公開日:2026-09-01
CG・映像の仕事に応募しようとしたとき、履歴書や職務経歴書と一緒に求められるのがデモリールです。デモリールとは、自分が制作した映像作品やアニメーションを短くまとめ、ダイジェスト風に編集した映像のことを指します。ただ、いざ作ろうとすると「何分にすればいいのか」「どの順番で並べるのか」で手が止まります。この記事では、ポートフォリオとの違いから作り方の手順、構成の考え方、書き出し設定と共有方法までを整理します。あわせて、流通している通説のうち何に根拠があり、何に根拠が確認できないのかもはっきり書きます。
デモリールとは
デモリールとは、自分が制作した映像作品やアニメーションを短くまとめ、ダイジェスト風に編集した映像のことです。CG・映像の分野では、履歴書や職務経歴書とあわせて提出を求められることがあります。
目的はシンプルで、短時間で「何ができる人か」を伝えることです。作品を1本ずつ最初から見てもらうのは現実的ではないため、見どころを抜き出してつないだ形にします。
提出や共有の方法も変わってきました。かつてはDVDなどの物理メディアで渡す形が想定されていましたが、現在はオンラインでの公開・共有が中心です。実際、デジタルハリウッドの卒業制作として紹介されている17作品は、すべてVimeoまたはYouTubeで公開されています。CG用語辞典にも「最近は、一連のデータをインターネット上で公開するケースも増えている」と記載されています。
もうひとつ押さえておきたいのが、見せ方の前提です。デモリールはもともと、見どころを短くまとめて伝えるための形式です。1本ずつ最初からじっくり見てもらう前提で作ると、形式の利点が生きません。「限られた時間で何を伝えるか」を決めることが、デモリール制作の実質的な出発点になります。
なお、デモリールは一度作って終わりのものではありません。作品が増えたり、志望する職種が変わったりすれば作り直します。最初から完成度を求めすぎず、いまの手持ちでまとめてみることをおすすめします。
3DCGという技術そのものについては3DCGとは何かと制作工程で解説しています。
デモリールとポートフォリオの違い
デモリールは動画としてまとめたもの、ポートフォリオは静止画作品をまとめたものです。
CG用語辞典では、デモリールを「映像作品やアニメーションを編集したデータ」と定義し、ポートフォリオを「3DCG、イラスト、スケッチ、デッサンなどの静止画作品をファイリング、あるいは製本した作品集」と区別しています。
| 項目 | デモリール | ポートフォリオ |
|---|---|---|
| 形式 | 動画 | 静止画をまとめた作品集 |
| 使われやすい場面 | 動きや時間の流れを見せたいとき | 1枚ずつじっくり見てもらいたいとき |
| 伝えられること | 動きやタイミング、映像としての完成度 | 造形の精度、質感、線や色の扱い |
| 提出方法 | オンライン共有が中心 | ファイル・冊子・Webページ |
この表は目安であり、職種との対応が固定されているわけではありません。造形を中心とする職種でも、リール形式でまとめた作品が公開されています(後述の卒業制作の実例を参照)。
また、どちらか一方だけでよいというものでもありません。応募先によって求められるものが異なるため、募集要項を確認してください。両方を求められることも、片方だけのこともあります。
職種ごとの仕事内容は3DCGデザイナーの仕事内容となり方で解説しています。
デモリールの作り方|5つのステップ
応募先を決める→作品を選ぶ→担当箇所を整理する→編集する→書き出して公開する、という順で進めます。
①応募先と職種を決める
ここが最初です。何を見せるべきかは、目指す職種によって変わります。モデラーとアニメーターでは、同じ作品でも見せるべき部分が違います。応募先が決まっていない段階なら、いちばん時間をかけたい工程を仮に決めてから作り始めると、判断が進みます。
②収録する作品を選ぶ
数を揃えることより、見せたい能力が伝わるかどうかで選びます。 志望職種と関係の薄い作品を並べると、かえって何が得意なのかが伝わりにくくなります。
③各カットで担当した工程を整理する
