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ディズニーで働く堀グレイスさんによるセミナーを開催しました
現在は Walt Disney Animation Studios にて Effects Animator として、2021年11月に公開し、現在はディズニープラスで配信中の『ミラベルと魔法だらけの家(原題 Encanto)』、同じくディズニープラス配信予定の映画『ズートピア』の新シリーズ『ズートピア+』、2022年11月23日公開ディズニー最新作『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界(原題Strange World)』等の制作に携わる堀グレイスさんが帰国に際して、自身のCGクリエイターへの道を語っていただくイベントを開催しました。
登壇者紹介
堀グレイス さん
本科CG/VFX専攻卒業
入学前
広告代理店営業、映像制作会社2DCGデザイナー
卒業後
Walt Disney Animation Studios, Effects Animator
インタビュアー小倉以索 講師
千葉工業大学 工学部電気工学科卒業、デジタルハリウッド研究所研究生として、eAT KANAZAWAにて特別賞を受賞し退所後、フリーのCGデザイナーとして活躍。 映画「劇場版銀河鉄道999」「ハッピーフライト」、ゲームソフト「デッド オアアライブ」ライブビデオ・DVD「ウラスマ」(スマップ)、TV番組「たけしとひとし」、iPadアプリ「中田英寿2010南アW杯」、などのCG担当やその他CMのCGなど多数手掛けている。 また、1999年からデジタルハリウッド講師として人材の育成にも注力している。
デジタルハリウッド卒業後、ハリウッドを代表するCG専門学校へ再進学!
堀さんはデジタルハリウッドを卒業後、ハリウッドを代表するCG専門学校Gnomon School of Visual Effects(※以下ノーモン)に入学されました。まずは再進学についての質問に答えていただきました。(以下敬称略)
小倉: 就職前に、学校への再進学をしたと伺っています。
堀: はい。私の場合ゆっくり学ぶのが好きなのでもう一年間しっかり勉強して就職したいなと思いました。
小倉: 向こうの専門学校は学費が高いですよね。
堀:
そうなんです。日本の学校の4~5倍くらいしますね。その分いい機材などを使っていますが。
世界基準で見るとデジタルハリウッドはすごく安いですよね。デジタルハリウッドでは各課題で、自分一人で1本作品を作り上げる必要があるので、モデリングからテクスチャ・アニメーション・リギング・レンダリング・コンポジットすべてやるっていうのはすごくいい勉強になると思いますし、3DCGの原理やファンデーション(土台)を学ぶのによいと思います。
小倉: アメリカに行って勉強しながら仕事などはしていたんですか?
堀:
基本的にずっと勉強していて、たまに日本からフリーランスで仕事を受けたりしていたんですが、
周りの学生のレベルがとんでもなく高かったので、途中からはおしりに火がついて、学校にこもって勉強しなきゃと思い、後半はずっと勉強でデモリールをブラッシュアップしたりしていました。
アメリカで就職、そして転職してディズニーへ!
堀さんはノーモン卒業後、就職されます。その1社目の就職はなんと小倉講師との縁がつながり入社できたそうなんです。どんな流れで就職されたのか伺いました。
小倉: 最初の会社に入るきっかけはなんだったんですか?
堀:
率直に言うとコネクションですね。
ネットで採用情報を探して応募していたんですが、返事もアクセスも来ない状態がずっと続き、たまにアクセスがあってもお祈りメール(お断りの内容のメール)という感じで1年くらいたってしまいました。ちょうどその時にたまたまロサンゼルスでシーグラフがあり参加したんですね。
※シーグラフとは、1年に1回開催されるアメリカのコンピュータグラフィックスの学会。
学会ではありながら就職相談窓口や作品発表の場、論文や展示があるコンピュータグラフィックスのお祭りのようなトータルイベント
その時に小倉先生がいらっしゃり、会場近くのハンバーガーショップで一緒にランチをしてたら、たまたま小倉先生のお知り合いの日本人のVFXアーティストが通りかかり、名刺交換などをしたら一週間以内に連絡があり、それからはとんとん拍子で2週間以内で1社目が決まりました。
小倉: 一社目ではどんな仕事をしていたんですか?
