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【東京本校 本科UI/UXD専攻】株式会社DeNA(ディー・エヌ・エー)特別授業『サービスデザインの方法』授業レポート

2017-09-30

はじめまして、本科UI/UXD専攻の溝口と申します。


今回は、先日、1月13日(水)に開催された株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)、UIデザイナーである増田 直生先生の特別授業「サービスデザインの方法」について僭越ながらレポートさせていだきます!


テーマは「サービスデザインの方法」。


増田先生がデジタルハリウッドを卒業してから3年で培った「サービスデザイン」について「そんなに話してしまっていいの?」と言わんばかりに余すところなくご教示いただきました。
増田先生は、3年前にデジタルハリウッドに通学されていたそうで、2年ほど前からDeNAにてUIデザイナーをされているそうです。現在では、「マンガボックス」、「My Anime List」を中心としたサービス、その他新規案件にも携われているそうで、自己紹介の段階で4月生、9月生ともに入学時期は違うもののどんな話を聞くことが出来るのか目の色が変わりました。

「サービスデザインの方法」の授業内容

まず今回、私たちが学んだ授業の内容について簡単にご紹介します。


今回、私たちは以下、3つのことをご教示いただきました。
1.DeNAでのサービスの作り方
2. サービスを作る上で重要なポイント
3. ワークショップ
の3つです。ワークショップでは、1と2を踏まえ実際にDeNAでも行われているディスカッション形式でのアイデア出しを行いました。詳しくは項目ごとにご紹介させていただければと思います。

DeNAでのサービスの作り方

DeNAでのサービスの作り方には、大きく以下の8工程があり、それぞれに役割や関わる人が増減するそうです。しかし、サービスを作るチーム自体、最初はとても小さいことも多く、UIデザイナーである増田先生は全工程に携わり、ディレクターのような役割も果たすことが多いそうです。


 <サービスの作り方>

(1)サービスの土台であるコンセプトをしっかりと作る
サービスを作る上でもっとも重要といっても良いのが、「サービスの土台であるコンセプトをしっかりと作ること」だそうです。サービスを作る理由・ペルソナ設計・ユーザシナリオの作成・サービスのゴールであるKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)を決める、などこの「コンセプトを作リ出す」時点で入念にそのサービスについて検討するそうです。ここに関しては、とても重要な部分のため、一番時間をかけて行い、サービスがどんなに格好良くてもコンセプトの軸がぶれていたり、そもそもコンセプトが曖昧で陳腐なものだったりといったことがないようにするそうです。コンセプトがしっかりしていないとどんなに格好良いサービスでも絶対にダメだと強調されていました。

(2)機能を決める
コンセプトが固まったら、ユーザの課題、要望や利用シーンを考えながら、どのような機能が必要であるかを考える段階に進むそうです。ここでも重要なのが、「サービスのコンセプトに常に立ち返る」ということ。機能を考えるにあたり、ディスカッションの中でテンションが上がってしまい、コンセプトからいつの間にか外れていた、なんてこともあるそうで、コンセプトに立ち返るというのは何度も意識するそうです。


(3)リサーチとスケッチ
ここでは大きく分けて2つのことを行います。一つは、リサーチ。いろいろな既存のアプリやサービスを使ってみて、なぜ人気なのか、なぜ面白いのに不人気なのかなど様々なリサーチと考察を行うそうです。もう一つは、スケッチです。ここでは、紙とペンを使い、とにかくイメージを書き出してみるそうです。現在、9月生は中間発表に向けて、徐々にサービスを考えてみる、という段階に入ってきました。このリサーチとスケッチのお話を聞いて、まとまらない私のサービスもリサーチ結果を踏まえてどんどん書き出していくことで何か見えてくるのではないか、と勇気が持てました。
しかし、ここでもやはり重要なのが、「コンセプトに立ち返る」ということ。スケッチをしていくうちにコンセプトから大きく外れてしまったり、格好の良さだけを重視してしまったりすることがあるそうです。私もスケッチをする時は、どんどん自分がどこを目指していたのかわからなくなってしまいがちなので、そういった意味でもこの段階で「コンセプトに立ち返る」というのはとても重要なことなのだと実感しました。


