こんにちは!デジタルハリウッドSTUDIO新宿の山本です。
Introdaction
この夏、STUDIO新宿・東京本校では " 好きなことを追求する " をテーマに
「Chase your Dream!-夢をかなえたCGのプロフェッショナルたち-」 と題して
イベントを開催いたしました!
今回のイベントレポートでは背景モデリングSVとして背景のデザインからモデリングまでを担当し、多くの作品に携わり、またデジタルハリウッドの特別講師も務めていただいているSAFE HOUSE inc.の鈴木卓矢氏にご登壇いただいた、『背景アーティストの世界』についてご紹介していきます!
クリエイターとしての心構えから、お仕事のリアルなお話、背景モデリングについての考え方など、CG業界でお仕事をしていきたい方にとってはどれもとても為になるお話です!
イベントに参加できなかった方、興味のある方は是非ご覧ください!
▼ゲスト紹介
SAFEHOUSE inc. 取締役・Modeling Supervisor
鈴木 卓矢/Takuya Suzuki
Twitter:@takupomu
Senior ArtistとしてBlizzard EntertainmentのCinematics部署で背景のデザインからモデリングまでを担当し、多くの作品に携わる。現在はドイツでArt Directorとしてリアルタイム映像制作で活躍しているErasmus Brosdauとタッグを組んで、SAFEHOUSE inc.を設立。さらに自身のスキルアップのためにフリーランスの背景モデラ―としても幅広いジャンルのアセット制作を請けている。最近では後進を育てるために自身の経験を基にしたBlizzardと同じ環境レベルでのアーティスト教育をしている。
<代表作>『World of Warcraft』『StarCraft2』『Diablo3』『海賊とよばれた男』『スターシップトゥルーパーズ:レッドプラネット』『FINAL FANTASY XIII』『OVERWATCH』
▲Takuya Suzuki 2014 Modeling Reel
【目次】
背景モデラーのお仕事
背景モデラー とはゲーム、アニメ、映画など、CGを使った映像の背景(建物、山、部屋の中など、キャラクター以外のもの、舞台でいう舞台セットにあたる)を作る人のこと。
アニメ会社に入ればアニメの背景、ゲーム会社に入ったらゲームの背景、CGプロダクションにはいったらCGを使ったすべての背景をデザイン・モデリングするのが背景モデラ―のお仕事。
鈴木氏のキャリアのお話
背景モデラーを目指したきっかけ
---ドラクエやFFなどのゲームに打ち込んでいた少年時代、映画鑑賞に夢中になっていた高校時代の影響で大学進学時に、ぼんやりとハリウッド映画をつくりたいという想いを抱いた鈴木氏。
鈴木氏 :大学を探していた時期にちょうど東京工科大学の1期生を募集していて、そこにハリウッド映画でアカデミー賞を受賞していた先生がいて、これはここしかないと思い東京工科大学に入学しました。でも1期生という事もあって、あまり環境が整っていなかったんですね。このままではハリウッドに行けないと思って、大学3年生の夏休みにアルバイトで60万円ほどお金をためて半年間のデジハリのようなCGを教えてくれる専門大学に通いました。
---そして、大学4年生の就職活動の時期。当時世界的に人気となっていたFFシリーズの制作を手掛けていたスクエアエニックスへ行こうと思うも、スクエアエニックスのビジュアルワークスは新卒を募集していなかった。当時学生だった鈴木氏は、大学を卒業してから中途での入社を目指した。
鈴木氏 :何社か内定はもらったが、やっぱりスクエニが良いと思い、内定はすべて蹴って大学4年の1年間は専門学校のTAをやって就職用の作品を制作しようと思いました。
大学の卒業論文と作品制作を両方やらなければならず、人生で一番努力した時期だと思います。
『タイムスリップしたらいつに戻りたい?』なんて話になることがあるけど、絶対この時期には戻りたくない。
そのくらい1年間CGにささげました。この努力の甲斐もあって、この作品をCGコンテストに出したときに、見てくれていたスクエニの方がが、会社を紹介してくれました。
これが僕のキャリアの始まりです。
▲制作時大学4年生、スクエアエニックスに就職を決めた作品
キャリアスタート
