グラフィックデザイナー

公開日:2023-07-01

グラフィックデザイナーとは

「グラフィックデザイナー」は、商品のパッケージ、ポスターや看板、宣伝や販売に関するもののデザインを行う職業です。主にこのような分野においてグラフィック表現を考案し制作します。
「グラフィック」という言葉は、出版や広告、写真、ゲームや映像などのコンテンツにおける視覚表現を指します。特定のトーン&マナーやコンセプトを表現し、情報伝達を目的としています。


どんな仕事・業務?

仕事の分類については大きく2つに分けることができ、1つはチラシやパッケージ、ポスター等の紙ベースを主体としたDTPデザイン、もう1つはバナーやサイトでのグラフィック表現などWeb上の制作をベースとしたWebデザインがあります。

DTPデザインでは最終的に紙などへの出力を考慮して制作をする必要があります。DTPのカラー規格はCMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の4色に決まっており、Webのカラー規格とは違います。そのため、紙質やインクの種類によってPC上で見ている色合いと実際にプリントアウトした時の色合いに違いが出るため、テストプリントは必ず行います。またサイズ感の把握もしなければなりません。DTPはcmが単位となり、ポスターやチラシであればA5~A0サイズ、B5~B0サイズまで、規格サイズがあります。出力物の色合いやサイズを考慮してデザインを組み立てていく必要があります。

Webデザインでは表示されるデバイスの違いを考慮して制作をする必要があり、大きく分けるとPCサイズ、タブレットサイズ、スマホサイズの3種類に分類されます。Webではサイズの規格がピクセルになるので、3種類のどのサイズに合わせて制作するのかを決めてから制作していきます。またWebのカラー規格はRGB(レッド、グリーン、ブルー)の3色で、DTPとは違い出力がないので色の違いは出ませんが、6桁の記号と英数字を組み合わせたカラーコードというものがあり、仕様があれば必ず守らなければなりません。

様々なデザインに対応するためにも、DTPとWebはバランスよく制作できることが業界では求められます。


グラフィックデザイナー(designer)


どんなソフトウェアを使うのか

Adobe製品のツールが主に使用されています。業界にもよりますが、主に以下のようなソフトウェアを使いデザインをします。

  • Adobe Photoshop(アドビ フォトショップ)
    ビットマップ画像編集のソフトウェアです。主に写真加工や合成、レタッチに使われます。Webデザインにも適しています。
  • Adobe Illustrator(アドビ イラストレーター)
    ベクターイメージ編集のソフトウェアです。ロゴの作成や、チラシ・商品パッケージやポスターなど印刷物のデザインに適しています。
  • Adobe InDesign(アドビ インデザイン)
    DTPソフトウェアです。もともと印刷物の版下作成のためのソフトで、ページ数の多い冊子のレイアウトなどに適しています。

どのような職場がある?

クライアントから依頼を受ける広告制作会社、デザイン事務所、自社製品やサービスなどのデザインを行うインハウスデザイナーなどがあります。
広告制作会社やデザイン事務所では、様々な代理店などのクライアントから依頼を受けデザインを行います。そのため色々なジャンルのデザインを経験することが出来る反面、急なスケジュール変更などもあり残業が発生することがあります。
インハウスデザイナーは自社でのお仕事になるので、デザイン会社のように急なスケジュール変更などはあまり発生しません。会社規模も大きなところが多いので、待遇面などが良いなどの特徴もあります。しかし、デザイナーの人数が少ないケースが多く、わからないことは自分で解決していく必要があります。どちらもメリット・デメリットはあるので自分の希望に合う企業を選びましょう。また、ゆくゆくはフリーランスとして独立するという選択肢もあります。


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業務例

ディレクターなどの職業と異なり基本的に大半はデスクに座ってデザインの制作を行っています。

  • デザインの依頼を受ける
  • クライアントと打ち合わせ
  • コンセプトの立案を行う
  • ラフデザインの作成
  • クライアントへプレゼンテーション
  • OKが出たら実際にデザイン制作に入る
  • 修正などを行い、デザインが完成したら納品/完了

印刷物のデザインの場合、印刷会社とのやりとり、色校正なども行います。また急な修正依頼なども発生するため、納期に合わせて柔軟に作業を行います。

働き方は?

