AIを使えば、Webサイトも、画像も、動画も、文章も、以前よりずっと短時間で形にできるようになりました。
では、「作れること」が当たり前になっていく時代に、クリエイターの価値はどこに残るのでしょうか。
そのヒントになるのが、UI/UXです。
今回は、株式会社グッドパッチの秋野比彩美氏と、生成AI活用専門家のおざけん(小澤健祐)氏を迎えて開催した 「SSRクリエイターは、なぜUI/UXを学ぶのか」で語られた内容をもとに、 AI時代にクリエイターが身につけておきたい5つの視点を紹介します。
Webデザイナーはもちろん、グラフィック、動画、エンジニア、マーケティングなど、 「自分はUI/UXデザイナーを目指していないから関係ない」と思っている方にも、ぜひ読んでほしい内容です。
この記事でわかること
- AI時代に「作れるだけ」では差がつきにくくなる理由
- UI/UXがクリエイターの仕事とどう関係するのか
- これから価値を高めるために、今日からできること
- UI/UXを体系的に学ぶ意味
1|AI時代は「どう作るか」より「なぜ作るか」
生成AIによって、制作そのもののハードルは急速に下がっています。
だからこそ重要になるのが、 「何を作るか」の前に、「なぜ作るのか」を考える力です。
おざけん氏は、この変化を「Yシフト」と表現しました。
たとえばWebサイトなら、
- 誰に使ってほしいのか
- その人は何に困っているのか
- どんな体験を届けたいのか
- 最終的にどんな行動につなげたいのか
が決まっていなければ、 AIがどれだけきれいなデザインを作っても、 それが「良いデザイン」なのかは判断できません。
制作が安くなるほど、体験を決める力が希少になる。
AIに任せられることが増えるほど、 人には目的を決め、選び、判断する力が求められていきます。
2|UI/UXは「きれいな画面を作ること」ではない
UI/UXというと、アプリやWebサイトの画面デザインをイメージする方も多いかもしれません。
しかしUXデザインは、そのもっと手前から始まります。
大切なのは、 ユーザーが本当に困っていることを理解し、その課題を解決する体験を考えること。
秋野氏が紹介したWebサイトリニューアルの事例でも、 単に「古い見た目を新しくする」のではなく、
- 初めて利用する人が迷っていないか
- わかりにくい言葉はないか
- 既存ユーザーが感じている価値を残せているか
といった課題をユーザーの声から探り、 情報の順番や言葉、導線、UIへと落とし込んでいました。
つまりUXとは、 見た目を整えることではなく、ユーザーが迷わない体験を設計することです。
3|「できるクリエイター」は、依頼されたものをそのまま作らない
たとえば、クライアントからこんな依頼を受けたとします。
「Webサイトのデザインを、もっと今っぽくしてください」
言われた通りにデザインを新しくする。
これもひとつの仕事ですが、 AIでもかなり対応できるようになってきています。
一方、UI/UXの視点を持つ人なら、 その前にこんな質問をします。
- なぜ新しくしたいのでしょうか?
- 今のサイトで、ユーザーは何に困っていますか?
- 誰にもっと使ってほしいのでしょうか?
- リニューアル後、何が変われば成功ですか?
