登壇者紹介
高橋一生(kazuki takahashi)
Film director / Photographer
TOKYO management(TAIYO KIKAKU Co., Ltd.)
武蔵野美術大学卒業。在学中にフォトグラファーとして活動を開始。卒業後、活動の幅を映像に広げる。アートディレクターとして所属していた自身のバンドでのMV制作の経験を活かし、広告映像のほかアーティストのMVを多く手がける。心に響く情景を表現する力に優れ、特に光や水の印象的な演出を得意とする。
2020年11月 TOKYO(太陽企画)マネージメント契約
~制作実績(一部抜粋)~
フジファブリック - 東京 Music Video
中田裕二 - ランナー Music Video
小山田壮平 - 恋はマーブルの海へ
ポートフォリオサイト
https://kazukitakahashi.myportfolio.com/
1本のミュージックビデオが変えた進路
ーー高橋さんは現在映像ディレクターとしてご活躍されていますが、まずはクリエイターを目指したきっかけを教えてください。
高橋 :小さいころから美大を目指したり、モノづくりがしたいと思っていたわけではないんです。もともと、理系の建築志望だったので、全然絵を描いたこともなければ、美術館にも行ったことはありませんでした。
ある時ひとつのミュージックビデオを見たことがクリエイターを目指そうと思った最初のきっかけです。
ーーどんな作品だったんですか?
高橋 :デジタル一眼のストロボを150~200台くらいPCで制御して、フラッシュを使って液晶の画面を再現したミュージックビデオで、「ピタゴラスイッチ」の制作に携わったことのあるディレクターの方の作品です。特に何もやる気のなかった時代の僕が見て、こういう世界に関わらずに死ぬのは嫌だなと勝手に思って、今まで好きだった数学や物理の学習から文転して、武蔵野美術大学・芸術文化学科の受験に挑みました。
ーーそこでクリエイターへの第一歩を踏み出したんですね。大学ではどのように学習されましたか。
高橋 :無事合格したはいいんですが、美術の知識がないまま「モノづくり」がしたいという衝動だけで美大に入ったので、何をやればいいかわからない状態で周りの生徒ともなじめませんでした。
なので、とりあえず情報収集しようと思い、大学の図書館に入り浸っていました。
大学の図書館って素晴らしい数の書籍があり、棚の端から端まで書籍をとりあえず持っていって、机の上にドン!って置いて、ペラペラ「いいものを見る」ということを繰り返していました。
そうやっているうちに、自分の中で好きかどうか、なんかいい!と思ったり、好きではないけどすごいな~とかすごくないなとか、なんとなく指標が出来上がっていったんです。
ーーインプットすることから始められたと。映像にはいつごろ触れ始めたんでしょうか?
高橋 :最初は絵や彫刻、プロダクトデザインなど色々試していったなかで、とりあえず形になってくれる写真にしがみつき、一日中一眼レフを持ち歩く生活を繰り返していました。その後は映像学科の写真専攻に転科して学習を進めました。
そんなときに映画の制作部に誘われる機会があって、映像は全然やったことなかったんですが、とりあえず行ってみるかという感じで現場に行きました。
ーーとりあえず、がスタートなんですね。現場はいかがでしたか?
高橋 :最初は2週間泊り込みで、一日1.2時間寝れたらいいっていう感じでした。ただ、ほとんど寝れないし疲れるけど、仲間とやっている!っていう空気を肌で感じて、映像っていいな、楽しいなと思いました。
写真をやっているときは一人でやっている感覚だったんですけど、映像って一人で作れないんだなーと思ってました。
※高橋さんの作品から抜粋した写真
「やってみようか」から始まったバンド活動×映像制作
ーー現場が終わってからも映像に関わる機会があったんでしょうか?
高橋 :そうですね。写真専攻で知り合った人に、映像カメラマンをやってみない?とお誘いを受けて、映像に携わる機会ができました。
1回目は制作、2回目は撮影として関わって、あぁやっぱり面白いなと思っていた時に、僕の幼馴染でバンド活動をしている音楽好きの友達から、ミュージックビデオ作りたいんだけど作れる?と言われたんです。
作ったことなかったんですけど、なんか作れるだろうなって思ったので、じゃあやってみようかという流れで作ることになりました。
ーー映像と音楽が繋がりましたね。映画の現場もミュージックビデオも「やってみよう」と動くことが素晴らしいと思います!
高橋 :それからはバンドの写真やミュージックビデオを撮りつつ、映像やライブの魅せ方、こういうジャケットにしてみたらいいんじゃない?って提案をしているうちに、これってもうメンバーでいいんじゃない?っていう話になって楽器を弾かない「アートワーク」担当として、バンドに参加しました。
ーー就職活動はバンドをしながら、行ったんでしょうか?
高橋 :ポートフォリオサイトに作品をまとめてはいましたが、バンドを続けたいから実は就職する気はなかったんです。
ーーそうなんですね!
