コンセプトアートとは?書き方や必要なスキルを解説!

コンセプトアートとは?

「コンセプトアート(Concept Art)」とは、映画やゲームなどで主に使用されているプロジェクトのデザインイメージ、アイディアや雰囲気などのビジュアルコンセプトを事前に視覚化し、絵として表現した設計図です。コンセプトデザインや、ビジュアル開発と呼ばれることもあります。

イメージを説明、提案するためのものであり通常のイラストや特定のテイストの描き方を指すものではありません。架空の風景などのシチュエーションの他にも、その中にあるアイテムであるアセットデザイン、プロップデザインもコンセプトアートと呼ばれます。

コンセプトアートの目的と役割

前途の通りコンセプトアートとは、映画やゲーム、またアニメーション、漫画、建築物など作るものの完成系イメージを事前に伝えるためのものですが、コンセプトアートを描く目的と役割は主に2つの種類があります。

1つは、具体的に「キャラクター」「コスチューム」「SFの道具や機器、乗り物」「背景」などを描き、携わるメンバーに伝えることを目的とする場合です。企画書や会議で出来上がった漠然としたイメージからコンセプトアーティストがコンセプトアートを作成することで、他の制作スタッフに視覚的に世界観やイメージの共有ができます。

もう1つは、企画段階の作品をプロデューサーや映画の製作委員会などの出資者に作品の内容を伝えて承認してもらうために描く場合です。こちらの場合は、その物語や作品が伝わるような絵を描くこと、企画書(文字)では伝わらない『ニュアンス』『世界観』『『雰囲気』を描くことが主な目的となります。

コンセプトアートが多く使われるジャンル

コンセプトアートが多く使われるのは、ファンタジーやSF(サイエンス・フィクション)を題材とした制作現場です。1937年の「白雪姫」や、1940年の「ピノキオ」からはじまり、世界中で人気の作品を生み出すディズニーのコンセプトアートは大変有名です。日本では「モンスターハンター」「ドラゴンクエストX」「ファイナルファンタジーXI」など、ゲーム業界が世界に誇る大作などがあります。

また近年ではVR(バーチャル・リアリティ)コンテンツの発展により、ゲームや映画以外でもコンセプトアートを使いプレゼンテーションをすることは普及していくと思われます。

コンセプトアートの構成の考え方と描き方

構成の考え方

コンセプトアートとは、映画やゲームなどで主に使用されているプロジェクトのデザインイメージ、アイディアや雰囲気などのビジュアルコンセプトを事前に視覚化し、絵として表現した設計図というのは、本記事でご紹介してきた通りです。

プロジェクトに関わる人全員にイメージが共有できるようなイメージが必要になります。

まずは、コンセプトアートの作成にうつる前段階として、スケッチを行うアーティストが多いです。この段階では、誰にでも伝わるものを描く必要はなく短時間でラフをたくさん描いていきます。普段から小説を読んだり、映画を見たり、演劇を見たり、写真撮影を自分で行ってみるなど多くのエンターテインメントに触れていると、こういったスケッチの際に、アイディアが浮かびやすく、構図の参考にもなります。

いくつかラフスケッチを描く中で、このシチュエーションが良いかなどが思い浮かんだらその絵にバリエーションを持たせて描いていきます。

描き方

コンセプトアートの描き方は、コンセプトアーティストによって様々です。

今回は、描き方の一例をご紹介します。


構成の考え方でご紹介した通り、まずはラフスケッチでアイディア出しをしていきます。

その後、ラフスケッチをベースに詳細の絵を仕上げていきます。


①ラフスケッチをスキャンしPhotoshopに取り込み、シルエットをつけていく

スキャンした絵をグレーのシルエットに分けていきます。立体の把握は線画のままでは難しいのでグレーのシルエットに分けていきます。


②グレーのシルエットに明暗をつけ立体感を把握する

線画を非表示にし、シルエットを調整しながら明暗に差をつけていくことで手前と奥の位置関係などの立体感を把握しやすくなります。メインのモチーフは、Photoshopの雲やフォグ(濃霧)などのブラシを使い厚塗りをしていきます。

実際に3DCGにしたときとのギャップを減らすために、シャープなシルエットで書いていくこともおすすめです。また、全体のバランスを見るために左右を反転させてみると歪みに気づくこともできます。

全体に明暗をつけ全体イメージや奥行きや光源といった雰囲気をつかんでおくことが、効率よくコンセプトアートを仕上げていくことにもつながります。


③シルエットを固有色で塗っていく

シルエットを固有色でベタ塗りを行いつつ、絵の密度をあげていきます。

どのような絵に仕上げるのかにもよりますが、ブラシの透明度を調整しながら状況にあわせてブラシでテクスチャをつけていきます。


④細かな部分を描きこんでいく

例えば、背景であれば雲や水面などの詳細を描いていきます。注意点としては、全体が均一化しないよう描きこみを行うことです。魅せたいところや視線が集まりやすい部分を中心に進めると良いでしょう。


