こんにちは。
デジタルハリウッド東京本校スタッフです。
先日、東京本校で 『卒業生に話を聞こう!座談会』 を開催いたしました!
『卒業生に話を聞こう!座談会』は、各分野で活躍する卒業生たちを迎え、在学中のエピソードや卒業後のキャリア、現在のリアルな日常まで幅広くお話しするイベントで、今回が記念すべき第1回目の開催です。
今回は本科CG/VFX専攻の卒業生で、現在Compassという名前で活躍中の四方田寛太さんをお招きし、講演を行っていただきました!
当日は作品の権利上の都合によりオンライン配信は行わず、対面限定での開催となりましたが、参加が叶わなかった方のために、当日の内容をブログでご紹介することについて、四方田さんより快くご承諾をいただきました!
本ブログでは当日の様子や、当日のトーク内容をご紹介いたします!
CG業界を目指す方、CG学習のポイント、デジタルハリウッドでのCG学習についてなど、気になる方は必見です。
目次
子どもの頃見た映画、「アイアンマン」をきっかけに独学でCGの学習を開始、その後、本科CG/VFXコースに入学。
デジタルハリウッド卒業後は、VFXスタジオ「Spade&Co.」に入社、さまざまな実写映画のVFXを手掛ける。代表作は「キングダム」、「ゴールデンカムイ」、「新幹線大爆破」等。
2024年末に独立し、現在はVFXアーティスト「Compass」として、VFXの制作、監督、ディレクションなどを務める。
得意なソフトを教えてください!
Maya、Houdini、Nuke
得意な技術を教えてください!
アニメーション、エフェクトシミュレーション、コンポジット、映像編集
過去の東京本校のブログにて、四方田さんの卒業制作などをご紹介していますので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
1. 独学じゃ得られなかった“環境”が、プロへの近道になった

「CGを学ぶのに、スクールに入る必要はあるのか?」
今は、無料ソフトや動画教材など、独学でもCGを学べる環境が整っています。「学校に通わなくてもプロを目指せるのでは?」と考えるのは自然なことです。
私もそう思っていましたが、今はスクールに通って本当によかったと感じています。理由は、技術だけでなく、同じ目標を持つ仲間や、刺激し合える学習環境に出会えたからです。
入学前は一人で作品を作る日々に少し孤独を感じていました。でも、学校には同じ“好き”を語れる仲間がいて、卒業後もつながりが続いています。
「それってデジタルハリウッドじゃなきゃダメなの?」と聞かれたら、正直なところ、他にも良い学校はあると思います。 でも私は、1年間で業界で通用する力を身につけられたこと、そして企業からの信頼度の高さに、デジタルハリウッドを選んでよかったと実感しています。
実体験としては、卒業制作の発表会「クリエイターズオーディション」※では、多くの有名企業の方々が来場していましたし、インターン先でも「デジタルハリウッド生なら安心」と言っていただけました。
※クリエイターズオーディションとは、企業と受講生をつなぐデジタルハリウッド伝統のマッチング型求人イベントです。
CGを本気で学びたい方には、学びの環境に飛び込む価値も、ぜひ知ってほしいです。
2. プロになる人が在学中に意識していたこと
環境を最大限活用する
デジタルハリウッドに入学したからといって、自動的にプロになれるわけではありません。
目指す業界やキャリアの形は人によってさまざまであり、それぞれがどこを目標にするかによって、必要な努力や進む道も変わってきます。
だからこそ、在学中は「教えてもらう」ことを待つのではなく、自ら学ぶ姿勢を常に持っていてほしいと思います。
環境は整っています。それを最大限活用できるかが大切です。
例えば、授業中に疑問があれば、先生やTA(ティーチングアシスタント)の方にすぐに質問できる環境がありました。
「これ聞いたら悪いかな」と思う必要はありません。どんどん聞きましょう。
また、キャリアセンターも非常に頼りになる存在です。
求人情報の提供だけでなく、進路相談やエントリーシートの添削など、個別対応も丁寧に行ってくれました。
私自身、エントリーシートを何度も添削してもらい、最終的に応募した企業に褒めてもらえた経験があります。
このサポートを受けずに一人で就活をしていたら、違う結果になっていたかもしれません。
さらに、学校内では定期的に業界関係者によるセミナー・講演といったイベントが開催されており、これらに積極的に参加することも貴重な学びとなります。
受講生同士で教え合う
そして、もうひとつ大事にしてほしいのが、受講生同士の学び合いです。
誰かに教えることは、自分の理解を深めることにもつながります。
「ラーニングピラミッド」という学習理論でも、人に教える行為は最も記憶に定着しやすいとされています。
聞かれる側も「自分が役に立てた」と嬉しくなるものです。遠慮せず、お互いに声をかけ合っていくことをおすすめします。
与えられた環境をただ受け取るだけでなく、自ら積極的に動き、使い倒すつもりで過ごしてみてください。
3. 作品を“作る”だけじゃ届かない—プロに届くポートフォリオと就職戦略の話
今回の座談会でお話できるように、周囲のディレクターや企業の方々にも、どのようなポートフォリオが評価されるのか、実際の声を聞いてまわりました。
その中で共通していたのは、「良い作品を作ること」は当然として、それをどう見せるか、どんな印象を残せるかが非常に大切だということでした。
目立つポートフォリオの作り方
CG業界は今、コンテンツ需要の高まりで人手不足が続いており、採用枠も広がっています。同時に、誰でも無料で始められるBlenderのようなツールの普及で、目指す人も急増中しています。その中で埋もれないためには、「何かで光る」ことが必要です。作品のクオリティや独自の表現、ポートフォリオの構成力などが差をつけるポイントになります。