高橋 :ただある時、ポートフォリオを見てくれた今の職場の人から就活に興味ありますか?というメールが突然きました。半年間くらいバイトでもいいから勉強してみないか?と言われて、CMの制作部で働かせてもらうことになり、結局そのまま就活はせずにバンドを続けながらフリーランスを続けてきて、今に至ります。
ーー高橋さんはインプットしながらいろんな現場に行き、作品を作ってこられたことが今に繋がっているように感じます。ここからは参加者からの質問をもとにお話を伺います。
※光と影が印象的な一枚
イベント参加者からの気になるご質問
Q.ミュージックビデオを作る際、撮影や構成をどのように考え、行っているのかお聞きしたいです。
高橋 :企画書を作成して、アーティストやクライアントへの説明に使います。作成する際のポイントはそれぞれこんな感じです。
- 表紙・・・その曲のイメージとなるような画像をネットから探してきたり、自分で撮影をしたりして表紙に持ってきます。これで自分の頭の中を整理し始めます。
- メッセージ・コンセプト・・・曲を聞いてから、自分にどういう考えがあって、どういう風に感じたか、アーティストやクライアントに伝えたい思いを記述します。
- フィルムコンセプト・・・コンセプトは絵コンテを基準にまとめていきます。どういうところで、どういう視点で、どういう撮影方法で撮るのか。ボーカルのインサートカットはどう撮影するか、バンドシーンはどう撮影してどう編集で重ねるのかを文字にして書き加えます。
- ルックイメージ・・・実際に流す映像を時系列準に並べます。カット割りしたイメージをネットで拾ってきたり、自分で撮影したりします。
- ストーリーボード・・・ルックイメージで表記した写真に添えて、歌詞の中でイメージと合った内容のところを書き加えたりして、分かりやすくしていきます。
Q.撮影に使用したカメラを教えてください。
高橋 :ブラックマジックの「ポケットシネマ4K」というカメラに、シグマ16mm-35mm・F値1.8のレンズをつけて撮影しています。 カメラとレンズだけの裸の状態で街を歩き続けて、スチールの撮影をするような感覚で色んな情景を切り取ったという感じです。
※スチール:モノ・人・景色などを撮影した静止画のこと
Q.人混みの写真は肖像権に引っかからないのでしょうか?
高橋 :無視して撮影しちゃう人もいるんですけど、僕は気にしていて、顔ははっきり映らないようなアングルで撮影しています。
Q.写真の現像や映像のカラーグレーディングをする中でこだわっているところを教えてください。
高橋 :僕はカラコレを自分でやったり、カメラマンの人と一緒にやったりするんですが、自分でやるときは、「ダヴィンチ」というカラーグレーディングのソフトを使っています。もともと、カメラの中に自分の好きな色の設定を作っているんで、その設定で撮影をして、撮影後にカラコレ用のソフトに戻して、色を再度微調整して納品しています。カメラマンと一緒に作る際もできるだけ、自分の好きな色でやらせていただくよう話しています。言葉で説明は難しいんですが、青と緑が被さったような色味が好きなんで、そこに対してグレーディングを当てつつ、制作しています。
※カラーグレーディング:ストーリーや演出に合わせて色味を調整する作業
Q.好きな色を見つけること、インプットをたくさんすることは大事ですか?
高橋 :そうですね。いろんな資料や作品を見たりインプットをすることはすごく大事だと思っています。自己紹介でも話しましたが、大学の時は図書館でひたすら「今日はこの棚で」という感じで机に資料を用意してとにかく見まくって、目を肥やしていきました。自分の目で好き嫌いを精査していくっていう作業をしていくことはとても大事かなと。 卒業後も、画集とか好きなんで書店に行って、とりあえず気になったら一旦買っておく、ということを繰り返していますね。そうすることで、たとえ買ってすぐには見なくても、2・3年後見開いて、好きな色を思い出すってこともできると思います。
ーー今回のイベントでは、気になったらとりあえずやってみること、インプットをたくさんすること、作品を作って人に見てもらうことの重要性を高橋さんにお話いただきました。
ミュージックビデオの制作に携わりたい方、映像業界に興味のある方は高橋さんのように「とりあえず」やってみることがおすすめ!
学習方法や業界などについてのご相談は下記スクール説明会にてお受けいたします!
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卒業生が制作したミュージックビデオを紹介!
天邑『ボクが望む僕』Official Music Video
制作者:Nao
シンガーソングライターとして活躍する天邑の
オリジナル曲のために制作されたミュージックビデオ
ショートフィルム風の企画・撮影・編集によって
仕上げられた映像。
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ミュージックビデオカネヨリマサル「グッドバイ」
制作者:廣田 裕子
彼女たちの見ている世界をテーマとし、彼女たちの
今後の活躍を期待させるようなミュージックビデオ
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るーららるーらーるららるーらー
制作者:田中正晃
〈酸欠少女〉さユりの楽曲、「るーららるーらーるららるーらー」を基に作成。
さユり自信をアニメのキャラとして描き、彼女の曲の世界観を映像で落とし込んだ。
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