ジェネラリスト

公開日:2023-07-01

ジェネラリストとは

「ジェネラリスト(Generalist)」とは、一般的な意味として「総合職」「多方面の知識を持つ人」「多様な能力を持つ人」「万能な人」を表します。3DCGの業務においても同様な意味で、ほぼ全ての作業が可能な人や全ての作業の知識を得ている人という意味になります。3DCGの制作においては、必要な工程を一通り1人で行うことができる人です。

どんな仕事・業務?

ジェネラリストは全行程を行うことができる人のため、具体的には以下のような業務を担当します。

  • モデリング(物体を形作ること)
  • シェーディング(色や質感設定の設定)
  • リギング(キャラクターを動かすための骨組み設定を行うこと)
  • アニメーション(動きをつけること)
  • ライティング(光源を作り陰影を作ること)
  • レンダリング(画像を生成すること)
  • エフェクト(特殊効果による煙や炎の表現)
  • コンポジット(合成作業)

どんなソフトウェアを使うのか

使用するソフトウェアは業界や担当をする業務、企業によっても異なりますが、基本的に3DCGソフトウェアはマストで使用します。「Maya(マヤ)」「3ds Max(スリーディーエス・マックス)」「Nuke(ニューク)」「Houdini(フーディニ)」「ZBrush(ズィーブラシ)」などです。
そのほかにもゲームエンジンの「Unity(ユニティ)」「Unreal Engine(アンリアルエンジン) 」、デザインソフトウェアの「Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)」や映像編集ソフトウェアの「Adobe After Effects(アドビ アフターエフェクツ)」「Adobe Premiere Pro(アドビ プレミア プロ)」などがあります。

どのような職場がある?

一般的に、ジェネラリストの集団は会社の規模でいうと従業員数が数人から50人未満の会社が多く、比較的小規模のプロジェクトを担当することが多いです。そのほかにも、ベンチャー企業、転勤などを想定している大企業などもあります。
仕事の種類では、映像系(CMや映画、ドラマ、MV)の仕事を受注する会社の多くがジェネラリストを雇用しているケースが多く、ゲーム制作会社の多くはスペシャリストの雇用の方が多いと言えます。しかし、海外の映画制作スタジオではその映像の規模からもわかるように、数百人にも及ぶ人が携わっています。そのため、スペシャリストが数多く在籍しており日本とは異なる状況といえます。
また、日本では数少ないのですが海外には「プレビジュアラーゼーション」という仕事があります。簡単にいうと動く絵コンテを作ることで「撮影前(プレ)に映像化(ビジュアラーゼーション)」するという作業です。これにより、本番の撮影を速やかに進めることができます。この職業に就きたい場合、ジェネラリストである必要があります。

業務例

ジェネラリストだからと言って、全ての作業を完全に1人で行うわけではありません。
例えばCM映像、MV、ドラマの1シーン、1カットなど、「数秒から数分の映像」を制作する場合は、ジェネラリスト数人が集まって手分けをして作業をすることが多いです。この場合は『1人で全部の仕事』というよりも『3~10人程度で全部の仕事』を行うと言えます。
このような仕事の際は、数人がモデリング、数人がシェーディング、数人がアニメーション、というように『それぞれがジェネラリストでありながら、業務内容で分担をする(複数人のスペシャリストがいるような状態)』という状態と、『1人1人がそれぞれ数カットを担当し、各々作業を進める』というやり方があります。
どんなスタッフがいるのか、どんな作業量があるのかなどの状況で取捨選択しますので、仕事の進め方はケースバイケースと言えます。

働き方は?

企業に勤務する場合は、基本的に平日8時間勤務です。スケジュールによっては残業なども発生しますが、フレックスタイム制を設けている企業もあります。主に正社員採用ですが、契約社員からスタートし、その後正社員採用を行なっているところもあります。
フリーランスを募集している企業では、全行程に携わることのできる一定のレベルを持ち合わせたジェネラリストを募集していることが多いです。

収入(年収・月収)は?

平均的なCG業界のクリエイターの収入を参考にするとおよそ300万円〜500万円と言われています。入社したてや経験が浅い場合はもう少し下がる可能性もありますが、経験値のあるジェネラリストの年収はもう少し高い金額が見込めます。求人情報を参考にすると年収300万円~1,000万円など幅があり、募集している企業や自分の持っている経験、スキルによっても大きく変動します。しかし提示されている金額の上限は比較的高い傾向があります。

将来性は?

