FumeFXとは|煙・炎を作る流体シミュレーションプラグインを解説

FumeFXとは

公開日:2026-08-30

制作現場の求人票や、爆発シーンのメイキング記事で見かける「FumeFX」。名前は知っていても、何ができるツールなのか、今も使われているのか、いくらかかるのかまでは分からないという方が多いのではないでしょうか。結論からいえば、FumeFXは3ds MaxやMayaに組み込んで煙・炎・爆発などをシミュレーションするプラグインで、2026年時点でも更新が続いています。この記事では、FumeFXの定義と仕組み、最新版で加わった機能、対応するツールと価格、他の流体シミュレーションツールとの違い、そして学び方までを順に整理します。根拠には、開発元の公式情報と公的機関のデータを用いています。

この記事の要約

FumeFXとは 3ds MaxとMaya向けに開発された、流体力学と物理シミュレーションのプラグインです。単体では動きません。
2026年の現行版 公式サイト表記は3ds Max版7.5・Maya版7.0。NVIDIA CUDAによるGPUシミュレーションに対応しています。
価格と体験版 永続ライセンスとサブスクリプションがあり、30日間の体験版も配布されています(商用利用は不可)。
学ぶ順序 ホストとなる3ds Max/Mayaの基礎とレンダリングの流れを先に固めるのが近道と考えられます。

FumeFXとは|煙・炎・爆発を作る流体シミュレーションプラグイン

FumeFXとは、Autodesk 3ds MaxおよびMaya向けに開発された、流体力学と物理シミュレーションのプラグインです。開発しているのは、クロアチア・ザグレブに拠点を置く Sitni Sati d.o.o.(1999年設立)で、同社は AfterBurn や DreamScape も手がけています(出典:開発元公式サイト、2026年8月5日時点)。

FumeFXは、気体をボクセルベースの流体として扱います。ボクセルとは、空間を細かく区切った立方体状の体積要素のことです。公式ドキュメントでは、上昇する熱、重力による引き込み、浮力、そして燃焼要素どうしの相互作用といった複雑な挙動を捉える、と説明されています。炎が立ち上がりながら空気を巻き込み、煙が上でゆっくり広がっていく——あの一連の動きを、物理的な関係式から計算して作り出すツールだと考えると分かりやすいでしょう。

注意しておきたいのは、FumeFXが単体で動くソフトではなく、プラグインである点です。3ds MaxやMayaといったホストとなるDCCツール(3DCG制作ソフト)の中で動作し、モデリングやアニメーション、レンダリングは基本的にホスト側の機能を使います。すでに3ds MaxやMayaで制作している人が、エフェクトの工程だけを足す形で導入できるのが特徴です。

なお、現行のFumeFXは煙と炎だけを扱うツールではなくなっています。3ds Max版の公式製品ページには、火と煙に加えて、GPUリキッド、オーシャン、パーティクル、ロープ、リジッドボディ、クロス、ソフトボディといった対応領域が並んでいます。この点は後ほど詳しく見ていきます。

FumeFXの仕組み|ボクセルグリッドと流体ソルバー

FumeFXが煙や炎を作り出す原理は、空間を格子状のボクセルに分割し、それぞれのボクセルが持つ密度・温度・速度を時間の経過に沿って更新していくというものです。1コマ進むごとに、隣り合うボクセルとの間で熱や煙が受け渡され、その積み重ねが煙の形になります。

計算範囲についても工夫があります。公式ドキュメントによれば、FumeFXはアダプティブな3Dグリッドを備えており、流体が存在する範囲に応じてシミュレーションの範囲が変化するとされています。煙が広がっていない領域まで律儀に計算し続けずに済むため、その分の計算資源を節約できる仕組みです。

挙動を決めるのは、浮力・重力・圧力といった物理的なフォースと、衝突オブジェクトや風などユーザーが設定するフォースの組み合わせです。さらにFumeFXでは、煙の濃度と温度を変数とする可変的な密度ソルバー(設定された条件から次の状態を計算して求める仕組み)が働きます。これによって、冷たく密度の高い煙が熱く薄い煙を押しのけるように動く——現実の煙で見られる挙動が自然に現れます。専門用語の語義はクリエイティブ用語辞典でも補足しています。

実務上は、低解像度で全体の動きを詰めてから、高解像度で本番の計算を回すという進め方が取れる点も押さえておきたいところです。

VoxelFlowとは

VoxelFlow は、Sitni Sati社が自社の商標として挙げているもののひとつです。公式サイトに技術的な定義の記載は見当たらないため、ここではFumeFXが採用しているボクセルベースの流体計算について、一般的な考え方を整理しておきます。

