こんにちは!デジタルハリウッドSTUDIOネット動画クリエイター専攻トレーナーの花束莉花です。
今回のイベントレポートでは、7月11日にSTUDIO新宿で開催された特別授業『カンタの映像魔法!クリエイティブの舞台裏』をお届けします。動画クリエイターとして絶大な人気を誇る水溜りボンドの『カンタ』さんを講師としてお招きし、リアルなクリエイティブの舞台裏について語っていただきました。
会場にはたくさんの受講生・卒業生が集まり、楽しみにしている様子が伝わってきました。普段から私もYouTubeを見ているので、カンタさんのお話しを直接聞けるなんて、とてもワクワクしました!
このレポートでは、カンタさんの授業の中から特に印象に残った部分を中心に、特別授業の模様を詳しくお伝えします!
登壇者紹介
水溜りボンド
カンタ|動画クリエイター
YouTubeを中心に活躍するカンタとトミーによる二人組動画クリエイター『水溜りボンド』として、現在チャンネル登録者数417万人を超える人気動画クリエイター。
ドッキリ、実験、検証、都市伝説、料理など、視聴者の皆さんに楽しんでいただけるように、2015 年1 月1 日の活動開始以来、一日も欠かさず毎日動画投稿した、YouTube界の先駆者。
視聴者とのコミュニケーションを大事にし、ジャンルにこだわらず、限界を定めず、自然体でつくりあげていくスタイルの二人から、さまざまな"波形"が日々生まれている。
個人チャンネル【カンタの大冒険】は登録者数130万人を突破し、ショート動画では実写合成やモーショングラフィックスを用いた、こだわりぬいた作品を発信。
自身が動画クリエイターとして表舞台に出るだけでなく、映像監督としても活躍している。
【目次】
YouTubeを始めたきっかけ
授業が始まると、カンタさんの登場に会場は熱気に包まれました!普段は動画越しにしか見られないトップ動画クリエイターのカンタさんを目の前にして、期待感が一気に高まります。
カンタさん :
YouTuberをしております、水溜りボンドのカンタです。青学では学生に話したり、トークライブとかやったりするんですけど、皆さんは映像のクリエイターなわけですから、こっちも審査されてる感覚があって…お互いやめましょうね、そういうマウンティングみたいなのは!今日はゆったり話していこうと思います。
カンタさんのユーモアと親しみやすいトークは、すぐに参加者の皆さんの心を掴みました!「緊張している」と言いつつも笑顔で話し続ける姿に、会場全体が和やかな雰囲気になります。
まず最初に、カンタさんがYouTubeを始めたきっかけについて語ります。
カンタさん :
青山学院大学の総合文化政策っていう学部で映像を学んで、NHKでバイトをしたりとかしてる中でYouTubeと出会いました。20歳くらいからYouTubeを始めて、もう10年くらいやっています。NHKに勤めてた先生が 「 それぞれが放送局を持つ時代になるんじゃないか 」 と1年生の時のゼミで言ってたんですよね。その言葉が頭の中でずっと引っかかってて、YouTubeと出会った時に「これのことなんじゃないかな」って思い動画投稿を始めました。
大学時代の先生の一言が、YouTubeへの興味と成功のきっかけになったというエピソードはとても印象的でした。まだYouTubeというプラットフォームが、世間に知られていない時代にも関わらず動画投稿を始めるのは、とても勇気のいる行動だったと思います。
最近の活動について
カンタさん :
最近はショート動画を個人チャンネルで投稿していて、VFXというかちょっとしたCGを使った動画は今2.7億再生されてます。なかなかないですよね。こんなに再生されると思ってなかったです。実は僕の個人チャンネルでは1億再生されてる動画も3本〜4本出てたりします。
最新の映像技術やトレンドを取り入れた作品作りが伺えました。カンタさんといえば“ショート動画”を連想させる方も多いのではないでしょうか?ショート動画は、今やカンタさんの代名詞となっています!
カンタさんは、最近設立した映像制作会社についても語りました。
カンタさん
:
映像の会社を去年から作ってて、ずっと10年間一緒にやってきた映像チームのやつらとMVだったり、最近だったら青山学院150周年の映像を監督させていただいたりとか、それも全部自分たちのチームでやっています。地道に自分たちのコミュニティで作っていってるっていうのが、まあYouTuberっぽくないかもしれないんですけど、僕の中では延長上にある作業です。
YouTuberという肩書きだけではなく、映像クリエイターとしての挑戦が、彼の中で一貫している点に強く共感しました。YouTuberという立場から見ると、プロの映像制作の世界に進出することは異例かもしれませんが、カンタさんにとっては自然な流れであり、自分たちのコミュニティで一つ一つ丁寧に作品を作り上げている姿勢が伝わってきました!
