PBRとは|物理ベースレンダリングの仕組みとパラメータ

pbrとは

公開日:2026-08-31

3DCGソフトでマテリアルを設定するとき、ベースカラー、メタリック、ラフネスといったパラメータが並んでいます。チュートリアルどおりの数値を入れれば見た目は整うものの、それぞれが何を制御しているのかは分かりにくいものです。PBRとは、現実の光のふるまいを物理法則にもとづいて再現し、素材の質感を表現する手法のことです。この記事では、PBRを支える3つの物理的な原則から、各パラメータの正確な定義、テクスチャマップの種類、2つのワークフローとソフトごとの呼び方の違いまでを、各社の公式ドキュメントにもとづいて解説します。

PBR(物理ベースレンダリング)とは

PBR(Physically Based Rendering:フィジカルベースドレンダリング)とは、日本語で物理ベースレンダリングと呼ばれ、現実の光のふるまいを物理法則にもとづいて再現することで、素材の質感を表現する手法のことです。

従来の質感表現は、「金属に見えるように反射を強くする」「布に見えるようにハイライトを弱くする」というように、見た目を個別に調整する考え方でした。これに対してPBRは、その素材が物理的にどういう性質を持っているかを設定します。金属なのか非金属なのか、表面はどれくらい粗いのか。あとは光の計算が結果を導き出します。

この違いが実務上の利点になります。素材の性質として定義しておけば、明るい屋外に置いても薄暗い室内に置いても破綻しにくくなります。また、ソフトやレンダラーが変わっても見えを揃えやすくなります。

なお、PBRはレンダリングの手法の一つです。レンダリングそのものの考え方はレンダリングの基礎で、3DCG制作全体の流れは3DCGとは何かと制作工程で解説しています。

PBRの考え方

PBRは、大きく3つの物理的な原則の上に成り立っています。

①エネルギー保存則

表面が反射する光の量は、そこに入射した光の量を超えません。当たり前のようですが、この制約があることで「反射を強くしたら不自然に明るくなってしまう」という破綻が起きにくくなります。OpenPBRを解説するAdobeの公式ドキュメントでも、エネルギー保存(energy conservation)は設計原則の一つとして挙げられています。

②マイクロファセット

肉眼では滑らかに見える表面にも、微細な凹凸があります。Adobeの公式ドキュメントは、これを「microscopic surface variation(微視的な表面の変化)」と表現し、滑らかに見える表面でさえ反射光を散乱させる小さな欠陥を持つと説明しています。

この微細な凹凸が細かく揃っていれば、反射光は同じ方向へまとまり、鏡のようにシャープな映り込みになります。凹凸がばらついていれば、反射光は四方に散らばり、ぼんやりとしたマットな見え方になります。この凹凸のばらつき具合を数値にしたものがラフネスです。

③フレネル反射

反射の強さは見る角度によって変わります。正面から見たときより、視線がかすめるような浅い角度で見たときのほうが反射は強くなります。水面を真上から見ると底が透けて見えるのに、遠くの水面は空を映して見えるのはこのためです。

OpenPBRを解説するAdobeの公式ドキュメントでは、反射率は主にIOR(Index of Refraction:屈折率)で制御され、grazing angles(かすめる角度)に向かって増加すると説明されています。

この3つが揃っていることで、光源や環境を変えても素材の見えが物理的に筋の通ったものになります。これがPBRの中核です。

PBRとPBS

PBRとよく似た言葉にPBS(Physically Based Shading:物理ベースシェーディング)があります。

厳密に言えば、PBRはレンダリング全体の枠組みを指し、PBSは表面の陰影計算に焦点を当てた言い方です。ただし実務では、どちらもほぼ同じ意味で使われています。文献やソフトによって呼び方が揺れているだけと考えて差し支えありません。

関連して、シェーディングモデル(サーフェスシェーディングモデル)という言葉もあります。これは「表面の見えをどう計算するか」を定めた枠組みのことで、後述するOpenPBRもこのシェーディングモデルの一つです。用語の整理はクリエイティブ用語辞典も参考になります。

PBRで重要なパラメータ

PBRの中心になるのは、ベースカラー・メタリック・ラフネスの3つです。それぞれの正確な意味を、2026年8月時点の各社公式ドキュメントにもとづいて確認します。

Albedo(Base Color)

