公開日:2025-10-27
メタバースとNFTは、近年注目を集めるデジタル技術です。この記事では、それぞれの特徴や違い、両者の関係性をわかりやすく解説し、メタバースでの活用事例や利用時の注意点まで紹介します。
【目次】
メタバースとNFTの特徴、関係性や違い
メタバースは、インターネット上で交流や経済活動を行う三次元の仮想空間です。一方で、NFTはブロックチェーン技術を用い、デジタルデータに唯一無二の所有権を与える証明技術です。メタバースとNFTは異なりますが、深い関係性を持っています。
メタバースとは
メタバースは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間です。英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語です。利用者はアバター(自分の分身)を介してこの空間にアクセスし、他の利用者とコミュニケーションをとったり、イベント参加や経済活動など、現実世界に近い多様な活動を体験することができます。
メタバースでできることを紹介
メタバースでは、アバターを介して世界中の人とコミュニケーションをとることができます。ゲームやライブなどのエンターテイメントのほか、バーチャルオフィスでの会議や研修といったビジネス利用も可能です。
また、NFT(非代替性トークン)を活用し、デジタルアイテムや仮想空間内の土地を売買するなどメタバース上で経済活動も行われています。ユーザー自身が空間やコンテンツを創造できる点も大きな特徴です。
NFTとは
NFTは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略で、ブロックチェーン技術を用いて発行される唯一無二のデジタル証明書です。これにより、これまで容易に複製可能だったデジタルアートやゲーム内アイテムなどに所有権や希少性が付与され、その価値を担保します。
NFTでできることを紹介
NFTによって、デジタルアートやゲーム内アイテム、音楽などのデジタルデータに唯一の所有権が付与され、資産として売買が可能になります。クリエイターは、作品が転売されるたびに自動で手数料を受け取れる仕組みを導入できます。また、メタバース内の仮想の土地や、イベントの会員証・入場券としての活用も進んでいます。
メタバースとNFTの違い
メタバースは、アバターを介して交流や活動を行う「3次元の仮想空間(場所)」そのものです。一方、NFTは、デジタルデータに唯一の所有権を証明する「証明書技術(モノ)」です。両者は異なる技術ではありますが、深い関係性があります。NFTは、メタバース内で利用される土地やアイテム、アバターなどのデジタル資産に希少価値と資産性を与え、公正な売買を可能にします。これにより、メタバース空間に独自の経済圏が生まれる基盤となっています。
メタバース上でNFTや仮想通貨を活用される
メタバース上でのNFTと仮想通貨の活用は、経済活動の基盤となります。まず、NFTは仮想空間の土地、アバター、ファッション、ゲームアイテムなどに唯一無二の所有権を与え、デジタル資産化します。次に、これらのNFT化された資産の売買や、サービス利用時の決済手段として、仮想通貨が利用されます。これにより、ユーザーはゲームをしながら稼いだり、デジタルアートを展示・販売したりと、現実世界と同じように収益を得る活動が可能になります。
NFTとは関係ないメタバースも存在する
NFTと関係のないメタバースも存在します。これらの多くは、特定の企業がルールやアイテムのすべてを管理しているメタバースです。例えば、『フォートナイト』や『あつまれ どうぶつの森』など、多くのオンラインゲームもメタバース的な要素を持ちますが、NFT技術を導入していないケースが一般的です。アイテムの所有権は運営会社にあり、NFTの技術を使わずにサービスが提供されています。NFTは、あくまでメタバースで自由な経済活動を実現するための技術オプションの一つです。
メタバースにおけるNFTの活用事例
メタバースにおけるNFTの活用事例をいくつか紹介します。
NFTアート
NFTアートとは、イラストや音楽、動画などのデジタルアート作品に、NFT(非代替性トークン)の技術で唯一無二の証明書を付与したものです。これにより、簡単にコピーできてしまうデジタルデータにオリジナルの価値と所有権が生まれ、NFTマーケットプレイスで売買できるようになりました。クリエイターは、二次流通時にもロイヤリティを得られる仕組みを組み込めます。
【事例】
クリエイター:Beeple氏
作品名:EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS
デジタルアーティストBeeple氏の代表作「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」は、13年以上毎日制作した作品をコラージュしたNFTアートで、2021年に約75億円で落札され話題となりました。
© Beeple / 出典: Christie’s「Everydays – The First 5000 Days」
NFTファッション