共同制作の作品を入れる場合は特に重要です。どこまでが自分の担当なのかを整理しておきます。「モデリングは自分、リグとアニメーションは別の人」といった切り分けを、カットごとに書き出しておくと編集がスムーズになります。あわせて、そのカットで何を狙って、どう判断したかもメモしておいてください。制作から時間が経つと、後から思い出すのは難しいためです。
④編集する
映像編集ソフトでつなぎ、テロップを入れます。費用をかけずに始めることもできます。Blackmagic DesignのDaVinci Resolveには無償版があり、60fpsまでのほぼすべての8-bitフォーマット、Ultra HD 3840×2160までの解像度に対応しています。無償版でも編集、カラー、VFX、モーショングラフィックス、オーディオポストプロダクションが利用できます。上位版のDaVinci Resolve Studio(51,980円・2026年8月時点の公式表記)は、120fpsまでの10-bitビデオや4Kを超える解像度に対応します。
⑤書き出して公開する
設定と共有方法は後述します。書き出したファイルは、送る前に自分以外の環境で一度再生してみると安心です。再生できない、音が出ない、色が違うといった問題は、手元の環境だけでは気づきにくいためです。
なお、応募先の募集要項に提出物の指定がある場合は、それを最優先してください。 尺やファイル形式の要件は応募先ごとに異なります。制作の基礎から学びたい場合はCGを独学で学ぶ方法も参考になります。
構成の考え方|並び順・担当箇所・連絡先
構成で押さえる点は、作品の並び順・担当した工程の明示・連絡先の3つです。いずれもよく挙げられる論点なので、順に整理します。
作品の並び順
冒頭に最も見せたい作品を置くという考え方が広く共有されています。具体的には「①最も品質の高い作品→②最近の作品→③過去の作品」という並べ方が一般的とされます。
ただし正直に書いておくと、この①〜③という3段階の順序に業界共通の規格があるわけではありません。公式の基準として示せる出典は確認できませんでした。一方で、冒頭を重視する考え方自体はCG用語辞典のデモリール項目にも「見て欲しいものほど前の方に収録し」と記載されています。
この考え方には理屈もあります。デモリールは短くまとめて見てもらう形式である以上、最初に何が映るかの比重が大きくなるためです。そのうえで、②③の並べ方は自分の判断で決めて構いません。
担当した工程を明示する
共同制作の作品では、自分が担当した工程をテロップなどで示します。何をどこまでやったのかが分からないと、見た側は判断のしようがないためです。
「モデリング担当」「アニメーションのみ担当」といった表記に加えて、使用したソフト名を添える運用も一般的です。
連絡先を入れる
末尾に氏名と連絡先を入れておくと、見た側が連絡を取りやすくなります。メールアドレスを記載する運用が一般的で、電話番号を入れるかどうかは任意です。
これら3点はいずれも、業界の慣習として共有されているものです。公式に定められた規格ではないことを踏まえたうえで、応募先の指定があればそちらを優先してください。
尺と作品数の考え方
結論から言うと、規格として定められた尺はありません。ただし、出典をたどれる目安は1つあります。
CG用語辞典のデモリール項目には、「質の高いショットだけを選りすぐり、見て欲しいものほど前の方に収録し、1分程度の尺に収めるのが理想的とされている」と記載されています。出典を示せる目安としては、現状これがほぼ唯一のものです。
一方、ネット上では「5分が目安」「2分程度に抑えるべき」「学生なら1分〜1分30秒、プロなら長くても2分30秒」といった数字も流通しています。ただしこれらは互いに矛盾しており、根拠となる調査や公式の基準は確認できませんでした。上記の1分程度という目安も、業界で共有されている考え方であって、応募先が守るべき規格として定めているものではありません。
実務的な整理としては次のようになります。
- 応募先の指定を最優先する — 募集要項に尺の指定があれば、それに従います
- 指定がない場合は、まず1分程度を出発点に考える — CG用語辞典が示す目安です。そのうえで、見せたい能力が伝わるかを基準に調整します
