カメラワークとは?種類や映像例を紹介

公開日:2023-07-01

 

 

公開日:2023-07-01

最近ではWeb広告も動画広告が増え、映像を見かけることが多くなったと思います。ステキな映像を撮りたい!と思ったときにまず学ぶべきはカメラワーク。効果的なカメラワークを身に着けることで、伝えたいことを魅力的に伝えることができるようになります。

今回は、映像撮影におけるカメラワークについていくつかご紹介していきます。

フィクス(フィックス・固定撮影)

カメラを固定した状態で動かさない撮影方法を「フィクス」といいます。日本語で言うと固定撮影で、基本のカメラワークで初級者はまずはここから抑えるべき手法です。ブレないようにカメラを三脚などに乗せて固定して撮影します。

この固定撮影から転じて、物事が最終的に決着することをフィックスするという使い方をされているので、聞いたことがある人もいるでしょう。fixという目指した場所・状態に固定するという英単語からきています。

フィクス(固定撮影)した際に得られる効果

画面が固定されるため、動いているものに視線を集中させることができ、細かな動作、表情などを捉えることができます。落ち着いた画になるため、客観的な画を作ることができるのもフィクス撮影の良いところです。また、安定感があり、見やすいのも特徴です。

フィクス(固定撮影)が適している場面

インタビュー映像によく使われる手法です。正面からのフィクス、横からのフィクスなどを繋ぎ合わせると画面では動きが出つつ、見やすい映像になります。

飛行機やドローンの発着も、引いてフィクスで撮影することで位置関係をわかりやすく伝えることができます。

人の視線のように見せるときもフィクスを用いることがあります。その場合、完全に固定はせず、方向は固定しつつも視線の揺れがあるような演出をすることもあります。

フィクス(固定撮影)で撮影する際の注意点

固定しての撮影なので、意図しない手ブレは避けるように注意しましょう。そのためには三脚を使うと便利です。もし、三脚がない場面でも、棚や壁などを使い、うまく固定しましょう。

パン

パンとは最も単純な移動ショットの1つで、カメラを左から右、あるいは右から左に振る撮影技法です。動作することをパンニングと呼び、左から右をパン、その逆を逆パンと呼んだりします。パンの動きは、情景の説明に使われたり、シーンの切り替わりに使われたりすることが多く、ドラマや映画以外にもアニメ作品などでもたくさん使われている技法です。感動的なシーンにも多く使われていますので、映像を作るうえではかかせないカメラワークとなっています。他にも画が変わるごとにパンをする連続パンという技法もあります。この技法は、フィクスでは表現することができない登場人物の感情の揺らぎや流れて行く時間を表現することができます。

パンで撮影した際に得られる効果

他の撮影方法よりも複数の被写体の位置関係を表したり、ディティールも見せつつ場所の広さを表現したり、人目線での視点の移動を撮れるという部分で効果的です。

景色などをパン撮影する事により、フィクス撮影よりも時の流れを演出できるので、景色や人工物のような動かないものを魅力的に見せることができるのもパン撮影の良いところです。

パンが適している場面

フレームに納まりきらない風景などの広大さを表現したい場面や複数の被写体の関係性を表現する場面に適しています。

また、水平移動する被写体を追いたい時や、視点の横移動を表現したい時にも使えます。

パンで撮影した際の注意点

カメラワークの効果を最大限に発揮するために、始動と止める時はゆっくりスピードを変化させ、急激に開始/終了させないようにしましょう。
そして、オート撮影だと途中で明るさが変わって不自然に見える場合があるので絞り、シャッタースピードなどはマニュアルに設定するようにしましょう。

ティルト

左右に動かすパンに対して、上下にカメラを振ることをティルトと呼びます。水平な動きがパン、垂直な動きがティルトです。パンの縦方向バージョンということで、縦パンやパンアップ、パンダウンとも言われますが、ティルトが正しい名称です。ティルト・ダウンは上から下へ、ティルト・アップは下から上へカメラ・アングルを変えることです。撮影者は基本的にその場を動きません。

