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【東京本校/イベントレポート】
『亜人 -衝動-』CGメイキングセミナーレポート

2016-01-20

【プロフィール】秋山 知広 氏 1979年生まれ。デジタルハリウッド卒業後、ポリゴン・ピクチュアズ所属。 2006年よりFXグループリーダーとしてチームを束ねながら、 エフェクトスーパーバイザーとして多くの映画、 TV、 ゲーム映像などの案件に関わる。 代表作は「ストリートファイターIV」「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0」「Tron: Uprising」など。 最新作の 劇場アニメ3部作 第1部『亜人 –衝動-』では、 形状が常に変化し続ける特殊なキャラクター<IBM>のアセット開発と、 Houdiniパイプライン開発を担当した。

こんにちは。
デジタルハリウッド東京本校の下島です。


2015年12月18日(金)に本校駿河台ホールにて、今冬公開された3DCG映画『亜人 -衝動-』のCGメイキングセミナーが開催されました。

本学卒業生でもあり、現在は 株式会社ポリゴン・ピクチュアズ でFXスーパーバイザーとしてご活躍中の秋山知広さんがご登壇され、CG技術がどのように作中で使われていたのかをたっぷり語っていただきました。

本作は、原作がコミック(原題:「亜人」)ですので、これをデジタルアニメーション化するにあたりどのような苦労や工夫があったのかを、3DCGの Houdini ※1というソフトを実際に使い、制作時のデータなども見せていただきながらの「チョット奥深いCG話」をしていただきました。

初心者の方にとっては、難しい用語がありましたが、本ブログではIBMというキャラクター制作のお話をメインにできるだけわかりやすくセミナー概要をまとめましたのでご一読ください。

※1 Houdiniについてはこちら

IBMの作り方

映画をご覧になった方や原作を読んだ方ならわかるかもしれませんが、本作にはIBMというモンスターが登場します。このキャラクターは黒い幽霊と呼ばれていて、はっきりとした形状を持っていません。ほぼ、人型ですが体中にまとわりついている黒い浮遊物があったり、包帯のような布に覆われているような感じでもあったり、それでいて身体の中身はあるような、ないような、、という一言では言い表せないキャラクターがIBMです。

これを表現するために、プロシージャルという3DCG技法で制作できないか?というのが、最初の課題でした。プロシージャルとは計算による物体や画像の生成技術のことです(代表的な例は、Photoshopにおける雲模様の効果)。

つまり、一度、計算手法を決めてしまえば、あとはその複製や編集などで人間には作れないランダムっぽさのある形状(=計算による形状)が作成できるのです。今回のIBMの制作では、まさにこのプロシージャルによるキャラクター制作手法が映画の肝だったのでは?と感じました。

Houdiniを使ってのCG作成方法とは

3DCGで、円柱を作成します。これを工事現場で使う穴あけ用のドリルの刃のような形状にします。

さらに、ドリル形状全体に対して先を細くしたり、根元を太くしたり、ドリルの刃を細くしたり、太くしたり、、、という形状の操作を行います。これを複製し、さらに太くしたり、細くしたり、、を繰り返して変な形の棒状の物体を作成します。これを組み合わせて、両腕両足、胴体、首などの各部位に対しても行うことでIBMを制作したそうです。

ポイントは、Houdiniというソフトが★手続型の操作を長所としている点です。

他の3DCGソフト(MayaやMax)で作る場合は非常に難しかったのでは?と感じました。

★手続型;何かを作る際の手順を履歴として保持している状態で、その途中段階を編集すれば最終形状にもその効果を反映できること。例えば、「球体を潰して、平らな円形にして横に引っ張って2つに折る」という物体があった場合、最終結果を確認後に最初の球体の潰し加減を編集すれば、最後の形状にもちゃんと影響を及ぼすということです。

<制作のパイプライン>
ポリゴンピクチュアズさんでは、通常、物体を作成するモデラーという仕事、アニメーターという動きだけに専念する仕事、リグというキャラクターを動かすための設定だけをする仕事、合成だけを行うコンポジター、エフェクト(特殊効果)だけを行う仕事、、といった感じで分業制になっています。しかし、IBMに関しては全てを秋山さんのエフェクトチームがモデリングから設定までを行うという特殊な作業工程でした。これは、Houdiniで制作が決まったので他の部署が手伝えなかったからだそうですが、、、本セミナーを聞いていると、秋山さんの技術力があって初めて成せる仕事だったんだなと感じました。

さいごに

Houdiniは難しいソフトですが、一度設定を施せば様々なことができるソフトです。

MayaやMaxだけしか知らない方も、このソフトの難しさの一端を垣間見た一方で、その魅力も感じたのではないでしょうか?

比較的大きな会社から、小さな会社まで、「実はエフェクトではHoudiniを使っています」という会社さんも増えています。是非、これを機会に勉強してみてはいかがでしょうか?


また、本作品は全三部作として、来年には第2部と第3部が公開予定です。
さらに、テレビアニメ化も決定しております。

今後もIBMの容姿を見る機会が多くなると思います。

是非、今回のセミナーを通じて亜人を見るたびに、今回のセミナーを見た方は思い出していただきたいですし、今回のセミナーを見ていない方はIBMは複雑な最新技術を使った3DCGによる表現なんだなぁと感じてもらえればと思います。

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