デジタルハリウッド東京本校 ブログ

ゼミ講師就任記念イベント
CGアーティストとして活躍するために大切なこと

2021-09-19

デジタルハリウッド伝統の「本科CG/VFX専攻」をアップデートし、2021年4月より開講しております。今回ゼミ講師に就任いたしました2名の海外クリエイターによるセミナーイベントを開催しました。

参加者も”やる気が出てきました!” ”参考になりました”と大変好評だったセミナーの様子をご紹介します。

登壇者紹介

モデリングゼミ

担当講師:井崎 崇光(いざき たかてる)


大阪府出身。2012年にバンクーバーのVFX専門学校を卒業後、モデラー、テクスチャーアーティストとしてキャリアをスタートさせ、

その後はジェネラリストやライティングアーティストとしてImage Engine、Method Studios、MPCなど様々なVFXスタジオを経て、

映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』や『名探偵ピカチュウ』など数多くの作品を手掛けている。最新作には映画『キャッツ』、『ソニック・ザ・ムービー』などがある。現在はルックデヴおよびライティングアーティストとして現職。

井崎講師のキャリア紹介

井崎さんがCGクリエイターになったのは“ものを作ることが好き”という気持ちから始まったそうです。CGクリエイターとして働くためになんとCGプロダクション120社くらい応募されたとか。その後、最初に2~3年ほどモデリングをやった後、質感設定、光の調整などの仕事をするようになったという井崎さん。
本来あまり職種を変えるということは少ないそうなのですが、『名探偵ピカチュウ』ではピカチュウの質感設定を担当、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ではモデラーとして参加するなど、様々なキャリアを積み、ジェネラリストとして活躍されています。
今回、モデリングを中心としたゼミの講師として指導いただきます。

アニメーションゼミ

担当講師:若杉遼(わかすぎ りょう)

Sony Pictures Imageworks

アニメーター/レイアウトプレビズ アーティスト


2012年にサンフランシスコの美術大学Academy of Art Universityを卒業後、 Pixar Animation StudiosにてCGアニメーターとしてキャリアをスタート。 2015年よりサンフランシスコからカナダのバンクーバーに移り、現在はSony Pictures Imageworksに所属。 映画スタジオでアニメーターとして仕事する傍ら、3DCGアニメーションに特化したオンラインスクール 「AnimationAid」の創設者として、運営の他、講師として教えている。 これまで参加した作品は『アングリーバード』(2016)、『コウノトリ大作戦』(201\) 『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017)『スモールフット』(2018)『スパイダーバース』(2019)などがある。 『スパイダーバース』は2019年アカデミー賞長編アニメーション部門受賞。

若杉講師のキャリア紹介

若杉さんは日本の大学卒業後、サンフランシスコの美術大学に留学し、大学院のコースで2年間CGのアニメーションを勉強されました。そしてその後Pixerのインターンシップに応募。
今でこそ活躍されている若杉さんですが、始めはこのインターンも落ちるのがいやでインターン応募を辞めようと思ったと伺い驚きました。ご両親に相談し、応募した結果憧れのPixerのインターンに受かったとのことで、一歩踏み出す勇気が大切なのが伝わりますね!
その後、就労ビザを求め、カナダにあるSonyPicturesが求人を出しているのを見つけ、応募したところオファーを受け、サンフランシスコからバンクーバーへ引っ越したそうです。
当時から面接がオンラインだったそうですが、コロナ禍で面接のオンライン化が加速しているという、日本から海外に挑戦したい人にも嬉しい情報も添えて話してくださいました。

今回、アニメーションゼミをご担当いただきます。

携わった作品についてエピソードを伺いました

若杉講師:最近は、ネットフリックスの『ミッチェル家とマシンの反乱』のCGアニメーションを担当しました。

司会:何人くらいのアニメーターが参加しているんですか?

若杉講師:Sony Pictures Imageworksは他のスタジオより多いです。150人ほどいます。5年ほど前は70人程度だったのですが、最近増えまして、短い期間でクオリティ高く作ることが出来るようになりました。
『スパイダーマン:スパイダーバース』の時は300人くらいいました。スタジオに入らなくなり、別のオフィスを借りていたほどです。

司会:どんな役職があるんですか?

若杉講師:アニメーションスーパーバイザーがおり、その下がチームに分かれています。チームごとにリードアニメーターがいて、アニメーターがその下にいる構造です。

司会:井崎講師はいかがですか?

井崎講師:大変な思い出も多いのですが、よかった思い出だと『ゴジラキングオブモンスターズ』に背景モデラーとして参加した思い出ですね。8か月ほど参加し、キングギドラが凍っている背景を1か月くらい作っていました。すごく細かいところに1か月かけるんです。デティールを詰めすぎて、PCが動かない、といったトラブルが起こることもあります。
『名探偵ピカチュウ』にはは質感設定として参加しました。日本ではあまり確立されていない職種ですね。
ポケモンの髪の毛の質感を決める役割です。決めるだけで4ヵ月かかりました。ずっとピカチュウを見ているんですよ。素人の人が見たら、その差がわからないくらいのバージョンを120くらい作りました。

司会:さすが主人公キャラクター、ピカチュウですね。

井崎講師:ドラマはペースが速いのでそこまでではありませんが、映画は何度も何度も、120回くらいリテイクがあったりするんです。データ総量も見たことのない単位の2ペタバイトとかになるんですよ。

司会:テクスチャもやるんですか?

