サービスデザイン思考とは|デザイン思考との違いと実践プロセス

公開日:2026-09-16

サービスデザイン思考とは|デザイン思考との違いと実践プロセス

サービスデザイン思考とは|デザイン思考との違いと実践プロセス

公開日:2026-09-16

「デザイン思考」という言葉は聞いたことがあっても、「サービスデザイン思考」となると、何がどう違うのか説明できる人は意外と多くありません。新規事業の企画や既存サービスの顧客体験(CX)改善に関わる中で、この2つの違いや具体的な手法を体系的に理解したいと感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では、サービスデザイン思考の定義からデザイン思考との違い、代表的な手法であるサービスブループリント、実践プロセスまで、やさしく解説します。

サービスデザイン思考とは

サービスデザインとは、利用者・提供者・規制団体など、サービスに関わるすべてのステークホルダーのニーズを把握し、共にソリューションを検討・プロトタイピングし、実装・改善していく協働的なアプローチと定義されています。

特徴的なのは、顧客が直接目にする「フロントステージ」の体験だけでなく、それを支える裏側の業務プロセスである「バックステージ」の活動も一体で設計するという考え方とされています。たとえば飲食店であれば、接客や店内の雰囲気といった顧客から見える部分がフロントステージ、厨房でのオペレーションや発注の仕組みといった裏側の業務がバックステージにあたります。どちらか一方だけを整えても、サービス全体の体験は良くならないという発想が、サービスデザインの根底にあります。

こうした考え方を、実際のサービス改善や新規事業の企画に活かしていく思考法が「サービスデザイン思考」です。単にデザインの見た目を整えるのではなく、サービス全体の仕組みを俯瞰して捉え、利用者にとっても提供者にとっても価値のある形へと改善していくアプローチといえます。

近年、Webサイトやアプリの画面デザインだけを改善しても、顧客満足度が思うように上がらないという課題に直面する企業が増えています。その背景には、顧客の体験が単一の画面だけで完結せず、問い合わせ対応やアフターサポート、店舗での接客など、複数の接点にまたがっているという事情があります。サービスデザイン思考は、こうした複数の接点を横断してサービス全体を捉え直すための考え方として、注目されるようになってきました。

デザイン思考との違い

サービスデザイン思考を理解するうえで欠かせないのが、「デザイン思考」との違いです。

デザイン思考とは、複雑な問題を解決するための人間中心のアプローチのことで、IDEOによって提唱・体系化されたことで広く知られるようになりました。人々にとって望ましいこと、組織にとって実現可能なこと、技術的に実現可能なことという3つの要素を統合しながら解決策を導く点が特徴です。

サービスデザイン思考は、こうした人間中心の考え方を、単一のプロダクトや画面だけでなく、サービス全体(フロントステージとバックステージの両方、複数のタッチポイント)に適用したものと位置づけられます。デザイン思考が「問題解決のための考え方全般」を指すのに対し、サービスデザイン思考は、その考え方を「サービス」という、時間や接点にまたがる複雑な対象に応用したものという整理ができます。実務では、両者を厳密に使い分けずに用いられる場面も多く、境界がはっきりしないケースもある点には留意しておくとよいでしょう。

サービスデザイン思考の代表的な手法|サービスブループリント

サービスデザイン思考を実践する際によく使われる手法の1つが「サービスブループリント」です。

サービスブループリントとは、人・プロップス(物理的またはデジタルな証跡)・プロセスという、サービスを構成する要素間の関係を可視化する図のことで、サービスデザインプロセスにおける主要なマッピング手法とされています。カスタマージャーニーマップの「パート2」とも位置づけられており、複数のタッチポイントや部門をまたぐ複雑なサービスの全体像を把握するのに適しています。

サービスブループリントは、一般的に「インタラクションライン」「可視性ライン」「内部インタラクションライン」という3つの境界線を用いて、顧客の行動・フロントステージでの従業員の行動・バックステージでの従業員の行動・それを支える支援プロセスを区分して整理します。

たとえば病院の予約から来院までの体験を考えてみましょう。患者が予約サイトで日時を選ぶ、来院して受付をする、診察を受けるという一連の行動(顧客の行動)の背後には、受付スタッフの対応(フロントステージ)、カルテの準備や医師のスケジュール調整(バックステージ)、予約システムの稼働(支援プロセス)といった、目に見えない多くのプロセスが存在します。サービスブループリントは、こうした見えない部分まで含めて可視化することで、どこに改善の余地があるかを発見しやすくする効果があります。ECサイトの購入から配送までの体験など、複数の部門が関わるサービスであれば、業種を問わず同様の考え方を応用できます。