---スクエアエニックスには6年間勤め、海外に拠点を移そうと就職活動を始めようとした矢先、ブリザードから声から声がかかる。ハリウッド映画を目指していた鈴木氏はその旨を伝えるも、「ブリザードでビザを取得して英語に慣れてから、ハリウッドを目指せばいい」と言われ、好待遇でブリザードへと入社する。
▲スクエアエニックスでの最後の作品
Blizzardで得た経験
鈴木氏 :当時、Blizzardのシネマティック部署は背景チームが3人しかいなく、背景のデザインからモデリングまで1人で制作しなければならいなかったんです。なので、大変ではあったんですけど色々な経験ができたと思います。
2、3年して、ある程度の見通しが立ったらハリウッドへ挑戦しようと思ってたんですけど、ハリウッドの人たちと交流を深めていくうちに、Blizzardという会社のポジションがわかってきました。
ハリウッドのVFXスタジオは1人1人に与えられるデザインの裁量が少なく、指示されたことをこなしていくよう様な仕事でした。
それに対して、僕がBlizzardで働いていた時は周りはすごい人達ばかりで、有名なプロダクションのリードモデラ―だったり、スーパーバイザーだったりで、ハリウッドに行かなくてもその人たちの技術や考え方をすぐ隣の人から聞ける環境だったんです。
だったらあえてハリウッドのVFXスタジオに行くよりも、自分のデザインを考えられて、周りには教えてくれる環境がある方がいいと思い、結局5年間Blizzardで働きました。
帰国後
---フォトンアーツでスーパーバイザーを務めたのち、SAFE HOUSEを設立。設立から4年にしてかなり大きなプロジェクトに携わっている。
SAFE HOUSEについて
- ゲーム、VFX、アニメ、フルCG映像の背景モデリング
- アンリアルエンジンを使ったリアルタイム映像制作
- 長期インターン制度を含めたアーティスト教育
を主軸に活動しているCGプロダクションで、これまでに以下のような作品に携わっている。
『Love, Death & Robots』『オルタード・カーボン:リスリーブド』『BIOHAZARD INFINITE DARKNESS』『映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」』『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』等
アメリカで勤めていたBlizzardの作業形態に感銘を受け、2008年に設立。
人を育てるための仕事をモットーとし、自主性を重んじ、若手にも責任感を持たせている。
社員一人一人と向き合い、何がしたいかを尊重すること。答えをそのまま教えるのではなく、インプットの仕方を教えるのが大事。だから少人数で製作を行っていると鈴木氏は語る。
鈴木氏 :うちの制作現場は背景モデリングを基本的にやっていますが、アニメーターやキャラクターモデラ―も一応います。会社を回すために仕事をするのではなく、会社の中で働いている人を育てるために仕事を獲得しているというのがうちの考え方ですね。
だから人をたくさん雇ってしまうと、僕が教えられない時間も増えてしまうし、育成プランから外れた仕事をやらせなきゃいけないというタイミングも増えてしまう。
良いアーティストを育てれば、自然といい仕事もやってくるというサイクルがズレてしまうのが嫌なので、人数を区切って少人数でやっています。
それがアメリカで経験したBlizzardに近いスタイルでやっているという感じです。
人材教育に関しては日本で一番だと思っています。
背景アーティストとして大切なこと
【背景をデザインするということ】
-どこかで見たことによって起こる記憶のバグを表現する
鈴木氏 :ゼロからものをデザインするってもうこの世には存在しないんじゃないかっていうくらい、世の中はデザインであふれているんですよね。それじゃあ、新しいデザインをどうやって生み出すのか。
僕が良くやるのが、新しいビルのデザインをするってなった時に、新幹線を縦にしてみるとか。ビルじゃないところからデザインを持ってくるっていう事を結構やっていますね。
どこにも見たことがないものっていうのは人は違和感を感じるんですよ。
-ゼロから生み出すのではなく記号の組み合わせで作る
鈴木氏 :デザインが思いつかないとき、いままでどういうものを見てきたかっていう事がすごく大事になってくきます。
なにか「かっこいいもの」を見たとき、その物の形を覚えたとしても、実際にデザインするとなった時、全然カッコよくならないことがあるんですけど、それは、なにが「かっこいい」のかを記憶していないからなんです。全部を見て全部を覚えてようとしてもざっくりとしか覚えていないんです。