井崎講師:モデラーはモデリングだけで、テクスチャやUV展開も、テクスチャーアーティストがやることが多いです。両方やる方はMTA、モデルテクスチャーアーティストと呼ばれます。

コロナ禍の働き方はいかがですか?

井崎講師:2020年の春くらいからすぐにリモートになりました。日本より厳しいロックダウンで、会社に来るなといわれ、すぐリモートのセットアップが送られてきました。スーパーから品物がなくなったりもしていましたね。
リモートになって1年半経ちますが、最初のころはみなさんリモートを喜んでいたと思うのですが、
半年たってスタジオで人と話すの大切だったんだな、通勤で歩くのも大切だったんだな、と思うようになりましたね。今はスタジオに行きたい気持ちもあります。
コロナが落ち着けば、半分リモートで、半分出勤といったハイブリッドないい働き方ができるのではないか、と思っています。

若杉講師:Sony Pictures Imageworksも同じようにすぐにリモートに切り替わりましたが、今は週に2回くらいは希望する人はスタジオにいけるようになりました。ただ、スタジオでもマスクはしなくてはいけないので仕事中にマスクして仕事するのが嫌ですね。
これからのことを考えていくと、インターネットでマシンが繋がっているので、日本にいながらにして海外の仕事ができる可能性を感じました。日本の生活が好き、けれど仕事はアメリカやカナダの仕事、ハリウッド映画を作りたいという人もいるんじゃないですか。夢がありますね。

リモートで不便なことはありますか?

井崎講師:やはりフィードバックの時ですね。同僚が隣にきて、教えてもらえるのが席を並べて仕事をしている良さだと思います。

若杉講師:一番大きいのは、会社の中にシアターがあって、レビューをするのですが、この1年間小さいモニターで見ているので、小さい画面の中での見え方になってしまっているんですね。キャラクターを大きく見せることがあるが、スクリーンだと大きく見えすぎてしまうんです。編集やコンポジットの人はいいモニターを持って帰って作業をしています。


制作するうえで大切にしていることはなんですか?

井崎講師:お金をもらって仕事をしているので一定のクオリティ以上を出すことは心がけています。一方で、
自分のこだわりを持たないことがこだわりです。
背景を作っているときに、このレイアウトでこのカットなら、ここにこれを置くべき、置きたい!という気持ちがあることもあるが、クライアントが違うといえば、それを出すとクライアントの欲しいものとずれてしまうんです。こだわりをもとことは大切ですが、それを下げるということも仕事上では大切です。

あとは17時に帰ること!ですね。

若杉講師:スキルに関しては、自分の持っているスキルでやるしかありません。そんな中大切にしていることは2つあります。
1つ目はコミュ力(コミュニケーション能力)です。これはアーティスト的コミュ力で、人の話を聞くとかそういうことではなく、監督からスーパーバイザーからこう直してという指示があって、それを直すことは簡単なのですが、なんでそういわれているのかを理解して、要求にこたえるということです。根本を理解しないと、同じようなことをまたフィードバックを受けたりしてしまうんですね。
そこで大事なのは、一歩踏み込む。なんで?どういう意図があって?というのを踏み込む。
問題解決の根本的な部分を大切にしています

2つ目がエゴを出さないことです。井崎さんのこだわりを持たないに近いかもしれませんね。常にチームワークでものをつくっていることを忘れないようにしています。
めっちゃ楽しんで、自分の仕事ばかりやりたい。集中してこれやりたいとかあるんですが、頼まれたときはすぐ対応することにしています。みんなで作ってみんなで助け合うことが俺すごいだろを出すより楽しいと思っています。

これからCGクリエイターになりたい方に今からできることをぜひ教えてください!

井崎講師:観察力が大切になります。絵も頭で描くといいますが、技術じゃなくて、細かいディティールを想像できるかが大切です。資料などを見たときに、細かくみるようにしたり、見ながら考えたり、それを再現してみるのが一番いいと思います。

若杉講師:情報が溢れすぎて、やりたいよりやるべきが先行しすぎている気がしているんですね。”やるべき”をやっているとこれやりたかったんだっけ?にぶつかることがあると思います。
やってみたいけど、っていう人は、とにかく、自分が興味があることをやってみるというのが大切だと思います。
ジョブズの言葉に ”Connecting the dots”(コネクティングドッツ)という言葉があります。将来を見据えて点と点を結ぶことはできないという意味で、本能に従って自分の興味があることをやっていき、後ろを振り返ると、関係ないと思っていたことが今につながっているなとわかる。
努力は夢中に勝てないとも言いますよね。自分も努力家ではないけれど1日中学校にいたし、1日中アニメーションをやっていた。外からみると努力に見えるかもしれないけれど、やりたくてやっていたんです。
特にこの仕事って、好きを好きでいい業界。やりたい気持ちを大切にしてください。

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