素材の基本となる色です。Unreal Engineの公式ドキュメントでは、Base Colorは原則として「鏡面反射やハイライトを除いた、表面で反射する拡散光を表すべきもの」と説明されています。入力はRGBのベクトル値で、各チャンネルは0〜1に自動的に収められます。

注意したいのは、メタリックが1のとき、ベースカラーは鏡面反射の色として使われるという点です。Unityの公式マニュアルも、メタリック値が1のときは拡散反射がなくなり、ベースカラーが鏡面反射と環境反射の色を決めると説明しています。Blender 5.0の公式マニュアルでも、Base Colorは拡散・サブサーフェス・金属・透過に使われる全体色と説明されています。金属を作るときにベースカラーを暗くすると、反射そのものが暗くなります。

Metallic(Metalness)

その素材が金属か非金属(誘電体)かを切り替えるパラメータです。反射の強さを調整するものではありません。

Unreal Engineの公式ドキュメントは、Metallicを0〜1の値で受け取り、素材が金属としてふるまうか非金属としてふるまうかを定義すると説明しています。そのうえで、「純金属・純石材・純プラスチックのような純粋な表面では、Metallicは0か1のどちらかに設定すべきで、その中間にすべきではない」と明記しています。

Unityの公式マニュアルも同様に、金属か非金属かを1か0で設定し、その間の値は両者の結果をブレンドすると説明しています。中間値は、金属の上に塗装が乗っているような複合的な表面をテクスチャで表現するときに使われます。

Roughness

表面の粗さを表すパラメータです。ここは誤解の多いところなので、公式定義を正確に押さえてください。

ラフネスは0で完全にシャープな反射(鏡のような映り込み)、1で拡散した反射(マットな見え方)になります。

Unreal Engineの公式ドキュメントは、Roughnessが素材表面の粗さ・滑らかさを制御し、マテリアル上では映り込みがシャープに見えるかぼやけて見えるかとして現れると説明しています。粗い素材は滑らかな素材よりも反射光を多くの方向に散乱させる、とも記載されています。Blender 5.0の公式マニュアルでも、0.0で完全にシャープな反射、1.0で拡散反射になると明記されています。

なお、Unityは逆方向の指標であるSmoothness(滑らかさ)を採用しています。反射のぼやけ具合やシャープさを調整するプロパティで、値が低いほど微視的に粗く光が広い角度に散り、値が高いほど鏡のように滑らかな表面として扱われます。ソフトを移るときは、どちら向きの指標かを確認してください。

Specular・IOR

鏡面反射の強さに関わるパラメータです。

Unreal Engineの公式ドキュメントによると、Specularは0〜1の値を取り、表面がどれだけ鏡面光を反射するかを制御します。既定値は0.5で、これはおよそ4%の鏡面反射を表し、大多数の素材にとって妥当な値とされています。

Blender 5.0のSpecular IOR Levelも同様の設計で、0.5が調整なし、0ですべての反射を取り除き、1で正面入射時の反射を倍にすると説明されています。IORは多くの素材で1.0(真空・空気)から4.0(ゲルマニウム)の範囲に収まります。

つまりSpecularは、多くの素材では既定値のままで足りるパラメータといえます。

PBRで使うテクスチャマップの種類

これらのパラメータを、面全体で一律の数値ではなく画像で与えるのがテクスチャマップです。1つの素材に対して複数のマップを組み合わせて使います。

マップ 何を制御するか 公式ドキュメントでの説明
ベースカラーマップ 素材の基本色 鏡面反射を除いた拡散光の色
メタリックマップ 面のどこが金属か 金属か誘電体かの切り替え
ラフネスマップ 面のどこが粗いか 反射のシャープさ・ぼやけ具合
ノーマルマップ 表面の細かい凹凸 法線方向を変えて物理的なディテールを加える
ハイトマップ 見かけの高低差 表面テクスチャ自体をずらして遮蔽感を出す
アンビエントオクルージョンマップ 間接光の受け方 くぼみで生じるセルフシャドウの再現を助ける

ノーマルマップは、バンプマップの一種です。Unityの公式マニュアルでは、実際の形状として存在しているかのように光を受ける凹凸・溝・傷といった表面のディテールをモデルに加えられる特別なテクスチャと説明されています。Unreal Engineの公式ドキュメントも、ノーマルマップは各ピクセルの法線(面の向き)を変えることで表面に顕著な物理的ディテールを加えると記載しています。実際のポリゴンを増やさずに細部を表現できるため、負荷を抑えられます。