グラフィックデザイナーの勤務する企業は10時出社などが多く、早くても9時出社がほとんどです。残業に関しては他の職種に比べると多く拘束時間も長くなっていますが、フレックス制度を設けている企業もあります。フリーランスの場合は自分で時間を決めることができるので、日中に会社員と同じように作業をする人や、夜中に一気に作り上げる人など、様々です。

収入(年収・月収)は?

全体の平均年収は330万円前後です。企業の規模や業種によっても異なり、中小企業の場合は330~400万円、大企業の場合は520万円程度となり、従業員1,000人以上の大企業になると大きく増加します。中には大手企業や出版社で、年収1,000万円を越えるグラフィックデザイナーもいます。このように同じ職種でも企業規模で大きく変わって来ることや、年代に応じて年収が伸びにくい職種であるため、年収をアップするには規模の大きな企業を目指すことやアートディレクターなどへのステップアップの道が考えられます。
また、フリーランスのグラフィックデザイナーの年収は、平均300万~400万円前後です。しかし有名になると大きな案件も引き受けられるようになり、場合によっては年収1,000万円を超えることもあります。


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将来性は?

紙媒体が衰退しているという現状、便利なツールが続々出てきて素人でもある程度のデザインを作り上げることができてしまうという現状もあり近年厳しくなってきています。企業がデザイン会社に発注する余裕がないという背景も関係している可能性もあります。
最近では直接フリーランスのグラフィックデザイナーに発注できるクラウドソーシングでのデザイン関連の発注数も増えており、フリーランスの活躍機会が増えてきています。
またコストの安い海外に発注するなどのケースもあり、今後安く請け負う会社が増えることが予想されます。そのため、現在伸び続けている市場である「Web業界」に関する知識も持つことも必要になります。また、デザインが優れているというだけではなく営業力なども必要になってきますし、ただデザインができるだけではなくディレクション能力があるなど、付加価値も必要になることも考えられます。

どんなキャリアが歩めるか

制作会社で経験と実績を積み、チーフデザイナーやアートディレクターとしてステップアップする、Web業界にシフトしてWebデザイナーになる、独立してフリーランスとなる、などがあります。
アートディレクターは広告代理店などで様々な広告を手がけたり、自社でゲームを展開する企業などでアートディレクションを行います。
Webデザイナーへの転身ですが、グラフィックデザイナーとWebデザイナーは少し気をつけることが違い、Webデザインをする際の注意点など覚える必要がありますがデザインの知識やスキルがあるという点ではWebデザイナーへのキャリアシフトという道もあります。
フリーランスの場合はグラフィックデザイナーとして実績を積んでいくとともに、クリエイティブディレクターやアートディレクターとしてプロジェクトに指名されることもあります。


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求人動向

グラフィックデザイナーの求人は経験者の中途採用が多いです。紙媒体の求人だけではなく、ゲーム業界やWeb制作の会社でもグラフィックデザイナーを募集しています。
【将来性は?】の項目でも書いたとおり、クラウドソーシングの発展などにより、今後は正社員だけではなく週3日勤務などの派遣社員や業務委託など、フリーランスで自分の仕事と掛け持ちができる雇用形態での求人も増える可能性があります。

なるには

一般的にどのようななり方があるのか

美大や専門学校、専門のスクールなどでデザインについて学び、デザイン事務所や広告制作会社に入社するのが一般的です。
なぜならグラフィックデザイナーの主な仕事内容は、雑誌、広告物、商品パッケージ、Webサイト等の、ビジュアル面に関する制作です。
そのためにはデザインに関する基礎知識や制作力、グラフィックソフトの使い方を知っておく必要があります。


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未経験からなるには

完全な未経験から業界に進むことは難しく、芸術大学、美術大学、専門学校、専門スクールを経てから就職することが一般的です。
デザインセンスも必要ではありますが、『絵が描ける』『絵が上手』というだけでできる仕事ではありません。クライアントが抱える問題を提起し、その問題をデザインによって解決していくことが仕事の本質となります。またディレクターやチームメンバーと円滑にプロジェクトを進める為にコミュニケーション力も求められるので、業界では実務経験も重視されます。

必要なスキル

まず必要なスキルとしてはIllustrator、Photoshopなどのデザインソフトを操作するスキルです。またツールを使えるだけではなく、デザインスキルも必要となります。
商品のパッケージやロゴ、名刺や雑誌など依頼されたコンテンツの全体的な構成力が求められます。よく勘違いをされることがありますが、グラフィックデザイナーは決して絵を書く仕事ではありません。見るものを引き付ける事を意識し、写真やフォント、配色を考えレイアウト構成するスキルが必要となります。いかに伝わりやすく設計していくかがポイントとなります。


