公開日:2023-07-01
映像を作る際、どういった内容にするのか、どういった流れにするのかを考えるうえで、シナリオが大切になってきます。これは、ストーリーものの映像はもちろんのこと、何かの紹介の映像などでも、行き当たり合ったり撮影するのではなく、下準備としてシナリオを用意しておくことで、スムーズに制作ができます。
今回はシナリオの書き方について紹介していきます。
シナリオの作成方法
シナリオを書く際に、いきなりシナリオを書くというわけではなく、まずは設定をしっかりと作り、少しずつ肉付けをしていきます。
シナリオの着想を得る
シナリオを書き始めるにあたり、アイディアが必要です。もともと発想豊かな方はもちろんおりますが、いくつか手法を知っていることで、アイディアが生まれてきます。アイディアの生み出し方に繋がる手法と、そのアイディアを実際にシナリオに落とし込んでいく方法について書いていきます。
ネタ集め
アイディアの種となるネタはあらゆるところに散らばっています。自身の体験はもちろん、身近な友人や家族の体験は、出来事はもちろんのこと、その時に感じた感情なども含めて参考になるので、ネタとしてとても良いものです。その他にも、ドラマや映画、小説など、出会った作品もネタになります。もちろんそのまま同じ内容にすることはできませんが、ある作品を土台として、主人公の年齢を変えてみたら?性別を変えてみたら?時代設定を変えてみたら?といった形に設定を変えていくことでオリジナリティも生まれていきます。
なにを書きたいか、なにを表現したいのか
ネタが集まったら、今度は自身が何を表現したいかを考えてみましょう。同じ「男性が財布を拾った」というネタを使って物語を書くとしても、奇跡は起こる!ということを表現したい場合には、その財布が生き別れの妹の財布になるかもしれませんし、悪いことはするものではない、ということを表現したい場合には、財布を拾ってネコババしようとしたらトラブルに巻き込まれてしまう、という展開になるかもしれません。
自分がなぜ映像を作りたいと思ったか、といった根本を考えると表現したいことが分かると思います。
首尾一貫した物語を書いてみる
ショートムービーであれば物語の一貫性が保てないということはないかと思いますが、長い映像になると、シナリオに一貫性がなくなってしまうことがあります。登場人物のキャラクターが変わってしまう、設定があやふやで矛盾が生じてしまうといったことは、観客に混乱を招いたり、見ている人が物語に入り込めず冷めてしまいます。それを防ぐためにも、一貫した物語を書く為に、設定を最初にしっかり決めておくことが大切になります。
シナリオにおけるプロットの作成方法
最初に設定をしっかり決めると話しましたが、土台としてのキャラクタ―設定や、時代背景などの設定を決めることと合わせて、物語の流れを決めることが大事です。そこで出てくるのがプロットです。
プロットとは?
プロットは、物語の筋・構想を指します。大まかな流れになるため、この時点ではセリフなどはよほど重要なセリフではない限りプロット段階では書きません。ただしこのプロットがストーリーの土台となるため、大変重要です。
キャラクターづくりのコツ
キャラクターがいきいきしていると、物語に真実味が増します。魅力的なキャラクターにするためには、特徴をしっかりつけること、ただし、その特徴を複数に増やしすぎないことが大切です。あまり特徴が多いとぼやけてしまうので、特化した特徴があると分かりやすいです。食べるのが好き、だけではなく、食べるのが好きすぎる、とすると、いろんなレストランを回っていそうだな、食事の量が多そうだな、とキャラクターの解像度が上がってきます。また、そのキャラクターのダメなところがあると親近感がわきます。
物語の構成
シナリオの構成はハリウッド映画の世界で使われている三幕構成といわれる構成があります。三幕とは設定、対立 、解決の役割を持ち、幕の比率は1:2:1で描くのが良いとされています。
主人公のゴールや目的、心中の描き方
物語を面白くするのは主人公の葛藤です。ゴールや目的があり、そこに向かいたいのに障壁にぶつかる、そこを乗り越えていくところに物語が生まれます。物語を通して、その葛藤を乗り越え、主人公が変化、成長していく姿を描くようにしましょう。
心中の描き方は、セリフはもちろん、直接のセリフではない間接表現のシャレードを使って表現します。背景となる場所であったり、その時に起きている状況、しぐさ・行動などで映像表現として表します。怒りっぽい人が「怒りっぽいね」と言われるのではなく、すぐにものを蹴飛ばすといったしぐさを通して心中を表現するのです。
主人公をとりまくキャラクターのマッピング
主人公が目的に向かって葛藤をしていくとき、それを邪魔する存在が必要です。状況が邪魔をすることもありますが、わかりやすく、主人公をとりまくキャラクターの中に邪魔をする存在がいてもよいでしょう。そして邪魔する人の対局として主人公を応援する人、励ます人、変化のきっかけを与える人といった配置をしていくと、物語が進んでいきます。
脚本を面白くするコツは?