どれだけ自己PRが上手でも、作品の印象が薄ければ評価されにくいのが現実です。作品数が少なくて不安になるかもしれませんが、企業が見るのは“数”より“質”です。印象に残る数点をしっかり見せたほうが、強く心に残るため、焦らず丁寧に仕上げましょう。
また、「この作品をポートフォリオに入れるべきかどうか」と迷う場面も多くあると思います。
趣味の写真やデッサン、凝った動画編集や効果音なども、全体のクオリティを引き上げるなら入れる価値がありますが、そうでないなら思い切って外す判断も必要です。
たとえば、爆発の映像は素晴らしく作れたけど、効果音が苦手でクオリティが下がる場合は、あえて音を入れないという選択もアリです。
どこを見せるか、どこを見せないか、その取捨選択がとても大切になります。
限られた作品数でも見せ方の工夫次第で、ポートフォリオ全体の印象を強くすることはできます。
ワイヤーフレームを加えたり、特に上手くできた箇所をアップで見せたり、ひとつのモデリングでも数ページに展開して見せることが可能です。
また、リファレンスとの比較(元画像と制作物)を載せることも効果的です。
実際の企業では、制作前に大量の参考資料を集め、方向性をしっかり固めてから手を動かすという工程が当たり前にあります。
「これを参考にしました」「この部分を特に意識しました」といった解説があるだけで、制作意図の明確さが伝わり、実務的な思考ができる学生として評価されやすくなります。

ポートフォリオに自分のサイトへ飛ぶQRコードを載せる人も増えていますが、これは紙で提出する場合には有効です。
ただし、PDFで提出する場合には、わざわざスマホで読み込むというひと手間がかかるため、クリックで直接飛べるリンクのほうが親切かと思います。
自分の強みを理解し、それをどう表現すれば伝わるかを意識して、戦略的にポートフォリオを組み立ててみてください。
SNSの活用
そして、就職活動においては、SNSの活用もおすすめです。
特にX(旧Twitter)では、ハッシュタグ(#wip など)を使って発信することで、思わぬチャンスにつながることもあります。
実際に企業の方が見ていることもありますし、制作の過程を公開することでアドバイスや反応がもらえたり、モチベーション維持にもつながります。
他のクリエイターの刺激も受けやすくなるため、積極的に活用してみてください。
4.やる気に頼らない!学習効率を高めるちょっとした工夫
実は、私はかなりよく寝るタイプで、時には夕方まで寝てしまうこともありました。
フリーランスに向いていないんじゃないかと思うほどです(笑)
フリーランスは自由な働き方に見えて、自己管理が必要です。
制作に集中できる時間を確保するために、特に効果があった方法を3つ紹介します。
まず1つ目は、
「朝に太陽の光を浴びること」
です。
CG制作はどうしても室内にこもりがちですが、朝に少しだけでも外に出て太陽を浴びるだけで、驚くほど頭がスッキリします。
2つ目は、
「時間にあえて制限をつけること」
です。
一日中自由に使えるはずの日こそ、意外とダラダラしてしまい、思うように作業が進まないことってありませんか?
私自身もまさにそうで、夕方から予定がある日のほうが、限られた時間内に集中して取り組めることに気づきました。
そこで、たとえば「この90分は制作」「この30分は休憩」とあらかじめ時間を区切って行動するようにしたところ、作業効率が2倍ほど上がった感覚がありました。
3つ目は、
「コールドシャワー(冷水シャワー)」
です。
短時間で目が覚め、頭がシャキッとするので、朝起きた時や、気持ちを切り替えたいタイミングにはかなり効果的です。
5.リアルな作品には“理由”がある—クオリティを引き上げる基礎知識
(※内容一部抜粋し掲載します)
私が自主制作で作った「渋谷を飛んでみた」を例に挙げます。
モーションブラーを使うことで、映像の躍動感や臨場感が格段にアップします。
また、この映像では、あえて「カメラが人物の動きについていけずに見切れる」カットを入れています。
CG制作では、被写体をしっかりフレーム内に収めようとするあまり、「カメラがすでに待ち伏せしていて完璧に追いかけている」ような不自然なカットになってしまうことがあります。
実際人は、「音がしてから」、音がした方を向きますよね。
リアルな演出を意識するなら、あえて追い過ぎないことがポイントです。
これからCG業界を目指す人へのメッセージ
最後に、いくつか大切にしてほしいことがあります。
①モチベーションの維持の仕方
何よりも、「楽しむこと」を忘れないでください。みんな最初は、ワクワクした気持ちでこの世界に入ってきたはずです。そのプラスの気持ちを、自分の中でちゃんと覚えておいてほしいです。
そして、他人と比べすぎないことも大切です。みんなが作っているような作品を同じように作ると、どうしても順位がついてしまいます。そうではなく、自分にしか作れない作品を作ればいいのです。自分ならではの表現を大切にしていきましょう。
②自主制作・勉強は今後も続けよう
作品を作るという行為は、いくらやっても誰にも迷惑をかけるものではありません。だからこそ、自由に、何度でも挑戦してください。
自主制作は思わぬところで仕事につながることもあります。
③CGに出会った時の感動を思い出す
映画やアニメ、ゲームなどでCGに心を動かされたときの感動を、忘れずにいてください。
自分が関わった作品がエンドロールに名前として残る、自分が作った映像がスクリーンに映る。それは、自主制作では味わえない、本当に特別な感動です。その瞬間を目指して、がんばってほしいと思います。
そして、デジタルハリウッドでの制作は、自分が100%「好きなもの」を自由に作れる、一旦は最後の機会です。だからこそ、自分の「好き」を思う存分作品にぶつけてください。
イベント参加者からのQ&A集