(4)ペーパープロトタイピング
この工程では、サービスの画面遷移やインタラクションを確認するそうで、チームに共有することは少ないそうです。あくまで自分の中でイメージを固めるものであり、あえて共有しないことが多いそうです。というのも、途中の中途半端な状態で共有してしまうことによって、その先の開発で関わるエンジニアさんやチームを混乱させかねないからだそうです。
このペーパープロトタイピングでは、ポストイット・紙・ペンを使用し、既存のサービスなども用い、実際に動かしてみてインタラクションを確認するそうです。                                                                                           

(5)ワイヤーフレーム・遷移図作成
ペーパープロトタイピングで自分の中でサービスのイメージが固まったら、次にワイヤーフレームと遷移図を作 成します。このとき、ワイヤーフレームなので、もちろんモノクロで作成しますが、出来るだけ精度の高いスケルトンを作成し、チームに共有するそうです。モノクロといっても、色をつけたらすぐにでもサービスやアプリになるくらいの精度で臨むそうです。
増田先生は、このワイヤーフレームをGoodpatch(株式会社グッドパッチ)のProttでチームに共有するのだそうです。


(6)デザイン・プロトタイピング
ここまで出来たら次は実際にデザインをし、プロトタイプを作っていきます。この工程で重要なのは、「デザイン→プロトタイピング→フィードバック→改善→デザイン→…」の繰り返しだそうです。また、この時に使う主なデザインツールは、Sketch3、Prott、AfterEffectsの3つだそうです。役割としては、Sketch3とProttで画面遷移を、ProttとAfterEffectsでアニメーションやインタラクションをデザインするそうです。


(7)開発(着手)
ここまできてやっと開発に着手します。(6)で出てきたSketchのデータをエンジニアさんに渡し、実装してもらいます。その際、開発途中のものでもチームで触ってフィードバックを行うそうです。またこのときに、エンジニアさんとの認識のズレがないか確認を行うそうです。WEB、Android、iOSに関わらず行います。
ここで一つ、私の中で疑問が浮かびました。UIデザイナーの増田先生はディレクターのような役割も兼ね、全部の工程に携わるとお聞きしましたが、エンジニアさんはどこまで携わるのか…。



Q エンジニアさんはどこからどこまでサービスデザインに携わるのでしょうか?(溝口)
A エンジニアさんは遷移、つまり動かすところをメインで担当してもらいます。(増田先生)

Q ではエンジニアさんが遷移を担当されて、サービスに疑問を持ってしまった場合どうするのでしょうか?(溝口)
A エンジニアさんがサービスに疑問を持つということは、そのサービスのコンセプトの軸がぶれ始めている、エンジニアさんに渡した時にはすでにコンセプトが成り立たなくなっていたということが考えられるため、何度も言うようですが、一度、「コンセプトに立ち返って」検討します。(増田先生)



(8)リリース後もやるべきこと

こうやってサービスが世に出て、それで終わり、というわけではありません。増田先生は言います。「ここからがスタートと言っても過言ではありません。」と。


データの分析・SNSの反応・ユーザインタビュー・ストアレビューなどさまざまなものをチェックし、サービスのコンセプトに合ったフィードバックを参考に常に改善・最適化を行うそうです。
一度、リリースしたサービスは止まることはありません。常に動くものを速く作ってフィードバックをもらう、チーム全員でフィードバックを行い、サービスの本質を常に考え、リサーチを怠らない。リリース後にやるべきポイントがたくさんあり、リリース後の重要性を強く感じました。