脚本を面白くするためには魅力的なキャラクターが重要です。思わず応援したくなったり、共感したりする主人公や、主人公にとっては憎き敵であっても思わず惹きつけられる敵キャラなども世の中の作品では人気ですよね。
そして、そのキャラクターたちが自然に動くこと、説明的にならないことが重要です。
シナリオを書く際のコツ
プロットで流れを考え、キャラクターを詰めたら、いよいよシナリオを書いていきます。ここではシナリオの書く際のコツについて説明していきます。
場面の転換を表す柱
シナリオには柱と呼ばれる転換を表す表示があります。
〇から始め、場所、時間を書きます。〇は最終的に中に番号を振るための〇になります。時間に関しては何も書かなければ昼間、そのほか早朝、朝、夕方、夜といった時間帯を書きます。早朝と朝が分かれているのは日が昇る前、日が昇った後を分けるためです。深夜と書く場合もありますが、基本夜と深夜は区別が難しいので、夜と書き、ト書きの中で何時なのかがわかる描写を書きます。
この柱は撮影時の場面転換を表すためのものであるため、ラジオドラマのシナリオでは柱は存在せず、ト書きの中だけで場面の移り変わりを表現します。
WHO・DOを丁寧に
脚本は、監督やカメラマンといったスタッフと、演じる俳優や声優などのキャストの人たちを束ねる設計図となるものです。ですので、誰が、何をしているのかを明確に書く必要があります。この時に注意したいのが、誰がの位置です。小説であれば「部屋の端で本を読んでいる〇〇」といった誰がが後ろにくる形でもよいでしょう。ですが、どの人がその場面に登場するかを一目で分かるようにするために「〇〇は部屋の端で本を読んでいる」と書き、わかりやすさに重点を置くとよいでしょう。
セリフとト書きが混合しないよう気を付ける
ト書きとはセリフ以外の登場人物の動きや行動、状況や道具などを書きます。セリフと分けて見やすくするために3文字下げて書きます。
道具と書きましたが、話に必要な道具は詳細も含めて書きますが、話に関係はない道具の場合は、特に書きません。道具の担当の人に任せる形となります。
他にもカメラの動きや演出に関わることも監督が考えるのでここには書きません。小説とちがい、心情をここに書くこともせず、セリフまたは状況で説明するようにしましょう。
伏線の張り方
物語を面白くする要素として『伏線』があります。伏線とは後に述べる事のためにあらかじめほのめかしておくことを指します。視聴者は物語を直線的、つまり見ている順番に理解します。ただし、最初からすべて理解できるわけではなく、後半に要素が増え、前半に出てきたことの意味が分かるということがあると思います。それが伏線です。
伏線を張る時に大事にしたいのは一貫性です。
キャラクターはこういう性格なので、あの時こういう行動をしていたのか!そしてそれがこの結果を生んだのか、という流れですね。
それを無理やりこじつけてしまうと、ご都合主義と言われてしまいます。
もう一つ伏線を張る時に大事なのは少しだけ見せることです。
例えば毒で誰かが死ぬとします。ほんの少しだけその成分で具合が悪くなる人がいたとします。こんなに少しの量でここまでの影響力なら、この量を飲めば人が無くなるのも納得だ、と想像を膨らませ、納得するのです。
シナリオが完成したらなんども推敲を
シナリオが完成したら、何度も読み直しましょう。誤字脱字がないか、話に一貫性があるか、意味のない要素はないか、こじつけになっていないか。見直す点はいくつもあります。推敲のコツをお伝えします。
シナリオ推敲のコツ
推敲のコツ1.声に出して読む
目で追うだけでなく、声に出して読んでみることで分かることは多いです。誤字脱字はもちろんのこと、セリフの語尾に一貫性がないことや無駄な繰り返しは声に出すことで見えてきます。
推敲のコツ2.人に読んでもらう
自分で読んでいると当たり前のことも、他の人からすると分からないといったことは起こりえます。特に、何度も自分で読んでいると分からなくなってきてしまうので、何も知らない人に読んでもらうことはとても効果があります。
シナリオ(脚本)が書けなくなったときには…
シナリオがを書きたいのに書けなくなってしまうことはあると思います。そんなとき、フェーズによってやり方があるので下記を参考にしてみてください。
