公開日:2023-07-01
「セルシェーディング(cel shading)」とは、3DCGを手描きのイラストやセル画調のアニメのように見せるレンダリング技法です。デフォルメされたようなキャラクターを表現するのに用いられます。「セルルック」や「トゥーンレンダリング(toon rendering)」とも呼ばれます。
セルシェーディングを実現するシェーダーを「トゥーンシェーダー(Toon Shader)」「セルシェーダー(Cel Shader)」と呼び、3DCGソフトウェアの「Maya(マヤ)」「3ds Max(スリーディーエス・マックス)」などでは標準で行えるようになっています。
セルシェーディングの特徴
セルシェーディングによるレンダリング結果は、アニメ調、漫画調となります。通常3DCGでは陰影が滑らかでリアルな描画となっていますが、セルシェーディングでは陰影が滑らかではなく段階的になるため、このような描画となります。また、通常のレンダリングでは約1600万色の色数を用いて写実的な表現をしますが、セルシェーディングではあえて色数を数色に抑えるレンダリングを施してアニメ調に見せています。平板で境界線のはっきりした陰影がついており、モデルの輪郭線などがくっきりすることでよりアニメ調になります。
セルシェーディングのメリット
通常、現実的でフォトリアリスティックな表現をする3DCGですが、あえて2次元のように見せることで奥行きのある世界観のアニメなどにイラスト調などのキャラクターを自然に溶けこませることができます。そして、3DCGで作ることで色々な角度から映すことが容易になります。
2Dアニメーターの人材不足の観点からも、3DCGでアニメを制作できることで誰が作っても同じ絵が描画できることから、急速に3DCGを使ったセルルック作品が多くなっており、そういった人材を各企業、各制作会社が求めています。
セルシェーディングの基本
セルシェーディングでレンダリングされた画はアニメ調ですが、制作工程は複雑です。陰影などが予想通りにいかない、エッジの出方が希望と異なるなどが起こることがあり、通常の3DCGとは異なるモデリングやレンダリングの技術が必要となります。また、実際に単純化されているのは表面の質感であるマテリアルであり、モデル自体は通常のモデリングで制作されるモデルと同じようにたくさんのポリゴンで作られています。セルシェーディングでもポリゴンの面またはエッジを基準としてレンダリングしているため、ポリゴンの数が少ないとレンダリング時にエッジや陰影が綺麗に表現できなくなります。
セルシェーディングを使った作品の例
アニメやゲーム作品において数えきれないほど採用されており、アニメでの事例は機動戦士ガンダムや、ONE PIECEのサウザンドサニー号(海賊船)の描画、プリキュアシリーズのエンディングのダンスシーンなどに使われています。ゲームでの事例は、ドラゴンクエストシリーズ、イナズマイレブン、ポケットモンスターなどに使用されています。