グリッドベースの流体計算では一般に、流体を非圧縮性(体積が変わらないもの)として扱い、質量保存と運動量保存の関係から各ボクセルの速度と密度を更新していきます。渦を巻きながら上昇する煙の複雑な形が、単純な規則の繰り返しから生まれるのはこのためです。

ただし、ボクセルの解像度を上げるほど細部は出るが、計算時間とメモリの消費も増えるというトレードオフがあります。どこまで細かくするかは、最終的な画づくりと締め切りの兼ね合いで決める判断になります。

2026年の最新版でできること|GPUシミュレーションとNodeWorks

FumeFXは2026年時点でも開発が続いています。公式サイトの表記では、3ds Max版が FumeFX 7.5、Maya版が FumeFX 7.0 です。Maya版のリリース履歴には、7.0について「2026年3月25日リリース」と記載されています。日本語の情報はバージョン5〜6のあたりで止まっているものが多いため、この点は押さえておきたいところです。

7系で加わった変更のうち、とりわけ大きいのがGPUシミュレーションへの対応です。公式サイトによれば、NVIDIA CUDA(GPUで汎用計算を行うための仕組み)を用いたGPUアクセラレーションが導入されています。開発元の測定では、CPUのみで計算した場合と比べて速度が2〜5倍向上したとされています。これはあくまで開発元による特定の測定条件での値であり、シーンの内容や機材によって結果は変わります。

もうひとつ、製品の性格そのものを変えているのが NodeWorks です。公式ドキュメントは NodeWorks を、ノードベースのマルチフィジックスシステムと定義しています。統合される要素としては、パーティクル、クロス、ソフトボディ、リジッドボディ、ボクセル、オーシャン、C#スクリプティング、GPUリキッドが挙げられています。ノードベースとは、処理をひとつずつ箱として並べ、線でつないで組み立てる方式のことです。

さらに3ds Max版の公式ページには、FumeFXの流体とNodeWorksのパーティクル形状との間で双方向のインタラクションが可能だと記載されています。パーティクル形状は、PhysX(物理演算エンジン)のリジッドボディとしても振る舞えるとされています。煙が飛散する破片を押し、破片が煙をかき乱すといった相互作用を、1つの環境の中で扱えるという意味です。

つまり、FumeFXを「煙と炎の専用プラグイン」と理解していると、現行版の実態とはずれが出ます。ガスのシミュレーションを軸としつつ、その周辺の物理表現までカバーする環境になっている、と捉え直しておくのが2026年時点では正確です。

GPUシミュレーション対応で変わること

GPU対応でいちばん効いてくるのは試行回数です。エフェクトの善し悪しは動かしてみないと判断しにくいため、その日のうちに試せるバリエーションが増えることは、そのまま完成度に効いてくると考えられます。

一方でGPUシミュレーションでよく懸念されるのが、「解像度を上げてGPUメモリに載らなくなったら止まるのではないか」という点です。これについて公式のリリース履歴には、GPUメモリを超過した場合は自動的にCPUモードにフォールバックして計算を継続する仕様だと記載されています。処理は遅くなるものの、計算そのものは破綻しない設計になっているわけです。なお表示まわりでは、従来のmultiviewモードを置き換えるものとして GPU Viewport 2.0 が挙げられています。

対応DCCツールと動作環境|3ds Max・Maya・Cinema 4Dの版の違い

FumeFXには3ds Max版・Maya版・Cinema 4D版がありますが、2026年8月時点で公式サイト上の世代は揃っていません。導入を検討するうえで最初に確認しておきたいポイントです。

対応DCC 公式サイト上の世代(2026年8月時点) 備考
3ds Max FumeFX 7.5 体験版ページの対応表記は3ds Max 2022〜2026
Maya FumeFX 7.0 Arnold CPUへのダイレクトレンダリングに対応
Cinema 4D 「FumeFX 5.0 new features」として機能を掲載 3ds Max版・Maya版より世代が古い

Cinema 4D版の公式ページには、Standard および Physical レンダラーに加えて、Arnold、Redshift、Octane にネイティブ対応すると記載されています。V-Ray と Corona へは、OpenVDB フォーマット経由での対応とされています。OpenVDBは、煙や炎のようなボリュームデータをソフト間で受け渡すために広く使われているファイル形式です。使いたいレンダラーが決まっている場合は、この対応表を先に見ておくと判断が早くなります。

対応するホストのバージョンについては、体験版ページで3ds Max版が「3ds Max 2022-2026」と表記されています。これより新しいバージョンへの対応可否は公式で確認できないため、導入前に公式サイトで最新の対応状況を確認することをおすすめします。

FumeFXの価格・ライセンス・体験版

FumeFXには永続ライセンスとサブスクリプションの両方があり、体験版も配布されています。以下は公式サイトの表記(2026年8月5日時点・USD表記)です。購入条件は変わる可能性があるため、最終的な確認は公式サイトで行ってください。

