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USJの商品開発から学ぶ「選ばれるデザイン」の考え方UI/UXデザインに必要な力とは?

2026-08-30

元USJ商品開発責任者が語る、テーマパークの「モノづくり」とキャリアのつくり方

デジタルハリウッドSTUDIOにて、受講生を対象に特別イベントを開催しました。 講師を務めたのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で長年商品企画開発に携わってきた森脇順子さん。現在はご自身もデジタルハリウッドでWebデザインを学び直しているという森脇さんが、USJでの経験をもとにテーマパークの商品開発の裏側と、これからデザインの仕事を目指す人に伝えたいことを語ってくださいました。

森脇さんは、大学卒業後にアパレル企業での営業を経てUSJに入社。 店舗運営を経験した後、約20年にわたり商品企画開発に従事し、複数のカテゴリー担当を経て、最終的には商品開発の複数チームを統括する立場を務められました。 その後は人事部門も経験し、その後はOsaka Metro(大阪市高速電気軌動株式会社)で新規事業のプランニングにも携わっています。 現在はデジタルハリウッドでデザインを学び直しながら、次のキャリアに向けて活動されています。

森脇さんプロフィール画像

USJの「モノづくり」を支える組織

話はまず、USJの商品開発がどのような組織体制で行われているかという紹介から始まりました。 商品開発には、デザインや商品化、品質管理、ライセンス、売り場づくり、商品計画など、さまざまな分野を担う多くのチームが関わっており、それぞれが連携しながら一つの商品を生み出していることが紹介されました。

特に重要なポイントだと感じたのは、ミニオンやスヌーピー、任天堂のキャラクターなど、USJ内で使われているキャラクターの多くが、USJ自身が保有するものではなく、第三者(ライセンサー)から許諾を得て使用しているという点です。 ロイヤリティという契約のもとでキャラクターを使用しているため、商品デザインの一つひとつについて、ライセンサーからの承認を得る必要があるという商品開発ならではの難しさが語られました。

イベントでの講義の様子

「絵を描く仕事」は全体の2割にすぎない

「キャラクターの可愛い絵をたくさん描いているんでしょう」とよく言われるという森脇さんですが、実際にデザインを描く作業はチーム全体の業務の中で2割程度にすぎないと言います。 残りの8割は、商品を手にしたゲスト(USJではお客様のことをこう呼びます)がどんな気持ちになるか、どう使ってもらいたいかを想像し、そのための情報を集める作業に費やされているとのことでした。

この考え方の根底にあるのが、「手のひらに乗るアトラクション」という表現です。 テーマパークというとジェットコースターなどのアトラクション体験が主役になりがちですが、商品もまた、手に取った瞬間にワクワクやドキドキを届けられる、アトラクションに匹敵する存在であるべきだという考え方が、商品開発全体を貫くビジョンとして共有されているそうです。

手のひらにのるアトラクションを説明している様子

クリエイティブチームが担う3つの役割

講義の中盤では、クリエイティブチームの役割が大きく3つに整理されました。

  • 情報の辞書になること ――キャラクターの世界観やガイドラインを深く理解し、他部署に対して的確なディレクションができる存在であること
  • ペルソナに深く潜ること ――ゲストがどう買いたいか、どう楽しみたいかを徹底的に想像し、その思いを各部門と共有すること
  • アプリケーションと市場をつなぐこと ――印刷技法や素材の制約を理解した上で、安全かつ魅力的な商品としてデザインを落とし込むこと

これらが噛み合うことで商品化がスムーズに進み、逆にどこかが欠けると、ライセンサーとのやり取りや現場との調整に時間がかかってしまうと語られました。

採用面接で見ているのは「安心感」と「期待感」

人事も経験した森脇さんならではの視点として、採用面接で重視しているポイントについても触れられました。 一つは、その人が持つスキルが仕事を任せられる水準にあるかという「安心感」。 もう一つは、その人ならではの個性やオリジナリティから感じられる「期待感」です。 特に後者について、面接での話し方が多少たどたどしくても、自分の言葉で一生懸命語ろうとする姿勢の方が、AIで整えた文章を読み上げるようなプレゼンよりも強く心に残るというエピソードは、会場の受講生にとっても印象深いものだったのではないでしょうか。

あわせて、どんな仕事にも共通して求められる力として「考える力」と「行動する力」が挙げられました。 情報を集めて理解し、それを自分の言葉に分解できること。 そして、それを実際にやってみること。 AIがどれだけ発達しても、最終的にAIをディレクションするのは人間である以上、この力はますます重要になっていきます。

面接やポートフォリオについてお話ししている様子

「自分らしさ」を育てるための3つの習慣

講義の終盤では、これからキャリアを築いていく受講生に向けて、次の3つの習慣が紹介されました。

  1. インプットを増やす ――可能な限り現地に足を運び、五感で情報を集めること
  2. 経験し、挑戦する ――学校の中だけにとどまらず、コンペや実社会の課題にアウトプットをぶつけてみること
  3. 失敗を分解する ――うまくいかなかったときこそ、何が足りなかったのかを自分なりに振り返り、次の引き出しにしていくこと

ご自身も現在、数多くのコンペに応募し続けているという森脇さん。 採用されないことの方が圧倒的に多いものの、続けるうちにスピードや精度が上がり、時にはフィードバックをもらえることもあるといい、「断られるのは悔しいけれど、やった方が絶対に次につながる」という言葉には、実感のこもった説得力がありました。

質疑応答:ペルソナを絞る理由、そしてブランドの一貫性

質疑応答では、「ターゲットを絞りすぎず、幅広い層に届けた方がよいのでは」という質問に対し、森脇さんはUSJでの経験をもとに答えました。 ターゲットやコンセプトを曖昧にしたまま多くの要素を詰め込むと、メッセージや魅力がゲストに伝わらない一方、思い切ってターゲットを絞り込んで勝負した方が、結果としてターゲット外の層にも届くことが多いといいます。 何より「何が良くて何が悪かったのか」を振り返りやすくなるため、次の企画の精度が上がっていくという考え方が紹介されました。

また、キャラクターごとに異なるライセンサーとのガイドラインの違いや、POSデータを活用した属性の分析、ブランドの方向性を安易に変えないことの重要性など、実務に基づいた具体的なやり取りが続き、予定の時間を超えるほど活発な質疑応答となりました。

テーマパークの商品は、世界中のゲストにワクワクを届けるための「手のひらに乗るアトラクション」。 その言葉に込められた、地道でありながら誇りを持って取り組むものづくりの姿勢が伝わってくる講義でした。

本記事は、デジタルハリウッドSTUDIOにて開催された特別イベント「USJのハロウィンは、どうやって生まれるの? 〜市場調査から商品デザインまで、課題解決の裏側〜」(講師:森脇順子氏)の内容をもとに構成しています。

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■デジタルハリウッドSTUDIO編集部
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