話自体が思い浮かばないとき
どんな話にしようかすら思い浮かばないときは、自分が好きな作品をベースに書いてみましょう。パクりではなく、あくまでもベースです。そこから、なぜその話が好きなのか?を分析し、好きな部分は残し、そのほかを変えてみるのです。主人公の年齢、性別を変えてみる、舞台の場所や時代を変えてみる。それだけで話が膨らんでくると思います。
話が進まないとき
こんな話にしよう!と土台は決まったのに、物語が進んでいかないときは、キャラクターを掘り下げましょう。このキャラクターはどんな出自で、どんな環境で育ち、何が好きで何が嫌いか。物語に直接出てこないことも深めていくことで、キャラクターが自然と動くようになります。
ゲームシナリオの特徴や書き方のコツ
シナリオはシナリオでも ゲームシナリオを書きたい方もいると思います。ゲームシナリオの特徴は何といっても選択肢別の展開でしょう。ゲームシナリオはこの選択肢の数に応じた展開を考えなければなりません。
この選択をしたときはこの展開というのが分からなくならないようにフローチャートを作りましょう。
また、立ち絵+セリフで進むことが多いのも特徴です。映像と違い、動作で見せるのが難しいので、いかにセリフで分かりやすく進めるかを考えましょう。
動画シナリオの特徴や書き方のコツ
動画の特徴としてはアップができることです。小道具や小さい動きまで見せて伝えることができるので、ト書きに細かく書くことができます。また、場面を繋ぎ合わせることができるので、場面転換を多くすることも可能です。
舞台シナリオ(戯曲)の特徴や書き方のコツ
舞台のシナリオは戯曲と呼ばれます。舞台の場合は映像と違い、アップにできない、かつさまざまな席から見るので、どこから見ていてもわかりやすくする必要があります。一方でデフォルメできるのは良い点です。例えば、道具の時計の針の動きのような小さすぎる演出は実物では難しいですが、人が時計の針を演じるといったやり方もあります。
もう1点映像との違いとして場面の転換が多いと暗転が多くなってしまうなどデメリットがあるので、転換が少ないシナリオが好まれます。
シナリオ(脚本)を学ぶには?
シナリオを学ぶにはいくつか方法があります。
1.学校で学ぶ
テレビ局などが主催した学校や、映画系の学校、演技等と合わせた演劇の学校のシナリオ部門などシナリをが学べる学校はいくつかあります。自身が書きたいシナリオの種類に合わせて学校選びをするとよいでしょう。
2.本で学ぶ
本を読んで学ぶ方法もあります。いくつかオススメの本を紹介します。
『シナリオの書き方―映画・TV・コミックからゲームまでの創作実践講座』柏田 道夫
映像表現としてのシナリオの書き方を、これまでにない新しい観点から紹介。シナリオの基礎をはじめ、巧みなト書の書き方、セリフの磨き方、シーンの作り方、おもしろく見せるための構成法やテクニックなどを収録。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』ブレイク・スナイダー (著), 菊池淳子 (翻訳)映画業界を知り尽くした脚本家が、脚本の常識やストーリーテリングの基本的ルール、アイデア、ヒント、ツールなどを、効率よくウイットに富んだ文章でわかりやすく解説する。
『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』カール・イグレシアス (著), 島内 哲朗 (翻訳)UCLAの課外脚本執筆講座の内容をまとめたテキスト。「共感を奪うキャラクター造型」「感情パレットの使い方」「7種類の感情を刺激する話術」など、心の動きを誘導し、最後までのめりこませる物語の書き方を解説する。
3.シナリオをたくさん読む
『月刊シナリオ』という雑誌には、さまざまなシナリオが掲載されています。
実際にシナリオを読むことで、シナリオの書き方がわかってくるでしょう。映像と見比べながら読むのもおすすめです。
まとめ
シナリオの書き方をまとめてきました。
シナリオは、キャストやスタッフをまとめるすべての土台になるものです。
何を伝えたいかを軸にして、いかに分かりやすく伝えるかを大切に書いてみてください。