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【東京本校/イベントレポート】
本科デジタルアーティスト専攻の講師が直接解説!
アートとテクノロジーの交差点でおこっていることとは?

2019-01-08

こんにちは!
デジタルハリウッド東京本校の鳥井です。


先日、デジタルハリウッドでは、近未来教育フォーラム2018 The ART into Future が開催されました。今回は、そのなかの Art & Media Track で行われたセッション「山口からこんにちは!アートとテクノロジーの交差点でおこっていること」の模様をお伝えいたします。


パネラーは菅沼 聖さんと会田 大也さんのお二人。菅沼さんは、山口情報芸術センター[YCAM] のエデュケーターでいらっしゃいます。一方、会田さんは、YCAMにて、開館当初より教育普及担当としてプログラムのプロデュースに従事した後、今年は愛知県で3年に1度開催される国内最大級の現代アートの祭典、あいちトリエンナーレ2019のラーニングプログラムのキュレーターを担当しながら、東京本校で開講する 本科デジタルアーティスト専攻 の主幹講師を務められます。


アートとテクノロジーの交差点では、何がおこっているのでしょうか!?YCAMの実際の事例を交えつつ、まさにアートとテクノロジーが交差した表現者になるのを目指す、本科デジタルアーティスト専攻では何を学ぶのか、早速みていきましょう。

ゲスト紹介

写真のポーズは、“山口”のハンドサイン

菅沼 聖 氏

山口情報芸術センター[YCAM] エデュケーター

1982年生まれ。愛知県出身。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]卒業。2009年から山口情報芸術センター[YCAM]で勤務。YCAMでは、オリジナルワークショップの開発やファシリテーションといった教育普及全般および地域資源の活用に関する研究開発プロジェクトの企画を担当している。近年はラボ機能を内包する文化施設のリサーチも行っている。

会田 大也 氏
本科デジタルアーティスト専攻 講師

山口情報芸術センター[YCAM]にて、開館当初より教育普及担当としてオリジナルワークショップの開発や、教育普及プログラムのプロデュースを行う(2003〜2013年)。担当ワークショップは第6回キッズデザイン賞大賞を受賞。担当企画展示「コロガルパビリオン」は第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品受賞。2014年より東京大学大学院ソーシャルICTグローバル・クリエイティブ・リーダー[GCL]育成プログラム特任助教。

YCAM(ワイカム)とは?

通称「YCAM(ワイカム)」は、山口情報芸術センター(Yamaguchi Center for Arts and Media)のことです。山口県山口市にあるアートセンターです。本科デジタルアーティスト専攻では、合宿でも訪れます。


展示空間のほか、劇場、映画館、図書館、ワークショップ・スペースなどを併設しています。2003年11月1日の開館以来、メディア・テクノロジーを用いた新しい表現の探求を軸に活動しており、展覧会や公演、映画上映、子ども向けのワークショップなど、多彩なイベントを開催しています。

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実際のYCAMの映像を見せる菅沼さん

アートとテクノロジーの交差点でおこっていることとは?

YCAMでは、「R&D(研究開発:Research & Development)プロジェクト」と呼ばれる形態を中心に、多数の事業を実施しています。菅沼さんは、その R&D で重視している「芸術表現」、「教育」、「コミュニティ」という3点について、アートとテクノロジーの交差点でおこっていることについて、それぞれ作品事例とともにお話ししてくださいました。

芸術表現

YCAMでは、アーティストが実際に山口に滞在し、新しい作品をつくる「滞在制作」を行なっています。そこで生まれた作品は、YCAMで展示を終えた後、国内外の美術館やアートフェスティバルへ巡回することも度々あるそうです。


たとえば今、YCAMではフラメンコダンサー/振付家のイスラエル・ガルバンとともに新作の準備をしています。これは、新しい身体表現の可能性を追求してきたYCAMとの2年に及ぶ実験によって生まれる、新作ダンス作品となります。イスラエル・ガルバンのフラメンコのテクニックを人工知能(AI)が学習し、ガルバンの特徴を持ったもう一人の「イスラエル」が、ガルバンと競演するという取り組みです。

教育

またYCAMでは開館以来、教育にも力を入れており、「身体、メディア、社会」をテーマにした数々の体験型プログラムを独自に開発しています。

そのひとつ、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)研究員・笠原俊一氏と共同で、新しいコミュニケーションの形を探索し、人間の能力や感覚を拡張していく事象を探る『JackInワークショップシリーズ』の紹介がありました。


YCAMのWebサイトによると、そのシリーズのひとつ、ワークショップ『Parallel eyes〜視点交換鬼ごっこ〜』では、JackInのシステムを利用しながら「お絵描き」や「鬼ごっこ」をします。参加者が装着するHMDには自分視点のカメラ映像に加えて、他の参加者の視点カメラの映像も表示されるので、普段のお絵描きや鬼ごっことは異なる複雑な状況が生まれます。(出展:JackInワークショップ Parallel eyes〜視点交換鬼ごっこ〜


「鬼ごっこ」では、4人の視界がみれるので、他者と視界共有状態になります。他者と視界を共有することで、同じ記憶を持つようになることもあるそうです。これを、他者の視界共有における記憶の並列化と呼んでいます。