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必要な機材

デザインを行うには紙やペンなどもありますが、デジタル機器について説明します。
まず、デザインにとって「色」というのはとても重要なものになります。そのため、色の再現性が良く高解像度なディスプレイが必要です。印刷して見てみたらイメージが違ったということもあるので、プリンターとの色合わせがしやすいというのもポイントです。
次にパソコンですが、デザイン作業を行うには大きなモニターが必要です。大画面のデスクトップのタイプを使うデザイナーが多いです。しかし、先述のようなモニターがあればノートパソコンを繋いで使用するという方法もありますので、打ち合わせなどで外に出る機会のある方などは必要なスペックを満たしていればノートパソコンという選択肢もあります。またグラフィックデザイナーにはMacが人気です。
マウスではなくペンタブレットや液晶タブレットを使用する人も多くいます。慣れるとマウスよりも早く、タブレットでしかできない描写をすることもできます。

勉強法

勉強を始めるには、デザインを使って何をしたいのか目標を明確にすることが望ましいです。
ひとくちにグラフィックデザイナーと言っても色々な活躍の場があります。例えばZINEなどの小冊子を作りたい、Tシャツを作りたいでもいいです。グラフィックデザイナーになりたいと思うからには何か作りたいもの、憧れの業界・好きなデザインなどがあるのではないかと思います。その目標に向かい勉強して実際に作ってみることをおすすめします。闇雲に勉強をはじめるよりも身につくスピードも変わりますし、色々なことが出来るようになり知識が増えてくるともっと幅広いスキルや知識を身につけたくなります。
「デザインが好き」と感じた専門書を見て勉強するというのもおすすめです。現役グラフィックデザイナーとして活躍する人たちの技法や考え方を知り、真似をして作ってみることで身について行きます。
専門のスクールや学校に通う場合は、ソフトの使い方やデザイン概論などをプロから学び、わからない時や悩んだ時は相談することもできます。そのためスクールに通いながら進みたい道に合わせて自分でも勉強をするというのもおすすめです。



グラフィックデザイナー(designer)

なるための適性は?

グラフィックデザイナーに向いている方は、まずなによりもデザインが好きだということが重要です。絵を描く、世の中のデザインやポスターを見ることが好き、活字に興味があるetc.・・・きっかけはなんでもいいですが、好きだという気持ちが制作への原動力になります。デザインセンスや自信がないと思っていても、実務経験を積むことで養うことができます。それよりも、制作物を世の中に発信していきたい、デザインで誰かの役に立ちたいという気持ちがあれば、それだけで向いていると言えます。
また、好奇心旺盛で流行に敏感であることや、観察力や洞察力が優れているということも大切です。世の中にはたくさんのデザインがあり、目線を少し動かすだけでも色々なデザインが飛び込んできます。何気なく見ているものがヒントになることもあります。このように日頃から色々なものを観察したり色々なことにアンテナをはれる人も向いています。

なるための難易度は?

グラフィックデザイナーはデザインでお給料をもらっているため、必然的にデザインのスキルが必要になります。そのため、グラフィクデザインの知識を身につけていなければなることは難しいです。またキャリア形成の関係で、年齢によっても難易度が変わってきます。20代前半ではまだ難易度が低いですが、30代からになると一気に難しくなります。しかし個人で活動をして実績を積むことで企業への就職も考えられます。


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なるにはどれくらいお金がかかる?

美大に通う場合の学費は国公立・私立によっても全く異なりますが、画材なども含めると卒業までに1,000万円近くかかることがあります。グラフィックデザインの専門学校の場合は、おおよそ300万円前後が多いです。
社会人向けの専門スクールに通う場合は30万円~300万円前後が多く、内容や期間によっても価格は大きく変わってきますので、自分の目的やライフスタイルに合うスクール選択が必要です。
書籍などを参考にする場合、1冊2,000~3,000円が相場です。また、PhotoshopなどのAdobe関連のソフトフェア使用料(全て使えるコンプリートプランで5,680円/月(税別)※学割あり)や、パソコン購入費も必要になります。デザイン作業にはある程度のスペックやモニタの綺麗さが必要なため、この辺りも検討が必要となります。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部