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【卒業生インタビュー】
「必要なのはセンスではなくロジック」 公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。

2026-08-22

【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。

デジタルハリウッドSTUDIO広島を卒業し、新しいキャリアをスタートさせた卒業生をご紹介するインタビュー企画。

今回は、「公務員の仕事に生かしたい」と考え、子育て中の4ヶ月間でグラフィックデザインを学んだ河内さん。

以前から個人的に応援していたフェリー会社(有限会社 阿多田島汽船)を題材に、 名刺、ロゴ、チラシ、広告、そして卒業制作まで、一貫して同じ会社をテーマに制作しました。

デザインを学ぶにはセンスが必要——そう思われがちですが、河内さんが4ヶ月で掴んだのは、少し違う答えでした。

本業とデザインの意外な共通点、そしてこれから実現したいことについて伺いました。

1. 育休中を「自分をアップデートする時間」にしたかった

——デジタルハリウッドSTUDIO広島で学ぼうと思われたきっかけはなんですか?

河内さん:もともと、デジタルハリウッドSTUDIO広島のオーナーが、デザイナーとして地域の取り組みに関わっていることを知っていて、良いスクールだなという印象を持っていました。

そんななか、「デザインの力で応援したい会社があります。実案件として、受講生の皆さんと一緒に取り組めないでしょうか。」とオーナーに相談しました。

そこで返ってきたのが、「そこまで強い思い入れがあるなら、ご自身で制作してみてもいいのでは。」という、思いがけない提案でした。

ちょうど相談した時期が、育休に入るタイミングでもありました。
まとまった時間ができることもあり、「せっかくなら、この機会を自分自身のアップデートに使いたい」と思ったんです。

デザインのスキルは家族の記録にも活かせるのではないかと考えました。
写真を撮る。アルバムにする。動画にする。何か記念になるものをつくる。といった日常のさまざまな場面にも活かすことができます。そんな「汎用性の高さ」も、デザインを学んでみようと思った理由のひとつです。

——デザイナーへの転職や副業が目的ではなく、ご自身のスキルを広げるために学ぼうと思われたのですね。

河内さん:はい。将来的にデザインを本業にしたいというわけではありませんでした。
デザインを学ぶことで、「つくる側」と「発注する側」の両方の視点を持ちたいという思いがありました。
そして、「好み」ではなく、「意図」や「根拠」を持ってデザインについて話せるようになりたいと考えていました。センスの有無で語るのではなく、言葉で説明できるようになりたかったんです。

2. デザインはセンスの世界だと思っていた

【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
——公務員の仕事で、これまでデザイナーに発注をする機会はありましたか?

河内さん:ありました。以前は、デザインの基礎知識がなかったので、修正をお願いするときにも「なんとなく好き」「なんとなく違う」と、感覚に頼ってしまうことがありました。

また、デザインの意図を十分に理解しないまま上司に説明すると、そこにさらに感覚的な修正が加わることもあります。その結果、最初にあったデザインの意図が薄れ、全体としてまとまりのないものになってしまうこともありました。

さまざまな地域の取り組みに関わる中で、「うまくいっている取り組みには、良いデザインがセットになっている」と感じることが増えてきました。
同時に、「良いデザインには、一貫したロジックがある」とも感じていました。

——実際にグラフィックデザインを学ぶなかで、その「良いデザインが持つロジック」を知ることはできましたか?

河内さん:そうですね。学ぶ前は、デザインってセンスの世界だと思っていました。でも実際に習ったのは、その手前にある考え方のほうでした。

なぜこの色なのか。なぜこの形なのか。なぜこのレイアウトなのか。良いデザインには、一つひとつにきちんと理由やロジックがあります。だからこそ説得力があり、再現性もあるのだと、学ぶ中で実感しました。センスがないから無理だ、という話ではなかったんですよね。

——デザインの考え方は、公務員の仕事では具体的にどのような場面で活かせると感じますか?

河内さん:人の気持ちや行動を動かしたいときや、組織内で意思決定を後押ししたいときです。

公務員の仕事でも資料作成の際は、情報の優先順位をつけたり、「相手にどう感じてほしいのか」「どのように気持ちを変化させたいのか」を考えます。
こういった作業は、デザインの考え方に近いと思っています。

良いデザインがあることで、住民の気持ちが変わる。気持ちが変わると、行動が変わる。そして、その結果として地域の取り組みが前に進んでいくと思います。

3. 子育てをしながら乗り切った4ヶ月間

【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
—— 育児をしながら実案件にも取り組む、大変な4ヶ月だったと思います。どのように乗り切りましたか?