草クリエイターの戦い方
カンタさんは、自身を「草クリエイター」として紹介しました。
カンタさん :
僕、草クリエイターっていうイメージでやってるんですよ。プロ野球と草野球ってあるじゃないですか。僕は草野球みたいな、草クリエイターでいいやと思ってて。プロクリエイターの方がやっぱかっこいいですけど「無理だなー」と思って。そこを格好つける必要は僕はないのかなって思ってるんですよね。
このエピソードには、カンタさんの謙虚な姿勢と、自身の立ち位置に対する自己認識が感じられました。私は、デジタルハリウッドの受講生さんから「肩書きをどうしようか悩んでいる」という相談を受けることが多くあります。自分が何者なのか分からない、言語化できない方がほとんどです。草クリエイターのエピソードを聞いて、カンタさんのように自分と向き合い自分を知ることは、能力を発揮するうえで必要不可欠なのではないかと感じました。
カンタさん :
僕は過去にYouTubeで、6年間毎日欠かさず20時に動画を上げてたんですけど、合計3,000本くらい上げましたね。半ば強迫観念で上げてた時もある。時限爆弾を常に持ってるみたいな。それに再生数が一目瞭然なわけですよ。僕はもう3,000本、GoogleさんのAIと戦ってきました。こんなに数字と直面してきた人って多分いないと思うんですよね。
並々ならぬ努力と忍耐力に、息を呑んだのは私だけではなかったはず。会場にいた誰もが真剣な眼差しでカンタさんの話しを聞いていました。
6年間毎日欠かさず動画をアップするというのは、想像を超える厳しさとプレッシャーが伴うものだと思います。カンタさんからそのプレッシャーの大きさがひしひしと伝わってきました。
YouTubeというプラットフォームで成功するためには、視聴者の反応やアルゴリズムとの戦いも避けられません。ただ動画を作るだけではなく、どうすればより多くの人に見てもらえるか、常に考え続ける姿勢が感じられました。その戦いは孤独で過酷なものであったに違いありません。
50冊のノートで自身のチャンネルを理論化
カンタさん :
企画をストックしたりするんですけど、一番良いと思う企画から先にやっちゃうので、やらない企画だけがどんどんたまっていくっていう時期がありました。これですね、これ僕がずっとつけてきたノート。この間調べたら多分50冊ぐらいあって、もうこれがないと…もうお守りみたいなもんなんですよね。
なんと、毎日投稿中に企画アイディアなどを書き記していたノートの1冊を、会場に持ってきてくださりました!
カンタさん :
もう悩みすぎて怖いノートを選ぶようになってる(笑)50冊の中でも一番やばい時期…もう魔術に頼りたい時期(笑)しかも鍵みたいなのも付いてる(笑)怖いですよね。
カンタさんが“怖いノート”を見せると、会場は笑いに包まれます。「魔術に頼りたい」というユーモラスな表現に、私たちはカンタさんの真剣さとお茶目さの両方を感じ取りました!
カンタさん :
見えますか?変なことも書いてるかもしれないですよ。収益とかも書いてるかもしれないんで見せづらいですけど、こういう感じで一つずつ理論化していってる時期ですね。「企画力×個性×再生数…嘘」って書いてある。「満足度=結果」とか。これは全部2017年くらいの迷走期なんで正しくないです(笑)その頃10万人近辺のYouTuberさんの名前を全部書いて、超える度にバツして一人ずつ倒してました。
円を使った図式のようなものが書かれていました。カンタさんの絶え間ない努力と、その背後にあるメンタルの強さが伺えます。
カンタさん :
あの頃はTwitterで「こういうYouTuberなんでぜひ見てください」っていうDMを送ることを戦略的にやり始めて。こっちは人生がかかってるし、自分がなりたい映像の職業に就けなくなる可能性があるから、少しでもできる努力はないかなって。100人にDMして返信してくれる人が10人くらい、そのうち1人がチャンネル登録しましたとか、そうやっていくうちに徐々にチャンネル登録者数が増える図式ができてくるんです。DMやリプのしすぎで腱鞘炎になるんですよね。YouTubeに来るコメントも全部返してた時期もあります。
カンタさんの努力がひしひしと伝わってきました。トップ動画クリエイターの成功の裏にはこんなにも地道な努力があったんだと感じるエピソードです。自分の目標達成に向けた戦略的なアプローチの重要性を改めて感じました。
カンタさん :
でも結局は、こんなノートなんていらなかったんです。やっぱり作りたいものを作るべきっていうのをすごく感じて。自分があんまりやりたくない企画をやって、それが伸びなかったり「あんま良くないね」とか「ダサいね」って言われた時、鬱じゃないですけどそれぐらい凹むわけですよ。それが非常に辛いので、僕はやりたいことだけをやって、だけどそれじゃあ伸びないことも多いから、じゃあどう伸ばすかとか、どこを努力するかっていうのを考えるようになりました。
自分の気持ちに正直に、作りたいものを作る大切さが伝わりました!そして、自分が納得できることを追求する重要性を再認識しました。
カンタさんは、やりたいことをやり続けることで自分自身も満足し、他者からの評価も得られるようになると付け加えました。自己満足と他者評価のバランスは、健康なメンタルを保つためにも大切にすべきですね!
