デジタルハリウッドSTUDIO吉祥寺 ブログ

年商2億円「モテクリエイターゆうこす」を
支えるデザイナーの仕事

2020-07-01

Twitterでは約32万人、Instagramでは約46万人のフォロワーを持つ「モテクリエイター ゆうこす」。2012年にHKT48を卒業し、ニート生活を経て個人事務所KOSを設立しました。現在は実業家兼インフルエンサーとしてさまざまな事業を手掛け、年商は2億円とも言われています。

そんなゆうこすさんへの仕事の依頼は、ここ1年で急増。CM契約や、大手企業・都道府県との共同事業など、次々に新しい案件が生まれています。そのきっかけの一つとなったのが、デザイナー小島香澄さんの存在でした。


今年入社したばかりの香澄さんは、何をどのようにデザインし、ゆうこすさんの魅力を発信していったのでしょうか。2019年10月にデジタルハリウッドSTUDIO吉祥寺で開催された2人のトークイベントの内容をもとに、前後編でお届けします。後編にあたる今回のテーマは、「クリエイターとインフルエンサーがタッグを組むべき理由」です。

ゆうこすを支えるデザイナーの「知られざる仕事」

――ゆうこすといえば、TwitterやInstagramで⼈気を集めているイメージがありますが、 ⾹澄さんはデザイナーとしてどんな仕事をしているんですか?



⾹澄 :KOS が⼿掛けた事業を紹介するサイトのデザインや、ゆうこすさんがSNS 上にアップしている画像の作成がメインです。


ゆうこす :まだ世に出ていないものも多数あるんですが、ほぼ全ての案件に関わってもらっています。あまりにも案件が多すぎて、以前はSNSに画像をアップするのをうっかり忘れそうになることもあったんですけど、最近は⾹澄さんがフォローしてくれるんですよ。


新商品の発売⽇になると、何も指⽰していなくても「画像を作っておきました。よかったら使ってください」とデータが送られてくるんです。それに私がコメントを付け加えてSNSにアップすれば、告知は完了。本当に助かっています。


――⼀般的にデザイナーは、「こういうものを作ってほしい」とクライアントから指⽰を受 けて動く仕事ですよね。⾹澄さんは、なぜそういう働き⽅をするようになったんですか?


⾹澄 :事業ごとにLINE のグループがあるので、そこでの会話を読みながら「もしかしたらこのタイミングでこういう画像が必要になるかも」と予測して、事前にデザインしています。完成したら、社内で公開されているゆうこすさんの予定と照らし合わせて送信。SNSはリアルタイムで配信しなければならないので、早めの準備を⼼がけています。


ゆうこす :サイトをデザインする際も、⾹澄さんは先を読んで考案してくれるんですよ。以前にもクリエイターを募集したことがあるんですが、応募者のほとんどが「今のゆうこす」に合わせたデザインをしていました。 でも⾹澄さんは私の発信を⾒ながら「今後こういうも のが好きになるなんじゃないか」と予測して外さない。 それが、他の⼈とは違うところですね。


また時には、インタビュアーのように 「なんのためにこの事業を進めているのか」「サービ スを通して将来的に何を伝えたいのか」と私の想いを聞いてくれた こともありました。そこから私の悩みや困りごとを⾒つけて、デザインで解決してくれるんです。


⾹澄 :⾃分では、そこまで先読みしている感覚はないんですが……(照)。デザイナーになる勉強をするためにデジタルハリウッドSTUDIO に通い、⼟台となるデザインやコーディングの知識を⾝に着けたからこそ、今があるのかもしれないですね。結局、基礎知識がないと何も始まらないので。コミュニケーション能⼒は実践で磨いている感じです。

「まるで⼥神のよう」とゆうこすさんに褒められ、照れている⾹澄さん。

実例紹介 TaVision のサイトはどうやってできた?