ティルトで撮影した際に得られる効果

ティルト撮影ではカメラを振る方向に明確な意味を持っており、映像に演出をつけることができます。ティルト・アップでは空の面積がどんどん広がるような動きになるので、「希望」や「あこがれ」といった心理の演出をすることができます。また、被写体の高さや威圧感を表現できます。ティルト・ダウンは人物の気持ちの落ち込みを表現するときに多く使われています。

ティルトが適している場面

高層ビルや人物のフルショットなど縦に長い被写体の細かい部分を見せたい場面に適しています。また、ティルト・アップは人物の感情が豊かになるときやテンションが上がる様子を表現したい場面で使われます。そしてティルト・ダウンは主人公の悲しみや孤独感、悩み事をしている情景を演出する場面に多く使われています。

ティルトで撮影した際の注意点

注意点はほとんどパンと同じですが、ティルトの場合は無意味にカメラを動かすと何を映したいのか目的が不明確となるので、意味を持ってカメラを動かしましょう。また、カメラワークは素早く行うのではなく、一定の速度で撮影してください。そして、動画は後でカットすることができるので、1カットは長めに撮影するようにしましょう。

 

ズームイン・ズームアウト

ズームは、カメラの画角を変化させて被写体に寄ったり、被写体から引いたりする撮影方法です。なじみの深い基本的な撮影方法ですが、使い方によっては、観客の視点を意図的に誘導したり、俯瞰することで情報を整理させたりストーリー性を持たせたりすることのできる重要な撮影方法です。

その汎用性から使用する頻度がとても多い手法の一つと言えるでしょう。

ズームイン・ズームアウトで撮影した際に得られる効果

すばやいズームインは見ている人を特定の被写体に引き付けるような効果があります。

逆にズームアウトは被写体のアップから徐々に広角にし、俯瞰する為、見ている人に状況を整理させ、ストーリー性のあるショットを作ることができます。

ズームイン・ズームアウトが適している場面

ズームインは背景のぼかしと合わせることで、観客の視線を自然に誘導することができます。そのため、人物や物体と被写体にとらわれず広く汎用的に使うことができます。

ズームアウトはその逆で、どこか一点に注目してもらうのではなく全体を把握してほしいときに使うとよいでしょう。

ズームイン・ズームアウトで撮影した際の注意点

ズームインをする際には手ブレを防止するためにカメラを固定することが大切となります。

ズームアウトの際には、広角になることをしっかりと意識し、余計なものが映り込まないか、また不必要に情報量が多くなりすぎないかといったことに注意が必要です。

トラック

移動する被写体を撮影する際にカメラが一緒に移動をして撮影を行うことをトラック、またはトラッキングショットといいます。トラックの撮影手段には様々なものがあり、ドリーと呼ばれる移動式撮影代を用いたり、撮影用クレーン、手持ちカメラによる撮影、ドローンやヘリコプターを用いた空撮など演出によって上下縦横様々な移動をしながら撮影を行います。

トラックで撮影した際に得られる効果

1つのシーンをカットすることなく、流れの中でストーリーを表現することができるため、場面の情報量が増え、理解しやすい画になります。また、木々や歩行者等、画面を流れる背景をシーンに組み込むことができ、被写体が走るなど動きのあるシーンでの臨場感や迫力が強調され、ダイナミックな映像の撮影ができます。

トラックが適している場面

該当シーンにおいて流動感や臨場感を演出したいときによく利用されます。被写体が走るなど動きのあるシーンで用いられるが多いです。

トラックで撮影した際の注意点

被写体との距離が遠すぎると第三者の視点から被写体を見ているような形になり、演出上、存在しない視点での映像となってしまいます。そのため撮影する被写体から離れすぎないことが大切になります。