ハイトマップはパララックスマッピングとも呼ばれます。Unityの公式マニュアルは、ノーマルマップと似た考え方だがより複雑で処理負荷が高く、見えている表面テクスチャの領域そのものをずらすことで表面レベルの遮蔽効果を得る手法だと説明しています。

アンビエントオクルージョンマップは、モデルのどの部分が間接光を強く受け、どの部分が受けにくいかを示す情報です。Unityの公式マニュアルでは、白が間接光を完全に受ける領域、黒が間接光を受けない領域を示すグレースケール画像と定義されています。Unreal Engineの公式ドキュメントも、表面のくぼみで起きるセルフシャドウのシミュレーションを助けるものと記載しています。

すべてのマップが常に必要というわけではありません。表現したい素材に応じて組み合わせを選びます。

PBRの2つのワークフローとソフトごとの呼び方

PBRにはメタリック/ラフネススペキュラー/グロスネスという2つのワークフローがあります。

Unityの公式マニュアルは、この2つをStandard Shaderのメタリック方式・スペキュラー方式として整理しています。メタリック方式では、素材がどれだけ金属的かを0(非金属)〜1(完全な金属)で指定し、反射の強さと色はエンジン側が算出したうえでベースカラーで色づけされます。メタリックが1の面には拡散反射がなく、ベースカラーが鏡面反射と環境反射の色になります。スペキュラー方式では、反射やハイライトの色味と強度をカラー値で直接指定し、スペキュラーカラーが黒なら反射なし、白なら完全な反射になります。

同マニュアルは、どちらのワークフローもどの素材にも使えること、メタリック方式は金属素材専用ではないことも明記しています。

ややこしいのは、同じものを指す言葉がソフトによって異なる点です。対応関係を整理します。

意味 主な呼称
素材の基本色 Base Color / Albedo / Diffuse
表面の粗さ Roughness / Smoothness(Unity・逆方向) / Glossiness(スペキュラー/グロスネス方式での呼称)
金属かどうか Metallic / Metalness / Base Metalness(OpenPBR)

呼称は異なりますが、指している性質は共通です。Unreal Engineの公式ドキュメントは粗い素材ほど反射光を多くの方向に散乱させると説明し、Adobeの公式ドキュメントもSpecular Roughnessを「微視的な表面の変化を定義することで、光がどれだけシャープに、あるいは拡散して反射するかを制御するもの」と説明しています。

ワークフローをまたぐ移行についても、公式の受け皿があります。Adobe Substance 3D Designerには、ベースカラー・メタリック・ラフネスの各マップを他のPBRモデル出力へ変換するコンバータノードが用意されており、変換先としてPBR Diffuse/Specular/Gloss、V-Ray(GGX)、Corona、Redshift 1.x、Arnold 4、RenderMan(PxrSurface)などが選べます。メタリック/ラフネスで制作した素材を、別方式のレンダラーへ持ち込む前提が公式に整えられているということです。

ここまでの内容を実際の制作で身につけたい方は、3DCGデザイナー専攻本科CG/VFX専攻のカリキュラムもあわせてご覧ください。

カラースペース(sRGBとリニア)の注意点

PBRを正しく機能させるうえで見落とされやすいのが、カラースペースの設定です。

Unityの公式マニュアルには、テクスチャはガンマ色空間で保存される傾向がある一方、シェーダーはリニア色空間を前提とすると記載されています。リニアワークフローで扱うことで、正確に描画された結果が得られるとされています。

実務上のポイントは、マップの種類によって扱いを分けることです。ベースカラーのように色として見せる情報はsRGBとして読み込み、ラフネス・メタリック・ノーマルのように数値として計算に使う情報はリニアとして扱います。ここを取り違えると、物理的な計算の前提が崩れ、いくらパラメータを調整しても質感が意図どおりになりません。

設定項目の名称や既定値はソフトによって異なるため、使用しているソフトの公式ドキュメントで確認してください。

関連ソフトウェアとOpenPBRという流れ

主要な3DCGソフトとゲームエンジンはいずれもPBRに対応しています。2026年8月時点の実装名を整理します。

  • Unreal Engine 5.8: Base Color / Metallic / Roughness / Specular という入力を持つ物理ベースマテリアル
  • Unity 6.5: Standard Shaderでメタリック方式とスペキュラー方式を選択でき、粗さの指標はSmoothness
  • Blender 5.0: 複数のレイヤーを1つのノードにまとめたPrincipled BSDF
  • Adobe Substance 3D Painter: OpenPBRを既定マテリアルとして採用しているテクスチャリングソフト