――KOS が提供しているサービス「TaVision」も、さまざまな都道府県や⼤⼿航空会社、 旅⾏代理店と連携して盛り上がっていますよね。そのサイトデザインも⾹澄さんが担当し たと⼩⽿に挟んだのですが、そもそも「TaVision」とはどんなサービスなんですか?


ゆうこす :ガイドブックに載っていない情報を、Instagram・ストーリーズ・⽣配信を使ってリアルタイムで発信している旅メディアです。⼀緒に旅⾏に⾏っているような楽しさを味わったり、⾃分も旅に出たくなったりするような情報発信を⽬指しています。 より信頼感 のあるサイトにしたい という想いがあり、リニューアル版は⾹澄さんにデザインを依頼しました。そうしたら、⼀気に仕事が増えたんですよ。もうびっくり!


⾹澄 :Web サイトのリニューアルにあたり新たに写真撮影も⾏ったのですが、撮影の際、カメラマンに事前情報をまとめて伝えたのがよかったのかもしれません。それに加えて、なぜリニューアルするのか、TaVisionというサービスをどんなものにしていきたいのかという想いも事前に共有したので、 スタッフ全員で同じ⽅向を向けた んだと思います。

⾹澄さんがリニューアル版のデザインを担当した「TaVision」の公式サイト

⾹澄 :それから、TaVision のリニューアル時は、サイトデザインだけではなく、ストーリーズの最初の画像にもこだわりました。例えば先⽇公開された広島編のカバーとなるストーリーズには「Vol.2」という⽂字を⼊れたんです。実はゆうこすさんがTaVision で広島を訪れるのは2回⽬。特に指⽰はなかったのですが、フォロワーが「また同じ景⾊の場所で写真を撮ってる。間違えてアップしちゃったのかな?」と思わないように、2回⽬であることわかるデザインにしました。


ゆうこす :旅先で写真を撮ったら、「サイトにアップしたいので加⼯お願いします」と⾹澄さんに送るんですけど、たった5分でキレイなフレームがついて戻ってくるんですよ。しかも何パターンも!⾹澄さん、仕事が早すぎます(笑)


⾹澄 :テンプレートを⽤意して、差し替えできる状態にしておいただけですよ!

「かわいい!」をどう伝える? デザイナーと組むときの注意点

――でも、何を「かわいい」と思うのか、その感覚を伝え合うのってなかなか難しいですよ ね。ゆうこすさんと⾹澄さんは、どうやって感覚を近づけているんですか?


ゆうこす :私は⾔葉で説明するのが下⼿なので、「これかわいい!」と思ったものがあれば、すぐにinterest で⾹澄さんとシェアしています。


かすみ :急にLINE で画像が送られてくることもありますよ。好きなものを積極的に共有してくれるのでありがたいですね。たとえば「ピンク⾊」といっても、⼈によって好みが違うんです。KOS に所属しているファッション系のインフルエンサー、ももちさんとゆうこすさんの好きなピンク⾊は別物。


ももちさんがイベントの告知で使う画像を作ったとき、最初はゆうこすさんの好きなピンク⾊でデザインしていたんですが、どうしても⾊がしっくりこないとももちさんに⾔われたんです。それでさまざまなピンク⾊を試すうちに、同じピンクでも⼈によって好みが違うことに気づきました。 ゆうこすさんも、ももちさんも、コミュニケーションを重ねながら好 みを探っています。

「デザインをするときは相⼿とのコミュニケーションを⼤切にしています」(⾹澄さん)

――ゆうこすさんに好きな⾊があるように、ファンにも好みはありますよね。デザインする
際、ファンの声も気にしていますか?


