公開日:2024-10-28
国内の大手企業も参入しているメタバース。Facebook社が社名を「Meta」に変更したことも大きな注目を集めました。メタバースという言葉はよく聞くけれど「メタバースって何?」「活用方法は?」と疑問に思われている人もいるのではないでしょうか。そこで本記事ではメタバースの意味や活用事例、メリット・デメリットなどを解説しています。成長市場であるメタバースに興味がある人は、ぜひチェックしてみてください。
メタバースとは何か?
定義は決まっていませんが、メタバースとは3次元の仮想空間のことです。メタバースの登場によってふだん過ごしているような生活が、メタバース内で体験できるような環境が整いつつあります。たとえばメタバース内で世界中の人と会話をしたり、学校で学んだり、コンサートなどのイベントに参加も可能です。
メタバースでは自分の分身となるアバターを操作することで、会話しているときに隣に人がまるでいるかのような感覚を得られます。また過去の遺跡を仮想空間内に描き、そのなかを歩くといったことも可能となり、理想の世界を創造できるのもメタバースの魅力といえるでしょう。
メタバースの条件
メタバースの条件は、いくつか提示されていますが、その中でも、EpyllionのCEOであるマシュー・ボール氏の提示した「7つの条件」が知られています。ポール氏は、メタバースを7つのコアな属性で定義しています。
1 永続的
メタバース空間には、リセット・一時停止・終了の概念はなく永続的に続いていく
2 同期的
あらゆるイベントが、現実世界と同じように同時多発的に参加できる
3 同時接続数は無制限
すべての人がメタバースの一部であり、参加ユーザー数に制限がない形でイベント・場所・アクティビティに参加できる
4 経済的
メタバース内では個人・法人ともに幅広い範囲の仕事が創造でき、経済活動が機能している
5 横断的
体験は、デジタルと実世界、そして、プライベートとパブリック、オープンとクローズプラットフォームにつながっている
6 相互運用的
使用しているデータ・アバターなどはプラットフォームに依存しない
7 多様性
個人・企業などの幅広いクリエイターによってコンテンツと体験は作成される
メタバースの語源・由来とは
メタバースの語源はmeta(高次元、超越)とuniverse(宇宙、世界)を合わせた造語とされています。メタバースは2020年頃に出てきた概念と思われがちですが、1992年に発表されたニール・スティーヴンスン氏のSF小説「スノウ・クラッシュ」が起源とされています。2003年にはLinden Lab社がメタバースの先駆けとなる「Second Life(セカンドライフ)」の運営を始めました。一時期注目を集めていたため企業もSecond Lifeに参入することもありましたが、当時はネットワークの技術も追いついておらず、下火になってしまいました。
メタバースとはどんな世界か
メタバースとは身近なところにも存在し、知らぬ間にメタバースの世界を体験していることがあります。仮想空間内でだれかと交流することを考えると、任天堂の大人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」もメタバースの一部とされています。またEpic Games社が提供する世界で大人気のゲーム「フォートナイト」も同様です。複数人とバトルロワイアルゲームを楽しめるほかに、フォートナイトのなかでライブイベントなどにも参加可能です。アメリカの人気ラッパーであるトラヴィス・スコットや、国内で絶大な人気を誇るアーティスト米津玄師もライブを開催しています。
ほかにも細田守監督の映画「サマーウォーズ」や、アメリカのSFアクション映画「マトリックス」にもメタバースの世界観が描かれています。
いろいろな作品でメタバースの世界が登場していることから、メタバースの世界は身近にありました。自分の身体は現実に残しておいて、仮想空間内で現実と同じような暮らしや、理想の世界を長年求めていることがうかがえます。VRゴーグルや通信環境の進歩によってメタバースの体験が快適になり、より注目が集まることが予測されます。
メタバースと先端技術
ここではメタバースと先端技術の関わりについてです。最近では現実世界と仮想空間を融合させた先端技術を、XR(クロスリアリティ)と呼びます。5Gによる通信環境の改善や、VRゴーグルなどの技術の進歩によってXRの需要が高まっています。
