未来のVFXアーティストへ
オレンジの“映像表現”最前線

アニメ業界に興味があるあなたへ——
エフェクトが生み出す、もうひとつの「映像表現」の世界に触れるリクルート講演会が開催されました!

アニメ制作スタジオ・オレンジによるリクルート講演会が、盛況のうちに終了しました。

当日は、CGアニメーションの最前線で活躍するVFXアートディレクター・早川氏、そして船田氏が登壇。
『宝石の国』『BEASTARS』『ゴジラ S.P』『TRIGUN STAMPEDE』『LEVIATHAN』など、数々の話題作を手がけるスタジオならではの視点で、“エフェクト”という表現の魅力と可能性を熱く語っていただきました。

「エフェクトって実際には何をしているのか?」「画づくりに関わるには、どんなスキルが必要なのか?」
そんな疑問を持つ参加者の声にも応える、これからアニメ業界を目指す学生にとって、多くの学びが詰まった内容となりました。その一部を紹介します。

■ 会社と作品紹介

講演の冒頭では、オレンジが手がけた代表作の紹介が行われました。エフェクトありの映像と、エフェクトなしの映像を比較して見せるという実演を通じて、エフェクトが映像に与える影響の大きさ、そしてその重要性を改めて実感することができました。

なかでも、『BEASTARS』や『TRIGUN STAMPEDE』で多く使用されていた、キャラクターの心情を表現するためのエフェクトの紹介は印象的でした。エフェクトが単なる視覚的装飾ではなく、物語や演出の一部として深く関わっていることがよくわかる内容でした。

■ エフェクトとアニメにおけるVFXとは?

オレンジが手がけるVFXは、アニメにおける演出表現を豊かにし、作品全体のクオリティを底上げする重要な要素です。

作画エフェクトでは、アニメらしいデフォルメ表現や、絵柄に合わせた独自の炎の形状、さらに外連味(ケレンミ=はったり、驚き)を強調した演出に用いられ、一方、CGエフェクトでは、リアルかつリッチな質感を追求できる強みがあります。
現在はこの2つを組み合わせて使うことが主流であり、作画アニメにCGエフェクトが、CGアニメに作画エフェクトがシーンや演出に応じて最適な手法が選ばれています。

■オレンジのエフェクト班の魅力

オレンジのエフェクト班では、単なる技術職ではなく、画作りを一貫して担うポジションとして高いクリエイティビティが求められます。

物語の流れや演出意図を理解したうえで、「このシーンをどう魅せたいか」を自ら考え、提案し、実装するという自由度の高い役割です。様々な表現の可能性を自ら模索できることが、この仕事の大きな魅力だと思っています。

作品1 作品2

■ 採用のポイント

オレンジが採用で重視しているのは、以下の3つのポイントです。

  1. 探求心と好奇心
     表現への強い興味を持ち、試行錯誤を楽しめること。
  2. 主体性
     受け身にならず、自ら判断し、限られた環境の中で工夫を凝らして行動できる力。
     特にエフェクト制作は「正解がない」ため、自分の考えで取り組めることが重要です。
     ポートフォリオでも、自分がどんな工夫をしたのかをきちんと伝えることが評価されるポイントに!
  3. コミュニケーション能力
     基本的なマナーに加えて、社内外問わず相手への敬意を持った対応ができること。
     チーム制作において不可欠な資質です。

■ ポートフォリオ作成のポイント

今回の講演では、新卒向けのポートフォリオ事例も紹介されました。
特に重視されたのは、「画作り全体を意識した内容になっているか」という点です。

「どんな映像を伝えたかったのか」
「その中でエフェクトがどのように機能しているのか」

これらを明確に説明できる作品が、より評価されやすいといいます。

逆に悪い例として挙げられたのは、「素材集のようになっているポートフォリオ」。
単体ではよくできていても「どんな文脈でそのエフェクトが使われているのか」が伝わらなければ、映像作品としての説得力を持たないため、エフェクト単体のクオリティだけでなく、「映像全体の中でどう活かされているか」という視点が重要であることを強調されていました。

■質疑応答

Q:妥協が許されない、頭を悩まさせるような難易度の高いオーダーがあったりしますか?解決策はどう浮かんできますか?

A:アニメの場合は絵コンテがあるのですが、想像の余地を残した形で描かれていることがほとんどです。
そこをポジティブにとらえて、いろんな工夫をしてみています。

まずは自分の引き出しの中で考えていって、自分なりの表現をやってみます。
あとは、仕事上でいうと設定をいただくことが可能なので、どういう設定なんですか?とデザイナーに発注することもあります。ただ、逆にもらってしまうと確定してしまうということもあり、模索すること自体を楽しんでいる部分もあります。

Q:やりたいと思ったときに、どこから勉強していけばいいですか?

A:まずはマネることが大事です。
どこに感銘を受けたのかを考えながら作ること。
映像にどう組み込まれているかを意識するといいと思います。

エフェクトはハードルが高いと思うかもしれませんが、チュートリアルもたくさんありますし、Houdiniは学生であれば無料で使えるので、ハードルは下がっていると思います。



■ 参加者の声

参加された皆さんからも、熱い感想が届いているので一部をご紹介します。


アニメでのエフェクトとはどんな物かの基本から、自分達はどのように試行錯誤しながら創ったか、など分かりやすく説明して下さり、初心者もとても分かりやすかった。
ただリアルに再現するだけでなく、そのアニメの雰囲気に合っているか、求められるものにどれだけ応えられ、違和感なく迫力や雰囲気が出せるか、その中で自分達の色も出せるかなど、途方もなく大変なお仕事だと感じました。
好奇心や情熱、人を驚かせたいという想いがないと、なかなか出来ない仕事だと思った反面、アニメの調和を大切にしつつ、さらに迫力や観ている人がイメージしやすい様に創るエフェクトは魅力的に感じました。
貴重なお時間をありがとうございました。


VFXについて全く知識がなかったことと、物理学の知識がないと専門的に携わることができないのではないか?という偏見があったのですが、VFXおよびエフェクトについてわかりやすく説明頂きましたし、学術的知識が足りていなくても携わることができるということを教えていただき、目から鱗がおちたようにスルっと理解することができました!
また、はやかわさんとふなださんの経歴や、製作過程の思考の違いなど対比ができて、自分も自分の視点でアプローチして携わることができそうだな!と働くイメージが湧きました!

■ おわりに

今回の講演会は、エフェクトやアニメVFXに興味を持つ学生にとって、技術・表現の両面から貴重な学びを得られる場となりました。
VFXは物語や映像の印象を大きく左右する重要な存在です。
「表現したい映像をどう届けるか」その問いと向き合い、クリエイターとしての第一歩を踏み出すヒントが詰まったイベントでした。

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