本記事は7月19日(日)に開催されたイベントの
「 ピクサー現役CGアニメーター原島朋幸氏& ライゾマティクス真鍋大度氏の登壇イベント 」
受講生による開催レポートです!
イベントに参加した方、または参加できなかった方、興味のある方はぜひご覧ください。
【はじめに】
こんにちは。デジタルハリウッド受講生の早川と申します。
私は現在、本科CG/VFX専攻で3DCGを学んでいます。
7月に参加したオンラインイベント
「 ピクサー現役CGアニメーター原島朋幸氏& ライゾマティクス真鍋大度氏の登壇イベント 」
の当日の様子をレポートさせていただきます!
イベントはYouTube Live配信で行われました。
原島さんはアメリカのサンフランシスコから、真鍋さんはデジタルハリウッド東京本校にお越しいただいてのご参加です。
約300人の参加者
がリアルタイムにコメント等を通して運営側とつながり、
画面越しとは思えないくらいの一体感に盛り上がりを感じました!
【第一部】
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/onehalf-magic.html
©2020 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
第一部はメイキングセミナー
「Pixar Animation Studiosアニメーター 原島朋幸氏が語る最新作『2分の1の魔法』」
です。
内容は大きく分けて
「原島さんのご経歴」
「3DCGアニメーターについて(3DCGの職種)」
「Pixar Animation Studiosの紹介」
「質疑応答」
の4部構成です。
▼原島さんの経歴(大学卒業~ピクサーまでの道のり)
原島さんは大学をご卒業後、一度エンジニアとして就職されましたが、
「ジュラシックパーク」や「トイストーリー」を見てCGに興味を持ち、デジタルハリウッドでCGを学ばれました。
「アメリカで辛かったことはありますか?
」
との質問に対し、
「英語の問題や焦りはありましたが、自分の好きな事だからそんなに辛くはなかったです。」
と答えられているのが印象的でした。
私も
社会人経験
を経て
デジタルハリウッド
に入学したので とても親近感を感じますし、
原島さんのように
好きな事や興味のある事に関わっていけるように
しっかり学ぼうと改めて思いました。
▼3DCGアニメーターの仕事内容
3DCGアニメ制作の基礎や作品に関わる職種の解説の後、
『2分の1の魔法』
を例にして、
原島さんご自身もその1人である「アニメーター」という職種を中心に、
アニメ制作のポイントや作品制作の流れ、業務内容
を Pixar Animation Studios でのご経験を交えてお話いただきました。
最初は監督の頭の中にしかないイメージを共有して、
「『ダンス』といってもどんな種類のダンスを踊るのか」
「上手いのか下手なのか」
「ダンスセンス」
といった キャラクターの詳細な性格設定 から始まり、心理を踏まえた細かい仕草の調整や、
画面映えするポーズの研究 など、細かい部分も妥協せずに考えて試していく制作姿勢が素敵でした。
光や空間の感じなどは3Dにしてみて初めて気づく
こともあるそうです。
「こうした方が良い」と思う部分はアニメーターからも積極的に監督へ提案していく
そうです。
お芝居などでは俳優さんがキャラクターの背景まで考えて役を作りこむエピソードを聞くことがありますが、
それと同じように
「なぜ」
を突き詰めて制作することで1人の
「生きた」
キャラクターを生み出しているのだなと感じました。
論理的な裏付けがあるからこそあんなにキャラクターが生き生きとして、かつ説得力のある作品になるんですね!
Pixar Animation Studiosの社員全員の共通目標は
「素晴らしい映画を作る」
事だそうですが、
数秒間分のメイキングの気の遠くなるような試行錯誤の量からも、この姿勢が貫かれている事を強く感じました。
チーム制作ならではの相乗効果で、どんどん作品が良くなっていく
様が熱かったです。
原島さんも
「作り直しも沢山あるけれど、共通目標に向かって頑張る」
とお話されていました。
▼Pixar Animation Studiosの紹介
Pixar Animation Studios内はどんな社風か、どんな施設なのかを写真を交えて解説していただきました。
現在はコロナの影響で 100%リモートワーク でお仕事をされているそうですが、通常は社内教育が充実していたり、パーティーも良く開催されたり、設備も充実していて、サッカーやプールなどの運動施設も敷地内にあり、原島さんはジムをよく利用するそうです。敷地内のいたるところにPixarのキャラクターやモチーフが散りばめられていて、遊び心を感じました。羨ましいです!
個人的に気になったのは歩いて5分の所にある「Pixar Archive」です。ここはPixar Animation Studiosの保管庫にあたり 映画制作に関わるアートワークを全て保存 しているそうです 『トイ・ストーリー』のウッディーのスカルプチャー(彫像) など貴重なものもありました。記録も大切にするという温故知新の心意気を感じます。
社内の環境についても 『素晴らしい映画を作る』 為に様々な工夫がなされているんだなと思いました。
▼質疑応答タイム
質疑応答の時間には、皆さんがYoutubeLiveのチャット欄に書いた質問にご回答いただきました!
