
公開日:2025-07-13
今回の記事では、「レンダリング」の意味や種類を解説します。
「レンダリング」という言葉は、3DCGの制作現場において聞くことが多いですが、実はデザインや映像など様々な分野で使用されています。
レンダリングの基本的な概念やどのような種類があるのか、レンダリングの事例などわかりやすく紹介します。
【目次】
レンダリングとは
レンダリング(rendering)とは、とあるデータを処理もしくは演算することで画像や映像・テキストなどを表示させることです。 とりわけ動画制作では、さまざまな形式のデータに処理を加えることにより、映像や画像、音声などを生成する作業を指します。
音楽におけるレンダリングとは?
音楽においてもレンダリングは必要な工程の一つです。DTMとは、「Desktop Music(デスクトップミュージック)」を指す言葉ですが、DTMでは、音楽を書き出す際にレンダリングが使われます。DTMでは、PCやソフトウェアで「ピアノ」「ギター」「ドラム」「ベース」「SE(効果音)」など複数のデータを使用します。DTMは、MIDIと呼ばれるコンピュータが認識できる音楽データを用いることが多く、MIDIを人間が聞けるような状態に変換を行う際にレンダリングが行われています。この作業を専門用語で「バウンス」「ミックス」と呼ぶこともあります。
Webページにおけるレンダリングとは?
普段、私たちの目にしているWebページはレンダリングが行われた状態で目にしています。
Webサイトは、HTMLやCSSなどのような様々な言語で構成されていますが、このままの状態では、プログラミング言語の文字の羅列になってしまいます。レンダリングが行われることによってプログラミング言語が変換され、私たちが普段目にするWebサイトの表示になります。
動画や3DCGコンテンツで使われるレンダリングとは?
動画制作においてのレンダリングは、映像に使用した素材やエフェクト、テロップ、音声、BGMといった複数のデータを1つの動画ファイルとして処理します。レンダリング前の複数のデータは非常にデータ量が重く、レンダリングを行うことでデータを圧縮し再生可能な状態にします。レンダリングを行うことで視聴者は複数のデータを1つの動画として視聴することができるようになります。
【もっとわかりやすく】レンダリングの具体例
それでは、もう少し分かりやすくWebサイトにおけるレンダリングの具体的な仕組みを見ていきましょう。
Webサイトにおけるレンダリング
Webサイトを閲覧する際には、ブラウザの裏側で「HTMLレンダリングエンジン」というものが動いており、HTMLやCSSのようなプログラミング言語を文字や画像に変換しています。HTMLレンダリングエンジンは、ブラウザごとに作られており、ブラウザの数だけレンダリングエンジンが存在します。
代表的なものをいくつかご紹介します。
Blink | Google Chrome、Microsoft Edge、Opera など |
Webkit | Safari(Apple製) |
Gecko | Firefox |
※かつては「Trident(Internet Explorer)」「EdgeHTML(旧Edge)」といった独自エンジンも存在していましたが、現在はほとんど使用されていません。
それでは、大まかにWebサイトにおけるレンダリングの仕組みを見ていきましょう。
Webサイトを見るときには、まずWebブラウザがWebサイトのファイルが置いてあるWebサーバに対して、このページを開いてくださいと指示します。その指示に対し、Webサーバからブラウザにこのページですと返答があります。
例えば、デジタルハリウッド専門スクールのページのソースコードはどのように作られているか見てみましょう。閲覧中のWebページのソースコードは、ウェブブラウザーの閲覧画面で Ctrl+Uを押してみましょう。別タブにてソースコードが表示されます。デジタルハリウッド専門スクールのWebサイトも様々なプログラミング言語で表現されているのが分かるかと思います。
しかし、実際にWebブラウザでユーザーが開く際には、このように見た目が整えられて表示されます。この動きがレンダリングと呼ばれるものです。
3DCGにおける3Dレンダリングの種類
3DCGにおける3Dレンダリングには、レイトレーシング、トゥーンレンダリング、ラジオシティなどいくつか種類があります。ここでは様々なレンダリングの例を紹介します。
プリレンダリングとは
プリレンダリングとは、事前にレンダリングされているCGのことです。
プリレンダリング(pre-rendering)は、プリレンダーと略称で呼ばれたり、オフラインレンダリングと呼ばれたりすることもあります。一般的には、プリレンダリングしたものをレンダリング映像(画像)と言い、リアルタイムレンダリングと区別をする際に使用する場合が多いです。
