コンポジター

公開日:2023-07-01

コンポジターとは

「コンポジター」とは、3Dや2Dの原画、実写映像など、1つの作品としてそれぞれのデータを組み合わせ合成(コンポジット)し、最終的な画を制作するお仕事です。
画づくりにあたって、コンポジターは、それぞれの映像や画の色調や解像度の違いを調整し、きれいな1枚の画として一体化させていきます。
コンポジターという職種の名前にもなっている「Composite(コンポジット)」は、「合成写真」「合成物」という意味です。「共に」という意味の“com”と、「置く」という意味の“ponere”が由来で、「複数の材料から成る」という語源を持っています。
コンポジターはすべての映画や映像作品に不可欠な職種です。最後の画に自分の手を加えることができる上、自分が行った仕事が目に見える形でスクリーンに映し出されることは、コンポジターの仕事のやりがいと言えます。

どんな仕事・業務?

コンポジターがどこまでの作業を担うのかは各企業で異なりますが、エフェクトの制作を担う場合もあります。フル3DCGの映像を制作する場合は、3次元CGの空間の中にあるモデル、照明、カメラなどの情報をもとに計算を行い、2次元CGを生成するレンダリングや、ライティング、「Nuke(ニューク)」などコンポジット用ソフトウェアでの合成までを業務として行います。すべてをCGで制作するフル3DCG作品の場合、1つのシーンを構成するデータを1枚の画像としてまとめてから、レンダリングの作業をすることもできます。ですが、実際の業務では、いくつかの素材に分けてレンダリングした分業化が進んでいる企業では、ライティングとコンポジットを担う者が別々の場合が多いです。

どんなソフトウェアを使うのか

動画編集ソフトウェアである「Adobe After Effects(アドビ アフターエフェクツ)」などのソフトウェアを使用します。企業によって使うツールは異なり、その他にも「Adobe Premier Pro (アドビ プレミア プロ)」なども使用します。
また、デザインソフトウェアである「Adobe Illustrator(アドビ イラストレター)」や「Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)」などのソフトウェアも使用します。
その他にも、実写合成に特化したNukeや、「Smoke(スモーク)」「 Flame(フレーム)」などのソフトウェアも使用します。

どのような職場がある?

コンポジターの職場は、主に映像制作会社や、ポストプロダクション(通称 ポスプロ)という撮影後の編集をする企業などがあります。ポスプロでは、テレビやCM、VPやミュージックビデオなどの編集の部分を担います。その他にもゲーム制作会社などもあり、コンポジターが取り扱うジャンルは多岐にわたり活躍の場は広いです。

業務例

実写とCGを混ぜて制作するVFXの作品では、実写のデータとCGのデータをコンポジットの工程で合成します。その際に「バレ消し」という、撮影時に写ってしまういらない箇所(看板など)を削除する業務を行うこともあります。
場合によっては、グリーンバックで撮影された実写の元データをPhotoshopやIllustratorを使って加工をすることや、実写カメラとCGカメラの動きを合わせるトラッキングや、画の中にペイントした絵を配置するマットペイントの制作などもコンポジターが併せて担います。
2Dのアニメのような見た目のセルルック作品の制作では、手描きのデータとCGのデータを混ぜる仕事は「撮影」と言われます。アニメを撮影する段階においては、データの合成やフィルタを使った特殊効果などの作業が行われます。

働き方は?

コンポジターの働き方は、就業する企業にもよりますが裁量労働制やフレックスタイム制を導入しているところが多く、スケジュールなどに合わせてメリハリをつけて働くことができます。CG業界の労働環境においては激務などにより問題視されていますが、近年改善され始めており、福利厚生が充実している企業もあります。フリーランスの場合は、案件ごとにプロジェクトに参加する、一定期間企業に常駐などして働きます。また海外で活躍している日本人コンポジターも存在します。

収入(年収・月収)は?

コンポジターの平均年収は、おおよそ400万円~500万円が多いと言われ、業界内では比較的高年収となっています。映像ディレクターなどにのぼりつめるとより高年収が見込まれます。
また、求人情報を参考にすると、スキル次第ではマックス700万円や800万円を提示している企業もあります。このようにコンポジターという職種は、会社規模や経験値によっても大きく左右されます。フリーランスとなると年収はピンキリで案件や実力次第で報酬は変動します。

将来性は?

