プリレンダーとは|リアルタイムレンダリングとの違い

プリレンダリングとは

公開日:2026-08-31

映画のCGとゲームのCGは、同じ3DCGでも作り方が違います。その違いを分ける言葉のひとつがプリレンダーです。プリレンダーとは、3DCGの映像をあらかじめ時間をかけて計算し、動画や連番画像として書き出しておく方式のことです。この記事では、まずリアルタイムレンダリングとの違いを比較表で整理します。そのうえで、どんな場面で使われるのか、制作はどう進むのか、主なレンダラーとレンダーファームの仕組み、ゲームでの使われ方、両者の境界が近づいているハイブリッドな手法までを、各社の公式ドキュメントにもとづいて解説します。

プリレンダーとは

プリレンダー(プリレンダリング)とは、3DCGの映像をあらかじめ時間をかけて計算し、動画や連番画像として書き出しておく方式のことです。

オフラインレンダリングとも呼ばれます。また、制作現場では書き出した映像そのものを「レンダリング映像」と呼んで、リアルタイムに描画される映像と区別することもあります。表記としては「プリレンダー」「プリレンダリング」のどちらも使われますが、指しているものは同じです。

最大の特徴は、再生するときにはもう計算が終わっているという点です。計算は制作段階で済ませてあり、視聴者の手元では書き出された映像を流すだけになります。そのため、再生する側の機材の性能に左右されにくく、制作者が意図した品質をそのまま届けられます。

その代わり、視聴者が視点を変えることはできません。カメラワークは制作時に決まったものが再生されるだけです。

レンダリングという処理そのものについてはレンダリングの基礎で解説しています。関連する用語はクリエイティブ用語辞典でも確認できます。

プリレンダーとリアルタイムレンダリングの違い

両者の違いは、いつ計算するかの一点です。ここから、かけられる時間も、品質の考え方も、修正の手間もすべて派生します。

観点 プリレンダー リアルタイムレンダリング
計算するタイミング 制作段階で事前に計算する 表示するその場で計算する
1フレームにかけられる時間 制限なし 目標フレームレートから逆算した時間内
品質の考え方 時間をかけて品質を追求できる 時間予算のなかで最適化する
視点の自由度 制作時に決めたカメラワークのみ 視聴者が自由に動かせる
修正の反映 再レンダリングが必要 その場で確認できる
再生側に必要な性能 映像を再生できれば足りる 描画性能が必要
主な用途 映画、アニメ、CM、製品ビジュアル ゲーム、XR、バーチャルプロダクション

Epic Gamesの公式ドキュメントは、この考え方の違いを端的に示しています。オフラインで品質の高い描画を目指す場合、リアルタイムレンダリングのコストを気にする必要はない、と記載されています。つまりプリレンダーは、時間という制約から解放されている方式だということです。

どちらが優れているという関係ではありません。視聴者が視点を操作する必要があるかどうかで、選べる方式が決まります。リアルタイムレンダリング側の仕組みについてはリアルタイムレンダリングの仕組みで詳しく解説しています。

プリレンダーが使われる場面

プリレンダーは、見せる映像が決まっていて、品質を最優先したい場面で使われます。

  • 映画・ドラマのVFX: 実写に合成するCGは、実写の質感に馴染ませる必要があり、計算量をかけた描画が求められます
  • 劇場アニメ・映像作品: 上映される映像は完成形が固定されているため、事前に書き出しておけます
  • CM・プロモーション映像: 短い尺のなかで品質を追求する制作物です
  • 製品ビジュアル: カタログや広告に使う静止画で、実写撮影に近い品質が求められます
  • 建築パース: 完成予想図の静止画や、決まったルートを進むウォークスルー映像

共通しているのは、視聴者が視点を操作しないという点です。この条件が満たされるとき、プリレンダーを選ぶことができます。

長編映像の制作でプリレンダーが中心になることは、レンダラー側の説明からも読み取れます。Pixarの公式サイトでは、RenderManがPixar自社の長編映画で使われており、業界全体でもVFXやアニメーションのレンダリングに使われていると説明されています。