Q:アニメーターには絵が描けないとなれないですか?
A:描けなくてもなれます。
しかし絵の勉強を通して得るものは多いと思います。
Q:就職活動でDisneyやPixarにアピールすると良いのは?
A:アクティング(キャラクターの演技)の幅やアイディアが面白さなどの魅力を伝えられる人が強いです。
それを伝える為のデモリールはとても大切で、海外就職を目指す場合は会社の特色に合わせて作っていくことが必要です。
Q:おススメの勉強方法はありますか?
A:アニメーターになりたいのであればとにかくたくさん制作すること。本物をたくさん見ること。
まだ志望職種が決まっていないのであれば、職種について調べ、やはり実際に制作してみること。
▼まとめ
「生放送のような講演は初めてなので、ちょっと緊張しています」と言いながらも、
終始真摯に誠実にお話ししてくださいました。
「アメリカの男の子は『カーズ』が大好きで、『カーズ』のグッズを持っているのを見かけると、そういう会社にいて、 そういうアニメを作っていることに幸せを感じる 」と講演中に嬉しそうにお話されていたのが印象的で、ご自身の仕事に誇りを持っていらっしゃることが感じられました。
また、最後に参加者に向けて
「制作はインプットとアウトプットの繰り返し。学生時代は時間があるので勉強に打ち込んでほしい。」
とおっしゃられていました。
私も後輩として少しでも高みに近づけるように精進しようと思いました。
これからPixer作品をみるのがさらに楽しみになりました。
原島 朋幸(はらしま ともゆき)氏
アニメーター/Pixar Animation Studios
神奈川県出身。電気通信大学を卒業後エンジニアとして勤務している時にデジタルハリウッドを知る。デジタルハリウッド在籍中に作成したショートフィルムが 1999 年にロスアンゼルスで開催されたシーグラフのエレクトロニックシアターで上映される。
2001 年に渡米し、サンフランシスコの美大、アカデミー・オブ・アートでピクサーのアニメーターが教える通称ピクサークラスを履修する。アカデミー・オブ・アート在籍時にロスアンゼルスの老舗 VFX Studioのリズム・アンド・ヒューズでアニメーション・インターンとして『ガーフィールド 2』の制作に携わる。
その後 DreamWorks Animation と PDI/DreamWorks にてアニメーターとして『ヒックとドラゴン 1、2』や『マダガスカル 2、3』などの制作に携わる。ピクサーでは『ファインディング・ドリー』、『カーズ/クロスロード』、『インクレディブル・ファミリー』、『トイ・ストーリー4』、8月21日(金)に公開する最新作『2分の1の魔法』の制作に携わる。
【第二部】
第ニ部の特別講義、
「ライゾマティクス真鍋氏と考える『ポストコロナの世界でデジタルクリエイティブにできることは何か?』」
です。
内容は大きく分けての
「①ライゾマティクス(Rhizomatiks)の紹介」
「②ライゾマティクスの実績の紹介」
「③今後のデジタルクリエイティブの可能性」
「④SDCP体験会」
4部構成です。
▼ライゾマティクスの紹介
ライゾマティクスはパリ・コレクションやミラノ国際博覧会、Bjork、Ok Goなどの海外アーティストとのコラボレーションや、 国内ではPerfumeをはじめとするアーティストのライブ演出の技術サポートなどを手掛ける 世界的クリエイティブ集団 です。
多種多様なジャンルのクリエイターが所属しているため
様々なジャンルや要求に対応できるフルスタックさが強みで、
デジタルをはじめとした技術と芸術を融合させたプロジェクトを制作 されています。
例えばドローンやシステムやロボットなどハードウェアで必要だなと思ったものは自社で開発も可能。
新しいことをやろうとするとまだツール自体が世の中に出来ていないので自社開発している。
とのこと。
システムに合わせて制作するのではなく、制作に合わせてシステムを作れる、言い換えると
思い描いたものをそのまま形にできる力 ってすごいですね!
会社内部の様子もリハーサル用の設備やオンラインプロジェクト用のグリーンバックスタジオなども整っていて、
アイディアをすぐ形にできる環境 だなと感じました。
▼ライゾマティクスの実績
「『アート』は問題提起、『デザイン』は問題解決。ライゾマティクスは両方やる」(≒芸術と技術の融合)
という信念のもと、
これまで携わった様々なプロジェクトの一部をご紹介いただきました。
例えば、Perfumeのライブ演出ではカメラの位置情報を利用して映像を立体的に見せるなど、
単に映像を制作するだけでなく、どのように見せていくかというコンテンツの仕組みから考えて制作されていました。
5Gの宣伝ではメンバーの3名がそれぞれニューヨーク、ロンドン、東京の3ヵ所に分かれてパフォーマンスをし、
低遅延の魅力を伝えるという演出 を考えだし、
また、Perfumeのライブ配信では、配信ならではの楽しみ方を提供しようと
モーフィングの技術 を利用して自由に視点が移動できるような演出を採用したそうです。
これはライゾマティクスの社員の方が自主的に仕組みを考案したそうで、面白いので使用しているとか…!