近年の大きな流れがOpenPBRです。Adobeの公式ドキュメントによると、OpenPBRはオープンな物理ベースのサーフェスシェーディングモデルで、異なる3Dツール・レンダラー・パイプラインの間でマテリアルの見えを記述するための統一モデルとして、AdobeとAutodeskがAcademy Software Foundation(ASWF)の支援のもとで策定したものです。設計原則としてエネルギー保存、直感的なパラメータ範囲、安定した光への応答が挙げられています。

採用も進んでいます。Adobeの公式FAQには、Substance 3D Painter、Maya 2025.3、3ds Max 2026 がいずれもOpenPBRを既定マテリアルとして使用していると記載されています。ただし既存のAdobe Standard Material(ASM)プロジェクトは自動変換されず、開いたときは現在のシェーダーを保持します。Blender 5.0のPrincipled BSDFも、OpenPBR Surfaceシェーディングモデルにもとづいており、Disney や Standard Surface といった他ソフトのPBRシェーダーと互換性のあるパラメータを提供すると公式マニュアルに明記されています。

つまり、ソフトごとにばらついていた呼称やふるまいが、共通のモデルへ収束しつつある段階です。いま学ぶなら、この共通モデルの用語で理解しておくと移行がしやすくなります。

レンダリング方式そのものの違いについては、リアルタイムレンダリングの仕組みプリレンダーとリアルタイムの違い、レンダラー製品についてはV-Rayレンダリングの特徴で解説しています。

PBRに関するよくある質問

Qラフネスは上げるとツルツルになりますか。

逆です。公式定義では0がシャープな反射(鏡のような映り込み)、1が拡散した反射(マットな見え方)です。誤った説明が流通しているため、公式ドキュメントで確認することをおすすめします。

Qメタリックは中間の値を使ってもよいですか。

Unreal Engineの公式ドキュメントは、純粋な素材では0か1のどちらかに設定すべきで中間値にすべきではないとしています。中間値は、金属の上に塗装が乗っているような複合的な表面をテクスチャで表現する場面で使われます。

Qメタリック/ラフネスとスペキュラー/グロスネスはどちらを使うべきですか。

Unityの公式マニュアルは、どちらのワークフローもどの素材にも使えるとしており、メタリック方式は金属素材専用ではないと明記しています。使用するソフトやパイプラインの前提に合わせて選び、移行先のレンダラーが別方式を前提としている場合は、公式のコンバータノードで変換できます。

QPBRとPBSは何が違いますか。

PBRはレンダリング全体の枠組み、PBSは表面の陰影計算に焦点を当てた言い方です。実務ではほぼ同じ意味で使われています。

Q無料でPBRマテリアルを試せますか。

BlenderのPrincipled BSDFなら、PBRのパラメータを一通り試せます。入手方法や利用条件は、使用するソフトの公式サイトで確認してください。

QOpenPBRに移行する必要はありますか。

使用しているソフトのバージョンと制作中のプロジェクトによります。既存のAdobe Standard Materialプロジェクトは自動変換されず、開いたときは現在のシェーダーを保持する仕様です。新規に学ぶ場合はOpenPBRの用語で覚えておくと、ソフト間の移行がしやすくなります。

まとめ

  • PBRとは、現実の光のふるまいを物理法則にもとづいて再現し、素材の質感を表現する手法です
  • 支えているのはエネルギー保存則・マイクロファセット・フレネル反射の3つの原則です
  • ラフネスは0がシャープな反射、1が拡散した反射です。メタリックは金属か非金属かの切り替えで、原則0か1で使います
  • テクスチャマップは、ベースカラー・メタリック・ラフネスに加え、ノーマル・ハイト・アンビエントオクルージョンを組み合わせて使います
  • ワークフローはメタリック/ラフネスとスペキュラー/グロスネスの2つがあり、公式ドキュメントではどちらの方式もどの素材にも使えるとされています
  • 色として見せるマップと数値として使うマップで、カラースペースの扱いを分ける必要があります

まずは自分が使っているソフトの公式ドキュメントを開き、パラメータ名がこの記事のどれに対応するかを確認してみてください。

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著者:デジタルハリウッド スクール 編集部