成長や変動の激しいCG業界では、ジェネラリストはなんでもできる人だと思われてしまうこともあり、時には便利屋さんのように思われ、そのように扱われてしまうこともあります。そのため自分の得意分野を持っておくことも大切となります。3DCGソフトウェアも進化しており、今では全くの未経験者でも手を伸ばせるような時代になってきているため、強みを持っておくことは必要になります。

どんなキャリアが歩めるか

全体の工程を担うジェネラリストは、将来的に上流工程を担うディレクターやプロデューサー、監督などの役職を目指すこともできます。また独立して小規模案件を受け持つ会社を自分で立ち上げて経営をする、個人で直接取引を行い、広告代理店などから仕事を受けるなどしてフリーランスとして活動する道もあります。

求人動向

ジェネラリストの求人は全体ではそこまで多くはありませんが、CGの需要がさまざまな分野で高まっている今、安定して求人が出ています。
特にジェネラリストはフリーランス(業務委託等)での募集もあるため、独立していて全体の工程に携わることのできる人にはおすすめです。

なるには

一般的にどのようななり方があるのか

一般的には、すでに3DCG業界で働いておりある程度の経験年数がある人が転職、キャリアをシフトしてジェネラリストになります。求められる年数は大体の場合3~5年以上が多くなっており、必要とされるスキルの幅も広くレベルも高いものが求められます。
しかし、最近では若手の育成に力を入れている企業もあるため、そのような企業では経験が浅めでも採用されるケースもあります。

未経験からなるには

未経験からジェネラリストになるには狭き門ではありますが、何らかの形で3DCG制作に携わっていた経験がある場合や、アシスタントなどから経験を積んでいき全体的な工程をこなせるようになれば行く行く目指すことができる職業です。CG業界に就職をするには、進みたい業界を明確にしながら学ぶことが大切です。専門のスクールでは3DCG制作に関わる全体的な知識を学ぶこともでき、独学で学習するよりも効率的に習得が可能です。

必要なスキル

モデリングから合成までの非常に幅広い技術を必要としています。また、1つ1つの仕事として完成するというよりも、1つの完成した絵(映像)を作るのが目的なので、絵作りができるスキルも必要でしょう。例えば、モデリング(形作り)でクライアントや自分自身が満足した完成形ができたとしても、最終的に納品した映像のクオリティーが低ければ仕事としては不十分という意味です。また、プレビジュアライゼーションを行う場合は、3DCGの技術というよりも、絵コンテや台本から素早く3DCGにする技術とレイアウトやカット割りのスキルが必要となってきます。

必要な機材

CG制作を行うには、コンピューターが必要になります。専用のソフトウェアなどが不自由なく操作できるレベルの処理能力が高く、大きなサイズのデータも保存しておくことのできるコンピューターが望ましいです。
画面サイズの大きなデスクトップタイプの利用やノートパソコンの場合はメインとなる外部出力モニターを使用し、さらにサブモニターを組み合わせて使うことで作業効率も上がります。業務内容や必要に応じてペンタブレットや液晶タブレット、クリエイター用マウスを使用する人もいます。

勉強法

ポートフォリオやデモリールにおいての見せ方としては、ある技術に特化させるのではなく満遍なく自分の技術をアピールできるものが必要です。例えば、完成した映像の中の1カットを抽出してモデリングしたものを見せたり、ワイヤーフレームを表示してポリゴンの割り方を見せたり、テクスチャーの展開図とその種類を見せたり、ライティングの前後を表現したり、合成した画像と元の画像の2つを並べ、どこをどのように合成したのかを説明できるなど、自分自身のジェネラリストとしての技術を表現すると良いでしょう。

なるための適性は?

CM、MV、PV(プロモーションビデオ)、映画などの映像系の制作をしたい人に向いています。また、一つの作業だけを集中して行うことが好きな人よりも、多くの種類の作業をしたい人に向いています。それと、ジェネラリストを経てディレクターやプロデューサーになる人も多いです。これは、1つの作業しか知らない、経験がない、というよりも全体の作業を知っている、または経験がある場合の方が作業全般を把握できるのでこう言った仕事(監督業や演出家、CGディレクター)に就きたい人にも向いているといえます。また、一朝一夕では身につかない技術なので、そういう意味では根気強い方や、長期的展望を持っている方が向いています。

なるにはどれくらいお金がかかる?

CGを学べる専門スクールに通う場合、およそ90万円~140万円前後です。内容や期間によっても価格は大きく変わってくるため、自分の目的やライフスタイルに合うスクールを選ぶことが大切です。書籍を参考にする場合、1冊2,000~3,000円が相場です。
そのほかにもPhotoshopなどのAdobe関連のソフトウェアフェア使用料(全て使えるコンプリートプランで5,680円/月(税別)※学割あり)や3DCGソフトウェアの使用料が必要になります。
またインターネット費用(3,000~4,000円/月)や、ポートフォリオサイトを持つ場合はレンタルサーバー代(300円前後~/月)などが挙げられます。
すでに使えるパソコンがあれば必要ありませんが、パソコン購入費も必要になります。ある程度のスペックが必要なため、この辺りも検討が必要となります。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部