サービスを作り、運用するにあたり、どの工程にもほぼ出てきた「コンセプトに立ち返る」という部分がとても印象的で、個人的にチームを組んでインタラクティブコンテンツ制作をデジハリで行っているので、自分たちのチームではそれができているか、そもそも再重要項目である「コンセプト」が明確に共有できているのか、とても参考になりました。また、私は9月生なので、まだIllustratorやPhotoshopなどの勉強をしているため、この授業を受講することが出来なかったチームメンバーにも共有したいと強く感じました。


その他にもサービスの作り方のまとめとして出てきた「動くものを作る」、「多くの人からフィードバックをもらう」、「フィードバックの取捨選択を正しく行う」、「常に改善・最適化を行う」という4つも作っているコンテンツに対して、まだ動くものをとりあえず作ってみるということ、チーム以外の人からフィードバックをもらったことがないことを振り返り、チーム以外の人からもフィードバックがもらえるように動くものを早く作りたい!という気持ちが大きくなりました。

サービスを作る上で重要なポイント

サービスを作る上での重要なポイントとして以下の9と+αをご教示いただきました。

(1)サービス(プロダクト)を作る理由は明確か
サービスを作る上で、
・問題解決型か?
・技術先行型か?
・言語化できるか?
の3つのサービスを作る「理由」があるそうで、当たり前のことなのかもしれませんが、これには心打たれました。というのも、上で記載させていただいた通り、現在、デジタルハリウッドの受講生同士でチームを作り、コンテンツを作成しています。自分たちが作るものが何なのか、明確なのかな?と思ってしまったからです。また、チームメンバーの一人一人、全員がこのコンテンツを言語化できるかと言ったらそうは思えませんでした。それで良いサービスが作れるわけがありません。
さっそくコンセプトに立ち返り、チーム内で確認したい!と思いました。


(2)企画・リサーチは十分できているか?/ (3)サービスのゴールを共有できているか?

この2つに関しては、(1)同様にとても重要かつ現在、自分たちで行っている制作に対してきちんとできているのか、胸に突き刺さりました。


(4)自分たちがそのサービスにワクワクしているか?
4つ目は特に強調されていました。やはり自分たちがワクワクしないものにユーザがワクワクするでしょうか?人気のサービスはユーザはとてもワクワクしています。ただ、自分たちのワクワクだけで突っ走ってもコンセプトからズレたサービスになるかもしれません。「コンセプトに立ち返る」ここでも重要なキーワードだと感じました。


(5)競合よりも圧倒的に優れたものであるか(少なくとも10倍は良い物を作る)


(6)疑問と課題意識を持って生活してみる
これは次のワークショップにも繋がるのですが、サービスデザインにとって「観察」はとても重要なことだとおっしゃっていました。


(7)リーンに頼りきっていないか?

私は恥ずかしながらこの授業ではじめて「LEAN UX」を知りました。ご存知の方が多いのかもしれませんが、LEAN UXとは、リーンスタートアップの手法をUXに応用させたもので、設計・構築・リサーチのループをデザインに取り入れることによって最短で最適なデザインを生み出すというものらしく、エンジニアさんやプロダクトマネージャさん、マーケッターさんなどデザイナーではない人と横断的にコラボレーションできる手法だそうです。

ここで増田先生が指摘されていたのはあまりにリーンの有効性に頼りすぎて、速く、速くサービスデザインのサイクルをまわしてしまうことにより、劣化をもたらすということでした。
今は存在しないサービスを作る場合はリーンは有効です。なぜなら、他社が出す前に自分たちのサービスを出す必要があるからです。ただ、もう既に世に出ているサービスを改善してリリースする場合は、リーンで急ぐよりもしっかりとライバルのサービスを研究し、自分たちの優位性を極限まで磨く必要があります。そして、サービス自体のクオリティもライバルに勝る必要があります。
そのため、時間をかけ戦略を練りつつ最高のプロダクトを生み出す必要があるのです。                                        

(8)サービスも第一印象が大事
見た瞬間にイケてないと辛い…そうです。デザインを学んでいるデジタルハリウッドの受講生にとってはとても痛い言葉であり、そうはなりたくないというのが本音だったのではないでしょうか?