香澄 実は、ゆうこすさんのファンだけをフォローしているTwitter アカウントがあるん です。その⼦たちが何に惹かれて、どんなツイートに「いいね」をするのかを調べるために。そういうアカウントを⾒ながら、ゆうこすファンのイメージみたいなものを意識的に持つようにしています。


インフルエンサーの場合、その⼈を軸にして物事が動いているので「その⼈らしさ」ももちろん⼤事なんですけど、「これはゆうこすっぽくないよね」と思われると世界観が崩れてしまうんです。だから、ファンの中のゆうこす像と、ゆうこすさんが今好きなものの間に差が出ないように、整合性をとりながらデザインしています。


ゆうこす :⾹澄さん、そこまで考えていたんですか!?知らなかった……。もう完全にデザイン⾯のマネージャーですね。周りの⼈に⾃慢します(笑)

クリエイターとインフルエンサーが組む時代へ

――最後に、今後の未来像についてお⼆⼈に聞きたいと思います。YouTuber やInstagramer など、現在さまざまなインフルエンサーが活躍していますが、これからどんな分野の⼈に⼈ 気が集まると思いますか?


ゆうこす :SNS の進化を紐解くと、以前はmixi やfacebook など、⼈とつながるためのSNSが主流でしたよね。でも少しずつ⼈間関係に疲れてしまう⼈が増えた結果、若い世代はTwitter やInstagram などを使って個⼈発信をするようになりました。


どちらにもメリット・デメリットはありますが、個⼈発信に傾きすぎると、「同じ趣味を持つ⼈とゆるくつながる」という状態を作るのが難しくなってしまうんです。mixi やfacebookのように、「◯◯好き集まれ!」と発信できないから。そう考えると、今後はニッチな分野にこだわっている⼈がバズると思います。私が多くの⼈に知ってもらえたのも、メイク系ではなく「モテメイク系」と称してぶりっ⼦を集めてきたからだと思っているので。


ただ⼀つ注意したほうがいいのは、たとえニッチな分野でも、コミュニティは複数持っておいたほうがいいということです。⼀つのSNS に熱狂的な信者がいる状態にするのではなく、YouTubeやInstagramなど、いくつかのコミュニティを持っておいたほうがインフルエンサーとして活躍の場が広がると思いますよ。


――そういうときこそ、インフルエンサーはデザイナーとタッグを組むべきなのかもしれ ませんね。⾃分⼀⼈で画像を加⼯して、動画を編集して、ファンからのメッセージに対応し ていくのは⼤変なので。


ゆうこす :そうですね。いま振り返ってみると、仕事の幅を広げるのにデザイナーとの連携は必要不可⽋だったと感じます。デザインは外注することもできますが、基本的には毎⽇リアルタイムで発信しなければならないので、連絡をとるたびにゼロから説明するのは時間がもったいないし……。インフルエンサーとデザイナーがWin-Win になれる条件で、お互いに応援しあえる⼈と組むことが⼤切だと思います。

「夢を⼤きくするためには、タッグを組むことが必要だと思います」(ゆうこすさん)

香澄 :私ももとをたどれば、⼤勢いるゆうこすファンのなかの⼀⼈でした。でも毎⽇SNSを⾒ているうちに、ところどころで「動画の編集⽅法が変わったな」「加⼯の⾊味が変わったな」と感じるようになったんです。もし応援したいインフルエンサーがいたら、SNS を⾒ながら仕事の仕⽅や好みが変わっていく段階を追って、並⾛できるようにしておくといいかもしれないですね。


ゆうこす:私は⾹澄さんに出会って仕事の進め⽅を転換できましたが、⼤半のインフルエンサーは今も⾃分の睡眠時間を削って編集や加⼯をしています。でも、無理をすればするほど、活躍の幅を広げるのが難しくなってしまうんですよ。インフルエンサーとして世界をもっと⾯⽩くしていくためには、編集や加⼯を⾃⼒でするのではなく、「⾃分の思いを発信していくこと」が⼤切です。そのためにも、デザイナーを始めとするクリエイターと積極的にタッグを組んでもらいたいですね。それができる⼈が⼀番格好いいということを、私は伝え続けていきたいと思います。

取材・⽂/華井由利奈 写真/⽮野拓実 構成/⿃井美沙(デジタルハリウッド株式会社)



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