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【イベントレポート】ファッション×3DCG×生成AIが導くファッション業界の未来とは

2024-05-19

近年、あらゆる分野で話題になっている「AI」

ファッション領域では、レコメンドシステムやスタイリングアシスタント、画像認識など、顧客に最適な商品を提案したり、体型に合ったサイズを推定したりするなど、ファッション体験を向上させる機能が注目されています。また、生産最適化やデザイン支援など、ファッション業界全体にAIが革新をもたらしています。これらの技術は、ブランドの競争力向上や顧客満足度の向上に貢献しています。


今回のイベントでは、株式会社GOOD VIBES ONLYの皆様をお招きし、様々なAIツールの紹介とともに「ファッション業界の今とこれから」についてお話しいただきました。

株式会社GOOD VIBES ONLYについて

株式会社GOOD VIBES ONLY

世の中の衣類の半分以上が燃やされている「反SDGsなアパレル業界課題」に対し、“衣類破棄0%を当たり前にする”をミッションに、CGやAIなどのテクノロジーを駆使し、アパレル業界の変革を目指している。

登壇者紹介

野田 貴司|代表取締役社長

CAREER

高校、大学(九州産業大学)と野球推薦で入学。大学在学中、怪我で野球部を退部。大学中退後に東京へ上京。2016年4月、3ミニッツに入社し、アパレルD2Cブランドの先駆けである「エイミーイストワール」を社内で立ち上げる。ブランド運営では営業を中心に行い、約2年間で売上高25億円までブランドを成長させた。2017年2月、3ミニッツをGREEへ46億円で売却。同年11月に3ミニッツを退社。2018年4月、3ミニッツ創業者の宮地氏とともに、GOOD VIBES ONLYの創業に参画。2019年9月、同社の株式を買い取りCEOに就任。現在に至る。

INTRODUCE

野球を通じて、相手チームの課題や弱みを分析し、戦略に落とし込んできた経験から、広い視点で物事の課題を見出すこと、分析から戦略に落とし込むことを得意とする。社会に出てからは、企業の0→1フェーズに多く携わってきた経験もあり、新規事業開発を多く手掛けている。持ち前の分析力と課題解決力を評価され、様々な企業のコンサルティングを行い、売上をグロースさせてきた。現在はアパレル業界全体の大きな課題に向き合い、業界全体を改善するアパレルDX事業を展開する

田尾 雄也氏|執行役員

CAREER

ファッション専門学校卒業後、販売職を経て東京に上京。MD、卸&直営店舗営業、自社/他社ともにWeb関連の事業など、デザイナー・パタンナーなどの技術職以外は全て経験。その後GOOD VIBES ONLYに参画し、現在に至る。

INTRODUCE

アパレルの計画から生産・販売の工程全てに携わってきた経験から、各セクションを繋いだ計画・実行を得意とする。ゼネラリストとして幅広く積んだ経験を活かし、現在はProckの開発、事業推進とマネージメントを担当している。

市村 悠貴

CAREER

文化服装学院を卒業後、3DCGソフトウェアの代理店に入社。大手アパレルメーカーや商社へ、3DCGの導入や活用の支援を行う。2022年GOOD VIBES ONLYに入社。直近では、TOMORROWLAND社が展開する、3DCGが活用されたセミオーダーシステムの開発に参画。

INTRODUCE

学生時代の専攻は、パターンメーキング。その経験を活かし、洋服のモデリング、フォトリアルな魅せ方を得意としている。モーショングラフィックや実写合成・VFXが用いられた、多くのPRムービーを制作。プロフィール画像の服も、CGで制作し合成されたもの。

株式会社GOOD VIBES ONLY 設立の経緯

ファッション業界が抱える「衣類の大量破棄や社会課題を、SDGsの力で解決を目指す」というミッションを掲げる、株式会社GOOD VIBES ONLY。

管理体制が分断化されているファッション業界において、24時間対応可能なPLMシステム(商品のデザイン・生産・販売までの工程を管理していくためのシステム)を導入することで、アパレル業界の課題を最短、最速で解決することを可能にしています。


CEOの野田氏は、もともとシステムの開発やホームページの制作など、IT寄りのお仕事をされていたとのこと。ファッション業界に入るきっかけとなったのは、まだInstagramも主流ではなかった2013年。旅先のニューヨーク・タイムズスクエアで、InstagramやSnapchatなどの大量なSNS広告を目にしました。それをヒントに、アパレルのスタッフとともにInstagramで発信を行い、フォロワーを増やす体験や実践をして、現在の事業につなげていったそうです。


その後約2年間、D2Cの業態・ブランド事業を運営していく中で、従来のファッション業界のシステムに疑問を感じ、GOOD VIBES ONLYを設立する運びとなりました。

ー 設立後の事業について

2018年の会社設立後は、DX化をしていくため、まず自分たちで実装テストをしていく必要があると考え、D2Cブランドを7つを設立。自社ブランドでDX化のテストを行っていきました。