堀: Houdiniを使ってエンジニアに近い仕事をしていました。
小倉: 0からディズニーに就職するのは難しくても、Houdiniを使って仕事をした1社目の経験があったからよかったですね。
堀: 特にテクニカルなエンジニアに近い仕事だったことが、ディズニーでも強みとして生かせましたね。
憧れのディズニー入社!採用の決め手やディズニーの雰囲気は!?
その後、転職をし、ディズニーに入社された堀さん。採用理由を聞いてみました。
小倉:
堀さんはコミュニケーション力が高いですよね!実は入社するときもそういうのが理由だったんですか?
堀:
入社したときに上司に聞いたんですよ。なんで採用されたの?って。
世界中から応募しているはずですし。そうしましたら「一緒に働いてて楽しそうだから」って言われました。
面接はこんな感じでニコニコしていきました。(セミナー中もずっとニコニコされていらっしゃった堀さんでした)一緒に働いてて働きやすいかっていうのはどこの会社でも大事だと思っています。このコミュニケーション力に関しては、一社目の営業の経験がすごくいきてると思いますし、人によって強みは違うと思います。
小倉: 実際働いてみて、仕事の雰囲気はどうですか?
堀:
3作品携わりましたが、作品によって雰囲気が違って楽しいです。
人と仕事しているなぁという気持ちです。
基本みなさんポジティブで、最初褒めて、でもここ直したほうがいいよ、と言った後最後にまた褒めるといったハンバーガー形式で進めてくれます。ディズニーは雰囲気がとても良い会社です!
ディズニーでの仕事内容を教えて!
小倉:
実際にディズニーでどんなお仕事をしているんですか?
肩書としてはエフェクトアニメーターだと思うのですが具体的なお仕事を教えてください。
堀:
エフェクトアニメーターは端的に言うと画面の中で動いているキャラクターと生き物以外のものをすべて担当しています。水とか煙とか花火とか風に舞う葉っぱなど。
あとはディズニーではパーティクル(例:ティンカーベルのキラキラ)などもすべてエフェクトアニメーターが担当しています。
小倉:
人間に関わる髪の毛やお洋服は他の方ということですよね。
そのエフェクトはディズニーではHoudiniを使っているんですね。
堀: はい、全部Houdiniでやっています。
仕事の流れを教えて!
小倉: 具体的などんな仕事のルーティンですか?
堀:
プロジェクトが始まると自分の担当の各ショットにビットというざっくりとした所要時間が記載されていて、何月何日までにこのショットを担当しますとスケジュールが公開となります。
それをもとにショットを作り始め、デイリーという毎日進捗を共有する場があり、最終的にいいなというところまでいけたらスーパーバイザー(上司)に見てもらって修正が出れば修正し、OKが出たら次のショットへ移ります。
小倉: エフェクトはレンダリングをしないと、分からないと思うのですが、レンダリングまでして見せるのですか?
堀: そうですね、ただレンダリングは時間がかかってしまうので、フリップブック(※レンダリングをせずに再生してみることができる機能。Mayaでいうプレイブレストに近い機能)で見せて、それでOKが出たら、本格的にレンダリングをしてみようということもあります。
小倉: ライティングしてみたら全然映らないといったショッキングなこともありますか?
堀: 超あるあるですね!そのため、エフェクトとライティングは密にコミュニケーションをとったほうがいいと言われています。私も、ショットができたらすぐにライティング担当の方にすぐに連絡するようにしています。
小倉: 1つのエフェクトあたりどれくらいかけるんですか?
堀:1つのエフェクトに5日くらいです。
小倉: 早いですね!(※アニメーションなどはもっとかけるのが普通だそうです)
1日の流れ
仕事スタート
┗スタートは午前9時から。コーヒーを飲んで仕事をスタート!
