こんにちは。デジタルハリウッド東京本校の小倉以索です。
6月27日に、映像ディレクターの関 和亮 監督をお招きして、ミュージックビデオのメイキングセミナーを
開催いたしました。
関監督は、OK Goの「I Won’t Let You Down」やPerfumeの「1mm」、サカナクションの「アルクアラウンド」
など数多くのMV制作に携わられています。
最近では、ドラマ「かもしれない女優たち」にて、初のドラマ演出にも挑戦されております。
そんなスーパーヒーローとして活躍されている関監督のすごいところは何と言っても、その表現力です!
今回のセミナーでは、制作されてきたMVの制作秘話とともに、関監督が作品に懸ける情熱など
貴重なお話を聞くことができました。
まずは、関監督の作品に懸ける想いと、セミナー参加者からの質問に対する監督からの熱いお言葉をご覧ください。
きっと、その後にご紹介するMVの見方も変わることと思います。
Q1.テクノロジーを活用したMVを制作されていることが多い関監督ですが、
今後、注目しているテクノロジーはありますか?
A1.自分が想像している映像がすぐに形になる、そんなテクノロジーがあれば良いですが、
それは、「ドラえもん」の中の存在だと思っています。
使える技術があるからそれを使って制作するではなく、制作したいと考えている映像を表現するために
この技術を使おうと思って、使っているので、テクノロジーありき、とは考えていません。
Q2.監督になるためには、どういう技術を持っていれば良いですか?
A2.技術系の監督さんもいらっしゃるので、どのような監督になりたいかにもよりますが、
僕としてはソフトウェアーの技術より、コミュニケーション力を磨いたほうが良かった、と考えています。
監督は、作品のビジョンを持って人にお願いし、共感を持って制作してもらうので、情熱を持って
人にお願いし、「楽しそう」と思ってもらえる、巻き込む力が必要です。
もちろん、最低限編集の技術や、カメラとか照明の知識は必要だと思います。
その学習については、技術系の本を読むでもいいですし、現場で学ぶことも多いと思っています。
Q3.学生時代に、どのような学習をしていたら良いでしょうか?
A3. 「これを勉強しなさい。あれを勉強しなさい。」とは、偉そうに言えません。
私自身、大学生のときに居酒屋でアルバイトをしていたときに、店長のお知り合いの監督さんを
紹介して頂いて、この世界に入ったので、「これだ!」と熱中して学んだことがありません。
今、その当時の私に言うとすれば、「自分の作品をたくさん作っておけば良かった」ということです。
だから、学生の皆さんは、自分の作品を思うがままに制作してください、とお伝えしたいと思います。
そんな関監督が手がけられたMVの数々のご紹介は、下記となっております。
ぜひ、ご覧くださいませ!
1.OK Go「I Won’t Let You Down」
まず一つ目はアメリカ/シカゴ出身の4人組インディー・ロックバンドとして有名なOK Goの
「I Won’t Let You Down」をご紹介します。
曲名は日本語で「がっかりさせない」の意があるとのことですが、(なるほどこれはすごい・・・!)となるお話を
戴きました。
このMVは、ドローンを用いて撮影されたMVとして話題となっておりますが、驚くのはドローンの使用方法です。
本来、ドローンというのは、GPS機能を用いて座標を取り、何秒間その場に留まるか・・・など
プログラムにより制御をして使うのが主流ですが、どうしても”ズレ”が生じることがあります。
プログラミングは完璧、と思ってしまいますが、そのズレは”手動”で補正していらっしゃるとのことです。
また、映像の端々に見える床のバッテンの目印は、ドローンのための目印か・・・と思ったところ、
実は、出演者のための目印とのことでした!
機械にプログラミングをすれば、後は出演者の動きを見て、カメラを動かせば・・・などと考えてしまいますが、
両方の制御を同時に、しかも人の手によって、というのはすごくチャレンジ精神と、感服いたしました。
もう一つの特徴として、このMVはCD(クリエイティブ ディレクター)の、
HONDAの”電動一輪車”「UNI-CUB β」(ユニキャブ ベータ)とOK Goを合わせたMVを作りたい、
という企画提案からスタートしました。
エンターテインメントな魅せ方を得意としているOK Goならではの表現により、その魅力を存分に
引き出されている作品となっています。
さらには、「ワンカット(一繋ぎ)の映像で撮影してください」というオーダーもあったということで、
決して失敗できないため、何度もテストを重ねて本番に臨んだということです。
決して簡単ではない撮影に携わられた皆さんの、並大抵ではない集中力に脱帽いたしました!