人とのコミュニケーション以外でも、近年では、視線の動きを計測・解析し、マーケティング調査に利用することも多くなってきています。視線解析は、実はとても身近な存在なのです。視線解析に関するリテラシーを持つためにも、このワークショップを開催したそうです。



他にも、『森のDNA図鑑』というプロジェクトでは、DNA解析技術を使って、オリジナルの植物図鑑を制作しています。


このプロジェクトは、「図鑑の民主化」がコンセプトになっています。DNAに関わるバイオ技術が一般化する昨今、子どもから大人まで楽しみながら学び、考えることができるプログラムをつくることを目指し、開発されました。DNA解析技術を子どもでも扱えるようにキット化し、実際に図鑑をまとめたWebサイトまで制作しています。


どちらのテーマも、「他者との視界共有」と「図鑑の民主化」と抽象化されたテーマがありました。本科デジタルアーティスト専攻内の「現実世界を抽出したゲームを作る」という課題でも、フレームを抽出するという工程を実際に学びます。世の中で現実におこっている具体的な事象から肉をそぎ落として、骨だけをとる工程を経験します。

コミュニティ

YCAMでは、2015年からメディア・テクノロジーをスポーツに応用していくことでスポーツを軸とした新たなコミュニティの創出を目指すプロジェクト「YCAMスポーツ・リサーチ」に取り組んでいます。


YCAMのこれまでの研究開発の成果を活用し、参加者が新しいスポーツをつくる集中ワークショップ「スポーツハッカソン」や「未来の山口の運動会」など活動は多岐に渡ります。

菅沼さん曰く、スポーツクリエイションの過程で必要になる「ルール」をつくる体験は、私たちが普段生活する社会を考えることと相似した関係にあるそうです。YCAMでは、ギャラリーやシアター以外の場所でも展示や公演ができるように、表現する限界を場に設けていません。どこでも表現できます。このような場でいろいろ考えた方が、いいアイディアが生まれたりする、とおっしゃっていました。


アイディアや企画の発想方法でも、役に立ちそうですね。

本科デジタルアーティスト専攻では、アートを中心に捉えたクリエイションのあり方を学ぶ

菅沼さんは建築を学ばれていたこともあり、アート表現が持つ「美しい」「美しくない」といった感覚的で非合理な価値観に強く惹かれるそうです。また、こういった価値観を中心に据えた創造の場のあり方を、YCAMを通じて探求されています。YCAMでは、まさにアート作品の制作で蓄積したノウハウを応用して教育プログラムやコミュニティプログラムが度々生まれています。


「本科デジタルアーティスト専攻も同じく、アートを中心に捉えたクリエイションのあり方を学んでいく先進的な場になるのでは」とおっしゃっていました。

遅い教育とは?

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セッションはつづいて、会田さんのお話へ。会田さんは、2003年~2014年までYCAMでエデュケーターとして活躍され、本科デジタルアーティスト専攻の主幹講師を務められます。曰く、「YCAMを辞めてからアートの可能性に気づいた」そうです。

“教育には「技法の伝授」、「知識の伝授」、「考え方の伝授」の3つがあります。このなかで一番大事なのは「考え方の伝授」です。どういう風に考えていけばいいかというものは、環境が変化しても、その考え方を応用して使っていけます。デジタルアーティスト専攻では、この「考え方の伝授」を中心に学びます。


“そこで「遅い教育」という考え方を提案してみたいと思います。コピーアンドペーストできる効率という考えを教育からいったん省いてみるのです。「効率」があると、できないものもあります。考えたり生み出したりする時間をきちんと取って、効率の悪いこともやる時間にしたいのです。”


と、デジタルアーティスト専攻での学びのスタンスについて、お話ししてくださいました。

教育だからこそできること

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会田さんは芸大予備校時代に、「心のなかにずしんときて、いつまでも刺さって抜けないトゲみたいなもの」を先生から得たそうです。本科デジタルアーティスト専攻では、そういうものを一緒につくる時間にしたい、と熱く語っていらっしゃいました。


“教育が唯一担保できるのは、「失敗できる環境」です。自分の失敗はみんなを救える方法になりますし、自分が失敗した情報をシェアできる環境があります。ライフロング・キンダーガーデン(生涯幼稚園)という言葉がありますが、いくつになっても、幼稚園児のように学ぶことが大切です。「学びの態度」を手に入れることで、何でも学べる、いつも学べるようになるので、日常が濃くなります。”


会田さんの学びや教育に対する熱い想いが伝わってきました。

本科デジタルアーティスト専攻内の課題についても、述べてくださいました。詳しくはこちらからご覧ください!

デジタルアーティスト専攻は1年間全日制のコースです。それが贅沢な時間であることは、スタッフも講師も十分わかっています。それでも、全日制だからこそできる、クリエイティブの制作経験者だからこそできる、ぎゅっと詰まった1年間にしたいのです。


皆さんも、思考の型からしっかり身につけ、テクノロジーとアートが交ざり合う作品をつくるデジタルアーティストを目指しませんか?

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