会場のライブでも
MR(ミックスドリアリティ)
技術を使用し、
リアルとバーチャルの融合 をめざしているとのこと。
仕事外でも自分の体を実験台にした
「Electric Stimulus To Face」
と呼ばれるビデオ作品はYouTubeで話題になりました。
また、中高生向けの教育活動にも力をいれているそうです。
真鍋さんは
「問題になってから取り組むのでは遅い。面白くなりそうなものへ1、2年先取りして取り組むのが大事」
「アートなら問題提起だけで済む。メディアアートは問題提起+実行していくのが面白い」
と語られました。
時代のニーズをつかむ発想力も、実際にプロジェクトを実現する実行力も、参加者を引き込んでいく巻き込み力もすごいなと思います。
▼今後のデジタルクリエイティブの可能性
コロナによる自粛期間中の取り組みや今後の展望をお話いただきました。
コロナ禍以前は海外やライブ関係のお仕事をされていましたが、 自粛期間の到来と共に全てなくなってしまった そうです。
考えただけでも恐ろしい事態ですが、ライゾマティクスはそこで立ち止まることなく
「Staying TOKYO」
など
オンラインの配信イベント に取り組み、
全社員リモートワークでの作業でしたが、ここでも
いち早くリモート上でも同時に作業できるシステムを開発する
など、強みを生かしてスピーディーに適応されています。
その他、
「離れたままコミュニケーションを取る」
をテーマに
SPOT(四足ロボット) に
iPadを取り付けてSPOTを操りながらのコミュニケーションに挑戦したり、
「騒がずにライブに参加する」
を実現する為にマスク内にささやき声も認識するマイクを入れ
会場の画面にささやいた内容を文字で表示する、
4DViews を駆使したファッションショー等々、
数か月の間に数多くの先進的で実験的な取り組みをされたそうです。
SPOTのコミュニケーションはちょっぴりシュールで新しい面白さがありましたし、
マスクは参加している感覚が得られてLED内蔵で光るため見た目もきれいで良いなと思いました。
ファッションショーも現実ではできない演出が可能で今後どんな表現が出てくるのだろうとわくわくします。
コロナ禍で変わってしまった現状を嘆くのではなく、
変化した環境がもたらす問題の解決を目指し、柔軟に対応していく姿勢
が素晴らしいなと思いました。
▼SDCP体験会
開発中のプロダクトである
SDCP(Social Distancing Communication Plalatform)
の体験会も行われました!
私は必要環境が整っていなかったため直接参加はできなかったのですが、画面共有にてその様子を見ることができました。
SDCPとは音声を使用したコミュニケーションツールで、
近くにいる人の声は大きく遠くの人声は小さく聞こえる、
雑談を耳に挟んだ人が話しかけられるなど、リアルで話している時の感覚で
オンライン上でコミュニケーションを取れるようなイメージ
で開発しているそうです。
クイズや誕生日順に円を作ったりするゲームを行い、とても楽しそうでした!
オンライン上でこんな風にコミュニケーションが取れたら、
リアルのように偶然の出会いやきっかけも生まれそう
ですし、
場所に縛られない分もっと可能性が広がりそう
だなと思いました。
いずれこのようにオンライン上で集まるのが当たり前の時代が来そうです。
時代の最先端に触れた感じがしました!
▼まとめ
お話の端々から真鍋さんの挑戦的で戦略的な情熱を感じました。
「時代を先取りして、ニーズを予測し、環境を整えてプロジェクトを実現する」
考えることはできても
実行するとなると本当に大変な事を実際に行っている真鍋氏、そしてライゾマティクスの皆様に尊敬の念を感じます。
講演中、真鍋さんは
「アイディアから実行までのスピードが大切」
と何度も繰り返しお話されていました。
PDCAサイクルを高速で回しているライゾマティクスだからこそ様々な事を実現できたのだと思いますし、今後ますます進化していく予感しかありません!
最後に、
「(色々なことがデジタル化されてきている、)今はとても恵まれた良い時代です。
みなさん、頑張ってください」
とのエールもいただきました。
現在はコロナの影響で色々な「当たり前」が変化している渦中ですが、真鍋さんのお話を伺っていて、
そんな中だからこそ特にデジタルの分野では新しいニーズやチャンスが生まれているのだと前向きにとらえていこうと思いました!
真鍋大度(まなべ だいと)氏
東京を拠点に活動するアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ。
2006年Rhizomatiks設立、2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋素と共同主宰。
身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作品を制作。高解像度、高臨場感といったリッチな表現を目指すのでなく、注意深く観察することにより発見できる現象、身体、プログラミング、コンピュータそのものが持つ本質的な面白さや、アナログとデジタル、リアルとバーチャルの関係性、境界線に着目し、デザイン、アート、エンターテイメントの領域で活動している。
▼2021年4月開講クラスへ
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