2.Perfume「1mm」
こちらのMVでは、ディスプレイや舞台演出で使用されるアクリル板(細かい傷がついており、光の反射を
生み出す効果を持つ板)を改良して、使用しています。
文字をガラスの中に映っているかのような表現は、「ただ歌詞を出しても面白くない」という考えから、
文字がアクリル板に映し出される様に制作されました。
アクリル板が色づいているように見えるのは、アクリル板のフレームにLEDを仕込み、音に反応して
プログラミング制御をしているとのこと。
また、撮影方法として、”モーションコントロールカメラ”を使わずに、手付けでカメラの動きを追いかけ、
編集でトラッキングしています。
手作り感を大事にされている監督ならではの表現は、機材に頼るのではなく、イメージしている映像を
表現するために、少し遠回りであったとしてもその手法を選んでいる、ということもあるそうです。
3.supercell「ODDS&ENDS」
初音ミクとフューチャリングしたMVとして有名な本作品。
ボーカロイドのプロデューサーであり、supercellのコンポーザーであるRyo氏から「実写で制作したい」という
要望があったものの、監督自身には「ミクが出ないとファンが怒るのでは」という懸念もあったことから、
実写×CGのMVが生まれたと言います。
バンドの演奏シーンは、そこにフォーカスし、背景では、CGで制作されたロボットと、モニターの中にいる
初音ミクの物語となっています。
物語の最後には・・・、ファンの方ならば感動すること間違いありません!
実写×CGの制作の中で、苦労するのはカット割や、色調を合わせた雰囲気作り、実写とCGのバランスと
おっしゃりながら、アナログでは表現できないものができるのが、CGの醍醐味ともおっしゃっていました。
手作り感を大事にされている監督ならでは、のお言葉ですね。
その悩み甲斐もあってか、海外からも大きな評価を受ける作品となっています。
歌詞と世界観のフュージョンを、皆様もぜひご覧ください!
4.星野 源「SUN」
モーションコントロールカメラという、映像の合成素材を撮るためのカメラを用い、ワンカット風の映像に
仕立て上げられている映像です。
星野さんが、部屋を移動し、その瞬間、パジャマ⇒下着⇒正装、と衣装が変わるシーンはこのカメラを使い、
撮影されています。
全てが同じ部屋なのですが、内装を変え、違う部屋、時間を経過したシーンにするためにこのカメラを使用し、
それぞれの場面が別々に撮影され、後ほど繋ぎ合わせて作られているのがこの映像です。
最後にはクレーンも使い、上下左右、前後ろにも動かし、迫力ある映像や俯瞰した映像も撮影されています。
ちなみに、最後のセリフはアドリブだそうです(笑
元気の出るテンポと、映像のワクワク感をお楽しみください!
今回のセミナーでは、数多くの作品をご紹介いただくとともに、監督の、一つ一つの作品に懸ける想いを
ふんだんにお話いただきました。
在校生にとって、映像の世界観を成立するためイメージも膨らんだようで、
終始楽しそうに、関心を持ってセミナーに参加していました。
技術的なこと、監督ご本人関することなど、Q&Aコーナーでは質問が絶えることなく、
今後の作品制作に、きっと活かされることと思います。
貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました!
【OJTのご報告】関 和亮 監督 × デジタルハリウッド
SECOND WALL MUSIC VIDEO COLLABORATION
この度、関監督と一緒にデジタルハリウッドの在校生、卒業生がMVを制作することが決定いたしました!
2009年に結成され、その半年後にはカナダのTEN SECOND EPIC来日公演に抜擢されたインディーズバンド
SECOND WALLと、コラボレーションさせていただきます。
さらには、映画『サマー・ウォーズ』のキング・カズマを始めとする仮想世界OZのアバターデザインを
担当されている岡崎 能士 氏がキャラクターデザイナーとして参加されます!
夏からスタートとなる本企画を引き続きレポートしてまいりますので、続報をぜひお楽しみに!
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【プロジェクトメンバーのご紹介】
プロデューサー:石井 毅
監督:関 和亮(株式会社トリプル・オー)
キャラクターデザイン:岡崎 能士
CG制作テクニカルディレクター 小倉 以索(デジタルハリウッド講師)
CG制作:デジタルハリウッド在校生&OB
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【OJT(On The JobTraining)とは】
デジタルハリウッドの「実践的産学協同」プログラム(OJT)とは、多様な教育機会を提供しクオリティの高い
人材へと育成して産業界輩出していくことを目的とした学習カリキュラムです。
さまざまな業界企業と学生が課題に取り組むことで、学生は実務経験を積みながら新しい価値を創出し、
プロジェクトを通してお互いが貢献しあえることを目指します。
また、今回のOJTでは、就転職活動に必要となるポートフォリオ(作品集)に、完成した作品を掲載することも
可能です。
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