(9)運用期間も常にコンセプトに立ち返りブランディングをする
サービスを作る上で重要なポイントとしてもっとも最後にふさわしい内容でした。ずっと増田先生がおっしゃっていたように「コンセプトに立ち返る」というのは重要なことで、デザイン、開発もそうですが、リリース後ももちろん一貫性が問われます。その中で、もし、コンセプトがワークしていなくてサービスを中止するよりも、チームのゴール(KPI)をどうやっても達成できない。という事が分かったら中止します。コンセプトを少し変えてみて(ピボット)、実験するということも実際はあります。ただ、多くの場合ピボットしたとしても、土台のコンセプトがイケた物ではないとピボットしたとしても大きな成果が得られないのが現状です。

授業との順番は逆になってしまいましたが、最後は+αとしてご教示いただいた「インタビューのポイント」をご紹介します。
リリース後にやるべきこととして「ユーザインタビュー」というのがありましたが、インタビューというのはとても緊張するものです。かつ、会議室などで行う場合などは特にです。
私も大学時代、実験の最後に実験協力者の方々にインタビューを行っていましたが、すこしひんやりとした実験室の中でのインタビューはとても重苦しく、増田先生がおっしゃっていたように「答えてほしい答えに自然と導いていないか?」、「相手を誘導する質問をしていないか?」など、とても注意が必要です。
増田先生曰く、普通におしゃべりする程度がベストとのこと。ユーザインタビューの質問項目としゃべり方、雰囲気づくりには注意したいものです。

チーム毎に分かれてのワークショップ

ここまで何も知らないという人も多かった9月生も「サービスデザイン」について少し知ったところで、延長しても45分という短い時間でワークショップを行いました。テーマは、「東京の街を綺麗にする方法を考えよう」 でした。


特に早朝、イベントの翌日などは東京の街にはゴミが溢れかえります。少しでもゴミの量を減らし、街を綺麗にするアイデアを考えてみましょう、というのが当日の課題でした。

ワークショップでは、4人程度で4チームに別れ、ポストイットを使ったアイデア出しと、その出たアイデアに関するカテゴリ分け、カテゴリ分けからテーマである「東京の街を綺麗にする方法」を考えました。




私はいきなりのテーマで、驚いたのはもちろんだったのですが、日頃、そんなことを気にしていない自分にとても驚きました。どこかで東京は汚いものである、という固定概念とそれを見もしない自分がいたからだと思いました。

日頃の観察が圧倒的に足りません。このテーマを出した増田先生は常にこういった小さいことにも目を向けて観察しているのだろうなと思うと圧倒的な差を感じました。



ワークショップ自体は、時間を延長していただくほど白熱し、最後のアイデアだしではポストイットが壁にいっぱい貼られるチームや図を使って配置してみようというチームなどさまざまで、最終発表でも笑いが起こるチームもありました。



実はこの一見、遊びのようなワークショップ、DeNAでは大人数で1、2日費やすこともあるそうで、45分でこれだけのアイデアが出たのだから、日々、観察をし続ければとても有益なアイデアが生まれるだろうと増田先生。

そして最後に、「今日、2時間で凝縮して行ったこと、それがサービス設計です。日々の観察を忘れずにいることで、発想次第でヒットする可能性は無限大です。観察し続け、誰かに共有し、フィードバックをもらいながら、その発想、アイデアに共感してくれる人を探しましょう。そして自分自身に自信をつけていきましょう!」と素敵なメッセージをいただきました。

講義後も卒業制作前の4月生は相談に、入学して間もない9月生は今後についての相談や増田先生の経歴などについて質問の列は絶えず、長い時間お付き合いいただきました。

増田先生、本当にありがとうございました!

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