公開日:2024-04-07
ロトスコープとは、実は100年以上前から伝わるアニメーションの手法の一つです。今回の記事では、ロトスコープとは何なのか、どのような手法なのかを紹介します。また、ロトスコープを使用したアニメの作り方や実際の流れを解説していきます。
【目次】
ロトスコープとは何?
ロトスコープとは、実際に撮影した映像をトレースしてアニメーションを制作する手法です。実写の動きをトレースしているために大変精巧な動きを見せることが出来ます。 しかし、1コマ1コマを手作業で追いかけるため、非常に時間のかかる作業でもあります。現在は、モーションキャプチャーによる技法が確立されており、ロトスコープは非効率なため、あまり用いません。
また、グリーンバックでの撮影後にキーイングでも消去できない部分をロトスコープで1コマづつ手作業で消す際にも、使用する用語です。
ロトスコープの特徴や使用するメリット
ロトスコープは、実写の動きをトレースすることでリアルなアニメーションを制作出来る点が特徴です。ロストコープのメリットは、実写映像を1枚ずつトレースする技法であるため、独特で味のあるアニメーションに仕上げることができる点です。
ロトスコープの始まり
ロストコープの始まりは、1915年、アニメーターのマックス・フライシャーが特許を取ったことからです。フライシャーは、道化師のライブアクションをガラスのパネルに投影し、フレームごとにトレースしたものを紙に描き写し、人間のような動きを作りだしました。彼はその後、ロトスコープを用いてアニメーションシリーズを制作しています。
実際にロトスコープが使用されているアニメ
ロトスコープが使用されているアニメにはこのような作品があります。
白雪姫(1937年)
惡の華
鬼滅の刃(ヒノカミの舞)
信長協奏曲
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(ピアノ演奏のシーン)
ロトスコープを使ってアニメを制作する流れ
実際にロトスコープを使ってアニメを制作する流れをいくつかのステップに分けて紹介します。
・動画素材の用意
・制作箇所の動画の切り取り
・コマの整理
・トレース(作画)
・レイヤーの整理
実写動画素材の用意
まずは、アニメーションの素材となる実写動画素材の用意をします。自分で実写動画を撮影する、もしくは、フリー素材などから素材を用意しましょう。
制作箇所の動画の切り取り
実写動画素材が準備出来たら、次は、制作箇所の動画の切り取りを行います。元データの状態では、実際には使わない箇所や不要なシーンがあるため、切り取りを行い、使用する制作箇所の動画素材だけを残しておきます。
コマの整理
次にコマの整理に移りますが、アニメーションのクオリティをどこまで求めるかによってレイヤーをどこまで減らすかを考える必要があります。というのも、実写動画には、1秒間に約30コマあるため、制作箇所を使用するだけにしても全てのコマを1枚1枚描き起こすのは時間もかかりますし、労力もかかります。動画素材の2~3コマごとにレイヤーを削除していく作業が必要になりますが、ここでコマを減らしすぎるとアニメーションがカクカクした印象になるため注意が必要です。
トレース(作画)
コマ整理まで行った動画素材を基にトレース(作画)作業を行います。ここから本格的なアニメーション作業にはいりますが、作画を行うのが実写になるというだけで、従来のアニメーション制作と同様の作業になります。実写を完全に模写するのか、少し崩すのかなど、トレースの崩し度合いでアニメーションの雰囲気が変わってきます。
レイヤーの整理
トレース(作画)作業が終わったら、レイヤーの整理を行います。元々の実写動画素材のコマ整理の段階のものと、トレース(作画)したものでは、印象や動きの滑らかさが異なって見えることがあります。レイヤー整理では、こういった印象の異なりを整理しアニメーションを仕上げていきます。
ロトスコープを使ってアニメを制作する際のポイント
作業中は必ず頻繁に保存しよう
ロトスコープは、フレーム単位で作られるアニメーションのため大変な時間と労力がかかります。作業中は頻繁に保存することをおすすめします。ファイルのタイトルが正確でないとどれが何のタイトルか分からなくなる場合もあります。また、各レイヤーにはラベルをしっかりつけることで問題が起きても対処しやすくなります。こうした細かな部分に注意を払うことが結果的に時間の節約につながります。
