公開日:2026-08-30
「アニメのような絵を3DCGで作りたい」と思って調べ始めると、トゥーンシェーダーやセルルックといった言葉と一緒に、よくPencil+という名前が出てきます。ただ、公式サイトを開くと製品が何種類も並んでいて、自分の環境では何を使えばいいのか分かりにくいのも事実です。Pencil+とは、3DCGでペン画や色鉛筆のような描画、セル画のような表現を行うためのプラグインです。この記事では、Pencil+でできること、3ds Max・Maya・Blender・Unity・After Effectsそれぞれの製品の違い、価格と体験版、動作環境、そして使いこなすために必要な学習の進め方までを順に整理します。
Pencil+とは|アニメ調・セル画調の表現を実現するプラグイン
Pencil+とは、3DCGでペン画や色鉛筆のような描画、セル画のような表現を可能にするノンフォトリアリスティックレンダリングプラグインです。開発元はPSOFT(株式会社ピー・ソフトハウス)です。Maya版の製品ページでも「セル画のような表現を実現するノンフォトリアリスティックレンダリングプラグイン」と説明されています(出典:PSOFT公式製品ページ・2026年9月2日時点)。
写実的なCGを作るための道具ではなく、手描きのアニメやイラストに近い絵を3DCGで作るための道具という位置づけです。
セルルック・NPRとは何か
ノンフォトリアリスティックレンダリング(NPR)とは、写真のようなリアルさを目指さず、絵画やイラスト、アニメのような見た目を目指すレンダリングの総称です。日本語では非写実的レンダリングと訳されます。
セルルックは、そのNPRのなかでもセル画のようにフラットに塗られた面と、はっきりした主線(輪郭線)で構成されたアートスタイルを指す言葉です。アニメの絵は、影の階調を細かく再現するのではなく、明るい面と暗い面を数段階に割り切って塗り分けます。この割り切りをCG上で再現するのがトゥーンシェーダーの役割です。
セルルック表現そのものの仕組みはセルシェーディングの仕組みで詳しく整理しています。
Pencil+が担当する「面の塗り」と「輪郭線」
セルルックの絵は、大きく分けると「面の塗り」と「輪郭線」の2つでできています。3ds Max版の公式製品ページでは、フラットなトゥーン表現や鉛筆画のような質感を作るマテリアル機能と、可視線・隠線を描くライン機能が挙げられています。
ラインは輪郭をなぞるだけのものではなく、線の入り抜き(描き始めと描き終わりを細くする表現)を含むブラシ設定が用意されています。
ただし、マテリアルとラインの両方を使えるかどうかは製品によって異なります。この点はあとの早見表で整理します。
Pencil+でできること|5つの機能グループ
3ds Max版の公式製品ページでは、Pencil+ 4の機能がマテリアル/ライン/モディファイヤ/レンダーエレメント/ユーティリティの5系統に整理されています(出典:PSOFT公式製品ページ・2026年9月2日時点)。順に見ていきます。
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マテリアル(面の塗り)
フラットなトゥーン表現に加えて、鉛筆画のような質感、形状に沿ったハイライト、ストロークマップによるハッチングやラフスケッチ風の表現、光源色の影響、マテリアルの透明化が挙げられています。3ds Maxの場合はNitrousビューポート上でのリアルタイム表示にも対応します。 -
ライン(輪郭線)
可視線と隠線の描画に対応し、マルチスレッド対応のラインレンダリングエンジンを備えます。線の入り抜きを含むブラシ設定や、距離による減衰も設定できます。どこに線を出すかは、アウトライン、開いたエッジ、交差、スムージング境界、マテリアルID境界、選択エッジ、法線角度、ワイヤーフレームといったエッジ検出で指定します。外部参照への対応とEPSベクター出力も用意されています。 -
モディファイヤ
誇張したパース変形、陰影の計算を差し替える法線コピー、選択エッジモディファイヤが用意されています。なかでも法線コピーは、形状の見た目と陰影の付き方を切り離して調整できる機能で、トゥーンシェーダー特有のCGらしさを抑えたいときに使われることがあります。 -
レンダーエレメント
マテリアル要素とライン要素を個別に出力でき、ラインのZ深度出力やEPS出力にも対応します。さらに、After Effects上でラインを再編集できるPLDファイルを書き出せます。 -
ユーティリティ
複数マテリアルのパラメータを一括変更するPencil+ 4 Spreadsheet、Pencil+ 3のデータを移行するPencil+ 4 Converter、アプリケーション間で設定を受け渡すPencil+ 4 Bridgeが提供されています。