そうではなくて、大事なのは全部おぼえようとするのではなくて、どこにカッコよさがあると感じたのかその記号を読み取るという事が大事。もしそのかっこいいと思った記号を組み合わせてダサいと感じたときは、かっこいいと思った記号が間違っていたという事になるんです。
どの記号がかっこいいのかを見極める目を養うのが大切だと思います。
【これから学ぶ人たちへ】
-死ぬまで続けられるのがアーティスト
鈴木氏 :現状維持っていうのは相対的にみると後退している状況なんですよね。周りが勉強しているのに自分だけとどまっていたら、どんどん置いてかれてしまう。アーティストっていうのは死ぬまで続けられる、死ぬまで勉強できる、死ぬまで作り続けるっていうのがアーティストたる所以であって、それができないと埋もれていってしまったり、本当にやりたい表現ができなくなってしまうわけです。
-技術は自分が体験したものでしか身につかない
鈴木氏 :インプットしているだけでは絶対に身につかないです。いいなと思ったものはすぐに自分でつくってみないと、脳の中で定着しないというか、自分のものにならないんですよね。だからインプットした技術とか知識っていうものは、絶対にアウトプットしなきゃいけないんです。
-目標があると1㎝近づいただけでも実感が出る
鈴木氏 :何となく仕事をしていたら、あんまり見につかないんですよね。でも仕事に対して何か1つ目標をもって取り組むと、身につくものも変わってくる。昨日できなかったことで今日できるようになったことが言えるくらい、毎日目標を持って取り組むことが成長に繋がります。
最後に
SAFE HOUSEでは人をたくさん募集しています。
色々な大きなプロフェクトが動いているので人が必要です。
モーションキャプチャーのオペレーターから、プロフェクトマネージャーさんから、キャラクターモデラ―、シネマティックアーティスト、アニメーター、エンバイロンメントアーティストなど新卒から中途まで限らず募集しています。
弟子入り制度についてや、弟子の作品とか、背景をモデリングすることのなども載っていますので興味がある方は是非SAFE HOUSEのホームページをみてください。
鈴木氏へ質問コーナー!
Q 1日の仕事スケジュールはどんな感じ?
鈴木氏 :出勤するのが10時で、会社を出るのが5時過ぎくらいなので、会社にいるのは8時間もいないくらいです。でも同時に、自分の仕事や、セミナーの準備、弟子を取っていることもあって、自宅で3,4時間作業することは結構あります 。なので忙しいときは1日12時間くらい仕事をしていたりしますね。
Q Mayaで自然物をゼロからモデリングする時のコツを教えてください。
鈴木氏 :これは単純に地球の重力を考えてモデリングすることです。自然現象や物理的な影響を考えると、どういう風にモデリングしたらいいかというのが見えてきます。
Q 世界観を作るときの情報収集はどこからしてるのでしょうか?
鈴木氏 :基本的な世界観はリアル、ファンタジー、など片手で数えられるくらいしかないんですよね。その限られた中のどの世界観をやりたいのか。それで、そのあとはその世界観を詰めていく。例えばファンタジーをやりたかったら、ロケーションはどこ?そのロケーションの中で何を見せたいの?まで考えていくと1つの作品として基本は成り立つ。
Q 良い背景は、その場の空気感さえ感じられるのもだと思っているのですが、その空気感を出すために必要なこと・大切にしていることは、どのようなことでしょうか?
鈴木氏 :空気感を感じるというのは、ほぼライティングの話に近いです。いい背景はどういう背景かというと、モデルでストーリーを説明できるというのが一番良い背景だと僕は思います。
ストーリーに対して背景がどのような情報を持っているのか、というのが背景モデリングなので、背景の構図やモデルの情報でキャラクターがいなくてもストーリーが理解できるように作られているのが良い背景だと僕は思います。
Q 背景アーティストをするうえで、普段から行っているものの見方や考え方はありますか?
鈴木氏 :なにがかっこいいかをちゃんと考えるという事。背景で一番重要なのは奥行きと高さを表現することなんです。その奥行きって何だろう?高さって何だろう?というように、モノの本質を深堀して考えることが大事だと思います。
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