プリレンダーの制作の流れ

プリレンダーの制作は、シーンを組み、テスト描画で確認し、本番のレンダリングを回し、書き出した素材を合成して仕上げる、という流れで進みます。

  1. シーンの構築: モデル、マテリアル、ライト、カメラを配置します
  2. テストレンダリング: 低い品質設定で素早く描画し、構図やライティングを確認します
  3. レンダリング設定の追い込み: サンプル数や解像度など、品質に関わる設定を決めます
  4. 本番レンダリング: フレーム単位で描画し、素材として書き出します
  5. コンポジット(合成): 書き出した素材を重ね、色調整を加えて仕上げます

書き出しは動画ファイルではなく連番画像で行われることが多くあります。理由は2つあります。途中で中断しても、そこから再開できること。そして、合成の工程で1枚ずつ扱えることです。

出力形式については、Epic Gamesの公式ドキュメントが用途に応じた選択肢を挙げています。.PNGは可逆圧縮でアルファチャンネルに対応、.EXRはHDRで16bit・アルファ対応、.BMPや.JPGは高速だが品質と容量にトレードオフがあるとされています。合成を前提とするなら、アルファチャンネルを保持できる形式が選ばれます。

なお、レンダリングにどれくらい時間がかかるかは一概には言えません。シーンの複雑さ、ライティングの設定、解像度、使用するマシンの構成によって大きく変わります。制作の全体像は3DCGとは何かと制作工程で解説しています。

プリレンダーで使われる主なレンダラー

レンダラーは、使っている3DCGソフトと目的で選びます。CPUを中心に計算するものと、GPUを活用するものがあります。

レンダラー 提供元 特徴 主な対応ソフト
Arnold Autodesk 複数のDCC向けに公式ユーザーガイドを提供 3ds Max、Maya、Houdini、Cinema 4D、Katana
V-Ray Chaos CPU/GPU/ハイブリッドに対応 3ds Max、Cinema 4D、Blender、Revit、SketchUp、Rhino
Redshift Maxon GPUアクセラレーテッド Cinema 4D、Maya、3ds Max、Houdini、Katana、ZBrush
RenderMan Pixar 長編映画制作での実績 Maya、Houdini、Katana、Blender
OctaneRender OTOY GPUレンダーエンジン 公式ページに一覧の明記なし

Arnold はAutodeskが提供するレンダラーです。公式ユーザーガイドが3ds Max、Houdini、Cinema 4D、Katana、Maya向けに提供されており、特定の1ソフト専用ではありません。

V-Ray はChaosの製品で、フォトリアルレンダリングの製品として位置づけられています。統合先としてRevit、SketchUp、Rhino、3ds Max、Cinema 4D、Blenderが公式に挙げられており、CPU・GPU・ハイブリッドのレンダリングモードに対応します。日本語公式ページの表示価格は、2026年8月時点でV-Ray Soloが月額6,510円、V-Ray Premiumが月額9,441円、V-Ray Collectionが月額15,291円で、30日間の無料トライアルが用意されています。価格は変更される場合があるため、最新の条件は公式サイトで確認してください。詳しくはV-Rayレンダリングの特徴で解説しています。

Redshift はMaxonのGPUアクセラレーテッドレンダラーです。対応DCCとしてCinema 4D、Autodesk Maya、Autodesk 3ds Max、SideFX Houdini、Foundry Katana、ZBrushが公式に挙げられています。単一マシンで最大8GPU以上のマルチインスタンス運用にも対応します。

RenderMan はPixar Animation Studiosが開発するレンダラーです。RenderMan XPUはCPUとGPUのハイブリッド処理により本番向けパストレーシングを加速する技術として説明されており、物理ベースシェーディングによる複数バウンスのレイトレーシンググローバルイルミネーションに対応します。対応する3DソフトとしてMaya、Houdini、Katana、Blenderが公式ページに挙げられています。非商用利用向けのオプションも公式サイトに用意されています。

OctaneRender はOTOYのGPUレンダーエンジンで、NVIDIA RTXアクセラレーションとマルチGPUに対応しています。デモ版と無償トライアルが提供されています。

レンダラーが計算している質感の仕組みについてはPBRの仕組みとパラメータで、エフェクト制作に強いソフトについてはHoudiniの特徴と使いどころで解説しています。