河内さん:一番大変だったのは、やっぱり時間のやりくりですね。

育休中とはいえ、もちろんメインは子育てです。制作できるのは基本的に夜。
さらに実案件なので、自分だけではなく相手方のスケジュールもあります。
ずっと何かに追われている感じはありました(笑)。

焦っているわけではないんですけど、頭のどこかでずっと「あれ、やらなきゃな」と考えているような感じでした。

それでも4ヶ月を走り切れたのは、毎月の講評会と同期の存在が大きかったと思います。

—— グラフィックデザイン講座の講評会では、講師からのフィードバックだけでなく、受講生同士でも積極的に意見を交わしていた印象があります。

河内さん:はい。同期は3人だけの小さなクラスだったのですが、全員が実案件を持ち込んでいました

美容室の開業、花屋の立ち上げ、そして私のフェリー会社。みんな自分ごととして取り組んでいるからこそ、講評の質も自然と高くなりました。

励まし合える仲間でありながら、同時にライバルでもある。活発に意見を交わす環境が、クラス全体のレベルを底上げしてくれたと思います。オンラインだけで完結する講座だったら、ここまで頑張れていなかったかもしれません。

4. 応援したいフェリー会社をクライアントに

【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
—— 今回、河内さんが実案件として取り組んだフェリー会社とは、以前から交流があったのでしょうか?

河内さん:はい。 有限会社 阿多田島汽船は、もともと個人的に応援していた会社でした。

最初の出会いは、仕事で行っていた研究活動です。中小企業の人手不足をテーマに調査することになり、「せっかくなら自分が好きなものを題材にしよう」と、ヒアリングに伺ったのがきっかけでした。

そこで出会った人たちの姿勢に惹かれて、会社そのものを好きになったんです。その後、SNSをずっと追いかけていて、「頑張っているな」「応援したいな」という気持ちが積み重なっていきました。

スクールに通う以前から、たびたび足を運ぶほどファンでもあるし、研究対象でもありました。だからこそ、今回の実案件では「自分がつくる」ということに大きな意味がありました。誰よりも、その人たちのために取り組めてよかったと思います。

—— 好きな会社と実際にデザインに取り組む中で、どんな発見がありましたか?

河内さん:ヒアリングを重ねる中で、この会社には「応援される力」があることに気づきました。

船に乗る用事がなくても、待合所へ足を運ぶ人がいる。こまめにSNSでコメントをつける人がいる。その背景には、スタッフの方々のホスピタリティがあります。
一方で、その魅力が特定の人に属人化しているという課題も見えてきました。

そこで、今回の課題解決のテーマを「応援される力を、続けられる形にする」と捉え直しました。

たとえばロゴには、あえてハンコのかすれや滲みを残し、キャラクターにも少し隙のある親しみやすさを持たせました。また、無理なく運用を続けられるよう、色数も抑えています。

「好き」という気持ちだけでつくるのではなく、その会社の強みや課題を理解し、デザインに落とし込む。 実案件だからこそ、そこまで考えることができたと思います。

▼ 河内さんの作品

【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
—— 実際にクライアントへ納品したことで、どのような経験を得られましたか?

河内さん:もちろん、もっとスキルがあれば、もっと良いものができたかもしれません。それでも、自分なりの意図や根拠を持って、「なぜこのデザインなのか」を説明できるものにできたことには、大きな手応えを感じています

特に印象的なのが、「好きだからこそ、つくり手側の気持ちがわかるようになった」という変化です。

ロゴの形や手書きのニュアンスなど、細部までこだわってつくったものだからこそ、理由もなく「ここ変えよう」と言われたら、きっと納得できない。一方で、きちんと意図を理解したうえでの提案なら、ありがたく受け止められる。

実際に制作から納品までを経験したことで、「発注する側」と「つくる側」、両方の気持ちを理解できるようになったことが、自分にとって大きな変化でした。

5. 公務員の仕事とデザインが、一本につながった

【卒業生インタビュー】「必要なのはセンスではなくロジック」公務員としての経験とクリエイティブが、一本につながった4ヶ月。
—— 4ヶ月間デザインを学んで、ご自身の中で一番大きく変わったことは何ですか?

河内さん:もちろん、ソフトを使えるようになったことや、「デザインの基本的な作法」を理解できたことは大きな変化です。

でも、それ以上に大きかったのは、これまで自分がやってきた仕事と、デザインが地続きでつながっていると気づけたことでした。

本業では、相手の話を聞き、 現状を整理して問題を捉え、課題を特定する。そして、解決策を一緒に考えて実行し、振り返って次につなげていく。いわば「伴走支援」のような仕事をしています。デザインを学んでみると、このプロセスがデザインとすごく似ていることに気づいたんです。

また、自分がこれまで大切にしてきた「フィードバック」の価値にも、改めて気づくことができました。

同期の作品に意見するときも、良いところは「なぜ良かったのか」まで伝える。
改善できそうなところも否定するのではなく、「今のままでも100点だけど、ここが良くなれば300点」と伝えるようにしていました。

だから今回の学びは、「新しい武器をひとつ手に入れた」というより、これまで持っていた経験やスキル、強みにデザインが加わって、「自分のカードが1枚増えた」という感覚に近いです

——卒業後の目標や実現したいことはありますか。

河内さん:公務員の仕事って、突き詰めると課題解決の仕事だと思うんです。
そして、デザインも課題解決のための技術だと思っています。
だから、根っこは一緒なんですよね。

これからは「デザイン」という新しいカードを使って、これまで以上にいろいろな場所へ飛び込んでいきたいです。

地域で何か新しいことを始めたい人を応援する。
行政の中でデザインを使って課題を解決する。
そして、デザインを知らない人にも、その可能性を伝えていく。

自分が学んだことを周囲にも広げて、いつか職場でもデザインについて学べるような勉強会を開いてみたいですね。

それが、これからの目標です。

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