CGのマテリアルは物体表面の質感を決める設定のことで、Pencil+はこれをアニメ的な塗りに置き換える役割を担います。ラインについては、どこに線を出すかを細かく指定できることが、手描きに近い画作りにつながります。
書き出したPLDはAfter Effects版のPencil+で読み込み、3DCGソフト側で再レンダリングせずにラインのパラメータを再設定・再編集できます。工程ごとに分けて出力する考え方はレンダリング全般に共通する実務で、何を出力できるかは使うレンダラーの種類と選び方にも左右されます。
Pencil+ 4の製品ラインナップと対応ソフト早見表
2026年9月2日時点で、Pencil+の最新はPencil+ 4系です。PSOFTの製品一覧にPencil+ 5に相当する製品は掲載されておらず、ニュース一覧にもPencil+ 5の発表・リリース告知はありません。
一方で、対応するソフトは3ds MaxとMayaだけではなくなりました。公式の製品一覧には、Blender・Unity・After Effects向けの製品と、ライン描画を担当するスタンドアロンアプリも掲載されています。
| 製品名(公式表記) | マテリアル(面の塗り) | ライン(輪郭線) | 備考 |
|---|---|---|---|
| PSOFT Pencil+ 4 for 3ds Max | ○ | ○ | スキャンラインレンダラーを使用 |
| PSOFT Pencil+ 4 for Maya | ○ | ○ | Mayaソフトウェアレンダラーを使用 |
| PSOFT Pencil+ 4 Material for Blender | ○ | − | BlenderのEEVEE上で動作 |
| PSOFT Pencil+ 4 Line for Blender | − | ○ | 描画にRender Appが必要 |
| PSOFT Pencil+ 4 Line for Unity | − | ○ | ライン専用 |
| PSOFT Pencil+ 4 Line for After Effects | − | ○ | PLDファイルを読み込んで再編集 |
| PSOFT Pencil+ 4 Render App | − | ○ | 外部アプリからデータを受け取り描画結果を返す単体アプリ |
出典:PSOFT公式製品ページ(2026年9月2日時点)
表のとおり、3ds Max版とMaya版はマテリアルとラインの両方を含むフル版です。一方、Unity版とAfter Effects版はライン専用製品で、マテリアル(トゥーンシェーダー)機能は含まれません。Blender版だけはMaterialとLineが別々の製品として提供されています。
Render Appは、外部アプリケーションからライン描画に必要なデータを受け取り、ライン描画結果を返すスタンドアロンアプリケーションです。各製品はこまめに更新されているため、導入前に公式のニュース一覧で最新の提供状況を確認してください。
BlenderでPencil+を使うには|無料で使える範囲と有償になる部分
結論から書くと、BlenderでPencil+のラインを使う工程は、無料だけでは完結しません。
Pencil+ 4 Line for Blenderは、GNU General Public Licenseに基づく自由でオープンソースなソフトウェアとして無料で配布されています。ただしPSOFTの発表では、次のように明記されています。
※重要:Pencil+ 4ラインのレンダリングには別途「PSOFT Pencil+ 4 Render App」のライセンスが必須となります。
(出典:PSOFT公式プレスリリース)
アドオン自体は無料で入手できても、実際にラインを描画するには有償のRender Appが必要という構成です。ここが最も誤解されやすい部分です。
面の塗りを担当するPencil+ 4 Material for Blenderは別製品で、こちらは有償のアドオンです。BlenderのEEVEEレンダラー上で動作するトゥーンシェーダーで、トゥーンレンダリング、グラデーションのオフセットマップ、マテリアルの一括変換、レンダーエレメント出力などの機能を持ちます。Material for Blender側には輪郭線を描く機能はなく、ラインにはLine for BlenderとRender Appの組み合わせが必要とされています。
対応環境(2026年9月2日時点)
Line for Blenderが対応するBlenderのバージョンは3.0系から5.2まで、対応OSはWindows 10・11とmacOS 13.0以上です。Material for Blenderの対応OSは「Blenderの動作環境に準拠」と案内されています。
(出典:PSOFT公式製品ページ)
Render Appには14日間の体験版が用意されているため、購入前に自分のシーンで線の出方を確かめられます。