サービスデザイン思考の実践プロセス

サービスデザイン思考を実践する際の土台になっているのが、デザイン思考の基本プロセスです。

代表的な整理の1つに、Stanford d.schoolが提示する「共感(Empathize)」「問題定義(Define)」「アイデア創出(Ideate)」「プロトタイプ(Prototype)」「テスト(Test)」という5つのモードがあります。入門的な文脈ではこれらが順番に並ぶ5ステップとして紹介されることも多いですが、実際には一直線に進むものではなく、必要に応じて前の段階に戻ったり、複数の段階を並行して進めたりする反復的なプロセスとして扱われることが一般的です。

サービスデザインの実践では、こうしたプロセスをサービス全体(フロントステージ・バックステージの双方)に対して適用していきます。利用者への共感からスタートし、課題を定義したうえで改善アイデアを出し、サービスブループリントのようなツールで可視化しながらプロトタイピングとテストを繰り返す、という流れが一般的です。1回のプロセスで完璧な答えを出そうとせず、小さく試して改善を重ねる姿勢が、サービスデザイン思考を実践するうえで大切なポイントといえます。

日本におけるサービスデザインの広がり|サービス設計12箇条

サービスデザインの考え方は、民間企業だけでなく、日本の行政サービスの改革でも取り入れられています。

その代表例が「サービス設計12箇条」です。これは、日本政府のデジタル関連施策の中で示されたとされる、利用者中心の行政サービス設計のための原則群です。利用者のニーズから出発し、事実を詳細に把握したうえで、エンドツーエンドで考えるといった方向性が示されているとされ、サービスデザイン思考の考え方を行政サービスの改革に具体化したものといえます。

こうした公的機関の取り組みからも、サービスデザイン思考が特定の業界だけでなく、官民を問わず重視される考え方になっていることがうかがえます。自社のサービス改善に取り組む際にも、こうした公的な指針を参考にすることで、利用者視点を欠かさない設計の考え方を学ぶことができるでしょう。

サービスデザイン思考を学ぶ意義とキャリアへの活かし方

新規事業の企画やCX改善など、サービスの上流工程に関わりたいと考えている方にとって、サービスデザイン思考は大きな武器になり得る考え方です。

個別の画面や機能の使いやすさだけでなく、サービス全体を俯瞰し、フロントステージとバックステージの両方を見渡しながら改善提案ができる力は、UI/UXデザインの基礎知識にとどまらない、一段上の視点といえます。すでにUI/UXデザインの実務経験がある方が、こうしたサービスデザインの視点を身につけることで、担当できる業務の幅が広がる可能性もあるでしょう。

もちろん、サービスデザイン思考を身につけたからといって、特定のキャリアやポジションが確約されるわけではありません。あくまで、サービス全体を捉える視点を養うための考え方の1つとして、実務や学習を通じて少しずつ身につけていくものと捉えるとよいでしょう。

実務でサービスデザイン思考を活かす際は、いきなり大規模なプロジェクトに適用しようとせず、まずは自分が担当している業務の一部でサービスブループリントを描いてみるなど、小さな範囲から試してみることをおすすめします。実際に手を動かしてみることで、フロントステージとバックステージのつながりを体感的に理解しやすくなり、その後より大きな企画・改善提案にも応用しやすくなります。

サービスデザイン思考を体系的に学ぶなら

サービスデザイン思考は、独学でも概念を理解できますが、サービスブループリントの作成や実践プロセスを実務レベルで使いこなすには、体系的に学ぶことが近道です。デジタルハリウッドの本科UI/UXデザイン専攻では、こうした上流工程の考え方も含めて実践的に学べる環境が整っています。

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まとめ

サービスデザイン思考とは、利用者を中心に据えながら、サービスのフロントステージとバックステージの両方を俯瞰して設計・改善していく考え方です。デザイン思考が問題解決全般のアプローチであるのに対し、サービスデザイン思考はその考え方をサービス全体に応用したものと位置づけられます。サービスブループリントのような手法を使いながら、共感・定義・アイデア創出・プロトタイプ・テストという反復的なプロセスを繰り返すことで、利用者にとっても提供者にとっても価値のあるサービスへと近づけていくことができます。

こうした考え方を実践的に学びたい方は、ぜひ本科UI/UXデザイン専攻の詳細もチェックしてみてください。

この記事のポイント

  • サービスデザインとは、ステークホルダー全体のニーズを把握し、共にソリューションを検討・改善していく協働的なアプローチ
  • デザイン思考は問題解決全般のアプローチ、サービスデザイン思考はその考え方をサービス全体に応用したものという整理ができる
  • サービスブループリントは、フロントステージ・バックステージを可視化する代表的な手法
  • 共感・定義・アイデア創出・プロトタイプ・テストという反復的なプロセスで、小さく試して改善を重ねることが大切

サービスデザイン思考についてもっと体系的に学びたい方は、ぜひスクール説明会にもお気軽にご参加ください。

デジタルハリウッド 編集部

UI/UXデザインの実務に役立つ考え方をわかりやすく発信。サービスデザインの基礎から実践プロセスまで、専門スクール運営で培った知見をもとに解説しています。