たとえば家を買う際に、物件完成後のイメージを実際に近い状況で体験したいという声があります。その声に対してCG空間にモデルルームをつくり、空間のなかに人をあらわすことも可能です。人がその場にいることで、よりリアルなイメージを掴めるでしょう。
また医療業界においてもXRの技術は役立っています。手術前後の映像を立体的に投影してカンファレンスや、遠隔施術にも利用しています。資料ではわかりづらい部分も立体的に表現できるのは、これまでにはなかったことです。医師不足が叫ばれているなかでこういった映像は、若手の育成にも有効的です。ほかにも観光スポットの紹介に使われるなど、今後もさまざまな場面でXRの導入が期待されます。
メタバースとブロックチェーンについて
仮想通貨に使用されているブロックチェーンの技術を用いることで、メタバースにも新たな経済圏が生まれています。メタバースもいずれ現実世界のようになり、仮想空間内の土地にも価値が生まれています。たとえばメタバース内の土地に商業施設をつくって、そこに人を呼んで遊んでもらうことも可能です。このように土地を含めたデジタルデータの所有権を証明するのが、NFT(非代替性トークン)です。逆に所有権を証明できなければ、デジタルデータはコピーされてしまい、価値を失います。
NFTによってデジタルデータをNFT化すると、固有のID(シリアルNo.のようなもの)であるトークンIDが発行されます。IDには作成者や所有者、取引履歴などの唯一の情報がブロックチェーン上に刻まれ、複数の場所に分散して管理されます。そのため、改ざんするには分散されたデータを一気に攻撃して改ざんする必要があるので、事実上不可能です。
土地を例に出しましたが、メタバースゲーム内のアイテムなどもNFTによって価値を持つようになり、レアなアイテムほど高値で取引されています。
メタバースの活用例
オンライン会議
新型コロナウイルスによってリモートワークが余儀なくされ、オンライン会議の需要が急激に高まりました。そこで円滑なコミュニケーションを取るために活用されているのが、メタバースです。Zoomなどのテレビ会議では相手の間がわかりづらく、会話にストレスがかかるといった課題がありました。その点メタバースではアバターを利用すると、まるで隣で話しているかのような体験が可能です。また常時オンラインでつながっている状態なので、他愛のない会話が生まれたりと、リモートワークの課題を解決する手段として注目されています。
ゲーム
ゲームの世界とメタバースは相性がよく、メタバースでもっとも利用されている分野です。アバターを使えばゲームの世界を歩き回ることが可能で、これまでにはない体験ができます。ゲームにはNFTが取り入れられており、ゲーム内で手に入れるアイテムを販売したり、自分でアイテムをつくって売ったりすることも可能です。このようにゲームでお金を稼ぐ(Play to Earn)人が出てきており、新たなビジネスチャンスが生まれています。
ライブ
メタバース空間のなかでライブも実施されています。新型コロナウイルスによってオンラインライブが流行りましたが、メタバースを利用するとよりリアルな体験が可能です。メタバースでのライブは自分の動作がアバターに反映されます。ほかに参加している人と同じ場所にいる感覚を得られるので、リアルなライブさながらの臨場感を楽しめます。また演出側もこれまでにはない自由な演出が可能となりました。トラヴィス・スコットのライブでは巨人になってメタバースの世界をねり歩いたりと、一見の価値があります。
メタバースの魅力やメリット
メリット①オンラインでの接触が可能
オンライン会議の事例紹介でふれましたが、メタバースではまるで隣に人がいるかのように、オンラインでの接触が可能です。アバターを通した身振りや手振り、目線などボディランゲージも相手に伝わる世界です。そのため同じ場所を共有している感覚を得られて、Zoomなどのテレビ会議で生まれる変な間による気まずさがありません。
また変な間が生まれるとだれが話したらいいのかわからないタイミングも発生し、ストレスに感じることもあるでしょう。メタバースでは会話や仕事が円滑にできることから、実際のオフィスをなくすところも出てきています。オフィスには固定費がかかるので、経費削減できるのはメリットといえるでしょう。
メリット②新しいビジネスの可能性