3ds Max版の公式製品ページには「$395 1 year subscription (max+maya)」「$645 2 year subscription (max+maya)」「$95 1 year subscription」という表記があります。Maya版の公式製品ページには「$695 permanent license」「$395 1 year subscription (max+maya)」「$395 upgrade from ver. 5&6」という表記が並びます。それぞれの金額がどのライセンス種別に対応するかは、公式ページ上の記載をそのまま読む形にとどめておくのが安全です。

購入前に知っておきたい条件

公式サイトには、サブスクリプションが満了した後はキャッシュの読み込みとレンダリングは可能だが、シミュレーションは実行できないと記載されています。キャッシュとは、計算済みのシミュレーション結果を保存したデータのことです。過去案件の再レンダリングはできるが、新しく計算し直すことはできない、という意味になります。

体験版で試せる範囲と注意点

まず触ってみたい場合は、公式サイトで体験版が配布されています。制限は明確に決まっているため、事前に把握しておくと段取りを立てやすくなります。公式の体験版ページには次の制限が記載されています(2026年8月5日時点)。

  • 有効期間は30日間
  • 1億2,500万ボクセル(500×500×500)が上限
  • 出力されるキャッシュにはウォーターマークが入る
  • シミュレーションの合計フレーム数は、3ds Max版が220フレーム、Maya版が120フレーム
  • 体験版で作成したシーンは製品版で読み込めない(3ds Max版)
  • 体験版ライセンスで商用コンテンツを制作することはできない

特に注意したいのが最後の2点です。商用利用ができない点と、体験版で作ったシーンを製品版に持ち込めない点は、試用の位置づけを大きく左右します。体験版の期間は「実案件を進める」ためではなく、操作感と自分の機材での計算時間を確かめるためのものと考えておくのが現実的です。

Houdini・Phoenix・EmberGenとの違い|流体ツールの選び方

煙や炎を扱えるツールはFumeFXだけではありません。ただし、これらは単純に優劣で並べられるものではなく、役割が異なるというのが実態に近い見方です。ここでは各社の公式情報にもとづいて、選定の軸となる事実だけを整理します。

ツール 位置づけ(各社の公式情報より)
FumeFX 3ds Max・Maya・Cinema 4D 向けの流体力学/物理シミュレーションプラグイン
Houdini 映画・TV・ゲーム開発向けのプロシージャルなコンテンツ制作ツール群
Chaos Phoenix 3ds MaxとMaya向けに火・煙・液体・炎・爆発・リジッドボディ・海洋波・霧・水しぶきを扱う
EmberGen 「Real-time Fire, Smoke, and Explosions」「Built for Games」と位置づけられるリアルタイムツール

Houdini(SideFX)は、ゼロから手続き型のシステムとして構築されたと説明されており、流体・破壊・Pyro FX・グレイン・クロスなどのシミュレーションを扱います。エフェクトの領域に深く踏み込むなら有力な選択肢のひとつと考えられますが、ツール全体の作法を新たに覚える時間は見込んでおく必要があります。

Chaos Phoenix については、選定前に知っておきたい事実があります。公式製品ページによれば、最新のアップデート5.25.00は3ds Maxの Autodesk 2027 対応を追加したものです。そのうえで、「これがPhoenixにとって最後の予定されたアップデートであり、追加の機能更新や将来の互換性リリースは予定されていない」と記載されています。あわせて、Phoenixはアクティブサポートから移行しつつある、とも案内されています。試用や購入は引き続き可能な場合があるものの、今後のサポート・更新・カスタマーサービスの提供は限定的または利用不可となる可能性がある、とされています(2026年8月5日時点)。

EmberGen(JangaFX)は、GPUを活かしたリアルタイムのフィードバックと即時の書き出しを特徴としています。出力は、画像シーケンスやフリップブック(EXR・PNG・TGA)、VDBボリューム、モーションベクターなどに対応しています。

これらを踏まえると、選定の軸は「開発が続いているか」「ホストとなるDCCツールが必要か」「リアルタイムでの調整が必要か」「最終的な出力先はどこか」の4点に整理できます。すでに3ds MaxやMayaで制作している人にとっては、既存のワークフローを崩さずにエフェクト工程を足せるFumeFXが、学習コストを抑えやすい選択肢のひとつと考えられます。用途によって最適解は変わるため、目指す制作領域から逆算して選ぶのが現実的です。

FumeFXが活きる現場と、身につけた先の仕事

FumeFXのようなシミュレーションツールが使われるのは、映画やドラマ、CM、ゲームのシネマティクスなど、実写映像やCGに炎・煙・爆発を足していく工程です。建物が崩れる場面の粉塵、キャラクターが放つ炎、ロケットの噴射煙——撮影で用意するのが難しい表現を、計算で作り出しています。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)には、「CG制作」(別名:CGデザイナー、CG制作者)という職業が掲載されています。その仕事の内容は、コンピュータで図形、絵、映像、アニメーションなどのコンピュータグラフィック(CG)を制作することと説明されています。