- 「何分以内でなければならない」という絶対の基準はない — 尺そのものより、限られた時間で何を見せるかの選択のほうが結果を左右します
「最初の◯秒が勝負」という具体的な秒数についても、根拠となる調査や出典は確認できませんでした。ただし冒頭に最も見せたい作品を置くという考え方自体は、前述のCG用語辞典にも「見て欲しいものほど前の方に収録し」と記載があり、裏づけのある方針です。
作品数についても決まりはありません。少ない本数でも、担当した工程と判断が明確に伝われば材料になります。
職種別に見せるべきもの
目指す職種によって、見せるべき内容が変わります。
- モデラー — 完成画だけでなく、ワイヤーフレームやテクスチャの構成が分かる見せ方が挙げられます。形の精度と、データとしての作りの両方が伝わりやすくなるためです
- アニメーター — 動きが分かる映像が中心になります。質感やライティングが未完成のプレビュー段階のものでも、動きの質は伝わります
- エフェクトアーティスト — シミュレーションの過程や、パラメータを変えたときの違いが分かる見せ方が挙げられます
- コンポジター — 素材の内訳(レイヤー構成)と、合成前後の比較が分かる形にします
共通しているのは、完成形だけを並べても担当範囲が伝わらないという点です。工程の途中が見える構成にすると、何をした人なのかが伝わります。
逆に、つまずきやすいのが盛り込みすぎです。得意なことを全部見せようとすると、どの工程の人なのかがぼやけます。志望する職種が決まっているなら、そこに関係する内容を中心に据えて、それ以外は思い切って外すほうが伝わります。
また、他人の素材やチュートリアルの成果物をそのまま入れる場合は、自分の担当範囲を必ず明記してください。どこまでが自分の仕事かが曖昧なままだと、作品全体の信頼性に関わります。
職種ごとの詳しい仕事内容はクリエイターのお仕事図鑑で職種を見るや、VFX領域を目指す場合はVFXを独学で学ぶ方法も参考になります。
書き出し設定と共有の方法
公開先のプラットフォームが推奨する設定に合わせるのが基本です。 ここは公式情報で確認できる領域です。
YouTubeの公式ヘルプに記載されている推奨エンコード設定を整理します。
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| コンテナ形式 | MP4(moov atom を含める=ファストスタート) |
| 動画コーデック | H.264(プログレッシブスキャン/ハイプロファイル/クローズドGOP/CABAC有効) |
| フレームレート | 24・25・30・48・50・60fps(他のレートもサポート) |
| 動画ビットレート(SDR・標準フレームレート) | 1080p 8Mbps/720p 5Mbps/2160p(4K)35〜45Mbps |
| 音声 | AAC-LC 等、サンプルレート48kHz、ステレオ384kbps |
| 色空間(SDR) | BT.709 |
※ 2026年8月時点のYouTube公式ヘルプの記載にもとづきます。
共有の方法
応募先にリンクで送る場合、YouTubeの公開範囲の設定を理解しておくと選びやすくなります。
公式ヘルプによると、限定公開(Unlisted)は「リンクを知っているユーザーのみが表示し、共有できます」とされ、Googleアカウントを持っていないユーザーでも視聴できます。一方非公開(Private)は自分と指定したユーザーだけが視聴でき、チャンネルの動画タブや検索結果にも表示されません。
つまり、相手にアカウント登録を求めずにリンクだけで見てもらえるのが限定公開です。応募先に送る用途で限定公開が使われるのは、この仕様によるものです。
前述のとおり、デジタルハリウッドの卒業制作17作品もすべてVimeoまたはYouTubeで公開されています。オンラインでの共有が現在の実態だと言えます。
卒業制作デモリールの実例
実際にどの程度の作品がまとめられているのかは、公開されている卒業制作を見るのが早い方法です。デジタルハリウッドの卒業制作のうち、職種特化型のリール形式の作品を3件紹介します。