Pencil+の価格・ライセンス・体験版
Pencil+の価格は製品ごとに大きく異なります。ダウンロード版・パッケージ版・製品コード版・ネットワークライセンスで金額が異なり、改定が行われることもあるため、本記事では金額を掲載していません。購入前にPSOFT STORE(公式)で最新の価格をご確認ください。
Blenderでラインを使う場合はRender Appの購入が前提になります。Render Appについては公式サイト内で価格の表記が一致していなかったため、あわせて公式サイトでご確認ください。
ライセンスにはスタンドアロンとネットワークの2種類があります。スタンドアロンは1台のPCにつき1ライセンスが必要で、他のPCへライセンスを移す場合は再オーソライズが必要です。ネットワークは、同時に使用するPCの台数分のライセンスが必要な形式で、PCの入れ替えを行いやすいと案内されています。いずれも1ライセンスで、同じPC上の複数の異なるホストアプリケーションバージョンに使用できます。
学生の方が気になるアカデミック版(学割)は、2026年9月2日時点でPencil+には用意されていません。PSOFTのFAQでは「アカデミック版は弊社オーディオ製品の一部 (VOID Modular System) にのみ設けております」と説明されています。
購入前に試したい場合は体験版があります。公式のダウンロードページでは、3ds Max版の体験版について次の制限が案内されています。
- レンダリングイメージに透かしが入る
- マテリアル・ライン・モディファイヤ設定を保存できない
- EPS・PLD出力機能が使えない
- サポート対象外
Render Appは14日間の体験版です。Maya版・Unity版・After Effects版でも体験版が配布されています。
セルルックCGを、道具の使い方だけで終わらせないために
Pencil+のようなプラグインは、モデリングやマテリアル設計、ライティング、コンポジットの土台があってはじめて狙った絵に近づきます。デジタルハリウッドの3DCGデザイナー専攻では、モデリングからアニメーション、仕上げまでを制作の流れに沿って学べます。カリキュラムや通い方は無料の資料でご確認いただけます。
説明会・資料請求ともに無料/3DCG系の専攻は東京本校・大阪本校で開講/オンライン参加可
Pencil+の動作環境(対応する製品と対応OS)
2026年9月2日時点の対応状況は次のとおりです。
| ソフト | 対応する製品 | 対応OS |
|---|---|---|
| 3ds Max | Pencil+ 4 for 3ds Max(スキャンラインレンダラーを使用) | Windows |
| Maya | Pencil+ 4 for Maya(Mayaソフトウェアレンダラーを使用) | Windows |
| Blender | Pencil+ 4 Line for Blender / Pencil+ 4 Material for Blender | Line版はWindows 10・11とmacOS 13.0以上/Material版はBlenderの動作環境に準拠 |
| Unity | Pencil+ 4 Line for Unity | Windows |
| After Effects | Pencil+ 4 Line for After Effects | Windows |
| 単体アプリ | Pencil+ 4 Render App | Windows 10・11/macOS 13.0以上 |
出典:PSOFT公式製品ページ(2026年9月2日時点)
対応するホストアプリケーションのバージョンは製品ごとに定められており、更新もあわせて行われています。Unity版はHD Render Pipeline(HDRP)、Universal Render Pipeline(URP)、Post-processing Stackに対応しています。導入前に、使いたいソフトのバージョンが対象に含まれているかを公式の動作環境ページで確認してください。
Windows前提の製品が多い点は押さえておきたいところです。Line for BlenderとRender Appは、Windows 10・11に加えてmacOS 13.0以上に対応しています。Maya版・Unity版・After Effects版はWindowsのみの対応です。対応状況は更新されるため、導入前に公式の動作環境を確認してください。
Pencil+を活かすために身につけたいスキルと学習の進め方
Pencil+はセルルック表現の仕上げを担うツールです。線の設定を詰めれば絵がよくなるというより、その手前にあるモデルとマテリアル、ライティングの設計が絵の印象を決めます。順序としては、次のように進めると無理がありません。
3DCGの基本操作を身につける