NFTファッションとは、デジタルで作成された洋服やアクセサリーなどに、NFT技術によって唯一無二の証明を付与したアイテムです。主にメタバースやゲーム内のアバターに着せる形で利用され、所有権が明確なため売買やコレクションが可能です。ブランドは偽造品を防止できるほか、二次流通時にもロイヤリティを得られるため、新しいビジネスモデルとして注目されています。
【事例】
ルイ・ヴィトンは、メゾン初となる「VIA トレジャー・トランク」を通じてデジタルコレクティブルを発表しました。
出典:VOGUE JAPAN
NFT化された土地運用
NFT化された土地は、メタバースなどの仮想空間の土地の所有権を証明するデジタルデータです。
この土地を運用する主な方法は3つあります。
転売益(キャピタルゲイン):価値が上がったタイミングで売却し、利益を得る。
賃貸収入:他のユーザーや企業に土地を貸し出し、賃料を得る。
イベント・広告収入:土地の上にイベント会場やショップを建てて収益化する。
メタバース上でのイベント開催
メタバース上でのイベント開催は、アバターを使ってバーチャル空間で体験を共有できるのが特徴です。音楽ライブ、ファッションショー、企業の商品発表会、展示会などが世界中から参加可能で、地理的な制約がありません。また、NFTチケットを発行して参加権利を付与したり、イベント限定のNFTアイテムを販売したりして、収益化したりする新しいビジネスも生まれています。
メタバースとNFTの活用事例:プラットフォーム
NFT技術により、仮想空間の土地やアイテムに資産価値が生まれ、ユーザーが収益を得られる新しいタイプのメタバースのプラットフォームを紹介します。
The Sandbox(ザ・サンドボックス)
『The Sandbox』は、ボクセルアートで構成された広大な仮想空間で、「LAND」というNFT土地を所有し、ゲームやアイテムを自由に制作・販売できるのが最大の特徴です。アディダスなど大企業の参入も多く、クリエイティブな活動を通じて「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」を体験したいクリエイターにおすすめです。
Decentraland(ディセントラランド)
『Decentraland』は、DAO(分散型自律組織)により運営されている初期のメタバースプラットフォームの一つで、NFT化された土地「LAND」を購入・開発し、イベントやビジネスを自由に展開できます。土地所有者などが運営方針に投票できるコミュニティガバナンスが特徴で、分散型の未来や仮想不動産投資に興味がある人におすすめです。
元素騎士オンライン
『元素騎士オンライン』は、人気MMORPGをベースにした「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」型のメタバースゲームです。冒険やバトルを通じてNFT化された装備やアイテムを獲得し、外部で換金できるのが特徴です。ゲーム性が高いため、楽しみながら資産形成を目指したい人におすすめです。
Otherside(アザーサイド)
『Otherside』は、人気NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club (BAYC)」の運営元が開発する、相互運用性が最大の特徴のメタバースプロジェクトです。NFT化された土地「Otherdeed」を購入し、広大な仮想空間で探検や資源採集、施設の建設などができます。特筆すべきは、BAYCやMeebitsなど、複数の有名NFTコレクションのキャラクターをアバターとして持ち込める点です。これらのNFTをすでに保有している方や、大規模プロジェクトへの初期投資に関心がある方におすすめです。
Axie Infinity(アクシー インフィニティ)
『Axie Infinity』は、「アクシー」というモンスター(NFT)を集め、育成し、バトルさせる「Play to Earn」ゲームの火付け役です。ゲーム内で獲得した仮想通貨を換金できる経済システムが特徴で、ペット育成やカードゲームのような要素を楽しみながら稼ぎたい人におすすめです。アクシーや土地などの資産がすべてNFTである「Lunacia」という仮想王国が舞台で、ゲームと経済活動が直結したデジタル世界です。
BlankosBlockParty(ブランコスブロックパーティー)
『Blankos Block Party』は、ポップなデザインのキャラクター(NFT)を使ったパーティゲームプラットフォームです。ユーザーがノーコードで独自のゲームやステージを簡単に作成・公開できるのが特徴で、初心者でも直感的に遊びやすく、クリエイティブな活動を楽しみたい人におすすめです。カラフルなアートデザインのおもちゃ箱のような仮想空間で、誰もがゲームを制作・共有し、多様なゲームと交流を楽しむパーティー会場のような雰囲気です。
EmberSword(エンバーソード)