衣類のサンプルを3Dで置き換え、制作や資源のコストを削減。利益率を改善することができるデジタルサンプルの、β版システムの開発などを事業化していきました。その後、PLMのシステム開発をしながら、SNSを通じた生成AIの領域にもビジネスの幅を拡張。エシカルな消費が重要視されるようになった昨今において、SDGsをビジネスとして実現化しているところがGOOD VIBES ONLYの強みです。

ー 3DCGを活用した事例

ここからは、実際に3DCGを活用した事例を紹介します。これまで、ジャケットやスーツを作る際は、一つの素材を使用してサンプルを作っていました。ある時「セミオーダーでスーツを作りたい」という依頼を受け、3DCGの活用を試みます。


従来は、お客様にジャケットを試着してもらい、肩に生地を一つ一つかけて接客するというやり方が主流でした。この機会に、スーツを3D化し生地の素材や色、伸縮性などのパブリックデータに対してAIを使用し、スタイリングを自動生成することを可能にしました。これにより、接客時間を伸ばしユーザー体験の向上を実現することができます。また、生成されたスタイリングはそのまま工場に発注することができます。デジタルの力を組み合わせることで、上質なユーザー体験と生産コストの削減を可能にした、良い事例です。


今後は、ゲーム業界のアバタースキンなどを例に「在庫を持たない、デジタルファッション市場」に拡張するため取り組んでいるとのこと。次々と新たな試みを続けていく株式会社GOOD VIBES ONLY。今後の活躍も目が離せません。

ファッション業界における生成AIの活用

続いては「ファッション業界における、生成AIの活用」についてです。ナビゲーターは、エグゼクティブプロデューサーの田尾氏。アパレルブランドの運営に携わった後、GOOD VIBES ONLYへ参画し、ファッション業界が抱える課題をデジタルの力で解決するため、AIを学び始めたそうです

ー 生成AIについての概要

現在、画像・テキスト・動画・音声の4つのジャンルが、生成AIにおいて主流となっています。国内外を問わず、生成AIのサービスはかなり増えていますが、画像生成系でおすすめしたいのは「Stable Diffusion」と「Midjourney」


「Stable Diffusion」は、オープンソースのAIで実現できることが非常に多い。「Midjourney」は、ある程度のプロンプトを入力するだけで、素早く整った内容を生成できることがメリットです。画像生成にチャレンジしたい方は、まず「Midjourney」から始めてみて、深掘りしたい方は「Stable Diffusion」を使ってみるという流れがおすすめだそうです。

ー Stable Diffusionのメリット・デメリット

「Stable Diffusion」のメリットとして、カスタマイズ性が高く追加学習(ローラ)もかけることが挙げられます。そのため、新しいテイストを生み出すことを得意としています。デメリットとしては、品質のばらつきがかなり激しく、細かい設定をすると特にクオリティにばらつきが出ることが挙げられます。また、サポート体制のハードルが高いこともデメリットに感じる場合があります。

Midjourney」は使いやすく、コミュニティが活性化されていることがメリットです。デメリットは、課金しないとアクセス制限がかかること、カスタマイズ性に限界があるといったものがあります。

アパレルCG業界について

続いてのナビゲーターは市村氏。文化服装学院でパターンメイキングを専攻していた経験から、実物に基づいたモデリングやモーショングラフィックの制作を得意としています。市村氏には、アパレルCG業界について詳しく教えていただきました。


市村氏が主に使用しているソフトは「Marvelous Designer」と「CLO」。「Marvelous Designer」はあくまでモデリングのためのソフトで、「CLO」ではレンダリングやテクスチャリングなど、一連の工程を行うことができます。

ー アパレルCG業界の歴史

ゲームCG業界などと比較して、アパレルCG業界の歴史はまだ浅く、5~6年ほどとのこと。

従来のCG業界と比べると、キャラクターのモデリングと洋服モデリングの違いとして、キャラクターの洋服には型紙が必要ではありません。しかし、実際の洋服を作る際には型紙が欠かせません。アパレル3DCGは、実際の洋服を作る前提で使われているという違いがあります。

ー どのような人が向いているか

洋服の構造に知識があることや、3DCGのスキルがある人、モデリング〜映像制作まで一人でできる、ゼネラリスト的な人材が向いているそうです。各分野の技術力の向上など求められるスキルは高そうですが、とてもやりがいがありそうなお仕事です。

ー 実際の活用方法・効果

オーダースーツなどの商品は、全てを揃えて試着することは不可能ですが、CGならイメージを実現することができます。また、接客効率の上昇やユーザー体験の向上も見込めるため、ブランディングにも大きく寄与できます。

さいごに

いかがでしたか?今回のワークショップでは株式会社GOOD VIBES ONLYのみなさんに登壇していただき、様々なAIツールの紹介とともに、ファッション業界の今とこれからについて学びました。

華やかな印象がある一方、さまざまな課題を抱えているファッション業界。DX化や生成AI、3DCGといった技術を率先して取り入れて、SDGsを実現させている株式会社GOOD VIBES ONLYの活動に、今後もぜひご注目ください。


デジタルハリウッドSTUDIO新宿では、今後もクリエイターに向けたさまざまなイベントを開催予定です。どうぞお見逃しなく!

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