シリアル、フルーツ、コーヒーは無料で提供されているそうです。
デイリーにて進捗共有
┗ 忙しくなってくると1日数回デイリーが行われることも!
ランチ
┗ 社内カフェテリアの日もあれば、車の乗ってみんなでレストランに食べに行くことも!
仕事終了
┗午後7時にピッタリ仕事終了です。ロサンゼルスは残業に厳しいんだそうですよ!
コロナ禍での入社!
全世界で仕事の仕方が変わったコロナ禍。ディズニーもリモートを導入しての仕事だったそうです。そんなコロナ禍真っただ中に就職された堀さんに当時の様子を伺いました。
小倉:
コロナかど真ん中で働いていましたがいかがでしたか?
堀:
最初から研修含め全てリモートだったので不思議な感じでしたが、ZOOM越しにもすごくウェルカム感を出してくれてよかったです。
リモートもメリットデメリットあるかと思うのですが、メリットに感じたことは、質問するときに言葉で伝えるとうまくまとめるのが難しいこともあるのですが、テキストで伝えるときに整理して伝えることができるのはいいなと思いました。
また、定期的に4人の同期と週1くらいでZOOM会をやっていたので寂しい気持ちになりませんでした。
不便だったことは、人と人とのやり取りが少ないので、仕事で悩んでいる時に抱え込みがちになってしまいました。早めに相談しないといけないな、と思いましたね。
個人的な会話はなかなかできないので、深い関係は作りにくかったです。最近、ようやく出勤するようになって、たくさん話すようになり知れたことも多いので、同僚のことをよく知るには会ってしゃべることが大事だなと思いました。
これからCGクリエイターになりたい方が今できることは?
現在CGの勉強をしている方も、CGの勉強を始める前の方も役立つ質問に答えてくださいました!
制作するうえで大切にしていることは何ですか?
クリエイターとして所属しているので、クリエイティブなことができるのは当たり前だ、と思っていてプラスαで何ができるかを考えるようにしています。
私ならではの付加価値を作ろうと思っていて、私は人と話すことが好きなので、他の部署の方と積極的にコミュニケーションをとることを意識しています。
ディズニーで働く中でのエピソードはありますか?
こんなルールがあるんだ!と驚いたことが1つあります。
エフェクトでキャラクターの顔を隠すのはご法度、ということです。
そのルールを知らなかったので、花びらが舞うエフェクトを作ったときに顔の前に花びらを散らしてしまったことがありました。顔の表情でストーリーが伝わっていくので、顔を隠しちゃダメだよ、と教えてもらい、後から花びらを消す作業が発生しましたね。そういった細かいこだわりがあるのはさすがだな、と思いました。
これからCGクリエイターになりたい方が今できることは?
①人脈を広げること
同じ学校の人と一緒に仕事することが多いと思います。
繋がりがすごく必要になったりします。
日本で働いているときはデジタルハリウッド生1人は絶対どこに行ってもいましたよ!
ぜひ、同じクラス、違うクラス、講師とかと繋がりを持ってほしいです。
②目を肥やしてほしい
いい作品をとにかく見て目を鍛えてほしいと思います。
日本いるとき、実は私はあんまり見ていなかったんです。ですが、みんなで感想言い合ったりする、今は流行ってる映画等、作品名がとにかく出てくるんですね。
自分の作品にも反映されるし、違和感に気づくようになれます。美術館行くでも映画見るでもストリーミング見るでもいいと思うので、ぜひたくさん作品を見るようにしてみてください。
いかがだったでしょうか?
デジタルハリウッドに入学を希望される方からもディズニーは憧れです!という声を多く聞きます。今回、実際に働かれている堀さんにさまざまな質問にも答えていただける貴重な機会となりました。
また帰国の際にはぜひ学校に遊びに来てくださいね!とお伝えし、今回のセミナーは終了となりました。
みなさんも、堀さんに続いて、世界で活躍してくださいね!