ドリー・イン/ドリー・アウト

被写体に対して、カメラ本体が移動して近づく撮影方法とカメラ本体が移動して遠ざかる撮影方法です。

ドリーは、英字で DOLLY と表示して、台車のことを表します。

三脚に車輪のつけた簡易的なものから、規模が大きくなると車にカメラ本体を固定する場合もあります。

カメラ本体が、移動する中でカメラのズーム機能ではない自然な広角な映像表現を撮影することが可能で、被写体の動きに合わせて注目を集めたい部分をコントロールできます。

ドリー・イン/ドリー・アウトで撮影した際に得られる効果

ドリー・インでは、近づく部分に合わせて注目する形で、視聴者の集中力を集める効果があります。

例えば、森が燃えている様子から、ドリー・インすることで、燃えている原因がわかる演出が可能です。

また、ドリー・アウトでは、視聴者目線で視野を広げることで、周りの環境や立ち位置を表します。例えば、ヒロインが泣いている様子から、ドリー・アウトすることで、なぜ泣いているのかの理由がわかります。

ドリー・イン/ドリー・アウトが適している場面

焦点を集めたい場面や画面の中心に向かって乗り物が進んでいく様子に適しています。宇宙空間の戦闘シーンにおいてもよく使用されており、臨場感あふれるシーンでよく使用されます。

また、シックなシーンでも心情表現として引き込まれる様子を表す場面にも使用されます。

ドリー・イン/ドリー・アウトで撮影した際の注意点

カメラ本体を動かすので、手振れが伝わったり、道の振動を直接受けたりします。

なるべく平らな道で使用するか、線路を引いた上で使用するなどが良く、自然な演出をするためにも平衡感覚がしっかり維持した形で撮影することが重要です。

カメラワークのテクニックの例

カメラワークの基礎を抑えたうえで、うまく使いましょう

手ブレをとり入れる

実際のカメラ撮影では、手ブレが入っていることがあります。このような手ブレを入れることで映画の様なリアリティのある表現ができます。

別カメラにする

背景とキャラクターを別カメラにし、背景にはワイドを使用して広い空間を演出すると、キャラクターに合わせて背景がずれるということも無くなります。また、キャラクターのアップには、カメラを望遠にすることで端が膨張することが防げます。

グリッドを使う

グリッドを使用すると空間をうまく利用でき、バランスの良いものになります。通常のカメラ撮影と同じように黄金比を使用したファイグリッドなどの三分割法やフィボナッチスパイラルなどを意識することでより美しい構図になります。

CGにおけるカメラワーク

3DCGにおける「カメラワーク」とは、3DCGソフトや映像加工ソフトで仮想のカメラを設置し、構図や画角を決定する工程を指します。映像撮影におけるカメラワークと意味は同じです。
最終的な画作りをするためのものなので、従来の撮影方法も参考にすることもできますし、実際の撮影ではできない様な自由な動きを設計することもできます。最終的に視聴者にどのような視点でみてもらうかを考えての作業になり、基本的には絵コンテに沿った演出をしつつ重要なカットを作り出していきます。
「寄りは心情、引きは状況」であるため、制作者=監督や演出家が何を伝えたいのかを考慮してレイアウトやカメラワークを行わなければなりません。

実写映像ではカメラの位置や向き、使用しているレンズやズーム倍率によって写りが決まります。CGの場合も実写と同じく視点の位置と向き、視野角やズーム倍率によって写りが決まります。
CGでは自由な設計ができる反面、場合によっては不自然で視聴者に伝わりにくい映像になってしまうという注意点があります。そのため、実写撮影の映画などを見て勉強をする必要があります。映画など映像業界の歴史は深く、これまでの作品の中には一定の決まったパターンなどが存在します。視聴者も長らくそれを観てきているので、完全にパターンを無視してしまうと不自然でわかりにくいものになる可能性があります。そのため優れた作品などを参考に同じ様に作ってみるということも大切です。
しかし、ドローンで撮影したかの様な空撮の表現、クレーンを使って上下しながらの寄りや引きの表現、レールの上を滑らかに動いているような表現などは、CGの自由なカメラワークだからこそ操作がしやすくなります。

まとめ

カメラワークについて学んできました。
様々な場所やシチュエーションに適したカメラワークがあるとお判りいただけたと思います。何気なく見ている映像も、カメラワークを学んだあとに見ると効果的に使われている事例を見つけることができるでしょう。
それぞれの良さがあるので効果的に使い、映像をより良いものにしましょう!

著者:デジタルハリウッド スクール 編集部