Q. フリーランス志望なのですが、いきなりフリーランスになるか、一度企業に入るか、どちらがいいのでしょうか?
A. もともとフリーランス志望でしたが、結果的に企業に入って本当によかったと感じています。企業に所属することで、関われる作品の規模が圧倒的に大きくなるからです。映画や大型案件に関わるには、まず企業に入るのが手っ取り早い方法だと思います。実際、企業がフリーランスと提携しているケースも多いですが、それはしっかり経験を積んできたプロフェッショナルな人たちが多い印象です。
企業に入れば、制作全体の流れを実際に見られるので、たとえば映画であれば制作過程を間近で追える貴重な経験もできます。
ただ、最近はBlenderなどの普及によって、最初からフリーランスとしてやっていける道も開けつつあります。SNSで地道に作品を発信して知名度を高めていけば、十分チャンスはあると感じています。
Q. リファレンス収集にはどれだけ時間をかけるんでしょうか?
A. 作品にもよりますが、劇場映画の場合は1ヶ月ほどかけて集めることもあります。プロジェクトマネージャーやアニメーター自身が大量に集めることも。想像以上に情報収集に時間をかけているんです。
Q. 業務時間はどれくらいですか?
A. 基本的に定時で上がることができましたが、自分は制作期間が長い劇場映画の案件が中心だったことから、締切が近づいてきたタイミングで残業が発生することはありました。ただし、CMなど短期間で仕上げる案件が多い会社では、業務時間の波が激しいと聞きます。会社やジャンルによって差はあるかと思います。
Q. デジタルハリウッド受講中に印象に残ったことは?
A. 一番印象に残っているのは、「学習に割ける時間の多さは関係ない」ということでした。人それぞれライフスタイルが違うので、デジタルハリウッドにかけられる時間も違います。その中で、時間があってもやらない人もいれば、時間がない中でも集中して取り組む人もいます。
だからこそ、「時間がある=有利」ではないんです。時間がたっぷりある人ほど、逆に気を引き締めて取り組む必要があると実感しました。
Q. 30代でのCG業界就職は難しいですか?
A. さらに上の年代で入ってくる人もいますし、求人や案件は増えている傾向があります。年齢よりも、「個性を出せるか」「学び続けているか」が大事です。年齢に関係なく、就職は目指せると思います。
Q. 就学中のインプットはどのくらいしていましたか?また、どんな作品を見ていましたか?
A. 作品を見ることは大切ですが、無理に「インプットしなきゃ」と思わずに、息抜きとして楽しむようにしていました。
VFXが話題になるドラマや映画は、VFXがすごいと言われている箇所に絞って観るようにしていました。YouTubeやVimeoでリールや作品を見るのもおすすめです。
CG業界に入ってからも、映像はたくさん見た方がいいですが、見ることがつらいなら無理に見なくてもいいと思います。楽しめるときに見れば十分です。
Q. 生成AIで作品が作れる時代をどう考えていますか?
A. 正直、最初は私は否定派でしたが、今は積極的に使っています。
ただし、AIに任せていいのは「誰がやっても同じ結果になる、100点が存在する作業」だけです。人間の感性や発想が求められるクリエイティブな部分は、人間が担うべきだという考え方は変わっていません。
座談会を終えて
四方田さんの座談会、学習方法から就職活動まで、盛りだくさんな内容でしたね!
デジタルハリウッドで学び、実際に業界で活躍している卒業生の体験談は、これからCGを学ぶ皆さんにとって非常に参考になる内容ばかりです。現場で培われたリアルな視点や具体的なアドバイスは、今後の学習やキャリア形成において大きなヒントとなるはずです。
ぜひ、先輩たちの経験やアドバイスを、日々の学びに活かしていってください!
今後も、卒業生をお招きし、座談会を定期的に開催していく予定です。さまざまな学習体験や制作の裏話が聞ける貴重な機会となりますので、ぜひ次回もご期待ください!
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