「作ってください」と言われたものを、そのまま受け取るのではなく、 一歩踏み込んで目的を問い直す。
これによって、 デザインは「制作作業」から「課題解決」に変わります。
そして必要になるのは、IllustratorやFigmaなどの操作スキルだけではありません。
- ヒアリングする力
- 相手の言葉の背景を考える力
- ユーザーを観察する力
- ビジネスの目的を理解する力
- 仮説を立てる力
- 考えた理由を説明する力
こうした力まで含めて、 これからの「デザインする力」になっていくのではないでしょうか。
4|UI/UXは、UI/UXデザイナーだけのスキルではない
ここまで読むと、 「UI/UXデザイナーを目指す人の話なのでは?」 と思うかもしれません。
でも、今回のイベントで繰り返し語られていたのは、 UI/UXはさまざまな職種に関係するということでした。
Webデザイナーの場合
「きれいなWebサイトを作る」だけでなく、 ユーザーがどこで迷い、どんな情報を求め、 最終的にどんな行動を取るのかまで考えられるようになります。
結果として、 「なぜこのデザインなのか」を根拠を持って説明できる ようになります。
グラフィックデザイナーの場合
見た目の美しさだけでなく、 誰に何を伝え、どう感じてほしいのかから、 表現を逆算して考えられるようになります。
動画クリエイターの場合
動画そのものの完成度だけでなく、 「見た後にどう感じるか」 「次にどんな行動を取ってもらうか」 まで含めて設計できるようになります。
マーケターの場合
広告を配信して人を集めるだけではなく、 その先でユーザーがどんな体験をするのかまで考えられるようになります。
エンジニアの場合
「この機能を実装できるか」だけでなく、 「なぜこの機能が必要なのか」 をユーザー視点から考えられるようになります。
AIによって制作や業務の境界が薄れていくほど、 こうした職種同士をつなぐ考え方が必要になってきます。
UI/UXは、 特定の職種だけが持つ専門知識というより、さまざまな仕事をつなぐ共通言語 になりつつあるのかもしれません。
今までWeb、グラフィック、動画、開発などを学んできた方も、 それを捨ててUI/UXへ行く必要はありません。
むしろ、 今持っているスキルにUI/UXの視点を掛け合わせることで、できることが増えていく。
ここが、とても大切なポイントです。
5|今日からできる。UI/UXの視点を鍛える方法
では、UI/UXに興味を持ったら何から始めればいいのでしょうか。
イベントで秋野氏が紹介していたのは、 とてもシンプルな方法です。
普段使っているサービスを、「なぜ使いやすいのか」という視点で観察してみる。
たとえば、いつも使っているアプリを開いて、 こんなことを考えてみてください。
- なぜこのボタンは迷わず押せるのか?
- なぜこのサービスは使い続けたくなるのか?
- なぜこの言葉だと意味がすぐ伝わるのか?
- 逆に、どこで「使いづらい」と感じるのか?
- 自分ならどう改善するか?
普段は無意識に使っているものでも、 作り手の視点で見てみると、 その裏側にある設計が少しずつ見えてきます。
さらにAIを使えば、 改善案やプロトタイプも以前より簡単に作れます。
だからこそ、 「まず作ってみる → 使ってみる → 考える → 改善する」 というサイクルを回しやすい時代でもあります。
ここまで読むと、UI/UXは「知識」だけでは身につきにくいことにも気づく
UI/UXの基本的な考え方は、 本や動画、Webの記事でも学ぶことができます。
一方で、実際にやってみると難しいのが、 「自分が良いと思ったものが、本当にユーザーにとって良いのか」 を判断することです。
イベントでも、 作り手が 「この文章は読まれるだろう」 「このボタンなら押されるだろう」 と思って作ったものを、 実際のユーザーがまったく読まなかったり、 押さなかったりすることがあると紹介されていました。
だからUI/UXでは、
ユーザーを理解する
↓
課題を定義する
↓
体験を設計する
↓
形にする
↓
実際に使ってもらう
↓
改善する
というプロセスを回すことが重要になります。
そして、自分の考えだけで完結させず、 第三者からフィードバックをもらうことも大切です。
ここが、UI/UXを独学だけで身につけようとしたときに難しくなりやすいポイントでもあります。
「作れる」の先まで学ぶなら、デジタルハリウッド
今回のイベントを開催したデジタルハリウッドでは、 UI/UXだけを切り離して学ぶのではなく、 実際に形にする制作力と、その理由を考える力の両方を身につけるための学びを用意しています。
「UI/UXに興味はあるけれど、どこまで学ぶべきかわからない」 という方も、現在地に合わせて選ぶことができます。
まずはUXの考え方を知りたい|Webで成果を出すUXデザイン基礎講座
まずUI/UXの基本から知りたい方には、 オンラインで受講できる 「Webで成果を出すUXデザイン基礎講座」 があります。
株式会社グッドパッチと共同開発した講座で、 今回登壇した秋野比彩美氏が監修・講師を担当しています。