⑤効果レイヤーを使用する

オーバーレイ、ハードライト、乗算などのレイヤーを使用し光や影をつけていきます。

特に、オーバーレイは、使用することで色の変化が起こりますので注意しながら使用しましょう。レイヤーを用い、全体を調整して完成となります。



コンセプトアートに必要なスキル

コンセプトアーティストには、以下のようなスキルや知識が求められることが多いです。

  • モノ(形式や事象)を観察しカタチにするスキル

抽象的なオーダーでも具現化する力が必要になるのが、コンセプトアーティストの仕事の一つです。

企画相や絵コンテなどをもとに、コンセプトを絵に表していくスキルが必要になります。

それも、自分だけが理解できる絵ではなく、背景を描く画力と併せて、誰もが見て分かるようなビジュアルを描いていくことが重要です。
様々なオーダーで良いアウトプットができるよう日頃から多くの作品を見て自分にインプットをすることが大切です。そのため、ゲームや映画に対する理解とモチベーションが求められる職業でもあります。


  • 3DCG(Maya、3ds Maxなど)のツールの経験
  • 2Dツール(PhotoshopやIllustrator)の使用経験

制作は主にデジタルツールで行われます。上記に記載しているようなツールは必須になりますので多様なソフトを使えることが求められます。

基礎的なツールであるPhotoshopやIllustratorが使いこなせないとコンセプトアーティストになるのは難しいでしょう。また、現場によって使用するソフトが異なることもあります。


  • コミュニケーション能力

基本的に、コンセプトアートは一人で作っていくものではなくチームで作業を進めていくことが多いです。監督やクライアントの意向を組んで描くこともあるため、協調性を持ちながらコミュニケーションを取っていくことが必要になります。

コンセプトアートに向いている人

コンセプトアーティストに向いているのは、以下のような方です。


・世界観や風景を絵で表現するのが得意

・イラストや絵を描くことが好き

・デッサン力がある

・人と強調しながらものごとを進めることができる(コミュニケーション能力)

・向上心を持って知識やスキルを身につける努力ができる

・粘り強く取り組むことができる


コンセプトアートは、細かな修正や工程を踏んで完成となるため、根気強く取り組む力が必要になります。様々なシーンや世界観を表現するために、普段からたくさんの作品を見てインプットをしたり、表現の幅を広げるために、2Dや3Dのソフトの知識やスキル習得に励むことのできるようなモチベーションがある方も向いていると言えるでしょう。

コンセプトアーティストのキャリアパス

CGを学ぶ方の中でも近年、人気の高いコンセプトアーティストですが、どのようなキャリアパスを歩むのかは人それぞれです。

コンセプトアーティストは、アーティストと名の付く通りアーティスト性の高い職種です。自分にしか表現のできない個性のある絵が求められる一方で、監督やクライアントの意向をくんで表現するスキルが必要になるなど一人ではなく、チームでコミュニケーションを取りながら仕事を進めていきます。イラストレーターを担当しながら、コンセプトアーティストも担うなど会社によって、働き方は変わっており明確なキャリアパスはありません。

会社に所属するコンセプトアーティストは、経験を積むとアートディレクターなど現場のチームをまとめていく職に就く方も多いです。

コンセプトアートを描く上で参考になるおすすめ本

現役CGクリエイターであり、本校のCGコースの講師を勤める講師陣よりおすすめの本を紹介していただきました。コンセプトアートを勉強する方は、ぜひ参考にしてみてください。


推薦講師:関講師

おすすめの本①:THE SKILLFUL HUNTSMAN うでききの狩人

講師コメント:個人的に影響を受けた本です。2007年発行ですが学校の優秀生が描き、先生のコメント形式でいろんな視点がはいっていて勉強になります。

おすすめの本②Phenomena: Art of Asura

講師コメント:現在、在庫がない本にはなりますが、コンセプトアートを学ぶ上で参考になります。


また、多くの書籍を購入されてきた関講師ですが、今も手元に残っているの4冊を教えていただきました!

タイトル:FINAL FANTASY XIV: A Realm Reborn The Art of Eorzea - Another Dawn

タイトル:The Art of Assassin's Creed III

タイトル:STARWARS SCIENCE and ART


推薦講師:田島光二講師

講師コメント:有名映画のアートブックはおすすめです!

最近(2022年時点)でいうと、マンダロリアンのアートブックはよかったです。
技法書でいえばスコットロバートソンの本がおすすめです。


まとめ

今回の記事では、コンセプトアートとは何かといったことから、コンセプトアートの描き方の一例、必要なスキルなどをご紹介させていただきました。

コンセプトアートは、ゲームやアニメ・映画の中に出てくるキャラクター等をより一層魅力的にみせ、世界観を演出するために必要不可欠です。

過去には、Industrial Light & Magicにて、シニアコンセプトアーティストを勤める田島 光二氏によるイベントを開催したことがあります。コンセプトアーティストに限らず、映像制作に携わるために大切なことを伝えてくれましたので過去のイベントレポートもご参考ください。


また未経験からコンセプトアーティストを目指したい方は、CGの基礎から応用までデジタルハリウッド(専門スクール)のCGコースで学ぶというのも一つの手です。迷われている方はまず一度、説明会にご参加ください。

関連ワード

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部