トレース(描画)を行う際は、必要に応じてポイントを動かそう
対象物をフレームごとに描きなおすのはかなり時間がかかります。人体を分解し、それぞれかたちとして描きましょう。同じかたちを毎回描くのではなく、コピー&ペーストをし、ステージ上でレイアウトを行い、必要に応じてポイントを動かしましょう。
Adobe Animateを使ってロストスコープ作品を作ってみよう
Adobe Animate を使うことで、動きのある映像をアニメーションに変えることができます。実写映像に重ねて要素を描き足すことも可能です。シェイプトゥイーンを用いることでスピードアップにもつながります。
アニメーション制作に使用するその他の技法
アニメーションの制作においては、ロトスコープ意外にも多くの手法があります。
・モーショングラフィック
モーショングラフィックスとは、グラフィックスにモーション(動き)を組み合わせた動画のことです。テレビ番組のオープニングやCM、電車や飛行機の案内画面など身近なところでもよく使われています。
関連記事:モーショングラフィックスデザイナー
・3DCGアニメーション
3DCGアニメーションとは、3DCGを用いたアニメーションのことです。
映画やドラマ、映像など幅広い分野で用いられています。3DCG専用ソフトを用いてアニメーションの制作を行います。
デジタルハリウッド3DCGコース卒業生のアニメーション作品はこちら:CG作品:アニメーション系
・アンティシペイション
アンティシペイションとは、予備動作を描く手法のことです。動作を予期させるような描き方をすることで自然でリアルな表現が可能です。
・フォロースルー
フォロースルーとは、アニメーションの動きの最後に付属の部品を遅れて動かく手法のことです。例えば、動物のしっぽなどを遅らせて動かすことで柔軟でリアルな表現になります。
・フレームバイフレーム
フレームバイフレームとは、絵を1枚1枚連写することで動いて見せる手法です。ロトスコープもフレームバイフレームの演出技法のうちの一つです。日本を代表するアニメーション技法です。
ロトスコープに関するよくある質問
ロトスコープとモーションキャプチャーの違いは?
ロトスコープはモーション・キャプチャーの一種として捉えられることもあります。モーションキャプチャーはセンサーがついたスーツやカメラなど使用し、対象の動きをCGモデルに反映させるものです。一方、ロトスコープは、撮影した対象の動きを手作業で描き写していきます。
この2つの共通点は、対象の動きを機械的に捉えるという部分ですが、それぞれ制作手法が異なります。
ロトスコープで10秒の映像を作るには何枚の絵が必要?
1秒の映像を10枚の絵に分割する場合は、10秒の映像を作るのに100枚の絵が必要です。
例えば、ディズニー映画の手書きアニメーションは1秒24枚の絵を使用しているそうです。また、日本のテレビアニメの中には、1秒8枚程度に減らしているものもあります。
アニメーション制作について学ぶなら"デジタルハリウッド専門スクール”
今回は、ロトスコープについて紹介しましたが、アニメーションには、他にも様々な技法・手法があります。どのような映像表現をしたいかによって学ぶ内容も変わってくるかと思います。
アニメーション制作について学ぶならデジタルハリウッド専門スクールがおすすめです。
モーショングラフィックスを学びたい場合は、ネット動画クリエイター専攻がおすすめです。
3DCGアニメーションを学びたい場合は、複数のCGのコースがあります。
社会人や大学生がWスクールをしながら受講できる受講形態になっています。
アニメーション制作を最短期間で学び、映像業界への就職・転職を目指す場合は、ぜひ一度デジタルハリウッド専門スクールの個別相談会へご参加ください。
まとめ
今回は、ロトスコープとはなにか、使用したアニメの作り方や実際の流れを解説しました。
ロトスコープ以外にもアニメーション制作の手法は多様にあります。ロトスコープはあまり馴染みのない手法ではありますが、味のあるロトスコープでしか表すことのできない表現方法でもあります。興味のある方は、ロトスコープを用いたアニメーション制作にまずは取り組んでみるのはいかがでしょうか。