『Ember Sword』は、プレイヤーが土地の真の所有者となることを目指す、MMORPG型のオープンワールドメタバースです。アイテムや土地がすべてNFTで、「Pay to Win(課金が勝利に繋がる)」要素がない純粋なゲーム性が特徴で、本格的なRPGを楽しみたいゲーマーにおすすめです。広大なファンタジーの世界で、プレイヤーがレアアイテム(NFT)を獲得し売却することで収益を得る、コミュニティ主体で運営されるリアルなファンタジー世界です。
CryptoVoxels(クリプトボクセルズ)
『CryptoVoxels』は、ボクセルアートのシンプルなグラフィックが特徴のメタバースです。NFTの土地を購入し、ブラウザから簡単に建物やNFTアートの展示ギャラリーを建てられるのが特徴で、手軽にデジタルアートの展示やギャラリー運営をしたいアーティストやコレクターにおすすめです。ピクセル調の建物が並ぶ都市のような空間で、個人アーティストの展示会や小規模なコミュニティイベントが頻繁に開催される、アート特化型のバーチャルな街です。
Somnium Space(ソムニウムスペース)
『Somnium Space』は、VR(仮想現実)体験に特化し、リアルなアバター体験と自由度の高いカスタマイズ性を追求したメタバースです。土地やアイテムがNFTであり、ユーザーの行動データをAIに学習させ、死後もバーチャルな分身を残す「Live Forever」モードといった未来的な試みが特徴で、没入感の高い体験やVR技術の未来に関心がある人におすすめです。VRヘッドセットの使用が推奨される、現実世界に近い景観と交流を可能にした未来志向の3D体験空間です。
メタバースとNFTの将来性
NFT技術は、仮想空間でのお金のやり取りや、自分の持ち物の証明などを可能にし、メタバースが発展していくための土台として、今後も市場を引っ張っていくでしょう。
Web3.0市場は今後も拡大
Web3(ウェブスリー)とは、ブロックチェーン技術を使い、データや権限を特定の企業からユーザー個人へと分散させる、次世代のインターネットの概念です。NFTとメタバースは、このWeb3.0という分散型インターネットの概念の中心にあります。この新しい流れは、単なるデジタルコンテンツの売買に留まらず、金融、ゲーム、SNS、実世界資産のトークン化など、あらゆる産業を変革する可能性を秘めています。この技術革新の波と、大手企業やクリエイターの積極的な参入により、Web3.0関連市場は長期的に拡大し続けると予測されています。
DAOとのマッチ度
NFTとメタバースは、DAO(分散型自律組織)と非常に相性が良いです。DAOは、特定の管理者を持たず、参加者全員の投票によって組織運営やルール変更を行う仕組みです。メタバース内の土地やアイテムをNFT化することで、その所有者(ユーザー)がDAOのメンバーとなり、投票権を得られます。これにより、ユーザーは単なる利用者ではなく、その仮想空間の運営に関わる「共同所有者」となれるため、コミュニティの活性化と透明性の高い運営が実現できます。
メタバースとNFTの注意点
新しい市場のため、投資や利用にあたっては、特有のリスクと正しいセキュリティ知識が必要です。いくつか注意点を紹介します。
新興市場のため詐欺も多い
NFTやメタバースは新しい技術分野のため、法整備が追いついていません。詐欺や不正なプロジェクトも多いのが現状です。特に、有名なプロジェクトを装った偽サイトや偽アカウントによる詐欺(フィッシング詐欺)が多発しています。安易な儲け話や、有名人からのダイレクトメッセージを信じたり、見知らぬ人からのリンクをクリックしたりすることは危険です。必ず公式サイトや信頼できる情報源からアクセスし、プロジェクトの信頼性を徹底的に確認するリテラシーが求められます。
高額商材も多く支払いには細心の注意を
NFTやメタバースの土地(LAND)には、数百万円を超える高額なものも少なくありません。これらの購入には、日本円ではなく仮想通貨(暗号資産)を使用するため、決済には「ウォレット」と呼ばれるデジタルなお財布が必要です。ウォレットの「秘密鍵」や「シードフレーズ」といった情報を盗まれると、資産全てを失う可能性があります。また、取引の承認時に手数料(ガス代)が高騰することもあります。支払いの前に、送金先アドレスと金額を必ず複数回確認し、細心の注意を払ってください。
仮想通貨・NFT投資は価格変動リスクに注意
メタバース内のNFTや仮想通貨は、株式や債券と比べて価格の変動が非常に大きいというリスクがあります。わずかなニュースや投機的な売買により、価格が短期間で暴落する可能性があります。特にNFTは、人気がなくなると価値がゼロになるケースも少なくありません。投資を検討する際は、「必ず儲かる」といった甘い言葉を鵜呑みにせず、自己責任で、失っても生活に影響が出ない範囲の資金で行うことが鉄則です。
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まとめ
メタバースは、ユーザーが活動する仮想の世界(空間)であり、NFTはデジタルな持ち物に「これはあなたの物」と証明する技術です。この二つが合わさることで、仮想空間のアイテムがお金になり、遊んで稼ぐ新しい仕組みが生まれました。Web3など急速にインターネットが進化していますが、新しい市場であるため、詐欺や急な価格変化といったリスクを加味したうえで、無理のない範囲で楽しむことが大切です。
