コンセプトアーティスト

公開日:2023-07-01

コンセプトアーティストとは

「コンセプトアーティスト」とは、ゲームや映画、映像作品などで主に使用されるデザインのイメージやアイデア、雰囲気などのビジュアルコンセプトを事前に視覚化し、絵として表現された設計図を創出するお仕事です。
また、コンセプトアーティストが制作したものを「コンセプトアート」と呼び、これらを基にプレゼンテーションや他の制作スタッフへクリエイティブのイメージの共有を行います。

考えや概念を絵に起こす作業という意味で、「コンセプトデザイン(Concept Design=概念をデザインする作業)」「アートデベロップメント(Art Development=絵を用いて企画や開発を行うこと)」「ビジュアルデベロップメント(Visual Development=視覚化して作品の企画や開発をすること)」と呼ぶこともあります。

どんな仕事・業務?

コンセプトとは「概念」という意味です。例えば清涼飲料水のCMのコンセプトが「青春」であったり、ファンタジー映画のキャラクターのコンセプトが「魔法」であったりと、その商品や登場するキャラクターに対して、骨格となるような「考え」や「概念」がコンセプトです。よって、コンセプトアーティストとは文字で表されたこのような「概念」を「絵」として表現する仕事、または「絵」に変換する仕事になります。つまり、「青春」というコンセプトからスポーツで汗水を流す高校生を絵に描いたり、「魔法」というコンセプトから呪文を唱えるキャラクターが指から魔法を発射する絵を描いたりすることが仕事になります。もちろん、自分が考えたコンセプト(文字)を絵にする作業だけではなく、監督など自分以外の人が考えたコンセプトを絵にする仕事も行います。

どんなソフトウェアを使うのか

アナログで描く紙と鉛筆、ペンなどの他にも、デジタルの場合は「Adobe Illustrator(アドビ イラストレーター)」「Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)」「Maya(マヤ)」「ZBrush(ズィーブラシ)」「Adobe After Effects(アドビ アフターエフェクツ)」「Adobe Premiere Pro(アドビ プレミア プロ)」などがあり、デザインソフトウェア、3DCGソフトウェア、動画編集ソフトウェアと多様なツールを使用します。
ゲームエンジンの「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」なども使用することがあります。このように使用するツールは企業やプロジェクト内容、個人によってもさまざまです。

どのような職場がある?

まず、ゲーム制作会社などが挙げられます。コンシューマーゲームやソーシャルゲームなど、さまざまなゲームが続々と誕生しています。その他にも、コンセプトアートに特化し、クライアントにコンセプトアートの提供をしている企業もあります。ゲームや映画などに加え、都市計画など、国内外問わずコンセプトアートの提供をしています。また、クリエイティブ全般を専門とする企業もあり、キャクターデザイン、映像の企画などに加えて、コンセプトアートや絵コンテ制作なども行っています。
また、海外在住の日本人コンセプトアーティスト、フリーランスのコンセプトアーティストも存在します。

業務例

描く内容とその目的は主に2つあります。1つ目は、具体的に「キャラクター」「コスチューム」「SFの道具や機器、乗り物」「背景」などを描いて、他の制作スタッフに伝えることを目的とする場合です。もう1つは、企画段階の作品をプロデューサーや製作委員会などの出資者に作品の内容を伝えて承認してもらうために描く場合です。こちらの場合は、その物語や作品が伝わるような絵を描くこと、企画書(文字)では伝わらない「ニュアンス」や「世界観」や「雰囲気」を描くことが主な目的です。

コンセプトアーティストが描いた絵は、監督の想像する頭の中のものを具現化する第一歩になるので、実写作品であればその他のスタッフ(衣装、メイク、大道具、小道具などの仕事)がどのようなものを制作すればいいのかの指針になります。また、CGであればモデリング(物体やキャラクターや背景などを制作する作業)の基となるので、非常に重要な第一歩目の作業になります。もちろん、映画・映像作品だけではなく、ゲームの仕事でも重要な役割となっています。ゲーム開発の初期段階で、ゲーム監督が考えた世界観をコンセプトアーティストが絵に起こし、それを基に3DCGのキャラクターを制作、背景を制作などゲーム開発には欠かせない初期作業になります。

表現手法としては「スケッチ的なもの」「漫画的なもの」「写真のようにリアリティーのあるもの」「絵画的なもの」など用途によってさまざまです。例えば、本当に最初の段階であるならば「スケッチ的」なラフデザインで監督からOKが出ますし、アニメや漫画が最終的なコンテンツであれば写実的な表現は不要です。実写作品やSF作品(実写)であれば、写真のような現実的な表現が無いと、何をどのように作るのかわからなくなります。

仕事の発注元や条件としては、作品のプロデューサーや監督から企画書1枚を元に絵を描く場合があります。一方で、脚本段階まで進んだ条件(キャラクターの役割や条件がある程度決まっている場合や、荒廃した1000年後の未来のような世界観などという条件)で仕事の依頼がある場合、ほぼ絵が完成しているが、最後の詰めの段階でつじつまが合わないということから修正の工程を依頼される場合もあります。

働き方は?

