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【イベントレポート】シン・エヴァンゲリオン劇場版メイキングセミナーレポート

2021-10-16


2022年9月18日(土)Zoomウェビナーにて、
今春公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のメイキングセミナーが開催されました。


本学卒業生でもあり、現在は株式会社カラーでアニメーションディレクター(CGI作画監督)としてご活躍中の

松井祐亮さんがご登壇され、今作の魅力や演出のこだわりなどを中心に株式会社カラーでの制作フローなどをお話いただきました。


本ブログでは株式会社カラーでの制作フローのお話をメインにできるだけわかりやすくセミナー概要をまとめましたのでご一読ください。

作品紹介

興行収入100億円を突破した『エヴァンゲリオン』シリーズの完結作、『シン・エヴァンゲリオン』


企画・原作・脚本/庵野秀明

総作画監督/錦織敦史

作画監督/井関修一、金世俊、浅野直之、

田中将賀、新井浩一

副監督/谷田部透湖、小松田大全

デザインワークス/山下いくと、渭原敏明、

コヤマシゲト、安野モヨコ、高倉武史、渡部隆

CGIアートディレクター/小林浩康

2DCGIディレクター/座間香代子

CGI監督/鬼塚大輔

CGIアニメーションディレクター/松井祐亮

CGIモデリングディレクター/小林学

CGIテクニカルディレクター/鈴木貴志

CGIルックデヴディレクター/岩里昌則

登壇者紹介


株式会社カラー 

アニメーションディレクター(CGI作画監督)

松井 祐亮(まつい ゆうすけ)


1981年生まれ、北海道出身。株式会社カラー所属。

美容師から一転、上京しサンライズで『FREEDOM』等の制作に参加した後、スタジオカラーに移籍『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』ではリードアニメーター。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』はアニメーションディレクターを担当。


スタジオカラー・ドワンゴによるWEB配信アニメーションシリーズ『日本アニメ(ーター)見本市』でのCGアニメーション作品『カセットガール』、『神速のルージュ』、『機動警察パトレイバーREBOOT』をはじめ、株式会社カラー10年の歩みをテーマに描かれた、安野モヨコの漫画をアニメ化した『おおきなカブ(株)』、ゲーム『GRAVITY DAZE』シリーズのアニメーション作品『GRAVITY DAZE The Animation ~Ouverture~』といった、数々の作品でアニメーションディレクターを務めている。

美容師からCG業界へ

小倉先生:松井さんは17年前にデジタルハリウッドを卒業したんですよね。

美容師の道から本学に入ってCGを勉強して、今はカラーさんでCGアニメーションディレクターということで出世しましたね。


松井さん:先生のおかげです。デジタルハリウッドの本科では1年間CGを学びました。
卒業後サンライズに入ってからカラーに入りました。



前職の経験が生かされたシーン


松井さん:もともと美容師だったので、庵野総監督から、実際に髪を切っているところの映像を撮らせてほしいと言われたので、ハサミも買って実際にスタッフの髪を切ったふりをしている映像を撮りました。


小倉先生:作画さんの演出もやってたの?


松井さん:そうですね。ここはCGではないんですけど、作画さんにこうしたほうがいいかもしれないという指示は出させていただきました。


小倉先生:こんなところで前職の経験が役立つとはね。


松井さん:いや本当ですね。ありがたかったです。いまだにスタッフの髪とか切ったりしてます。最近は忙しくてあまりできなかったですけど、数年前まではブルーシートをひいて後輩とかの髪の毛を切ってました。



落下シーンのためのスカイダイビング


小倉先生:噂によると、松井君がスカイダイビングをしたって聞いたんだけど。


松井さん:はい。公式Twitterカラー2号機のほうでもあがってるんですけど、実際に飛びました。


小倉先生:それって最後の落下のところを表現したいからやったの?


松井さん:そうです。実際に落ちてみて移動感と落下感を試してみたくてぜひやらせてほしいと言いました。
アニメーターを引き連れてジェットコースターにも乗りましたが、みんな参考になったって言ってくれましたね。
やっぱり一芝居やるときに重心の移動やしぐさなど実際にやらないとわからないことって結構あります。
なので、絶対にやった方がいいと思いますね。お客さん自体が人間なので、歩き方や立ち上がり方ひとつにしても一番の目利きなんですよ。
なので、きちんと人間観察をしなければならないと思います。




アバンのシナリオについて


松井さん:アバンは冒頭のフランスのパリで戦っているシーンのことで、プリヴィズっていうのがCGでつくった絵コンテ、Vコンテ、設計図のようなもののことです。

アバンパートで僕らに共有されたシナリオをもとに、立ち位置などもあえてしっかりとは決めず、アクションシーン(44Aとの戦い)は庵野総監督の固定概念に縛られないたくさんのアイディアを見たいという意向で僕たちが一緒に考え提案するところからスタートしました。


小倉先生:基本絵コンテはなくこの文字から松井さんがプリヴィズを作るんですか?