『Character Modeling Reel』佐藤かな恵さん
実在の人物をモデリングした作品です。使用ソフトはMaya、ZBrush、Photoshop、After Effects。モデラー志望の方が、造形の精度をどう見せるかの参考になります。
『The Alternative』三宮龍之介さん
Houdiniを用いたVFXデモリールです。火の表現と、海面と水飛沫のエフェクト、Vueを使った背景で構成されています。
『Houdini FX demo reel』永坂友明さん
エフェクトのデモリールです。煙や炎、キャラクターの毛を中心に、物語が彩られるよう意識して構成されています。
ここで紹介した3作品は、いずれも本科CG/VFX専攻の卒業制作のページに掲載されています。あわせて3DCGデザイナー専攻の卒業制作も公開されています。ストーリー型の作品も多く公開されているので、リール形式との違いもあわせて見てみてください。
作った作品を人に見てもらう機会については就職・転職サポートにまとめています。
デモリールに関するよくある質問
Qデモリールは何分くらいにすべきですか。
規格として定められた尺はありません。出典をたどれる目安としては、CG用語辞典に「1分程度の尺に収めるのが理想的とされている」という記載があります。「5分」「2分程度」など他の数字も流通していますが、互いに矛盾しており根拠は確認できませんでした。応募先に指定があればそれを最優先してください。
Qポートフォリオとどう違いますか。
デモリールは動画、ポートフォリオは静止画作品をまとめたものです。CG用語辞典でもこの区別が示されています。どちらを求められるかは応募先によって異なります。
QBGMは付けるべきですか。
根拠のある基準は確認できませんでした。必要とする意見も不要とする意見もあり、いずれも出典が示されていません。応募先の指定を確認したうえで、音がなくても成立する編集にしておくと対応しやすくなります。
Qどうやって提出しますか。
オンラインでの共有が中心です。YouTubeの限定公開はGoogleアカウントがなくても視聴できるため、リンクで送る用途に使われます。
Q書き出し設定は何にすればよいですか。
公開先の公式推奨に合わせます。YouTubeの場合、MP4/H.264で、1080pなら8Mbpsが推奨されています。
Q作品が少なくても作れますか。
作れます。本数より、担当した工程と、そこで何を判断したかが伝わることが重要です。少ない本数でも、工程の途中が分かる構成にすれば材料になります。
まとめ
- デモリールとは、自分が制作した映像作品を短くまとめ、ダイジェスト風に編集した映像のことです
- ポートフォリオは静止画作品をまとめたもので、動画であるデモリールとは区別されます
- 作り方は「応募先を決める→作品を選ぶ→担当箇所を整理する→編集する→書き出して公開する」の5ステップです
- 並び順・担当箇所の明示・連絡先の記載は業界の慣習として共有されていますが、公式に定められた規格ではありません
- 尺に規格はありませんが、CG用語辞典は「1分程度の尺に収めるのが理想的とされている」としています。応募先の指定があればそれを最優先してください
- 書き出し設定は公開先の公式推奨に合わせます。YouTubeならMP4/H.264が推奨されています
まずは手持ちの作品から1本、担当した工程を明示して短くまとめてみてください。作ってみると、足りない工程がはっきりします。
作品を見てもらう機会を持ちたい方へ
デモリールは、作ったあとに人に見てもらってはじめて改善点が見えてきます。デジタルハリウッドには、企業の採用担当者に作品をプレゼンする「クリエイターズオーディション」や、キャリアセンターでのポートフォリオ指導があります。卒業制作として何をどこまで作るのかは、公開されている作品から確認できます。まずは無料のスクール説明会で相談してみてください。
説明会無料・オンライン参加可・個別相談OK
デジタルハリウッド スクール 編集部
デジタルハリウッドの専門スクール編集部です。CG・VFX・Webデザインなどクリエイティブ領域の情報を、公式の一次情報にもとづいて発信しています。