レンダーファーム|大量のフレームをどう処理するか

映像は1秒あたり数十フレームが必要になります。そのため、複数のマシンに分散して並列でレンダリングする仕組みが使われます。これがレンダーファームです。

Amazon Web Servicesの公式サイトでは、AWS Deadline Cloudを「コンピュータ生成された2D/3Dグラフィックスやビジュアルエフェクトを制作するチームのレンダー管理を簡素化する、フルマネージドサービス」と定義しています。

仕組みの要点は、ジョブの投入方法に表れています。アーティストは使用中のソフトウェアのプラグインUIから、frame range(フレーム範囲)やrender layersといったジョブのパラメータを指定して投入する、と公式に説明されています。つまり、フレーム範囲を分割して複数のマシンに割り当てるという考え方です。理屈のうえでは、100フレームを1台で順に処理するより、10台で10フレームずつ分担したほうが短い時間で終わります(実際にはデータ転送などの時間も加わります)。

対応ソフトとして、Autodesk ArnoldやMaya、3ds Max、Foundry Nuke、SideFX Houdini、KeyShot、Blender、Chaos V-Ray、Unreal Engineが公式に挙げられています。料金は従量課金で、消費したリソースの分だけ支払う形式です。

なお、1フレームあたりの所要時間について公式ページに一般的な記載はありません。前述のとおり、シーンや設定によって大きく異なります。

ゲームにおけるプリレンダーの使われ方

ゲームはリアルタイム描画が基本ですが、プリレンダーの考え方も併用されています。主に3つの形があります。

①ムービーシーン(プリレンダードムービー)

事前にレンダリングした映像を、ゲーム中に再生する方法です。Unreal EngineではBink Videoが公式にサポートされており、Bink Media Playerアセットを作成し、テクスチャとマテリアルを生成して表示するという手順が公式ドキュメントに示されています。レンダーターゲットへの描画と画面への直接描画の両方に対応し、ゲームレベル内でのムービー再生も可能です。

②ライトのベイク(事前計算)

照明の計算をあらかじめ済ませておく手法です。Unityの公式マニュアルでは、Baked Lightsによる照明は実行時より前に事前計算され、実行時のライティング計算には含まれないと説明されています。計算結果はライティングデータとしてディスクに保存され、直接光と間接光の両方がライトマップに焼き込まれます。これに対しRealtime Lightsは、実行時に毎フレーム計算されます。

つまり、リアルタイムに描画されるゲームのなかにも、「事前に計算しておく」という考え方が組み込まれているということです。

③プリレンダード素材の活用

描画負荷が厳しい環境で、一部をプリレンダーの素材に置き換える手法です。Autodeskの公式サイトに掲載された事例(2015年7月掲載)では、1画面に数百体のキャラクターを表示するというゲームデザイン上の要請がありました。当時のスマートフォンやタブレットではリアルタイム描画の負荷が大きすぎたため、召喚キャラクターと背景はプリレンダーをスプライト化し、主要キャラクターはリアルタイムCGとする併用設計が採られたと説明されています。プリレンダーであればジオメトリ数やボーン数に制限がなく、複雑な表現も可能だったとされています。10年以上前の事例ですが、負荷と表現のバランスを取るための考え方は現在にも通じます。

ゲームであっても、事前に計算しておけるものは事前に済ませるという判断は生きているということです。

ここまでの内容を実際の制作で身につけたい方は、3DCGデザイナー専攻本科CG/VFX専攻のカリキュラムもあわせてご覧ください。

境界が近づくハイブリッドな手法

近年は、リアルタイム向けのエンジンでオフライン品質の映像を書き出す手法が広がり、両者の境界は以前より曖昧になっています

Unreal Engine の Path Tracer

Epic Gamesの公式ドキュメントでは、Path Tracerを「段階的に精度を上げる、ハードウェアアクセラレーテッドなレンダリングモード」であり、「物理的に正しく妥協のないグローバルイルミネーションによってリアルタイム機能の欠点を緩和する」ものと定義しています。正解画(ground truth)との比較や本制作向けのレンダリングに適するとされています。

注目したいのは、公式ドキュメントが「リアルタイムレンダリング向けにうまく動くよう開発されてきたレイトレーシングのコードとは同じものを共有していない」と明記している点です。つまり、同じエンジンのなかでも、リアルタイム向けに最適化されたコードとは別の実装で描画されているということです。SequencerおよびMovie Render Queueと完全に統合され、映画・TV品質の出力に対応するとされています。