メタバースによって新しいビジネスの可能性が生まれています。メタバースゲーム内では、自分でつくったアイテムを売買して生計を立てているクリエイターがいます。これまではゲームをつくるのはゲームメーカーのみでしたが、だれにでもクリエイターになれるということです。自作したゲーム内に人を呼んで利用料を得られますし、つくったアイテムを売って稼ぐことも可能です。また対象は国籍も関係なくゲームに参加している人であり、世界を対象に販売できるのは魅力です。
メリット③非日常を体験できる
メタバース内では、現実世界ではできないことをテクノロジーの力をいかしてかなりリアルに体験ができます。メタバース内では、もう一人の自分になることができます。
メリット④現実世界のハンディキャップや制約がない
障害があったり、介護・育児で外出がしづらかったり、病気で療養していたりする人もメタバース内では自由な活動をすることができます。また、実際に住んでいる場所や環境の違いといった制約も超えて活動が可能です。
メタバースの注意点やデメリット
デメリット①準備が大変
メタバースのデメリットに、準備が大変という点があります。VRゴーグルを頭に被るのも少しストレスがかかるかもしれません。またVRゴーグルとハイスペックのPCも必要になってくるので、費用面からしても準備するのは簡単ではありません。
VRゴーグルなしにメタバースを利用することは可能ですが、VRゴーグルがあると視界360度がメタバースの世界なので、より没入感を得られます。また最近ではVRゴーグルもワイヤレス化や軽量化もされており、ますます技術の進歩が予測されます。
デメリット②セキュリティリスクが生じる
メタバースをより楽しむには仮想通貨の利用が不可欠です。メタバース内のNFT化されたアイテムを買う際にも仮想通貨が必要です。仮想通貨を保管するにはウォレットと呼ばれる仮想の財布が必要ですが、ウォレットがハッキングの対象になることも。悪意のある偽サイトにウォレットをつなぐと、仮想通貨を盗まれる可能性もあります。
またウォレットをつくる際に必要なパスワードやリカバリーフレーズを口外してしまうと、そこから盗まれるリスクもあります。これらのパスワードなどはだれにも教えることはなく、厳重に管理しましょう。
デメリット➂法律が整備されていない
メタバースはまだまだ発展途上の世界で、法律が整備されていません。たとえば日本では原則として物理的な「もの」にしか所有権を認めていないことから、貴重なNFTが盗まれるような被害があっても法律に守られることがありません。そういったところからも詐欺のようなものが横行しており、自分の身は自分で守るしかないのが現状です。
また日本は国柄、新しいものをなかなか受け入れないところがあるので、法律が変わるまでは時間がかかるかもしれません。したがって個人では、パスワードの管理や知らないURLやリンクをふまないようにするなど、セキュリティへの意識を高めることが大切です。
デメリット④依存性が高い
居心地の良い空間であることでメタバースに依存してしまう可能性があります。また、メタバースで過ごす時間が長時間になれば健康面での心配も考えられます。
デメリット⑤人間関係のトラブル
メタバース内で関わる人同士で人間関係のトラブルが発生する可能性があります。メタバース内では、現実世界で問題になっているような誹謗中傷などの人間関係のトラブルとはまた違った形でトラブルが発生することも想定されます。
デメリット⑥格差が生まれる
個人においても、企業においても、そもそもメタバースにアクセスできる人とできない人の格差が生まれます。
メタバースと投資の関係
総務省による令和4年版情報通信白書では、世界のメタバース市場規模(売上高)が、2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると発表しています。また国内では株式会社矢野経済研究所の調査によると、2021年度の国内メタバース市場規模は744億円で2026年度には1兆円を超えると予測されています。
以上のように国内、世界においても市場は大きく拡大することがわかるでしょう。市場規模が大きくなれば注目が集まり、メタバース関連の銘柄も人気となるでしょう。メタバースはゲームの分野が強いため、日本や世界で人気タイトルのゲームがメタバースと組めば、一気に取引額が上がる可能性もあります。また新たなゲームが発表されると独自の通貨が発行される場合があるので、投資で大きく稼ぐチャンスもありますが、投機的な面もあるので注意しましょう。
メタバースを活用している企業の業種
メタバースは、BtoB、BtoCともに活用が進みつつあります。メタバースを活用している企業の業種をいくつかご紹介します。
・ゲーム