UXの基礎から、ユーザーリサーチ、インタビュー、分析、ペルソナ、 カスタマージャーニーマップ、情報設計などを体系的に学べる内容です。
制作力も身につけたい|Webデザイナー専攻
「まだWeb制作そのものを学んだことがない」 「まずは自分でWebサイトを作れるようになりたい」 という方には、Webデザイナー専攻があります。
デザインやコーディングなどのWeb制作スキルを身につけながら、 2026年4月からはグッドパッチと共同開発した 「UXデザイン基礎」 の映像教材もカリキュラムに導入されています。
つまり、 「作れる」だけで終わらず、ユーザー視点から考えるところまで学べる のがポイントです。
UI/UXを軸にキャリアそのものを広げたい|本科UI/UXデザイン専攻
そして、 「今のスキルにUI/UXを加えたい」 「UI/UXデザイナーを目指したい」 「制作だけでなく、企画やサービス設計まで関われる人になりたい」 という方に向けたのが、 本科UI/UXデザイン専攻です。
本科UI/UXデザイン専攻では、 1年間を通して、
- デザイン基礎
- UX基礎
- Webデザイン・コーディング
- UI/UXデザイン
- Webマーケティング
- UX実践
- 卒業制作
などを横断的に学びます。
さらに、実際の企業課題に取り組む 「実案件型カリキュラム」 を通して、 ユーザーの課題を見つけ、体験を考え、形にして、改善するところまで実践します。
目指すのは、 ただツールが使える人ではありません。
「なぜこのデザインなのか」を説明し、ユーザーやビジネスの課題に対して改善を提案できる人。
今回のイベントで語られた 「Whyを考える」 「作る前に問い直す」 「ユーザーを見る」 という力を、 制作とセットで身につけていくコースです。
AI時代だからこそ、「作る」を学ぶだけでは終わらない
AIによって、作ることそのものはどんどん簡単になっています。
だからこそ、これから問われるのは、
誰のために作るのか。
何を解決したいのか。
どんな体験を届けるのか。
そして、なぜこのデザインなのか。
という部分です。
Webデザインを学んでいる人も。
グラフィックを学んでいる人も。
動画を作っている人も。
エンジニアとしてサービスを作っている人も。
今持っているスキルにUI/UXの視点を加えることで、 関われる仕事や提案できる範囲は、もっと広がっていきます。
「UI/UXデザイナーになりたい人だけが学ぶもの」ではなく、 これから何かをつくる人にとって、UI/UXは持っておきたい視点のひとつ。
この記事を読んで 「自分にもUI/UXが必要かもしれない」 と感じたなら、 そこが学び始めるタイミングかもしれません。
自分の場合、UI/UXをどこまで学ぶべき?
とはいえ、 UI/UXに興味を持ったからといって、 全員が同じコースを選ぶ必要はありません。
「Web制作から始めた方がいいのか」
「今の仕事を活かしながらUI/UXを学べるのか」
「未経験からUI/UXデザイナーを目指せるのか」
「転職ではなく、今の仕事に活かす学び方もできるのか」
現在の経験や、これから目指したい働き方によって、 最適な学び方は変わります。
「自分には何を学ぶのがいい?」から相談できます
デジタルハリウッドのスクール説明会では、
これまでの経験や目指したいキャリアを伺いながら、
Web・UI/UXなどの違いも含めて、あなたに合う学び方を一緒に整理します。
オンラインでの参加も可能です。
今回、ヒントをくれたお二人
秋野 比彩美 氏
株式会社グッドパッチ デザイントレーニングマネージャー
LINEヤフーでデザイナーとしてキャリアをスタートし、事業責任者を経験。 その後、大手通信企業のグループ会社でUXデザイナー兼マネージャーとして、 デザイナーの採用・育成に携わる。 現在はグッドパッチで、サービスデザイン(UXデザイン)および デザイナー育成領域をリード。 ビジネスメディアへの寄稿やイベント登壇などを通じて、 ビジネスにおけるUXデザインの啓蒙にも取り組んでいる。
デジタルハリウッド「UXデザイン基礎」の監修・講師も担当。
おざけん(小澤 健祐)氏
一般社団法人AICX協会 代表理事
「人間とAIが共存する社会をつくる」をビジョンに、 AI分野で幅広く活動。 AIに関する書籍執筆や多数の記事・講演を通じて、 生成AIやAIエージェントの実践的な活用法を発信している。
一般社団法人AICX協会の代表理事として 「AI Agent Day」の主催やAIエージェント関連資格制度の創設を牽引するほか、 経済産業省「AX時代のスキルに関するワーキンググループ」委員としても活動。 AI領域に加え、PR・映像制作・クリエイティブ領域にも携わる。
※本記事は2026年9月2日に開催したイベント 「SSRクリエイターは、なぜUI/UXを学ぶのか ~AI時代に差がつく、考えてつくるデザインの力~」 の内容をもとに、一部編集・要約して掲載しています。
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