白組イベントレポート
白組のVFXの過去と現在
そして未来の人材へ


今回は映像制作会社白組の監督、制作ともに大きな功績を残していらっしゃる髙橋正紀さんをお呼びし、

「白組のVFXの過去と現在そして未来の人材へ」

という題材で講演会イベントを行いました。
白組の歴史から白組はどんな人材を貴重としているのか等、様々なお話を聞くことができましたのでご紹介いたします。


髙橋 正紀さん
プロフィール


株式会社白組
Director / VFX Director / CG Director / Senior Computer Graphics Artist

髙橋 正紀/Takahashi Masaki 氏
1968年生まれ。東京都出身。平成2年白組入社
CM、博展映像、ゲームムービー、TVドラマ、劇場用映画などの映像制作に多数参加
2004年より倉敷科学芸術大学 特別講師

◆ CG/VFX Director 作品

「JUVENIL ジュブナイル」(00) 「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(03) 「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ (05)(07)(12) 「永遠の0」(13) 「寄生獣」(14) 「寄生獣・完結編」(15) 「海賊とよばれた男」(16) 「DESTINY 鎌倉 ものがたり」(17) 「劇場版 コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」(18) 「アルキメデスの大戦」(19) 「キネマの神様」(22) 「ゴーストブック おばけずかん」(22) etc.


◆ Director 作品

「GENJI」(PS3),「GENJI神威奏乱」(PS3),「Folks Soul」(PS3),「Infinite Undiscovery」(Xbox360) 「DARK SOULS」(PS3),「バイナリードメイン」(PS3/Xbox360), 「パチスロ新鬼武者」(TVCM),「メタルギア・ソリッド WEBメイキング」(WEB) 「赤いきつね 緑のたぬき」シリーズ(TVCM),「オルタナティブ・ガールズ」(TVCM) etc.




白組について

白組とはどんな会社?


■企業紹介

株式会社白組は、アニメーションとVFXを武器にハイクオリティな映像を制作し続けている、業界でも老舗の映像制作プロダクションです。

1974年の設立から、今年2023年で50周年を迎えます。

8月の「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~」に続き、11月には山崎貴監督の最新作「ゴジラ-1.0」が公開されます。


白組のコンセプトや大事にしているところ

最先端と伝統の技術をかけ合わせて映像を制作していま


最先端技術だけに捕らわれるだけでなく、昔ながらにある技術の良いところも常に取り入れて制作されているということです。 「何かが廃れたなどはなく、昔からある良いものはずっと使っていく」 そこに新しい技術を導入することによってより良い作品を目指して制作を行っているというのが白組の強さでもあります。

白組の過去・歴史

はじめは手書きでのテレビCMのアニメーション制作から始まった白組ですが、「どんどん新しい技術を取り入れよう!」「一つのものを極めるのもいいが、沢山の技術を持っている人を集めたい」という思いが強くなり 「日本にハリウッドを作りたい」 という気持ちを元に様々な制作を手掛けていくようになりました。


そこで白組は多くの技術を得て映像制作を行っていきます。中には必要なモーションコントロールカメラなどの映像機材が世の中に出回っていないことも。そんな時に...自分たちでその機材を作って制作する。ということも時にはありました。30年前の若者だった時にもいろいろ考えて映像制作をしてきましたが、それを今でも変えず、変わってきているのは作る際に制作する機材等だけが変わっていっているということが特徴です。


30年前の白組は多くのCM制作をメインに行ってきましたが、映画制作を頼まれることになり、これを大きなチャンスだと捕らえました。 この当時の日本ではVFX映画は流行しないという風潮にありました。


それを覆そう!とおもったことが今の白組の出発点になったと思います。


戦うのはハリウッド。日本だって負けたくない。そんな気持ちが行動につながっていきました。

白組の苦労

当時のVFXはレンダリングに膨大な時間が必要な時代でした。


そのため、CGだけでは制作が納期に間に合わないということも多々ありました。その当時から使われていた、ミニチュアを使ってCGと合成をするなど様々な手法で映画制作に取り組んでいきました。これが後に様々な技術を使って制作する手法につながっていきます。


「日本はハリウッドに勝てないという固定概念を壊したい」 という強い気持ちもありながら苦戦する場面も多くありました。「セットとCGが合わない」「沢山の人数を集めて撮影することが難しい」「お金を掛ければもちろん良いものができるが、そんなに費用がさけない」そんな多くの障害がありながら、よりよいものを制作するために様々な技術を自分たちで工夫することで補っていきます。


2000年代前半は背景グリーンバックが主な合成方法でした。その限られた環境の中で工夫することで自分たちの成長を感じることができました。

白組の現在

白組では現在は様々な協力を得ながらより良い作品を制作しています。


海上保安庁にお手伝いを依頼し海をよりリアルに再現する為、波の撮影や必要な資料を現地に赴いて取材する。 それでも潮目など リアルな部分が自分たちの想像と違った場合CGに頼る しかないときがあります。 リアリティが重要になってくる作品はとことんそこを突き詰めていく。 実写の欲しいところは実写を使用し、それ以外はCG使ってリアルさを表現していく


現在でも設計通りにいかないイレギュラーが起きる作品も多く存在するということです。


現在ではレンダラーもそのほかの機材も性能が高くなってきていますが、クオリティにこだわりを持って制作するためにも様々なCGの使い方をしています。時には俳優さんの体形が理想と少し違った場合などにはCGで顔を制作し、合成することもあります。