CG制作の平均年収 539.6万円 令和7年賃金構造基本統計調査
CG制作の平均年齢 39.1歳 令和7年賃金構造基本統計調査
CG制作の就業者数 201,100人 令和2年国勢調査

個人差はありますが、専門性を積み上げていく職種であることがうかがえます。job tagはCG制作の業務範囲として、モデリング、マテリアル設定、リギング、アニメーション付け、シーン構築、レンダリング、コンポジット、エフェクトを挙げています。FumeFXが関わるのは、このうちシーン構築からレンダリングにかけての、エフェクト表現の領域です。分業が進んだ現場では、この領域を専門に担当するFXアーティストという職種が置かれることもあります。

CG制作に関わる職種の広がりはクリエイターのお仕事図鑑で職種ごとの仕事内容として整理しており、正社員・フリーランスといった働き方の違いはクリエイターの働き方図鑑で紹介しています。

FumeFXを学ぶには|前提スキルと学習ステップ

ここまで見てきたとおり、FumeFXはプラグインです。したがって、ホストとなる3ds MaxまたはMayaの操作とレンダリングの流れを先に固めておくことが、結果的に近道になると考えられます。シミュレーションだけを覚えても、最終的な画に仕上げるところで手が止まってしまうためです。

1

ホストDCCの基礎を固める

3ds MaxまたはMayaで、モデリングからレンダリングまでを一通り通します。

2

FXワークフローを理解する

パーティクル、キャッシュの管理、レンダラーの設定など、エフェクトを画にするまでの流れを押さえます。

3

体験版で小さく回す

30日間の体験版で、負荷の軽いシミュレーションから操作感と計算時間を確かめます。

4

解像度と時間の感覚をつかむ

どこまで解像度を上げると何分かかるのか、自分の機材で体感しておきます。

独学でつまずきやすいのは、パラメータの意味そのものよりも、「この結果でよいのか」を判断する基準が持てないところです。煙の広がり方や炎の色味は、レンダリングまで通して初めて評価できます。現場でどこまで詰めるのかを知っている人に見てもらえる環境があると、この部分は早く越えられます。

FumeFXを活かせるレベルまで、体系的に学びませんか?

FumeFXはプラグインであるため、3ds MaxやMayaの土台と、パーティクル連携・キャッシュ管理・レンダラー設定といったFXワークフローをあわせて身につける必要があります。デジタルハリウッドでは、3DCGデザイナー専攻のカリキュラムでモデリングからレンダリングまでの制作フローを学べます。CG/VFX専攻(本科)の詳細は、1年間の集中カリキュラムでCG/VFXの実務スキルを身につける内容です。3DCG系の専攻は東京本校・大阪本校で開講しています。実際に現場に出た人たちがどのように学び、どんな仕事に就いたのかは卒業生インタビューでの制作現場の様子から確認できます。

どの専攻が合うかは、目指す職種や現在のスキル、使える時間によって異なります。個別の状況にあわせて相談できる無料のスクール説明会を活用してみてください。

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まとめ

  • FumeFXは、Autodesk 3ds MaxおよびMaya向けにSitni Sati社が開発する流体力学・物理シミュレーションのプラグインで、気体をボクセルベースの流体として扱う
  • 2026年8月時点の公式サイト表記は3ds Max版が7.5、Maya版が7.0(2026年3月25日リリース)、Cinema 4D版は5.0世代の機能が掲載されている
  • 7系ではNVIDIA CUDAによるGPUシミュレーションに対応し、GPUメモリを超えた場合はCPUモードへ自動的に切り替わる
  • NodeWorksによって、パーティクル・クロス・ソフトボディ・オーシャン・GPUリキッドなども扱えるマルチフィジックス環境になっている
  • 価格は公式サイトに永続ライセンスとサブスクリプションの表記があり、サブスク満了後はレンダリングは可能でもシミュレーションは実行できない
  • 体験版は30日間・ボクセル数とフレーム数に上限があり、商用利用はできない

FumeFXはプラグインである以上、ホストとなるDCCツールとレンダリングの理解とセットで身につけるものです。エフェクトの領域に進みたいのであれば、まず土台を固めるところから始めてみてください。

デジタルハリウッド スクール 編集部

1994年の開校以来、デジタルコンテンツ分野の人材育成を行っているデジタルハリウッドの編集部です。3DCG・映像・Webの制作現場で使われるツールや職種について、公式情報と公的統計をもとに解説しています。

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部