恐怖心を飛び越え、時代の流れを読む
カンタさん :
1万時間の法則っていうのがあって、だいたいの物事って1万時間やったらプロ級になるよね、みたいな話です。草クリエイターとは言いつつ、企画・編集・撮影の全分野においてもう1万時間余裕でやってます。
1万時間を日数に換算すると、だいたい417日。24時間一睡もしなかったとしても丸1年以上かかる計算になります。これほどの時間を一つの分野に捧げることで、プロフェッショナルの域に達するという考え方には説得力がありますね!
カンタさん :
じゃあこの3つだけでいいかっていうとそうではなくて、もっと重要なところは“時代の流れを読む”ことだと思ってて。TikTokとかYouTubeショートとか、出てきた当初はめちゃくちゃやりたくなかった。横動画を9年やってきて、それで「縦動画かぁ…」と。1分の縦動画にするって、やっぱすごいプライドがあったんですよね。それに怖かった。「伸びないんだ」とか「面白くない」って言われる可能性があるわけで。だけどその恐怖心みたいなところは1回取っ払って挑戦して。絶対挑戦してる方が価値あるよね、そういう方が人生面白くね?っていうことで挑戦しています。
これまで何度も恐怖心を飛び越えてきたからこそ、トップ動画クリエイターとしてご活躍されているのだと感じました。新しいことに挑戦するのは怖いけれど、変化を受け入れて前に進むことで、もっと楽しい人生が待っているのだと思います。
カンタさん :
例えば、今うちの映像チームも「Midjourney」や「Runway」といったAIツールを使っています。実際、映像制作の現場でAIを活用してる人も多いです。現場の人たちは柔軟な発想でやってるけど、僕とか映像が好きな人たちは「それはやったらあかん」みたいな感覚があって。“プロフェッショナルが無くなっちゃうじゃん”っていうのがあるけど、時代の流れを読んでAIの領域に挑戦しています。
私自身もクリエイターとしてAIツールを使用することにすごく抵抗がありました。AIツールを使い始めて1年ほど経ちますが、今でも少し罪悪感を感じています。ですが、AI技術を取り入れることで、映像制作の可能性が広がるとも感じています。私もプライドや恐怖心、罪悪感を飛び越えて柔軟に新しい技術を取り入れていきたいと改めて考えさせられました!
目指すことは、料理を食べる人を満足させるだけ
カンタさん :
僕が思うに、自分は料理人だと思うんです。お客さんに美味しい料理を提供したいだけなんですよね。映像も同じで、自分のこだわりを持ちながらも、見てくれる人が楽しめるものを作りたい。
カンタさんは、自身を料理人に例えて提供までの工程を説明しました。
時代:お腹が空いてる人がいるところでお店を立てよう
企画:献立を考えよう
撮影:食材を取りに行こう
編集:料理をしよう
映像制作における具体的なアプローチは、すぐに実践できるアドバイスが多く、多くの参加者がメモを取っていました!
カンタさん :
編集には自分の味を絶対に入れたい。だって料理屋さんでまた来ようって思う理由って、おいしいだけじゃなくて、料理人の人柄だったり独自のスタイルがあるからだと思うから。
自身の編集スタイルに対するこだわりがすごく伝わってきました。確かに、おいしい料理だけではなく、その料理人の個性やスタイルが魅力的だとまた行きたくなります。それと同じで、映像編集にも自分の味をしっかり入れることで、見る人に印象を残せるんだと思います。自分のスタイルを大事にする姿勢が勉強になりましたし、そういうこだわりが作品に命を吹き込むんだなと感じました。
参加者からの質問
授業の最後に、参加者からの質問に答えてくださりました!