そのようにして様々な技術を用いて制作をしていくわけです。 とくにCGは1回のレンダリングではクオリティを上げることは難しいことが多く、何回もレンダリングを重ねて制作していくことは当たり前となってきています。



白組が求
める
スキル・人材

白組が求める人材

続いて、白組が今求めている人材についてご紹介します。


まず大前提として今までクオリティやこだわりの話が多く出てきましたが、みんなにどんなストーリーを伝えたいのかが重要であり、「パフォーマンス」を求められているわけではないのです。

ストーリーを伝えるためにクオリティを上げていく必要があるという訳です。


現在の白組にはその分野に特化した専門の方も沢山いますが、いろんなことができる人が働く上で増えています。

そこで白組が求めている人材として大きいのが 「1つのスキルで終わらないジェネラリスト」 です。

その1:ジェネラリスト

1つのことに特化している人を重宝していた時代ももちろんありますが、今は1人でより多くのことができる人がいることによって低コストでより良い作品ができるからです。そして媒体・ジャンルにこだわらず、自分がやりたいことはあるけれど、頼まれたものを全うできる人を大事にしているということです。ここで受講生時代に注意してほしいのが必ず作品を完成させるということです。

ジェネラリストはなんでもやるというのが仕事です。

まず、ジェネラリストになりたい方は必ず作品を完成させましょう。

中途半端になってしまうなどの場合は何かに特化したモデラーやアニメーターを目指すというのも1つの手です。

その2:モデラー

モデラー志望の方に受講生時代にやっておいてほしいことは 「絶対難しいものを作る」 です。かわいいものを作れるのは魅力ではあります。

ですが会社に入るためには 身の丈に合ったものを作らず、より難しいモデリングに挑戦してほしいです

モデリングをする際の注意点としてよく想像で作ってしまいがちになってしまいます。 モデリングをする際に はそのものをよく観察して制作してみてください。

その3:アニメーター

完全にあるものの動きをトレースできるようになっていてほしいです。

全部のコマをきれいにトレースすることが重要で、2,3コマでも大きな違いが出ます。

人間の足の向きなどの2,3cmまでもしっかりとトレースしてください。

そこで必ず大きな差がついてくるからです。


白組が求める人材になるためにできること

チーム制作に挑戦してみてください。


チームで協力して1つのものを制作することは会社では非常に重要になってきます。

基本的に会社ではチームでの制作しかしません。

学生時代はその中で空中分解をしてしまう事が多いと思います。

空中分解しないためにも 意見に対して聞く力が求められます。

よく言われる発言力が一番大事と言うのは間違ってはいませんが、聞く力の方が大切だと思います。

意見は否定ではなく、なぜそんな意見が出てくるのかを掘り下げ、具体性を引き出して試してみてそこからまた意見をもらう。これは実戦でしか得られない、経験が大事になってきます。

学生時代に皆さんに共通でやっておいてほしいこと

すべてを映像制作に捧げることです。 バイトや私生活以外はすべて映像に!といっても過言ではありません。 好きでやりたいのであればそれに忠実にしていくことが大事になってきます。


全部を費やすことが大事だと思っていて、これを9割の人がやっていません。

つまり、やったもん勝ちという訳です。


社会人になってやりたいことをしたいなら今多くの時間を映像に捧げることが大事になってきます。どんなに下手でも、どんなにだめでも大丈夫です。

1つの作品を制作した人より、10個の作品を制作した人の方が熱意を確実に先方に伝えることができるからです。


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Q&A


  • アニメをCGで再現する利点や何を求められているかを教えてください。

    コストの削減が利点だと思います。 手書きではコストがかかりすぎます。
    効率の良さ。早くいろんな人に作品を見てもらいたいと思ったときにCGを使用するこ
    とによって再現が早く、よりリアルになってくると思います。

  • アニメーターなどから監督になることはありますか?

    ポストプロダクション (※1) は基本技術職になってくるので監督になりたい場合、監督にさせる部署や場所はないので難しいです。 ですが、運が良くなれる場面に遭遇することがあります。自分で作った作品や実績を認められて監督になることもあるので演出部がある会社を選んで就職するなども重要になってきます。 1番は自分の作品を作るというのが早いかなと思っています。

    ※1:ポストプロダクションとは▶番組やパッケージメディアなどの映像作品、映画の製作における撮影後の作業の総称。 <Wikipedia参照>

  • 日本人がハリウッドで戦うにはどんな部分が武器になってきますか。

    ハリウッドで戦いたいならまずハリウッドに行くのが重要だと思います。


    日本人は真面目なのでハリウッドでは結構優秀です。間違いなく日本人が1番優秀だと思っています。ですがハリウッドは世界中から天才達が集まってくる場所なので、実績が大事になってきます。僕の知り合いではハリウッドに人脈を作って小さな会社からハリウッドに行っているというのが多いと感じています。

    以上のことから、まずハリウッドに行ってみるのが先決だと思います。 ですが個人の感想としては面白いなと思いながら制作できるところにいるのもいいなと思います。日本の映画やアニメは言語の壁があるので世界的に広がってないという部分は大きいと思います。加えて時代も関係ありますので、日本の良いところが世界に認められる時代も来るのではないかと思っています。いつの間にか日本の映画が人気になってメジャーになることも十分あり得ます。ですが それまで好きを制作していく持続力はとても大事になってきますね。

いかがでしたでしょうか。

現在映像制作で沢山の作品を世の中に発信している白組の歴史からどんな人材が重宝され
るかなどについてご紹介しました。

これから映像業界でVFXに携わり、活躍したいと思っている方々の参考になれば嬉しいです。




著者:デジタルハリウッド スクール 編集部