などがあります。

どのような職場がある?

50人以上の大きな会社規模ではスペシャリストが多数在籍している場合が多いですが、数人~20人規模でもスペシャリストだけが在籍している会社もあります。
スペシャリストが在籍する企業は、海外の映像制作を行う企業や、日本ではゲーム制作を行う企業などが多くなっています。

収入(年収・月収)は?

平均的なCG業界のクリエイターの収入を参考にするとおよそ300万円〜500万円と言われています。ある特定の分野に特化している経験値のあるスペシャリストの年収は、もうすこし高い金額も見込めます。企業や自分の持っている経験、スキルによって大きく変動します。しかし、提示金額の上限は比較的高い傾向があります。

将来性は?

CGがいろいろな分野で使われている今、1つのことに没頭でき、仕上がりのクオリティの差が歴然と高くなるスペシャリストの存在は非常に大切であり、海外での活躍や、国内でもゲーム制作会社など大手になればなるほどスペシャリストの需要は高くなっています。
しかし、CGクリエイターも続々と誕生していること、ツール類の進化の背景もありCG先進国と後進国の技術の差も今後小さくなってくることも考えると、何か他の分野のことも身につけておくと尚良いと言えます。近年ではジェネラリストの割合も増えているため、ワークフローにおける前後の流れについてのスキルは最低限身につけておいたほうが良いです。日本での映像業界では比較的ジェネラリストの需要が高くなっています。

どんなキャリアが歩めるか

先述にもある通り、日本のゲーム業界及び海外のCG業界ではスペシャリストの在籍が多く特に海外の有名スタジオではスペシャリストの雇用が多い傾向があります。そのため、将来的に海外就職を目指す方、大手ゲーム制作会社に進むといったキャリアを考えている方にとっては何かのスペシャリストになることはおすすめです。

なるには

一般的にどのようななり方があるのか

スペシャリストになるには、特定の分野以外においては他のクリエイターに引き継ぐ必要もあるが、とある一定の分野では高いクオリティが出せるという強みが必要です。そのため、CGデザイナーや特定の分野で制作の経験を積んできてきた経験のあるクリエイターが、特定分野のスペシャリストとしてキャリアアップしていきます。

未経験からなるには

全体的に学ぶことができる専門のスクールでは、3DCG制作に関わる全般的な知識を学ぶことができるため、自分がやりたい職業、目標としている職業の技術について学ぶことができます。また、実際に勉強を始めたら他の職業の方が向いていると思う可能性もあります。同じように、他の分野に興味が出てきたなど、自分に合う分野や進みたい職種についても考えることができます。

必要なスキル

必要なスキルは、業務内容によってそれぞれ異なります。下記に、主なスペシャリストに必要なスキルを挙げますので参考にしてください。

モデラー

形作るのが仕事ですが、同時にテクスチャーを描く場合が多く、これらを1セットで仕事を受発注する方も多いです。よって覚えるソフトウェア(スキル)もMayaや3ds Maxなどの3DCGソフトウェアだけではなく、ZBrushや「Mudbox(マッドボックス)」などのモデリング専用ソフトウェア、「Substance Painter(サブスタンスペインター)」などのテクスチャー描画ソフトウェアなど、それぞれの用途に特化したソフトウェアを使用できる必要があります。

リガー

リギングの基礎はもちろんですが、そのほかにも「C言語」や「Python(パイソン)」といったプログラミングができる必要があります。

アニメーター

自然な動きをつけることが重要なので「ニュートンの運動の三法則」(慣性の法則、運動の法則、作用反作用の法則)を理解して表現する必要もあります。しかし、この法則だけでは機械的な面白みのない動きになってしまい、本末転倒な結果になってしまうので「ディズニーアニメにおける12の法則」などを理解しておくとよいです。

エフェクトアーティスト

エフェクトはMayaや3ds Maxでも作れますがHoudiniを使用する場合が多いです。また、液体シミュレーション専用ソフトウェアや破壊専門のプラグインなど、その専門性により使用するソフトウェアも多種多様です。

必要な機材

CG制作を行うには、コンピューターが必須となります。専用のソフトウェアなどが不自由なく操作できるレベルの処理能力が高く、大きなサイズのデータも保存しておくことのできるコンピューターが望ましいです。
画面サイズの大きなデスクトップタイプの利用やノートパソコンの場合はメインとなる外部出力モニターを使用し、さらにサブモニターを組み合わせて使うことで作業効率も上がります。業務内容や必要に応じてペンタブレットや液晶タブレット、クリエイター用マウスを使用する人もいます。

勉強法

ポートフォリオやデモリールの見せ方としては、ある技術に特化したものを表現できるようにする必要があります。例えばモデラー希望であれば、老若男女のさまざまなモデル、それぞれに対してのローポリ表現やハイポリ表現など、得意不得意が分かれますがオーガニック系、ハードサーフェイス系などを載せるために、得意とする分野を特に勉強しておくと良いでしょう。

なるための適性は?

何かの技術を深掘りして極めたい人に向いています。また、海外ではスペシャリストの求人が多いので、世界を目指して就職や転職を志す人にも向いています。

なるにはどれくらいお金がかかる?

CGを学べる専門スクールに通う場合、およそ90万円~140万円前後です。内容や期間によっても価格は大きく変わってくるため、自分の目的やライフスタイルに合うスクールを選ぶことが大切です。書籍を参考にする場合、1冊2,000~3,000円が相場です。
そのほかにもPhotoshopなどのAdobe関連のソフトウェアフェア使用料(全て使えるコンプリートプランで5,680円/月(税別)※学割あり)や3DCGソフトウェアの使用料が必要になります。
またインターネット費用(3,000~4,000円/月)や、ポートフォリオサイトを持つ場合はレンタルサーバー代(300円前後~/月)などが挙げられます。
すでに使えるパソコンがあれば必要ありませんが、パソコン購入費なども必要になります。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部