質問①:
私はメンタルが弱く、テンションの上げ下げが激しいです。いいねが10件ついたら嬉しいけど、0件だと落ち込んじゃいます。どうやったらメンタルやテンションを安定させて動画作りに集中できますか?
カンタさん :
分かる、メンヘラモードあるよね。自分が何でテンションが上がって、何で下がるのかを考えるのが大事だと思います。あとはプレイヤーとしての自分と、客観的にマネジメントする自分を分けて考えるといいかもしれません。「この人(自分自身)ってどうしたら楽しいんだろう?」みたいな。メンタルの弱い部分をどうやって守るか、ルールを作っていくことが大事です。
質問②:
私はカンタさんと同じ大学で、ダブルスクールでデジハリにも通っていました。今は安定していますが、将来どうしようかなと悩むことがあります。カンタさんの今後の展望について教えてください。
カンタさん :
30代は映像業界でさらに挑戦していきたいです。僕はたくさんの人に動画を見てもらえて、人生が面白くなっているので、めちゃくちゃな人生にしてやりたいなと思っています。草クリエイターがプロクリエイター達と戦っていくほど面白いことってないと思うし、それほど希望を与えられることってないわけじゃないですか。いつかテレビCMも撮れたら面白いな。HIKAKINさんがCMに出て、スタッフ側で僕がカメラまわしたり絵コンテ描いてたら、そのCMはYouTuberジャックが起きるわけですよね。「もうこっちでやれちゃいますけど」みたいな。そんなことがあったら面白くない?できる限りその光に向かって走り続けたいなと思っています。
質問③:
私はデジハリ大学の4年生です。アルバイトでYouTubeの編集や企画をしていますが、行き詰まることがあります。カンタさんは企画に行き詰まった時、どう工夫していますか?
カンタさん :
毎日投稿していた時は、緊急の撮影で企画が思いつかないことがありました。でも、その場で何とかするしかないんですよね。逆境で諦めずに挑戦することが大事です。普段のインプットとしては、自分がワクワクするものや作品を見続けることを意識しています。心が疲れている時は休むことも大事かな。サウナに行ったり、映画を見たりしてリフレッシュすることも必要です。ギリギリを走ることもあるけど、楽しいことをしてギリギリを走るのがコツだと思います。
参加者の感想
今回の特別授業は、皆さんにとってすごく刺激的で学びの多い時間になったと思います!カンタさんの面白いトークとリアルなアドバイスが満載で、クリエイティブな世界で成功するためのヒントがいっぱい詰まっていました。
実は、次回の授業を楽しみにする声が続々と寄せられています!参加者の皆さんの満足度はもちろん100%でした◎人気動画の裏側や企画構成、思考の組み立て方、実際の撮影シーンや編集のコツなど、「カンタ先生からもっと学びたい!」という熱いリクエストが殺到しています!
参加者の感想
・自分を「草クリエイター」と呼び、プロの世界にこだわらず自分のスタイルを貫く姿勢がかっこいいです!常に新しいことに挑戦し続ける姿勢に刺激をもらいました。カンタさんが普段どうやって撮影をしているのか、実際に見てみたいです。
・中学生の頃からずっとファンだったので、これまでのYouTube活動の裏側を知ることができて感動しました!これからは自分がワクワクすることにたくさん挑戦していきます。次も絶対また授業をやってほしいです!
・カンタさんの編集スタイルへのこだわりと、自分の味を大切にする姿勢がすごく印象的でした。視聴者に楽しんでもらうためには、自分も楽しむことが重要なんですね!次回があれば、カンタさんが実践してる編集のコツを伝授してもらいたいです。
最後に
今回の特別授業を通じて、カンタさんのクリエイティブに対する情熱と努力、そして柔軟な発想力に触れることができ、とても貴重な時間を過ごすことができました。参加者の皆さんも、それぞれのクリエイティブな活動に活かしていただければ嬉しいです!
これからも、こうした素晴らしい機会を提供していきたいと思いますので、引き続きデジタルハリウッドSTUDIO新宿のイベントにご期待ください!
そして、カンタさんのサイン色紙と、ベストセラーになった水溜りボンドさんお二人の初のエッセイ本『ふたり。』もSTUDIO新宿受付に展示中。
ファンの皆さまもぜひお気軽に校舎に遊びにいらしてください!
以上、デジタルハリウッドSTUDIOネット動画クリエイター専攻トレーナーの花束莉花でした!