企業に勤めるコンセプトアーティストや、フリーランスのコンセプトアーティストがいます。企業に勤める場合は基本的に平日8時間勤務となっており、一般的な企業と同じです。しかし、スケジュール次第では残業なども発生する可能性もあります。フリーランスの場合は平日・土日といった曜日は基本的には関係なく、納期などに合わせて働きます。

収入(年収・月収)は?

コンセプトアーティストの年収に関するデータはあまり多くないのでCG業界全体の年収を参考にすると、およそ400万円台が多くなっています。また、コンセプトアーティストの求人情報を参考とすると年収300万円~1,000万円などがあり、金額の幅が非常に大きくなっています。また、1つの企業の求人でもかなりの金額幅があります。このような情報から、コンセプトアーティストの年収は個人の経験や力量に大きく左右されると言えます。

なるには

一般的にどのようななり方があるのか

基本的に中途採用では3~5年の何らかの同業界でのデザイン経験やコンセプトデザインの経験が求められます。そして、過去の経歴では美大でデッサンや絵について学んでいる、専門学校などでCG制作について学んでいることが多いです。
CG業界で他の職種で働いていた人や、もともと別の目的でCG制作について学んでいる人、異業種にてデザインを行なっていた人がコンセプトアーティストに転向するということも多いです。

未経験からなるには

全くの未経験でも活かせるスキルやヤル気次第では、業界未経験でも応募できることもあります。 考える力や絵に表すことのできるスキルがあれば、一度応募してみるのもいいかもしれません。しかし、未経験歓迎の企業は多くありません。また業界のことや制作に関するツールについて知っておくことは必要であり、プロからお話を聞けるチャンスもあるため、専門のスクールなどで学ぶことはプラスになります。

必要なスキル

絵を上手に描く画力と、1つの言葉からさまざまな具体的なものを想像できる力、他者の考えをくみ取るコミュニケーション能力、などが求められます。また、描いたものを自分以外の人に伝えるためには、絵が上手だけではなく、1枚のキャンパスの中でどのように絵(キャラクターや具体的なもの)を配置するのかというレイアウトする能力、描いたキャラクターをどのようなポージングにするのか、どのような配色にするのかなどのデザイン力も必要なスキルと言えるでしょう。

必要な機材

デジタルの場合はコンピューターを使用します。画面は大きい方が作業もしやすいため、27インチ程度の大型ディスプレイや、サブモニターを組み合わせるなどして複数のディスプレイを使用することが多いです。また、ペンタブレットや液晶タブレット、クリエイター用マウスなどを好みなどに応じて使用します。
また、アイデアを思いついた時や日々の持ち歩き用、打ち合わせの場ですぐに描くことができるように、iPadなどのタブレット端末、Apple Pencilなどのスタイラスペンもあると良いです。カメラも持ち歩くことで参考となる素材を自分で撮影することができます。

勉強法

刺激を受けるためにアミューズメント施設や動物園などいろんな場所に出向いたり、いろいろなジャンルの映画を観たり、時間を見つけてはとにかく多く作品を作ることが良いです。また、自分ではまだまだ未熟であると感じても制作したものは自分のポートフォリオサイトがあれば掲載をする、作品投稿サイトなどに投稿をするなどして、どんどん世に出していき他者の客観的なレビューをもらうことも非常に大切です。

なるための適性は?

絵を描くことが好きな人は勿論ですが、1つのコンセプトからさまざまなことを想像し多角的な視点から具体的な「絵」にすることが必要になるために、上手に描ける画力だけではなく「想像力」が人一倍強い人に向いています。また、監督の考えをくみ取らなければならないので、コミュニケーション能力がある人も向いています。

なるにはどれくらいお金がかかる?

CGを学べる専門スクールに通う場合、およそ90万円~140万円前後です。内容や期間によっても価格は大きく変わってくるため、自分の目的やライフスタイルに合うスクールを選ぶことが大切です。書籍を参考にする場合、1冊2,000~3,000円が相場です。
そのほかにもPhotoshopなどのAdobe関連のソフトウェアフェア使用料(全て使えるコンプリートプランで5,680円/月(税別)※学割あり)や3DCGソフトウェアなどの使用料が必要になります。
またインターネット費用(3,000~4,000円/月)や、ポートフォリオサイトを持つ場合はレンタルサーバー代(300円前後~/月)などが挙げられます。
すでに使えるパソコンがあれば必要ありませんが、パソコン購入費も必要になります。ある程度のスペックが必要なため、この辺りも検討が必要となります。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部