松井さん:そうです。一応絵コンテも共有されたんですが、制作する中で、より良いアイディアを採用していく のが今回のエヴァの方針でしたね。


株式会社カラーでの制作フロー


松井さん:本に乗っているような通常の作り方ではないなと感じましたね。絵コンテは全く使わないというよりはメインにしていないという感じです。アイデアを出すのはコンテだけではないので。

アングルが異なる膨大な量のパターンを制作し総監督たちに提案しますが、色々なアイデアをひたすら見たいという意向があり、さらにたくさんの提案をし続けます。

設定についても一応決定稿というハンコは押されるんですが、はっきりしたものはなく、その都度設定を変えて調整していきます。立ち位置も変更したりするので、仮に決まったとしても良くなるんだったら変えていきましょうという意図です。



庵野総監督がCGに求めるものとは


松井さん:CGとして正確なもの、ディティールに嘘が無いことが大きいですね。
庵野総監督が描く作画もそうですけど、とにかく正確なんですね。パースがすごくCGっぽいほど生々しかったり、ディティールがしっかりしていたりというところがCGの強みでもありますね。空間が本物であることが大切です。
最近はあえて嘘パースや嘘アクションなどやりますけど、それはあんまりやらないでと言われます。
アニメのような誇張表現は作画でできるのでCGでそれを求めていないとよくお話しされてます。

また、今回の2号機・8号機のデザインとアバンのデザインはすごくディティールが細かく、作画しようとするととても大変なのでCGの良さがうまく出てたなと思います。

作画ではないので、デザイナーの山下いくとさんにもゴリゴリに描いていいよと言ってあのようなディティールになりました。これはCGにしかできないことですね。


小倉先生:なるほど。


松井さん:あとはレイアウトの可能性の広さですね。アングルをたくさん探ることができるのが総監督にとって一番ありがたいことだとおっしゃっていたので、そこをCGでかなえられたらと考えています。

じわーっとパースが回り込んだりするのが3Dのすごくいいところだと何度も言われるので、そこもCGの強みかなと思います。


小倉先生:今日の話を聞いて感じたのは、本来のアニメの作り方とはまた違った方針だなということですね。そこに松井君はすごくやりがいを感じているんだよね。


松井さん:そうですね。自分の提案したものが使ってもらえたりすると面白いですし、自分のアイデアもあるのでそれが出せることは嬉しいです。



未来のCGクリエイターへ向けて


松井さん:いつも言うんですけど、やっぱり情熱がないと楽しい仕事ではなくなってしまいますので、楽しんで仕事してほしいですね。
これからCGを仕事にしていきたいと思っているのであればコミュニケーション能力も高めていくといいと思います。仕事をするときはこのカットをこうしたいんだけどどうしましょうかという話をすごくします。

打ち合わせで意思疎通ができるというのはすごく大事で、話をしっかりできる人、プランを伝えてこれる人、プランを伝えたときにしっかり伝わる人を僕は今求めています。簡単なことですが、とても大事なことなのでそこはしっかり意識していただけると成長すると思います。


小倉先生:アニメーターがコミュニケーション能力無かったら庵野総監督の意図を上手くくみ取ることができず、全然話進まないもんね。


松井さん:その通りですね。これはこういうことでしょうか?と考えて提案して、それに対して庵野総監督もうんうんと答えてくれるので。あとは、庵野総監督の指示を後輩たちやチームに分かりやすく説明するときにも必要な能力だと思います。


~お知らせ~


小倉先生:では最後にカラーさんからお知らせがあるって聞いたのですが。

松井さん:はい。株式会社カラーでは3DCGIのスタッフを募集しております。詳細は公式サイトまで。中途はもちろんディレクター経験があるような方は大歓迎です。


小倉先生:デジタルハリウッドの学生はMAYAだけしかやってないけれど大丈夫ですか?


松井さん:ソフトは関係ないです。ソフトは表現方法なので、すぐに(3dsMAXも)使えるようになります。


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