モデリング・UV展開・マテリアル・ライティング・レンダリングを一通り触れるようにします。
セルルックに向いた形状とマテリアルを設計する
面の割り方や陰の落ち方を意識して、絵として成立する形をつくります。
ラインの設定とレンダーエレメントの扱いを覚える
どこに線を出すか、何を個別に出力するかを決められるようにします。
コンポジットで仕上げる
PLDを使えば、ラインの調整を後工程に回せます。
まず体験版で自分のシーンに線を出してみると、次に必要な準備が具体的に見えてきます。
一方で、アニメ調の絵作りは工程が多く、狙った絵にならない原因がモデルにあるのかマテリアルにあるのかライティングにあるのかを独学で切り分けるのは、時間がかかりやすいところです。個人差はありますが、制作の流れを一通り経験してから細部を詰めたほうが早いケースが多いと考えられます。
デジタルハリウッドの3DCGデザイナー専攻では、モデリングからアニメーション、仕上げまでを制作の流れに沿って学べます。より本格的にプロを目指す場合はCG/VFX専攻(本科)という選択肢もあります。学ぶ範囲や順番は3DCGデザイナー専攻のカリキュラムで確認できます。3DCG系の専攻は東京本校・大阪本校で開講しています。
手描きのアニメ制作そのものの工程に関心があればデジタル作画も合わせて読むと、作画とCGの関係が整理できます。実際にどのような作品づくりにつながるかは、卒業生がどのような作品を制作しているかが参考になります。
Pencil+についてよくある質問
QPencil+ 5は出ていますか?
2026年9月2日時点で、PSOFTの製品一覧にPencil+ 5に相当する製品は掲載されていません。ニュース一覧にもPencil+ 5の発表・リリース告知はなく、現行の最新はPencil+ 4系です。
QBlenderでは無料で使えますか?
Pencil+ 4 Line for BlenderはGNU General Public Licenseに基づいて無料で配布されていますが、ラインのレンダリングには別途Render Appのライセンスが必須と案内されています。面の塗りを担うPencil+ 4 Material for Blenderも有償です。価格はPSOFT STORE(公式)でご確認ください。
Q学割(アカデミック版)はありますか?
2026年9月2日時点で用意されていません。PSOFTのFAQでは、アカデミック版は同社オーディオ製品の一部にのみ設けていると説明されています。
Q買う前に試せますか?
体験版が配布されています。3ds Max版については、透かしが入ること、設定の保存とEPS・PLD出力機能が使えないことが公式に案内されています。Render Appは14日間の体験版です。
QMacでPencil+は使えますか?
2026年9月2日時点で、Pencil+ 4 Line for BlenderとPencil+ 4 Render AppがmacOS 13.0以上に対応しています。Material for Blenderの対応OSはBlenderの動作環境に準拠すると案内されています。Maya版・Unity版・After Effects版はWindowsのみの対応です。そのほかの製品の対応OSは、公式の動作環境ページでご確認ください。
まとめ
Pencil+とは、3DCGでセル画のようなアニメ調の表現を行うためのプラグインで、面の塗りを担うマテリアルと輪郭線を描くラインが中心です。3ds Max版とMaya版は両方を含むフル版、Unity版とAfter Effects版はライン専用、Blender版はMaterialとLineが別製品という構成になっています。
特に押さえておきたいのは、Line for Blenderが無料でも、ラインの描画には有償のRender Appが必要という点です。価格や対応バージョンは更新されるため、導入前に公式サイトで最新の情報を確認してください。
まずは体験版で線を出してみて、そのうえで足りない土台を埋めていくのが現実的な進め方です。
アニメ調CGを仕事にする進め方を、個別に相談してみませんか
どのソフトから始めるか、どこまで独学で進めてスクールを使うかは、これまでのご経験や使えるお時間によって変わります。デジタルハリウッドのスクール説明会では、目指したい表現や職種をうかがったうえで、学ぶ順番や通い方の選択肢を個別にご案内しています。
説明会・資料請求ともに無料/3DCG系の専攻は東京本校・大阪本校で開講/オンライン参加可
デジタルハリウッド スクール 編集部
1994年の開校以来、Web・映像・3DCG・AIなどデジタルクリエイティブの教育に取り組んできたデジタルハリウッドの編集部です。本記事の製品構成・価格・ライセンス・動作環境は、PSOFTの公式製品ページおよびPSOFT STORE(2026年9月2日時点)の記載にもとづいて整理しています。