公開日:2023-07-01
エフェクトアーティストとは
「エフェクトアーティスト」とは、CG制作において「エフェクト」にあたる部分を担当するお仕事です。『爆発』『炎』『煙』『液体』『流体』『物体の破壊』『発光』『ヒット効果』『キラキラした光』などの自然現象や現実に存在しないような表現をなど通じて、ストーリーや作品そのものをよりダイナミックにしたり、まるで現実に起こっていることのように再現性を高めたり、画面をにぎやかにしていきます。エフェクトが画面に出るのは1秒にも満たないことも多いですが、エフェクトアーティストの仕事により作品のクオリティが大きく左右されます。
どんな仕事・業務?
エフェクトは大きく分けて、「2Dエフェクト」「3Dエフェクト」「物理シミュレーション」の3つに分類されます。企業によって細かい違いはあるものの、エフェクトアーティストは基本的に、全てのエフェクトを一通り制作できるスキルを要求されます。携わる作品ごとに制作するものは異なりますが、マンガで見られるような集中線や魔法、人を囲むオーラなど、現実では見られないようなものをつくることもあります。
CGやVFXと言われる視覚効果を使い、ゲーム制作などのユーザーが操作するもでは、例えば爆発などにより煙を立たせることで、今何が起こっているのかを視覚的にわかりやすく伝え、操作の手応えを感じさせます。映画などの映像分野では、実写では再現ができないようなダイナミックな光や炎、煙などを表現していきます。
同じ「エフェクトアーティスト」という職業でも、職務領域や必要とされる技術が企業や作品で異なります。また、テクニカルアーティストやテクニカルディレクターがエフェクトアーティストの業務を兼任していることもあります。
どんなソフトウェアを使うのか
「Maya(マヤ)」などの広く使用されている3DCGソフトウェアや、高度なエフェクト制作に特化した「Houdini(フーディニ)」、実写合成に特化した「Nuke(ニューク)」などのソフトウェアを使用しているケースも多いです。またデザインソフトウェアの「Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)」や動画編集ソフトウェアの「Adobe After Effects(アドビ アフターエフェクツ)」なども使用します。ゲームの場合は「Unity(ユニティ)」「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」などのゲームエンジンも使用します。
どのような職場がある?
エフェクトアーティストはゲーム業界での就業が特に多く、コンシューマーゲームの制作会社やソーシャルゲームの制作会社、映像制作会社などがあります。また、ついでVR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ)制作を行う企業、CM制作やテレビ、グラフィック関連の企業、実写映画向けのCG・VFXを制作する企業などが多くなっています。
またアニメ制作を行う企業やパチンコなどのアミューズメント系を扱う企業も多く、化粧品や自動車、家電などのプロダクト製品における3DCG制作を行う企業などもあります。
業務例
大まかな流れとしては、エフェクトに関する資料を集め、エフェクトアセットの制作をします。そしてエフェクトが必要とされるシーンに対して実際にエフェクトの制作を行い、コンポジター(合成の工程)に引き継ぎます。
映像制作の場合は「プリレンダリング」と言われる、レンダリング時間が長くかかってもより表現力の高い方法を取るため、リアリティを求めて何百、数億というパーティクルを使ってエフェクトを制作していきます。また、ゲーム制作の場合は「リアルタイムレンダリング」と言われるゲームプレイをしながらリアルタイムでエフェクトを処理する方法が取られることが多く、この場合は10以下のパーティクルを使い表現を行うなどの縛りが生じてきます。
働き方は?
企業に勤務するエフェクトアーティストや、フリーランスとして案件ごとに参加して自宅等で作業を行うエフェクトアーティストがいます。企業に勤める場合は基本的に平日8時間勤務となり、スケジュールやライフスタイルに合わせて勤務できるフレックスタイム制を導入している企業もあります。また大手企業では福利厚生も充実しているところが多く、近年CG業界の働き方も改善されてきています。フリーランスの場合は案件ごとに参加をして自宅で作業を行う、一定期間企業に常駐などをして働きます。
収入(年収・月収)は?
平均的なCG業界のクリエイターの収入を参考にするとおよそ300万円〜500万円と言われています。大手ゲーム制作会社などで勤務をする場合、平均的なサラリーマンよりも高い年収を狙える可能性があります。フリーランスなどで名前が売れているエフェクトアーティストの場合、さらに高い年収も見込めます。CG業界全体で需要が高まっている現在、このようにスキル次第では高待遇となるケースがあります。
将来性は?