リアルタイムのCG映像以外は、すべてプリレンダリングにあたります。プリレンダラーの例では、ゲームのオープニングや、アニメ、映画などの映像作品があげられます。
参考:プリレンダーとは
リアルタイムレンダリングとは
一方で、リアルタイムレンダリング(Real-time Rendering)とは、画面に表示する瞬間にその場でCGを計算・描画する方法です。
ゲームプレイ中やVR、インタラクティブコンテンツなどで使われており、処理速度の速さが求められます。
リアルタイムレンダリングはプリレンダリングと比べて一度に行える計算処理が限られますが、近年ではUnreal Engine 5のLumenやNVIDIA RTXシリーズなどの登場により、リアルタイムでも驚くほどリアルな表現が可能になっています。
補足:CG映像は、アニメの場合1秒で24コマ、映画では60コマ以上になることも。高品質なプリレンダリング映像を作成するには、1分間の映像で数千〜数万枚の画像を生成する必要があり、長時間の処理が必要です。
さまざまなレンダリングの例
レイトレーシング(Ray Tracing)
レイトレーシングは、最もリアルな描写を可能にするレンダリング手法のひとつです。
「Ray=光線」の名の通り、カメラから発せられた光の軌道を追跡(トレース)し、物体に反射・屈折・影を計算して描画します。実写と見分けがつかないほどリアルな質感を出すことが可能で、SF映画やVFX制作で多く活用されています。
トゥーンレンダリング(Toon Rendering)
イラスト風やアニメ風といった、デフォルメされた表現にするレンダリング法です。立体的な影ではなく、単純化した影(シェーディング)をつけて2Dにように見せることから「トゥーンシェイド」とも呼ばれ、他にも「シェルシェーディング(Cel shading)」や「トゥーンシェーディング(Toon shading)」という呼び方もあります。2Dのような表現となりますが、ポリゴン数などは変わらず容量は同等かさらに多くなります。
ラジオシティ(Radiosity)
形状の面のエネルギーの前処理計算を行い、レンダリングをする方法です。レイトレーシングよりもさらにリアルな表現が行うことができます。ラジオシティ法には、同じ位置に面を重ねないようにすることや、コーティクスが表現できないなど、いくつかの制約があります。また、方程式が複雑であるという点もありレイトレーシングよりも時間がかかります。
スキャンライン(Scanline)
シェーディングが美しく、アニメーションの制作現場で現在も使われています。スキャンラインはディスプレイの走査線という意味で、カメラ基準で水平にスライスを行い、サーフェイスを求めるレンダリング法です。レイトレーシングとは違いレイの計算を行いません。そのため、レイトレーシングよりも早くレンダリングができますが、複雑な要素の多いシーンでは時間がかかります。
Zバッファ(Z-buffer)
アルゴリズムが他のレンダリングに比べて単純であり高速化しやすいですが、バッファ確保のためのメモリ領域は大きくなり、透過処理を苦手としています。隠れている部分は省略を行い、奥行きを比較して手前の要素だけ表します。隠面消去という手法のひとつです。
パストレーシング(Path Tracing)
パストレーシングは、レイトレーシングをさらに進化させたレンダリング手法で、現実の光のふるまいをより正確にシミュレーションできるのが特徴です。
光がカメラから飛んでいき、物体に当たり、反射や透過を繰り返していく経路(パス)をランダムに多数計算し、それを平均化することで、リアルな光と影を描画します。
この手法は計算量が非常に多く、かつてはアニメや映画のプリレンダリングでしか使われませんでしたが、近年ではNVIDIA RTXシリーズやUnreal Engine 5といった最新技術によって、リアルタイムでのパストレーシングも実現されつつあります。
ニューラルレンダリング(Neural Rendering)
ニューラルレンダリングは、AI(人工知能)を使って画像や映像の処理を行う、次世代のレンダリング技術です。
従来の物理計算ベースのレンダリングとは異なり、機械学習モデルが補完・予測・変換を行うことで、高速かつ高画質な表示を実現します。
たとえば、低解像度の映像を高解像度にアップスケーリングしたり、フレームの間をAIが補完して滑らかな動きにしたりすることが可能です。
有名な技術に、NVIDIAの「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」や、Metaの「NeRF(Neural Radiance Fields)」などがあります。
リアルタイムグローバルイルミネーション(Real-time Global Illumination / GI)
