デジタルハリウッド東京本校 ブログ

3DCGだから見える世界とは
~最先鋭クリエイターが伝える、なぜ今3DCGなのか~

2017-08-22

こんにちは。デジタルハリウッド東京本校の池上です。

今回は、2017年8月6日に東京本校にて実施された、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以降ピクサー)でご活躍されている原島朋幸氏の特別セミナーの模様をお伝え致します。
カーズシリーズ第3作目となる『カーズ/クロスロード』のメイキングや、ピクサーでの仕事や海外就職に関するお話をしていただきました。

○ カーズワールドのルールとは

ピクサーと言えば『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』など、世界中で親しまれている作品を多く生み出してきたアニメーションスタジオですね。3DCGで作られたキャラクターに命を吹き込み、映像の中ではそれぞれが生き生きと動き回っているのですが、同スタジオでは実際、どのくらいたくさんのスタッフがこれらを作っているのでしょうか。

原島さんによると「アニメーターだけで、140〜150名くらい。」とのこと。ということは、モデラー、リガー、そのほかのスタッフの数を考えると………
どれだけ規模の大きいスタジオなのか、想像がつきませんね…。


これだけ大きなスタジオだからこそ、それぞれの作品にはキャラクター達が生きている世界を壊さないように「ルール」を細かく決めているそう。今回お話いただいた『カーズ』でのルールは、キャラクターの瞼。カーズは車のフロントガラスを大きな目として表現していますが、男性のキャラクターの瞼はそれぞれが独自に動くのに対し、女性のキャラクターは瞼が繋がり、左右の目が流れるように動くとのこと。『カーズ』シリーズを全て観ていたのですが、この違いには気がついていませんでした。

○ 自由に表現するのか?リアルに再現するのか?

『カーズ』に出てくるほぼ全ての登場人物の体は金属で出来ています。硬く重たいはずの金属は自ら動くはずがありませんが、ここに命を吹き込むのがアニメーターの仕事です。ところが、感情などを自由に表現すればするほど、それは金属ではなくなって見えてしまうのも事実です。

自由に表現するのか?リアルに表現するのか?原島氏は、どちらも非常に重要だと述べていました。キャラクターの口周りや目の動きによって感情を伝えつつ、金属の質感を失わない程度にわずかに体の動きも取り入れているのだとか。更に、アニメーションで大切な「スペーシング」によって、観ているだけでそのものの重さが正確に伝わるよう、最新の注意が払われているのだそうです。

また、登場キャラクター達は腕や足がありません。もちろん、首もありませんから、例えば「振り向く」動作は、どのように表現すれば良いのでしょうか。車が急に180度方向を変えることなんて非現実的ですから、必ず車体を前進させて方向転換するなどの移動が必要となってきます。限られたコマ数の中で、どうやってリアルに振り向いているのでしょうか。これだけを取っても、シーンごとに試行錯誤がなされているアニメーション。
また映画を見直す楽しみが増えました!

○ 「どんな会社で働きたいか」より「何がしたいか」

さて、話は変わって海外での就職についてです。
これまでの和やかな会場のムードも、いざ就職の話題になるやら急に緊張感が……。そんな私達に、原島さんが口にしたのは「どんな会社で働きたいかより、何がしたいかが重要だ。」というお言葉でした。

3DCGを学んでいるデジタルハリウッド在校生は、モデリングからコンポジットまで制作のほとんどを学習していきます。しかし、現場ではその全てを行うことはありません。必ず、ある分野を重点的に勤めていかなければなりません。そうなった場合、一体私はどこのポジションとして、何を学んで、どのような作品に携わりたいのか…。ここを第一に考えることが重要だと教えてくださいました。



「例えば、アニメーターとしてピクサーに働きたいと感じているあなたが、ある企業から自分の希望にあったオファーを受けました。すると、今度はピクサーからオファーが。ところがこちらは全く希望していない分野でのオファーだった。それでもあなたはピクサーに行くことを優先できるだろうか?」