エフェクトアーティストは、3DCGが普及していく中で需要が高まってきた比較的新しい職業です。近年のゲーム業界の発展とともに続々と開発されていくゲームの多さ、CGを使った映画や映像の増加、またそのほかのジャンルでもCGを使った制作物が非常に増えていることを考えると、今後も需要はさらに高まると考えられます。若手のエフェクトデザイナーも続々と誕生しています。
どんなキャリアが歩めるか
エフェクトアーティストは、日本はもちろん海外、ハリウッドなどのCG先進国でも需要が非常に高いため、将来的には海外に進出することも考えられます。国内外問わず活躍している日本人アーティストも存在します。また、CGの技術は近年特に求められており、今後もさらなる発展が見込まれます。エフェクトの専門家として「スペシャリスト」になる、他の制作工程も行えるようになり総合職の「ジェネラリスト」となる、ディレクター職などにキャリアアップをすることも目指せます。
なるには
未経験からなるには
未経験や新卒での応募を歓迎している企業もありますが、全く知識がない状態の採用は難しく、専門学校やスクールである程度の知識をつけておくことが必要です。未経験者歓迎の企業もあり、若手の育成に力を入れているところもありますが、基本的なソフトウェアの使い方や合成に関する知識やセンスを養っていることは少なくとも必要となります。専門スクールなどに通い、CG業界に関す基礎的なる知識とソフトウェアの操作方法をつけておいたほうが、就職活動の際の視野も広がります。ポートフォリオを作り、自分のレベルやスキルを企業にしっかり伝えることが大切です。
必要なスキル
エフェクトを作るにあたっては、Mayaはもちろん、Houdiniなどの特別なエフェクト制作ソフトウェアを使えるスキルが必要です。また、エフェクトは演出効果にあたるため、3DCGの全ての制作工程の知識を持っている必要があります。さらに、実際にはないエフェクトを作ることもあるので、発想力や想像力、芸術的なスキルやセンスも不可欠です。
プリレンダラー(事前に生成、レンダリングされていること)の場合は、Maya、Adobe After Effects、3ds Max、Houdini、Nukeのスキルを持っていると役立ちます。リアルレンダラー(即時にレンダリングされること)の場合は、Unity、Unreal Engineなどのゲーム開発エンジンの基礎知識を持っていると、エフェクトアーティストとして役立ちます。
必要な機材
エフェクト制作を行うためには、コンピューターが必須となります。専用のソフトウェアなどが不自由なく操作できるレベルのスペックがあり、CGや映像などの大きなサイズのデータも保存しておくことのできるコンピューターが望ましいです。
画面サイズの大きなデスクトップタイプの利用やノートパソコンの場合はメインとなる外部出力モニターを使用し、さらにサブモニターを組み合わせて使うことで作業効率も上がります。業務内容や必要に応じてペンタブレットや液晶タブレット、クリエイター用マウスを使用する人もいます。
勉強法
シミュレーション結果の正確性よりも、レンダリングの速さや、作品のなかで画になる表現の方が優先されることもあります。そのため、想像力や発想力、クリエイティビティ、センスが養われていることも重要になってきます。3DCGソフトウェアのMayaや3ds Maxなどのソフトウェアは高価なこともあり、初めは手が届かないかもしれません。まずは「Blender(ブレンダー)」など無料のツールを使い、可能であれば将来的に就業を希望する企業が使用しているツールの操作も学習しておくことが望ましいです。
なるための適性は?
エフェクトを制作する際には、スクリプトがよく使われるため、プログラミングに関する知識や興味関心を持っている人は、エフェクトアーティストに向いています。物理現象を扱うため、3DCGは未経験だったとしても実際に起こる物理現象に対して関心を持っている人、実際の物理現象をじっくり見る観察力がある人、論理的思考力などを持っている人、理系の人なども、エフェクトアーティストに向いています。また、制作の際の相互理解のためにコミュニケーションスキルも必要となります。
なるにはどれくらいお金がかかる?
CGを学べる専門スクールに通う場合、およそ90万円~140万円前後です。内容や期間によっても価格は大きく変わってくるため、自分の目的やライフスタイルに合うスクールを選ぶことが大切です。書籍を参考にする場合、1冊2,000~3,000円が相場です。
そのほかにもPhotoshopなどのAdobe関連のソフトウェアフェア使用料(全て使えるコンプリートプランで5,680円/月(税別)※学割あり)や3DCGソフトウェアの使用料が必要になります。
またインターネット費用(3,000~4,000円/月)や、ポートフォリオサイトを持つ場合はレンタルサーバー代(300円前後~/月)などが挙げられます。
すでに使えるパソコンがあれば必要ありませんが、パソコン購入費も必要になります。ある程度のスペックが必要なため、この辺りも検討が必要となります。