Movie Render Queue

高品質なフレームを書き出すための仕組みです。Temporal Samplingはカメラのシャッター開放時間を指定のサブフレームに分割し、エンジンのモーションブラーで補間する手法として説明されています。Spatial Samplingは同一時刻をカメラ位置を微小にずらして複数回描画し、蓄積する手法です。パフォーマンスの制約がないため、デノイザーを無効にしてサンプル数を増やす運用が推奨されています。

Chaos Vantage

Chaosの公式サイトでは、完全にレイトレースされた品質で、フォトリアルな静止画とアニメーションをリアルタイムに制作できると説明されています。V-Rayを支えるレンダリング技術と同系統で、Enscape・V-Ray・Coronaの.vrsceneファイルやUSD、MaterialXに変換不要で対応し、プリプロダクションからポストプロダクションまで同じアセットを再利用できる位置づけとされています。

こうした動きが示しているのは、「どちらか一方を選ぶ」から「工程に応じて使い分ける」への変化です。確認や検討はリアルタイムで素早く回し、最終的な書き出しは時間をかけて品質を追求する。そういう組み合わせ方が現実的な選択肢になっています。

プリレンダーに関するよくある質問

Qプリレンダーとプリレンダリングは違いますか。

同じものを指す表記の違いです。オフラインレンダリングとも呼ばれます。

Qレンダリングにはどのくらい時間がかかりますか。

一概には言えません。シーンの複雑さ、ライティングや品質の設定、解像度、使用するマシンの構成によって大きく変わります。

Qプリレンダーとリアルタイムはどちらを学ぶべきですか。

目指す分野によります。映画・アニメ・CMの映像制作ならプリレンダーの考え方が、ゲームやXRならリアルタイムの考え方が中心になります。ただし近年は併用が進んでいるため、両方の考え方を知っておくと役立ちます。

Q個人でもプリレンダーの映像を作れますか。

作れます。3DCGソフトにはレンダラーが同梱されていることが多く、書き出し自体は個人の環境でも可能です。時間をかけられるかどうかが実質的な制約になります。

Qレンダーファームは個人でも使えますか。

従量課金のクラウドサービスが提供されています。AWS Deadline Cloudは、消費したリソースの分だけ支払う料金体系だと公式に説明されています。

Qゲームのムービーシーンはプリレンダーですか。

ケースによります。Unreal EngineではBink Videoによって事前レンダリング済みムービーを再生する仕組みが公式にサポートされている一方、ゲーム内のエンジンでその場で描画する演出もあります。

まとめ

  • プリレンダーとは、3DCGの映像をあらかじめ時間をかけて計算し、動画や連番画像として書き出しておく方式です
  • リアルタイムレンダリングとの違いは「いつ計算するか」の一点で、そこから時間・品質・修正の手間の差が生まれます
  • 視聴者が視点を操作しない映像(映画、アニメ、CM、製品ビジュアル、建築パース)で使われます
  • 制作はシーン構築→テスト描画→設定の追い込み→本番レンダリング→合成の順に進み、連番画像で書き出すのが一般的です
  • 大量のフレームは、複数マシンに分散するレンダーファームで処理されます
  • ゲームでも、ムービーシーン・ライトのベイク・プリレンダード素材という形で併用されています
  • 近年はリアルタイム向けエンジンでオフライン品質を書き出す手法が広がり、両者は使い分ける関係になっています

自分が目指す分野ではどちらが中心になるのかを確かめたうえで、まずは手元のソフトでテストレンダリングを回してみてください。

レンダリングを実制作で学びたい方へ

レンダリングの設定は、知識として覚えるだけでは身につきにくい部分です。実際にシーンを組み、テスト描画を繰り返して結果を確認するなかで判断の勘所がつかめてきます。デジタルハリウッドの3DCGデザイナー専攻や本科CG/VFX専攻では、ライティングとレンダリングを制作課題のなかで扱い、卒業制作まで仕上げます。

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デジタルハリウッド スクール 編集部

デジタルハリウッドの専門スクール編集部です。CG・VFX・Webデザインなどクリエイティブ領域の情報を、公式の一次情報にもとづいて発信しています。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部