公開日:2023-12-19
「フォトグラメトリー(Photogrammetry)」とは、被写体をさまざまなアングルから撮影し、そのデジタル画像を解析、統合して立体的な3DCGモデルを作成する手法です。デジタルカメラを用いた3次元測定機に応用されています。フォトグラメトリーは3Dスキャナのような特殊な機器が不要で、通常の写真だけで生成できることが特徴です。一般的には110枚程度の画像データが必要となり、都市や建築物などの大きなものまで3Dモデルとしてデータにできます。
【目次】
- 身近になったフォトグラメトリー
- フォトグラメトリが注目される背景
- 必要な機材やソフトウェア
- フォトグラメトリーに適したモデル
- フォトグラメトリーの撮影方法
- フォトグラメトリ以外での制作方法
- フォトグラメトリを使用するメリット・デメリット
- まとめ
身近になったフォトグラメトリー
フォトグラメトリーは昔からある技術で、地形調査、測量、史跡保護などの分野にも使用されていますが、近年では3DCGゲームなどの制作にも使用されています。その背景の1つとして、昨今のパソコンのスペックの向上により、精度の高いモデルを作成できるようになったということが挙げられます。昔はまだ精度が低く、凸凹などの表現が難しかったため3Dスキャナとフォトグラメトリーの組み合わせの方が良いことや、3Dスキャナ単体の方が綺麗にできるなどがありその点では劣っていました。しかし、新しいソフトウェアの誕生とパソコン(ハードウェア)の性能アップにより、クオリティが飛躍的にアップしました。
フォトグラメトリの歴史
フォトグラメトリの起源は19世紀半ばであり、現代写真の技術と同じくらい長い歴史があります。フォトグラメトリは様々な分野で昔から活用されています。例えば、地形調査、測量、建築などです。また、工学や品質管理にも活用されています。最近では、カメラやPCスペックが向上し、ソフトウェアも新しいものが出始めるなどクオリティが各段に上がり始め、3DCGゲームのコンテンツ制作でも活用が進み始めました。
歴史がある分、フォトグラメトリという言葉では認識はしていなくともその技術が仕事に取り入れられているという場合もあります。
フォトグラメトリが注目される背景
2020年より新型コロナウイルスが世界的に流行したタイミングで、仕事がリモートになったり、外出自粛の時間が増えたりしたことにより、家でも楽しめるARやVRの活用が広まり始めました。ARやVRは、3DCGコンテンツが必要とされます。フォトグラメトリや3D制作ソフトで制作した3DCGは新型コロナの流行がある程度収まってきたとしても、今後も活用が広がっていくことが考えられます。
必要な機材やソフトウェア
フォトグラメトリーに必要な機材は、カメラ、パソコン、専用のソフトウェアです。これら3つを揃えることができれば取りかかることが可能です。
カメラはできればデジタル一眼レフなどの高性能なもの、パソコンも同じく処理能力の高いものが最適ですが、ない場合はスマートフォンのカメラ、現在発売中のものであればノートパソコンでも利用できます。そのため、3DCG制作に関わったことのない一般の人でも行えるようになりました。専用のソフトウェアはAutodesk社の「ReCap」、Agisoft社の「MetaShape」、CapturinRealityの「Reality Capture (RC)」「3DF Zephyr」などが有名です。たくさんのソフトウェアが誕生しているため、体験版などで色々と試してみることをお勧めします。
フォトグラメトリーに適したモデル
フォトグラメトリーには向き・不向きのモデルがあります。向いているものとしては「ザラザラしている」「模様がある」反対に向いていないものとしては、「ツルツルしている陶器・プラスチックのような素材」「形状が特別複雑なもの」「動物など止まっていることが難しい生き物」「透明・ガラス素材」などが挙げられます。
フォトグラメトリーの撮影方法
フォトグラメトリーの撮影方法を大きく4つの手順に分けてご紹介します。
手順① 機材・ソフトの準備
まずは、フォトグラメトリを行うために機材とソフトの準備をしましょう。
機材は、PCとカメラが必要です。ソフトは、フォトグラメトリ専用ソフトが必要です。
PCやカメラは高性能なものを使うことがおすすめですが、ノートパソコンとスマートフォンでも使うことは可能です。
ソフトは、複数の企業から販売されています。趣味の範囲内で行う場合は、無料体験版も出ているソフトがあるため、趣味で行う場合は、まずは無料ソフトで始めてみるのが良いでしょう。
手順②撮影
フォトグラメトリのスキャン対象が準備できたら、次は撮影です。対象物のすべての面が写真に映るように少しづつ角度を変えて撮影をします。
撮影時の注意点をいくつか紹介します。
・手振れに気を付ける
・反射や照明での色飛びに注意する
・スキャン対象が商品や製品の場合は、なるべく専用のスタジオで撮影を行う
・建物など屋外でドローンで撮影を行う場合は、曇りの日に撮影を行う
・スキャン対象物を置いて撮影する場合は、ざらざらした質感の台の上に置いて撮影する
つるつるした質感の台で撮影するよりも精度の高い3Dになりやすいです。
手順③3DCGモデルの作成
撮影した写真をPCに取り込み、専用ソフトで3DCGモデルに生成します。
専用ソフトに関しては、先述したように複数のソフトがあります。それぞれのソフトでの3DCGモデルの作成方法については各ソフトで異なる点があるため今回はご紹介を省きますが、どのソフトを用いる場合も写真の枚数が多ければ多いほど制作に時間のかかる場合が多いです。
手順④レタッチ
最後に、3DCGモデル表面のテクスチャなどをつけ質感の修正(レタッチ)を行いましょう。現物に近いモデルが出来た場合でも違和感がある場合はレタッチを行うのがおすすめです。
フォトグラメトリ以外での制作方法
フォトグラメトリの手法以外での制作方法として3D制作ソフトと3Dスキャナの2パターンに分けて紹介します。
3D制作ソフト
1からCGを作る方法として専用の3DCG制作ソフトを用いて制作を行う方法があります。
まったく現物がない状態から人の手で制作を進めるため、時間と労力はかかりますが、どのような形を作ることも可能で自由度高く制作ができます。実在しないキャラクターやアイテム、空間作りに向いています。
3Dスキャナ
3Dスキャナを使うことで、対象となる物にレーザーをあて3Dデータを制作することができます。専用の3Dスキャナが必要なので、コストはかかります。スキャンの精度によってコストの幅はありますが、数万円から数百万円まで様々な機器があります。
フォトグラメトリを使用するメリット・デメリット
フォトグラメトリを使用するメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
フォトグラメトリを使用するメリット
フォトグラメトリを使用するメリットの一つは、撮影した写真から合成を行うためテクスチャや模様などをリアルに表現しやすい点です。また、3Dスキャナを購入するよりもフォトグラメトリを使用した方が安価に済むことが多い点もメリットの一つです。
フォトグラメトリを使用するデメリット
一方、フォトグラメトリを使用するデメリットとしては、撮影の手間があることや、実物がないと3DCGデータの制作ができない点です。存在しないものはフォトグラメトリの活用ができず、フォトグラメトリに不得意なモデルもあります。
まとめ
今回は、フォトグラメトリとは何かといった概要から、必要な機材や撮影方法、そしてメリット・デメリットを紹介しました。フォトグラメトリは、必要な機材であるPCとカメラ、そして専用ソフトがあれば制作を進めることができます。PCやカメラの機能が高精度になってきており活用の場は広がっています。
フォトグラメトリに興味のある方は、この記事を参考にまずは制作にチャレンジしてみてください。