まずは、自分が何をしたいのかをしっかりと考えた上で、それを実現させてもらえる会社に就職することが最善であることを学ぶことができました。

ちなみに、現在の環境でおすすめなのはカナダとのこと。業界が急成長している場所であり、ビザも取得しやすいこともあって、日本人のクリエイターもすでに多く就職しているようです。選択肢としては、カナダで働くことによりアメリカやヨーロッパでの道も開けるということなので、ご興味のある方は是非ともカナダを目指してみてはいかがでしょうか……⁉︎

○ work hard, play hard

ピクサーの大事にしている言葉に、「work hard, play hard」というものがあるそう。つまりは、「よく働き、よく遊ぶ!」ということなのですが、本当に遊んでもいいのだろうか…と考えてしまいますよね。

そこで原島さんが見せてくれたのがピクサー内のオフィスを撮った写真…のはずなのですが、何やら秘密基地のような、おもちゃ箱の中のような不思議な空間。何やら、休日を利用しながら数ヶ月掛かりでオフィスを改造してしまったよう。「よく遊ぶ」とは言ったものの、これは遊びすぎじゃないの⁉︎と思ってしまいましたが、実は多くのスタッフがこうして自分のスペースを改造しては、居心地良く仕事できるようにしているようなのです‼︎‼︎

ほかにも、制作段階のキリが良い頃にスタジオ内ではラップパーティーと言う催し物を開催していたりと、何だか毎日がとても賑わっているようにも感じてしまうピクサースタジオの遊び心。こんなに自由で賑やかな会社っていいなぁ〜と気楽に聞いていましたが、やはり仕事となると「よく働く!!!!」ようです。このメリハリを大事にする姿勢があるから、彼らは一つの巨大なプロジェクトを完了させることができるプロフェッショナルであり続けられるのだと、働き方にも衝撃を受けました。

そんな「よく働く」中で、原島さんが大切にしていることは、「何度も聞くこと」‼︎これは特に、寡黙に働くことが美徳であると考えてしまう日本人にとってはとても大切なこと。アニメーターとして監督の持つイメージを実現してかなければならない中で、どれだけ意思疎通が出来るかが大きなポイントなのです‼︎わからなければ何度も聞き、わかるまで聞くことでようやく一つのキャラクターを完成させることが出来るそうです。

ついでに。言われたことを忘れた場合には、「○○だよね?」→「あれって、○○じゃなかったよね?」と聞き方を変えるテクニックも教わっちゃいました。

○ Q and A

Q 原島さんは、どのようなことをしたいと感じてピクサーへ入社されたのですか?
A アニメーターになりたかったので、3DCGが始まった場所アメリカで学ぼうと思った。ピクサーは3DCGアニメーションにおいて長い歴史を持っていたので、そこでアニメーションを学べればと。

Q デモリールで評価していただけるポイントは?
A 毎年ピクサーには2000程度のデモリールが送られてくる。その中から大体4〜8人が選ばれるのだけれども、ほとんどの作品は5秒も観られていない。まずは自分の一番自信のあるリールを持ってくるべき。制作会社が作ろうとしている作品に沿ったデモリールは目に留まりやすいため、事前に知ることができていれば有利になるかもしれない。

Q 制作進行について
A 大きく分けると、プロダクトマネージャーからの依頼をSVアニメーターが回答しながら制作が進んでいく。そしてSVアニメーター、もしくはディレクティングアニメーターがモデルシートを作成し、それに沿って各アニメーターに仕事が渡っていく。



当日は、セミナー後も多くの方が個別で質問するために列を作っていました。海外での就職に興味のある方や、すでに国内の現場で働かれている方が多い印象でした。記念撮影やサインを求める声もあり、最後の最後まで多くの方が原島さんとの貴重な時間を過ごしていました。

デジタルハリウッドでは、このようなセミナーを随時開催しております。
皆様も是非、ご参加くださいね!
それではまた次回!

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