メタバースの活用が最も進んでいる業種といえるでしょう。メタバース内でプレイしたり、プレイはせずに空間内を散策したり、友達を作ったりすることができます。
・ショッピング
メタバース内でショッピングもできます。世界中のどこからでもアクセスができ、リアル店舗であれば営業時間に縛りがありますが、メタバースであれば時間制限なく買い物を楽しめます。リアル店舗のように、メタバースでも試着もできますし、ウィンドウショッピングもできます。また、ショップスタッフに相談もできます。伊勢丹や資生堂といった企業がバーチャル店舗の提供を開始しています。場所の制限がないため海外からの集客にも成功しているようです。
・イベント
イベント開催においてもメタバースが活用されています。東京ガールズコレクションやサンリオが開催する「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」といったイベントは、リアルとメタバースの同時開催を行いました。アフターコロナにおいては、イベントへリアルに参加するコロナ前の動きに戻りつつありますが、リアルを補完するために、メタバースとの同時開催を行う企業も増えています。
・旅行
メタバースで旅行を楽しむこともできます。HISは、アバターを通して旅行が
できる「HISトラベルワールド」を期間限定でスマートフォンアプリ「REALITY」内でオープンしました。来場者は130万人を超えたようです。
・展示会
コロナ禍では、リアルに展示会開催ができなくなったためオンライン展示会が始まりました。アフターコロナにおいても、オンラインとリアルの同時開催を行うことが増えているようです。
メタバースをBtoBビジネスで活用する際の課題
メタバースの活用が進む一方で、メタバースをBtoBビジネスで活用する際の課題もあります。
課題 ガイドライン・法整備の不足
仮想空間内でビジネスを行うにあたって、ガイドラインが整備されていません。また、現在の法は、仮想空間内でのビジネスを想定されて作成されたものではありません。
課題 人材不足
メタバースでの空間作りは、XR領域における3Dモデルのスキルや、インタラクション設計のスキルが求められます。また、業界の知識も持ったうえでビジネス企画を立ち上げる必要がありますが、これらのスキルを持ち合わせている人材が不足している状態です。
課題 操作方法が難しい
そもそもメタバースにアクセスができる・できないといったリテラシーの違いがあります。また、メタバースアクセス後も、業界や世代によりアバター操作が難しいといった声もあがっています。
課題 メタバースに対応するスペックを持つデバイスの準備が難しい
メタバースのコンテンツはCGで作成されているため、参加するには、充分なスペックを備えているPCを持っていることが求められます。スペック不足のデバイスの場合は、動作が重くなることもあります。
メタバースを学ぶならデジタルハリウッド専門スクール
メタバースを学ぶならデジタルハリウッド専門スクールがおすすめです。デジタルハリウッド専門スクールでは、メタバースゲームのプラットフォームでもあるThe Sandbox(ザ・サンドボックス)と協業したメタバースの講座を開設しています。講座はThe Sandboxの世界をクリエイトするVoxel Artists(ボクセルアーティスト)とVoxel Game Creators(ボクセルゲームクリエーター)を育成する目的でつくられました。
講座ではCreators Fund(クリエイターファンド)の公認クリエイターが講師です。VoxEditと呼ばれるボクセルアートの制作および編集ツールを実際に使って、ゲーム内で使うアイテムのつくり方を学べます。またゲーム自体をつくれる、Game Makerツールの使い方も学べます。
メタバースは世界からも注目を集めており、ボクセルアーティストという新たな職業が生まれました。まだまだ未発達の分野なので、未経験の人でもチャンスは広がっています。
The Sandboxのクリエイターになりたい人や、メタバースやNFTに興味がある人にはおすすめです。
まとめ
本記事ではメタバースの背景や活用例について解説しました。市場予測にもあったように、メタバースは今後も成長が見込まれる分野です。一方で法整備やセキュリティリスクなど、デメリットも存在します。発展途上ではありますが、早期参入することで得られるメリットはあります。早いうちからメタバースの世界にふれたい人や、クリエイターをめざしたい人は、プロから学べるデジタルハリウッド