グローバルイルミネーション(Global Illumination)とは、光が物体や壁に反射して広がる「間接光」の表現を含む、より現実的なライティング手法です。
これまではプリレンダリングでしか実現できなかった表現ですが、近年ではリアルタイムでもグローバルイルミネーションを実行できる技術が登場しています。
代表的な例は、Unreal Engine 5に搭載された「Lumen」。この技術により、リアルタイムでも光の反射・拡散・色移りなどを自動的に計算し、自然で美しいライティングが可能になります。
Adobe Premiere Proを使用した動画のレンダリング手順
動画編集でAdobe Premiere Proを使用する方も多いかと思います。Adobe Premiere Proでは、編集時と書き出し時のレンダリングの作業を行うことが可能です。Premiere Proは2024年以降、GPUアクセラレーションやProRes対応などの強化も進み、処理時間の短縮や高画質出力がより快適になっています。
それぞれのレンダリング方法を簡単に紹介します。
編集を行う際のレンダリング
Adobe Premiere Proで編集作業をしている際には、基本的に自動でレンダリング処理が行われ、編集内容がプレビューに反映されるようになっています。これが「編集時のレンダリング」と呼ばれる処理です。
ただし、複雑なエフェクトや高解像度の映像を扱う場合、自動レンダリングが追いつかず、プレビュー画面がカクついたり再生がスムーズでなくなることがあります。
そのような場合は、手動でレンダリングを実行すると効果的です。
以下の手順で操作できます:
上部メニューから「シーケンス」→「インからアウトをレンダリング」を選択し、再生したい範囲にインジケーターで「イン点」と「アウト点」を設定して実行します。
これにより、指定した範囲があらかじめレンダリングされ、スムーズなプレビュー再生が可能になります。
書き出しを行う際のレンダリング
書き出しとは、編集したデータをYouTubeやSNSにアップロードできるように動画ファイルやオーディオファイルなどのファイルに変換し保存をすることです。
動画の書き出しの際にレンダリングを行うことで動画の質を上げることが可能です。
レンダリング方法は、「書き出し設定パネル」を開き「最高レンダリング品質を使用」を選択します。
動画をレンダリングするときの注意点
動画制作においてレンダリングは欠かせない作業の一つです。動画をレンダリングする際の注意点を今回は2点ご紹介します。
動画を高品質にする際は、レンダリングに時間がかかる場合が多くなる
映像に様々なデータが組み合わさって制作された動画の場合、レンダリング作業に数時間かかる場合があります。レンダリングの時間は、データ量に比例して長くかかります。どこまでの仕上がりを求めるのか、いつまでに完成させなければならないのかを考えた上でレンダリング作業の時間を加味し作業を行う必要があります。
PCスペックによってレンダリングの速度が変わる
お伝えしてきた通り、レンダリング作業は大量のデータを処理しています。レンダリングにかかる時間はデータ量に比例するとご紹介しましたが、PCのスペックも処理スピードに影響します。PCのスペックによってデータ量の処理スピードも変わってきます。動画編集をメインにPCを使用する場合は、高性能なPCを使うのがおすすめです。
画像や動画編集のスキルを身に付けるならデジタルハリウッド専門スクール
画像や動画編集のスキルを身につけ、動画業界に就職したい、転職したい、もしくは副業にしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
画像や動画編集スキルは、独学や大学、専門学校など様々な学び方がありますが、短期間で仕事をしながら、大学に通いながらスキルを身につけたいとお考えの場合、デジタルハリウッド専門スクールがおすすめです。
デジタルハリウッド専門スクールでは、画像や動画編集スキルが身につけられるコースを複数用意しています。
ネット動画クリエイター専攻 最短4ヶ月でスキル取得が可能です。
また、CGが学べるコースも複数用意しています。
どのようなスキルを身につけたいかによって、おすすめのプランが変わってきます。まずは、無料の学校説明会にご参加いただくのがおすすめです。
まとめ
今回は、レンダリングとはどのような意味なのかといった概要から種類を紹介しました。レンダリングは、人間が認識できる状態の見た目に変換する作業なため動画制作やWebサイト制作においては欠かすことのできない作業です。仕組みや種類を理解し、今後の制作に活かしていただければと思います。
画像編集や動画編集の学びをこれからお考えの方は、未経験から短期間で学ぶことのできるデジタルハリウッド専門スクールもぜひご検討ください。