コンポジターは、日本はもちろん海外でも必要とされており、コンポジターのような専門職は海外に多いため海外進出することも考えられます。CG、VFXの技術はハリウッドなどでも圧倒的に使われており、海外で働く日本人コンポジターもいます。またCGの技術は近年特に求められており、今後もさらなる発展が見込まれるため、ディレクター職などの上流工程を担う職種にキャリアアップすることも目指せます。

どんなキャリアが歩めるか

コンポジターは将来的には映像ディレクターを目指すことができます。その理由としては、コンポジターは業務内容からもわかるようにさまざまな素材を扱い最終的に1つの画として仕上げていくため、映像制作における画を作る力が養われていきます。そのため、経験を積んでいくと同時にいろいろなジャンルに触れることで幅が広がります。また経験次第ではフリーランスに転向し、CG制作者やフリーのディレクターとして活躍することも考えられます。

なるには

一般的にどのようななり方があるのか

映像の最終工程を担う職種のため、未経験から応募できる企業はそこまで多くありません。
その他の職業で入社してアシスタントなどで経験を積み、コンポジターとしてキャリアシフトを行うケースや、他業界でPhotoshopやAfter Effectsを使う業務をしていた人は、必要とする知識は異なりますが3DCG業界の知識をつけてコンポジターとして転身するという道もあります。

未経験からなるには

未経験者歓迎の企業もあり、若手の育成に力を入れているところもあります。しかし、基本的なソフトウェアの使い方や合成に関する知識やセンスを養っていることは少なくとも必要となります。社会人向け専門スクールなどに通い、CG業界に関す基礎的なる知識とソフトウェアの操作方法をつけておいたほうが、就職活動の際の視野も広がります。ポートフォリオを作り、自分のレベルやスキルを企業にしっかり伝えることが必要です。

必要なスキル

フルCG、VFX、セルルックアニメ、どの作品を制作する際においても、それぞれのデータとそれらに関わるソフトウェアで作業を進められる知識や技術、画づくりのための芸術的センスが問われます。Mayaなどの3DCGを扱うソフトウェアはもちろん、After Effects、Premiere Proなどの映像編集ソフトウェア、Illustrator、Photoshopのスキルは不可欠です。
画をコンポジット作業で合成して微調整をすることもあるため、画づくりに使用する色づかいやライティングの技術も必要とされます。
そのほかにも、前の作業を担った者と円滑にデータのやり取りができることも求められ、手を動かすスキルだけでなくディレクターの目指すところを把握し、表現ができるようにしっかりと解釈することが求められます。そのため、意思疎通をしっかり取れるコミュニケーション能力も不可欠です。

必要な機材

コンポジットを行うには、コンピューターが必須となります。専用のソフトウェアなどが不自由なく操作できるレベルの処理能力が高く、大きなサイズのデータも保存しておくことのできるコンピューターが望ましいです。
画面サイズの大きなデスクトップタイプの利用やノートパソコンの場合はメインとなる外部出力モニターを使用し、さらにサブモニターを組み合わせて使うことで作業効率も上がります。業務内容や必要に応じてペンタブレットや液晶タブレット、クリエイター用マウスを使用する人もいます。

勉強法

実写の合成にはビデオやカメラの知識が必要なため、カメラの勉強もしておくと良いです。ライティングに関する感度や絞り、ホワイトバランスの数値などを理解しどれくらいの数値で理想とする表現ができるかなどといった知識も必要となります。また、CGの技術の最先端はハリウッドです。最新の技術や表現などは海外の映画作品や情報も参考にすることや、ブレイクダウン映像と言われるメイキング動画なども参考にし、センスを養うとともにどのような技術を使っているかという勉強をするのもおすすめです。また、海外から出版されている専門書を参考にすることも良いです。

なるための適性は?

コンポジットはCG上での最後の手順であるので、クライアントとの密接な関わりを持ちます。そのため、コミュニケーション能力があり、クライアントや周りの人と意思疎通を図れる人に向いています。時にはコンポジットのやり直しを何度も行う事があるので、粘り強い人や、文字を大きくしてほしい、色を変えてほしいなど、クライアントの注文に素早く対応できる人にも向いています。

なるにはどれくらいお金がかかる?

CGを学べる専門スクールに通う場合、およそ90万円~140万円前後です。内容や期間によっても価格は大きく変わってくるため、自分の目的やライフスタイルに合うスクールを選ぶことが大切です。書籍を参考にする場合、1冊2,000~3,000円が相場です。
そのほかにもPhotoshopなどのAdobe関連のソフトウェアフェア使用料(全て使えるコンプリートプランで5,680円/月(税別)※学割あり)や3DCGソフトウェアの使用料が必要になります。
またインターネット費用(3,000~4,000円/月)や、ポートフォリオサイトを持つ場合はレンタルサーバー代(300円前後~/月)などが挙げられます。
すでに使えるパソコンがあれば必要ありませんが、パソコン購入費も必要になります。ある程度のスペックが必要なため、この辺りも検討が必要となります。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部